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多形紅斑

執筆者:

Julia Benedetti

, MD, Harvard Medical School

レビュー/改訂 2020年 7月
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多形紅斑は,標的状または虹彩状の皮膚病変を特徴とする炎症反応である。口腔粘膜が侵されることもある。診断は臨床的に行う。病変は自然に消退するが,しばしば再発する。多形紅斑は通常,単純ヘルペスウイルスやマイコプラズマなどの感染因子に対する反応として生じるが,薬剤に対する反応である場合もある。単純ヘルペスウイルスが原因で頻回または症候性の再発がみられる患者には,抗ウイルス薬による再発抑制療法が適応となる場合がある。

多形紅斑は長年にわたり, スティーブンス-ジョンソン症候群 スティーブンス-ジョンソン症候群 (SJS) および中毒性表皮壊死融解症 (TEN) スティーブンス-ジョンソン症候群と中毒性表皮壊死融解症は,重度の皮膚過敏反応である。薬剤,特にサルファ剤,抗てんかん薬,および抗菌薬が最も頻度の高い原因である。斑が急速に拡大して融合し,表皮の水疱,壊死,および剥離へとつながる。診断は通常,当初の病変の外観と臨床的な症状群から明らかである。治療は支持療法であり,シクロスポリン,プラズマフェレーシスまたは免疫グロブリン静注療法,早期のコルチコステロイド療法,および腫瘍壊死因子α阻害薬が用い... さらに読む スティーブンス-ジョンソン症候群 (SJS) および中毒性表皮壊死融解症 (TEN) 中毒性表皮壊死融解症 スティーブンス-ジョンソン症候群 (SJS) および中毒性表皮壊死融解症 (TEN) スティーブンス-ジョンソン症候群と中毒性表皮壊死融解症は,重度の皮膚過敏反応である。薬剤,特にサルファ剤,抗てんかん薬,および抗菌薬が最も頻度の高い原因である。斑が急速に拡大して融合し,表皮の水疱,壊死,および剥離へとつながる。診断は通常,当初の病変の外観と臨床的な症状群から明らかである。治療は支持療法であり,シクロスポリン,プラズマフェレーシスまたは免疫グロブリン静注療法,早期のコルチコステロイド療法,および腫瘍壊死因子α阻害薬が用い... さらに読む スティーブンス-ジョンソン症候群 (SJS) および中毒性表皮壊死融解症 (TEN) を含めた一連の薬物過敏症の最軽症型と考えられていたが,現在では異なる疾患単位と考えられている。

多形紅斑の病因

大半の症例の原因は次のものである:

HSV-1の方がHSV-2より原因である場合が多いが,多形紅斑の病変がウイルスに対する特異的反応と非特異的反応のどちらであるのかは不明である。現在の仮説は,角化細胞に存在するHSVのDNA断片に対するT細胞性の細胞溶解反応によって多形紅斑が引き起こされるというものである。このように多形紅斑がHSV感染症のまれな臨床像であることを踏まえて,遺伝的素因が想定されており,いくつかのヒト白血球抗原サブタイプに病変の発生しやすさとの関連が報告されている。

HSV感染より頻度は低いが,薬剤,ワクチン,その他の細菌性またはウイルス性疾患(特にC型肝炎)が原因で生じる例もあり,全身性エリテマトーデス(SLE)で生じる可能性もある。SLE患者で生じる多形紅斑は,Rowell症候群と呼ばれることもある。

多形紅斑の症状と徴候

多形紅斑は,四肢遠位部(しばしば手掌および足底を含む)および顔面に無症状の紅斑,丘疹,膨疹,小水疱,水疱,またはこれらの組合せとして突然発症する。古典的な病変は環状で,中心部が紫色調を帯び,その外側に淡色の輪状領域があり,その周囲をピンク色の紅暈が取り囲んでいる(標的状または虹彩状病変)。分布は対称性かつ求心性であり,ときに体幹に拡大する。そう痒が生じる患者もいる。

多形紅斑の臨床像

口腔病変としては,口唇の標的状病変,口蓋および歯肉の小水疱とびらんなどがある。

多形紅斑の診断

  • 臨床的評価

多形紅斑の診断は臨床的な外観から可能であり,生検が必要になることはまれである。

鑑別診断としては,特発性 蕁麻疹 蕁麻疹 蕁麻疹は,そう痒と紅斑を伴って皮膚に生じる移動性の境界明瞭な局面で構成される。 蕁麻疹は 血管性浮腫を伴うことあるが,これは真皮深層と皮下組織の肥満細胞および好塩基球が活性化されることで生じるもので,顔面および口唇,四肢,または性器の浮腫として現れる。血管性浮腫は腸管内で発生することもあり,その場合は仙痛性の腹痛がみられる。喉頭浮腫または舌腫脹のために気道閉塞が生じると,血管性浮腫は生命を脅かす事態になることがある。... さらに読む 蕁麻疹 血管炎 血管炎の概要 血管炎は血管の炎症であり,しばしば虚血,壊死,および臓器の炎症を伴う。血管炎は,あらゆる血管,すなわち動脈,細動脈,静脈,細静脈,または毛細血管を侵すことがある。具体的な血管炎疾患の臨床像は多彩であり,侵された血管の太さおよび部位,臓器病変の範囲,ならびに血管外の炎症の程度およびパターンによって異なる。... さらに読む 血管炎の概要 水疱性類天疱瘡 水疱性類天疱瘡 水疱性類天疱瘡は,高齢患者でそう痒を伴う水疱性病変が全身に現れる慢性の自己免疫性皮膚疾患である。粘膜が侵されることはまれである。診断は皮膚生検と皮膚および血清での蛍光抗体法による。治療では,まずコルチコステロイドを外用および全身投与で使用する。ほとんどの患者に長期の維持療法が必要であり,そこでは様々な免疫抑制薬が使用される可能性がある。 水疱とは,内部を液体で満たされた隆起性の発疹のうち,直径が10mm以上のものである。... さらに読む 水疱性類天疱瘡 ,天疱瘡, 線状IgA水疱性皮膚症 線状IgA水疱性皮膚症 線状IgA水疱性皮膚症は,表皮基底膜部における免疫グロブリンA(IgA)の線状沈着によって 水疱性類天疱瘡および 疱疹状皮膚炎 と鑑別される,まれな水疱性疾患である。診断は皮膚生検と直接蛍光抗体法による。治療は外用コルチコステロイドによる。 水疱とは,内部を液体で満たされた隆起性の発疹のうち,直径が10mm以上のものである。 線状IgA水疱性皮膚症は,臨床的に小児期の水疱性疾患と成人の線状IgA水疱性皮膚症という2つの病型に分けられる。... さらに読む 線状IgA水疱性皮膚症 急性熱性好中球性皮膚症 急性熱性好中球性皮膚症 急性熱性好中球性皮膚症(acute febrile neutrophilic dermatosis)は,圧痛と硬結を伴う暗赤色の丘疹および局面を特徴とし,真皮上層には著明な浮腫が生じ,密な好中球浸潤が認められる。原因は不明である。しばしば基礎に悪性腫瘍(特に造血器腫瘍)を伴って発生する。診断は通常,皮膚生検による。治療はコルチコステロイドまたは(代替薬として)コルヒチンもしくはヨウ化カリウムの全身投与である。... さらに読む 急性熱性好中球性皮膚症 疱疹状皮膚炎 疱疹状皮膚炎 疱疹状皮膚炎は,セリアック病と強い関連がみられ,強いそう痒を伴う丘疹水疱性の皮疹を特徴とする慢性自己免疫性疾患である。典型的な所見は,強いそう痒を伴う紅斑性の蕁麻疹様病変と小水疱,丘疹,および水疱の集簇であり,通常それらは四肢伸側に左右対称に分布する。診断は皮膚生検と直接蛍光抗体法による。治療は通常,ジアフェニルスルホンまたはスルファピリジンとグルテン除去食による。 疱疹状皮膚炎は若年成人に発生することが多いが,小児や高齢者に生じること... さらに読む 疱疹状皮膚炎 などがある。

多形紅斑の治療

  • 支持療法

  • ときに抗ウイルス薬の予防投与

多形紅斑は自然消退するため,治療は通常不要である。コルチコステロイドおよび麻酔薬の外用と抗ヒスタミン薬の経口投与により,症状を軽快させ,患者を安心させることができる。再発がよくみられ,症状が年5回を超える頻度で再発したり,HSVとの関連が疑われたり,多形紅斑の再発前に毎回ヘルペスが再燃したりしている場合は,アシクロビル(400mg,経口,12時間毎),ファムシクロビル(250mg,経口,12時間毎),またはバラシクロビル(1000mg,経口,24時間毎)の経口剤による経験的な維持療法を試みてもよい。

多形紅斑の要点

  • 多形紅斑は通常,単純ヘルペスウイルス(HSV)により引き起こされるが,薬剤が原因の場合もある。

  • 標的状病変と手掌および足底の病変は,比較的特異性の高い所見である場合がある。

  • 生検が必要になることはまれである。

  • 多形紅斑の治療は支持療法であるが,HSVが原因として疑われ,頻回に再発する場合は,抗ウイルス薬の予防投与を考慮する。

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