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原発性卵巣機能不全

(高ゴナドトロピン性性腺機能低下症;早発閉経;早発卵巣不全;早発卵巣機能不全)

執筆者:

JoAnn V. Pinkerton

, MD, University of Virginia Health System

レビュー/改訂 2020年 12月
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原発性卵巣機能不全では,40歳未満の女性で,血中ゴナドトロピン(特に卵胞刺激ホルモン[FSH])値が高いにもかかわらず,排卵が規則的に起こらず,卵巣が十分な性ホルモンを産生しない。診断はFSHおよびエストラジオール値の測定による。典型的には,治療はエストロゲン-プロゲストーゲン併用療法による。

原発性卵巣機能不全では,40歳未満の女性で卵巣の正常な機能が停止する。この疾患は,以前は早発卵巣不全または早発閉経と呼ばれていたが,原発性卵巣機能不全の女性では必ずしも月経が停止するわけではなく,必ずしも卵巣の機能が完全に停止するわけではないため,これらの用語は誤解を招くものである。そのため,原発性卵巣機能不全の診断は,妊娠が不可能であることを常に意味するわけではない。また,この疾患は,卵巣がもはや正常に機能していないことを意味するだけであり,女性が早期に老化していることを示唆するわけではない。

原発性卵巣機能不全では,卵巣に以下がみられる:

  • 排卵が停止するか,排卵が間欠的になる

  • エストロゲンプロゲステロン,およびテストステロンのホルモン産生を停止するか,間欠的にしか産生しない

病因

原発性卵巣機能不全には,以下を含む様々な原因がある(原発性卵巣機能不全の一般的な原因 原発性卵巣機能不全の一般的な原因 原発性卵巣機能不全の一般的な原因 の表を参照)。

  • 出生時に存在する卵胞数が少ない。

  • 卵巣が手術,化学療法,または放射線療法の際に損傷を受けたときに起こるように,卵胞閉鎖の速度が加速している。

  • 卵胞に機能障害がある(自己免疫性卵巣機能障害で起こるように)。

  • 特定の遺伝性疾患が存在する。

早発卵巣機能不全を引き起こす可能性がある遺伝性疾患としては,以下のものがある:

Y染色体を有する遺伝性疾患は,原発性卵巣機能不全の原因にもなる。これらの疾患は,通常35歳までに明らかになり,卵巣胚細胞腫瘍のリスクを高める。

症状と徴候

潜在性または生化学的な原発性卵巣機能不全(下記の 分類 分類 原発性卵巣機能不全では,40歳未満の女性で,血中ゴナドトロピン(特に卵胞刺激ホルモン[FSH])値が高いにもかかわらず,排卵が規則的に起こらず,卵巣が十分な性ホルモンを産生しない。診断はFSHおよびエストラジオール値の測定による。典型的には,治療はエストロゲン-プロゲストーゲン併用療法による。 原発性卵巣機能不全では,40歳未満の女性で卵巣の正常な機能が停止する。この疾患は,以前は早発卵巣不全または早発閉経と呼ばれていたが,原発性卵巣機... さらに読む を参照)の女性では,唯一の徴候が原因不明の不妊であることがある。顕性(overt)の原発性卵巣機能不全または早発卵巣不全の女性では,典型的には 無月経 無月経 無月経(月経がない状態)には原発性または続発性のものがある。 原発性無月経は,正常な成長と第二次性徴が認められる患者において15歳までに月経が起こらないことである。しかし,13歳までに何らかの乳房の発達がみられない場合は,原発性無月経の評価を行うようにすべきである。 続発性無月経は,規則的な月経周期の確立後に6カ月以上または月経周期で3周期以上の期間,月経がない状態である( 1... さらに読む や不規則な出血を認め,エストロゲン欠乏の症状や徴候(例, 骨粗鬆症 骨粗鬆症 骨粗鬆症は,骨密度(単位体積当たりの骨量)が減少し,骨の構造が劣化する進行性の代謝性骨疾患である。骨格の脆弱性は,軽度または不顕性の外傷による骨折(脆弱性骨折と呼ぶ)の原因となる(特に胸腰椎,手関節,および股関節)。診断は,二重エネルギーX線吸収法(DXA)または脆弱性骨折の確認による。予防および治療には,危険因子の是正,カルシウムおよび... さらに読む 骨粗鬆症 ,萎縮性腟炎,性欲減退)がよくみられる。抑うつなどの気分の変化がみられることもある。

卵巣は通常小さくかろうじて触知できるが,ときに腫大することがあり,その場合は通常は免疫性疾患が原因である。原因疾患の症状や徴候(例,ターナー症候群による異形性の特徴;脆弱X症候群による知的障害,形態異常の特徴,および自閉症;まれに,副腎機能不全による起立性低血圧,色素沈着,腋毛および陰毛の減少)がみられることもある。

51歳頃(平均閉経年齢)までエストロゲン療法を受けなければ, 骨粗鬆症 骨粗鬆症 骨粗鬆症は,骨密度(単位体積当たりの骨量)が減少し,骨の構造が劣化する進行性の代謝性骨疾患である。骨格の脆弱性は,軽度または不顕性の外傷による骨折(脆弱性骨折と呼ぶ)の原因となる(特に胸腰椎,手関節,および股関節)。診断は,二重エネルギーX線吸収法(DXA)または脆弱性骨折の確認による。予防および治療には,危険因子の是正,カルシウムおよび... さらに読む 骨粗鬆症 認知症 認知症 認知症とは,慢性的かつ全般的で,通常は不可逆的な認知機能の低下である。診断は臨床的に行い,治療可能な原因の同定には通常,臨床検査および画像検査を利用する。治療は支持療法による。コリンエステラーゼ阻害薬はときに認知機能を一時的に改善する。 ( せん妄および認知症の概要も参照のこと。) 認知症はいかなる年齢にも起こりうるが,主として高齢者を侵す。介護施設入居者の半数以上にみられる。... さらに読む パーキンソン病 パーキンソン病 パーキンソン病は,安静時振戦,筋強剛(固縮),緩徐で減少した動作(動作緩慢)を特徴とし,やがては歩行または姿勢不安定に至る,緩徐に進行する神経変性疾患である。診断は臨床的に行う。治療は脳内のドパミン系の機能を回復することを目的とし,レボドパに加えてカルビドパおよび/または他の薬剤(例,ドパミン作動薬,B型モノアミン酸化酵素[MAO-B]阻害薬,アマンタジン)を投与する。認知症のない患者における生活に支障を来す難治性の症状には,脳深部刺激... さらに読む 抑うつ 抑うつ障害群 抑うつ障害群は,機能を妨げるほどの重度または持続的な悲しみと興味または喜びの減退を特徴とする。正確な原因は不明であるが,おそらくは遺伝,神経伝達物質の変化,神経内分泌機能の変化,および心理社会的因子が関与する。診断は病歴に基づく。治療は通常,薬物療法,精神療法,またはその両方のほか,ときに電気痙攣療法または高頻度経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)から成る。 うつ病という用語は,しばしばいくつかの抑うつ障害群のいずれかを指して用いられる。一部... さらに読む および 冠動脈疾患 冠動脈疾患の概要 冠動脈疾患では,冠動脈の血流が障害され,そのほとんどがアテロームに起因する。臨床像としては,無症候性心筋虚血, 狭心症, 急性冠症候群( 不安定狭心症, 心筋梗塞), 心臓突然死などがある。診断は症状,心電図検査,負荷試験,ときに冠動脈造影による。予防法は可逆的な危険因子(例,高コレステロール血症,高血圧,運動不足,肥満,糖尿病,喫煙)の... さらに読む 冠動脈疾患の概要 のリスクが上昇する。

診断

  • 卵胞刺激ホルモン(FSH)およびエストラジオール

  • 甲状腺機能検査,空腹時血糖,電解質,およびクレアチニン

  • ときに遺伝子検査

原発性卵巣機能不全は40歳未満の女性で,原因不明の不妊,月経異常,エストロゲン欠乏の症状がみられる場合に疑われる。

妊娠検査を実施し,血清FSHおよびエストラジオール値を2~4週間,毎週測定する;FSH値が高く(> 20mIU/mL,しかし通常は > 30mIU/mL),エストラジオール値が低ければ(通常 < 20pg/mL),卵巣機能不全が確定する。その後は,疑われる原因に応じてさらなる検査を実施する。

抗ミュラー管ホルモンは小さな卵胞でのみ産生されるため,卵巣予備能の低下の診断を試みる際にこのホルモンの血中濃度が用いられている。正常値は1.5~4.0ng/mLである。非常に低い値は卵巣予備能の低下を示唆する。生殖内分泌医は,抗ミュラー管ホルモン値を用いて,排卵誘発薬への反応が不良である女性の予測,および不妊治療が成功する可能性が概して低いカップルの予測に役立てる。抗ミュラー管ホルモンは月経周期中いつでも測定することができる。

原発性卵巣機能不全の家族歴,知的障害,振戦,または運動失調がみられる場合は,FMR1前変異の遺伝カウンセリングおよび遺伝子検査の適応となる。35歳未満の女性で卵巣機能不全が確定した場合,またはFMR1前変異が疑われる場合には,核型を明らかにする。

核型が正常な場合,または自己免疫性の原因が疑われる場合は,血清抗副腎抗体および抗21-水酸化酵素抗体(副腎の自己抗体)を検査する。

自己免疫性の原因が疑われる場合は,自己免疫性甲状腺機能低下症を調べる検査も行う;これらには,甲状腺刺激ホルモン(TSH),サイロキシン(T4),および抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体と抗サイログロブリン抗体などの測定が含まれる。

自己免疫系の障害に対するその他の検査を行うべきである;これには,血算と白血球分画,赤血球沈降速度,抗核抗体およびリウマトイド因子の測定などがある。

エストロゲン欠乏の症状や徴候がみられる場合は骨密度を測定する。

卵巣生検は適応とならない。

分類

原発性卵巣機能不全は臨床所見と血清FSH値に基づき分類される:

  • 潜在性(occult)原発性卵巣機能不全(卵巣予備能低下[diminished ovarian reserve]):原因不明の不妊および血清FSHの基礎値が正常

  • 生化学的(biochemical)原発性卵巣機能不全:原因不明の不妊および血清FSHの基礎値上昇

  • 顕性(overt)原発性卵巣機能不全:不規則な月経周期および血清FSHの基礎値上昇

  • 早発卵巣不全:長年にわたる不規則または希発月経,妊娠の可能性,および血清FSHの基礎値上昇

  • 早発閉経:無月経,永久不妊,原始卵胞の完全な枯渇

治療

  • 経口避妊薬

  • エストロゲン-プロゲストーゲン療法(併用ホルモン療法またはホルモン補充療法)

  • 体外受精

原発性卵巣機能不全があり妊娠を望まない女性には,経口避妊薬(周期的または長期サイクル)またはエストロゲン-プロゲスチン療法(周期的または連続使用)による治療が可能である。

周期的 併用ホルモン療法 ホルモン療法 閉経は,卵巣機能の低下による生理的または医原性の月経停止(無月経)である。症状としては,ホットフラッシュ,盗汗,睡眠障害,閉経関連泌尿生殖器症候群(genitourinary syndrome of menopause)(外陰・腟の萎縮などのエストロゲン欠乏による症状および徴候)などがある。診断は1年間の無月経を基準として臨床的に行う。症... さらに読む は,これらのホルモンの禁忌がある場合を除いて51歳頃(平均閉経年齢)まで行う(1 治療に関する参考文献 原発性卵巣機能不全では,40歳未満の女性で,血中ゴナドトロピン(特に卵胞刺激ホルモン[FSH])値が高いにもかかわらず,排卵が規則的に起こらず,卵巣が十分な性ホルモンを産生しない。診断はFSHおよびエストラジオール値の測定による。典型的には,治療はエストロゲン-プロゲストーゲン併用療法による。 原発性卵巣機能不全では,40歳未満の女性で卵巣の正常な機能が停止する。この疾患は,以前は早発卵巣不全または早発閉経と呼ばれていたが,原発性卵巣機... さらに読む );この治療法はエストロゲン欠乏症状を緩和し,骨密度の維持に役立ち,冠動脈疾患,パーキンソン病,気分の変化(抑うつを含む),萎縮性腟炎および認知症の予防の助けとなる可能性がある。女性が平均閉経年齢になってからは,ホルモン療法を継続するかどうかは女性の個々の状況(例,症状の重症度,骨折のリスク)により異なる。

妊娠を望む女性では,1つの選択肢として提供卵子の 体外受精 体外受精(IVF) 生殖補助医療(ART)では,妊娠の成立を目標とするin vitroでの精子と卵子または胚の操作が行われる。 ARTにより多胎妊娠が生じうるが,リスクは卵巣刺激法よりもはるかに低い。遺伝子異常のリスクが高い場合,しばしば移植および着床前に胚を検査して異常がないか調べる( 着床前遺伝子検査)。 IVFは,精子減少症,精子抗体,卵管機能障害,または子宮内膜症による不妊症,および原因不明の不妊症の治療に使用される。... さらに読む 体外受精(IVF) を行い,子宮内膜が移植胚を維持できるよう,エストロゲンとプロゲストーゲンを投与する。卵子ドナーの年齢が,レシピエントの年齢よりも重要である。この技術はかなり成功率が高いが,この技術を用いなくても原発性卵巣機能不全と診断された女性が妊娠することがある。原発性卵巣機能不全の女性で,排卵率を改善または妊孕性を回復することが証明された治療法はない。

妊娠を望む女性の他の選択肢としては,卵巣の組織,卵子,または胚の凍結保存や,胚提供などがある。これらの技術は,卵巣不全となる前または卵巣不全時に利用できる(特にがん患者において)。新生児および成人の卵巣には,何カ月にもわたり安定して増殖し,in vitroで成熟卵母細胞となることが可能な卵原幹細胞が少数存在する;これらの細胞は将来,不妊治療の開発に利用される可能性がある。卵巣組織移植が成功しており,将来的には妊孕性を喪失した女性の選択肢となる可能性がある(2 治療に関する参考文献 原発性卵巣機能不全では,40歳未満の女性で,血中ゴナドトロピン(特に卵胞刺激ホルモン[FSH])値が高いにもかかわらず,排卵が規則的に起こらず,卵巣が十分な性ホルモンを産生しない。診断はFSHおよびエストラジオール値の測定による。典型的には,治療はエストロゲン-プロゲストーゲン併用療法による。 原発性卵巣機能不全では,40歳未満の女性で卵巣の正常な機能が停止する。この疾患は,以前は早発卵巣不全または早発閉経と呼ばれていたが,原発性卵巣機... さらに読む )。

原発性卵巣機能不全の女性の約5~10%は,不妊治療なしで最終的に自然に妊娠する。

早発卵巣不全の女性において骨量減少を予防するためには,禁忌がない限り,骨に特異的な治療(例,ビスホスホネート)よりもホルモン療法または経口避妊薬が推奨される;これらの治療は女性が平均閉経年齢(約51歳)になるまで行われ,その年齢になると治療を再評価することがある。

Y染色体を有する女性は,卵巣胚細胞腫瘍のリスクが高いため,開腹下または腹腔鏡下での両側卵巣摘出が必要である。

治療に関する参考文献

要点

  • 原因不明の月経異常,不妊,またはエストロゲン欠乏症状のみられる女性では,原発性卵巣機能不全を疑う。

  • FSH(通常 > 30mIU/mLの高値である)およびエストラジオール(通常 < 20 pg/mLの低値である)を測定し診断を確定する。

  • 抗ミュラー管ホルモン値を測定し,不妊治療への反応が不良である女性を予測するのに役立てる。

  • 自己免疫性の原因が同定された場合,他の自己免疫疾患の検査を行う。

  • 禁忌がなければ,骨密度を維持しエストロゲン欠乏の症状およびその合併症を緩和するために,51歳頃(平均閉経年齢)まで周期的エストロゲン-プロゲストーゲン療法(併用ホルモン療法)を処方する。

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