異食症

執筆者:Evelyn Attia, MD, Columbia University Medical Center;
B. Timothy Walsh, MD, College of Physicians and Surgeons, Columbia University
レビュー/改訂 2020年 6月
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異食症とは,発達段階に不相応に(例,異食症は2歳未満の小児では診断されない),かつ文化的伝統(例,民間療法,宗教儀式,ジョージア州ピードモントでみられる粘土[カオリン]の摂取といった一般的慣習)の一部ではない状況において,栄養のない非食用物質を1カ月以上にわたり持続的に摂食する病態である。

摂食障害群に関する序論も参照のこと。)

患者は毒性のない物質(例,紙,粘土,土,毛,チョーク,糸,羊毛)を摂食する傾向がある。2歳未満の小児では,この行動は発達段階に不相応とはみなされず,2歳未満の小児はしばしば様々な物を口に入れ,飲み込もうとする。異食症は妊娠中にもよくみられる。

通常は異食症によって医学的に重大な有害事象が生じることはない。しかしながら,一部の患者では以下のような合併症が発生する:

異食症自体が社会的機能を損なうことはまれであるが,本疾患は機能を障害する他の精神障害(例,自閉スペクトラム症知的能力障害統合失調症)の患者にしばしば併発する。自傷または詐病(作為症でみられる)を引き起こそうとして物を飲み込む行為は,異食症とはみなされない。

異食症は数カ月続いた後,自然に消失することがあり,これは特に小児で多い。

異食症の診断

  • 臨床基準

異食症は以下の場合に診断される:

  • 患者が栄養のない非食用物質を1カ月以上にわたり持続的に摂食する。

  • そのような物質の摂取が患者の発達段階に対して不相応である。

  • そのような物質の摂取が文化的伝統の一部ではない。

  • 他の精神障害を有する患者に摂取がみられる場合は,特異的な治療を必要とするほどに持続的かつ重度である。

2歳未満の小児では,そのような物質を摂食することは正常な発達の一部とみなされるため,異食症の診断は下されない。

医師が異食症を疑う場合,体重減少や栄養欠乏の有無を確認するために栄養状態を評価する。

救急診療部への搬送や救急外来受診のきっかけとなる腸閉塞(例,重度の痙攣性の痛み,便秘),鉛中毒,または寄生虫感染症の症状がみられる場合に異食症が診断されることがある。

患者の症状および/または摂取した物質に基づいて検査が行われることがある。具体的には,塗料片を摂食した場合に鉛中毒がないか確認するための血液検査や,土を摂食した場合に寄生虫感染症を検出するための便検査などがある。

異食症の治療

  • ときに行動変容

  • 栄養欠乏およびその他の合併症の治療

行動変容法が役立つことがあるが,異食症に対する特異的治療法については,ほとんど分かっていない。

栄養欠乏とその他の合併症を治療する。腸閉塞に対して手術が必要になる場合もある。

異食症の要点

  • 通常は異食症によって医学的に重大な有害事象が生じることはないが,摂取物が詰まることによる消化管閉塞,塗料片を摂取することによる鉛中毒,土を摂取することによる寄生虫感染症といった合併症が発生する場合がある。

  • 異食症は,栄養のない非食用物質を1カ月以上にわたり持続的に摂食する患者で診断される;2歳未満の小児では異食症の診断は下されない。

  • 患者に体重減少と栄養欠乏の有無を確認するとともに,症状から異食症が示唆される場合には,腸閉塞,鉛中毒,寄生虫感染症の有無を確認する。

  • 行動変容法が役立つことがあるが,異食症に対する特異的治療法については,ほとんど分かっていない。

  • 必要に応じて栄養欠乏とその他の合併症を治療する。

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