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鼠咬症

執筆者:

Larry M. Bush

, MD, FACP, Charles E. Schmidt College of Medicine, Florida Atlantic University;


Maria T. Vazquez-Pertejo

, MD, FACP, Wellington Regional Medical Center

レビュー/改訂 2020年 11月
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鼠咬症は Streptobacillus moniliformisまたはSpirillum minusによって引き起こされる。レンサ桿菌型の症状としては,発熱,発疹,関節痛などがある。らせん菌型は回帰性の発熱,発疹,および所属リンパ節炎を引き起こす。診断は臨床的に行い,培養(レンサ桿菌型)のほか,ときに抗体価の上昇により確定する。治療はペニシリンまたはドキシサイクリンによる。

ネズミ咬傷の最大10%で鼠咬症の感染が発生する。しかしながら,ネズミ咬傷の既往がない場合もある。鼠咬症は,ネズミ咬傷が原因である場合が最も多いが,全ての齧歯類または齧歯類を捕食する肉食動物の咬傷によっても起こりうる。レンサ桿菌型とらせん菌型はどちらも,人口が密集した都市部の住民と生物医学実験室の職員が主な感染者である。

典型的な原因菌は地域によって異なる:

  • 米国および欧州:通常はStreptobacillus moniliformis

  • アジア:通常はらせん状のグラム陰性桿菌であるSpirillum minus

レンサ桿菌型の鼠咬症

レンサ桿菌型の鼠咬症は,健康なネズミの口腔咽頭に生息する多形性グラム陰性桿菌であるS. moniliformisによって引き起こされる。大流行にはS. moniliformisで汚染された無殺菌牛乳の摂取が関連しているが(ハーバーヒル熱),感染は通常,野生の大型または小型ネズミによる咬傷の結果として生じる。その他の齧歯類やイタチの関与も報告されている。

咬傷による創傷自体は通常すぐに治癒するが,1~22日(通常は10日未満)の潜伏期に続いて,ウイルス感染症様の症候群で突然発症し,悪寒,発熱,嘔吐,頭痛,背部痛,および関節痛を引き起こす。ほとんどの患者では,およそ3日後に麻疹様の点状出血性または小水疱性の発疹が手足に出現する。多くの患者では移動性多発関節痛または化膿性関節炎(通常は非対称性に大関節を侵す)が1週間以内に発生し,無治療では数日から数カ月続くことがある。発熱を数週間から数カ月にわたって不規則に繰り返すことがある。

ハーバーヒル熱(流行性関節炎性紅斑)は経皮的に感染した鼠咬症に類似するが,咽頭炎および嘔吐がより顕著となる。

らせん菌型の鼠咬症(鼠毒)

S. minusへの感染は,大型ネズミまたはときに小型ネズミによる咬傷を介して起こる。菌の摂取では発症に至らない。当初は咬傷が治癒し始めるとしても,4~28日(通常は10日以上)後に咬傷部で炎症が再発し,回帰性の発熱および所属リンパ節炎を併発する。赤褐色の,ときに蕁麻疹様の発疹が出現するが,レンサ桿菌型での発疹ほどは著明とならない。全身症状としては一般的に発熱がみられるが,関節炎はまれである。無治療では,2~4日周期の発熱を通常4~8週間繰り返すが,1年を超える発熱の反復はまれである。

鼠咬症の診断

  • 臨床的評価

  • 培養(レンサ桿菌型),ときに抗体価の上昇

鼠咬症の診断は臨床的に行う。2つの病型は通常,互いに臨床的に鑑別できる:

  • 咬傷部位:レンサ桿菌型の鼠咬症では,咬傷部位は,あっても通常は速やかに治癒し,炎症は最小限しか残らず,有意な所属リンパ節腫脹はみられないのに対し,らせん菌型の鼠咬症では,咬傷部位の創傷が持続して硬結し,また潰瘍化することがあり,所属リンパ節腫脹を伴う。

  • 関節:レンサ桿菌型の鼠咬症では,移動性多発性関節痛がしばしばにみられ,一部の患者では大関節に化膿性関節炎が発生するが,らせん菌型の鼠咬症では,関節の症候はまれである。

  • 皮膚:レンサ桿菌型の鼠咬症でみられる発疹は,斑状丘疹状であるか,点状出血または紫斑を伴い,出血性水疱が四肢末端(特に手足)に発生することがあり,非常に圧痛が強い。らせん菌型の鼠咬症でみられる発疹は赤褐色の斑であり,ときに蕁麻疹を伴う。

レンサ桿菌型の鼠咬症の診断確定

レンサ桿菌型の鼠咬症の診断は,血液または関節液からの起因菌の培養により確定される。測定可能な凝集素が第2週から第3週に発現し,その力価が上昇すれば診断上重要な所見となる。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法または酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)が役立つことがある。白血球数は6000~30,000/μL(6~30 × 109/L)である。非トレポネーマ梅毒血清試験(Venereal Disease Research Laboratory[VDRL]または迅速血漿レアギン試験[RPR])は偽陽性となることがある。

らせん菌型の鼠咬症の診断確定

らせん菌型の鼠咬症の診断は以下により確定される:

  • 血液塗抹標本または病変部もしくはリンパ節から採取した組織でのSpirillum属細菌の直接観察

  • 菌を接種したマウスの血液検体のギムザ染色または暗視野鏡検

S. minusは人工培地では培養されないため,直接観察する必要がある。白血球数は5000~30,000/μL(5~30 × 109/L)である。

鼠咬症の予後

無治療の場合,鼠咬症の致命率は約10%である。

鼠咬症の治療

  • ペニシリンまたはドキシサイクリン

レンサ桿菌型およびらせん菌型の鼠咬症の治療では,以下のいずれかを7~10日間投与する:

  • アモキシシリン1g,経口,8時間毎

  • プロカインベンジルペニシリン60万単位,筋注,12時間毎

  • ペニシリンV 500mg,経口,1日4回

ペニシリンアレルギーのある患者には,ドキシサイクリン100mg,経口,12時間毎,14日間を使用してもよい。エリスロマイシン500mg,経口,1日4回も効果的な代替治療である。

S. moniliformisによる心内膜炎のある患者には,高用量のベンジルペニシリンに加え,ストレプトマイシンまたはゲンタマイシンが必要である。

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