免疫グロブリンが正常な選択的抗体欠損症(selective antibody deficiency with normal immunoglobulins[Ig])は,IgGのサブクラスを含め,免疫グロブリンの血清中濃度が正常またはほぼ正常であるにもかかわらず,多糖体抗原への特異的な抗体応答が欠損する(タンパク質抗原には応答する)ことを特徴とする。
(免疫不全疾患の概要および免疫不全疾患が疑われる患者へのアプローチも参照のこと。)
免疫グロブリンが正常な選択的抗体欠損症(SADNI)は,原発性免疫不全症である。最も頻度が高い免疫不全症の1つであり,反復性の副鼻腔肺感染症の症状を呈する。選択的抗体欠損症は他の疾患でも起こることがあるが,SADNIは多糖体抗原に対する応答欠損のみが異常な原発性疾患である(液性免疫不全の表を参照)。遺伝形式および病態生理は明らかにされていないが,一部の所見により原因が遺伝的な分子異常である可能性が示唆される。
SADNIの中には,当初は多糖体抗原への適切な応答がみられたにもかかわらず,6~8カ月のうちに抗体価を失う病型もある(SADNIメモリーフェノタイプと呼ばれる)。
反復性の副鼻腔肺感染症に加え,ときにアトピーが示唆される症状(例,慢性鼻炎,アトピー性皮膚炎,喘息)がみられる。本疾患の重症度は様々である。
幼児では,徐々に自然消失するSADNIの病型がみられることがある。
SADNIの診断
免疫グロブリン(IgG,IgA,IgM,およびIgGのサブクラス)の濃度
多糖体ワクチンに対する応答
2歳未満の健康な小児では,反復性の副鼻腔肺感染症および多糖体ワクチンに対する弱い応答がみられることがあるため,SADNIに関する検査は患者が2歳以上でない限り行わない。その後,IgG,IgA,IgM,およびIgGのサブクラスの濃度ならびにワクチンに対する応答を測定する。臨床検査でみられる唯一の異常は,多糖体ワクチン(例,肺炎球菌ワクチン)に対する応答の欠損である。タンパク質ワクチンに対する応答は正常である。
SADNIの治療
肺炎球菌結合型ワクチン
ときに予防的抗菌薬投与およびときに免疫グロブリン補充療法
肺炎球菌結合型(例,13価)ワクチンの予防接種を行うべきである。
副鼻腔肺感染症およびアトピーの症状を積極的に治療する。まれに,感染症の再発が持続する場合,予防的抗菌薬投与(例,アモキシシリン,トリメトプリム/スルファメトキサゾール)を行うことがある。
まれに,予防的抗菌薬投与にもかかわらず感染症の再発が頻発する場合,免疫グロブリン補充療法を行うことがある。