下垂体腫瘍

執筆者:Steven A. Goldman, MD, PhD, Sana Biotechnology
レビュー/改訂 2021年 1月
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大半の下垂体腫瘍は腺腫である。症状としては,頭痛や内分泌障害などがあり,内分泌障害は腫瘍によるホルモンの産生またはホルモン産生組織の破壊によって生じる。診断はMRIによる。治療法としては,内分泌障害がある場合のその是正,手術,放射線療法,ドパミン作動薬などがある。

下垂体病変も参照のこと。)

下垂体および鞍上部に生じる腫瘍の大半は下垂体腺腫である。まれに下垂体腫瘍が癌腫であることがある。髄膜腫,頭蓋咽頭腫,転移性腫瘍,および類皮嚢胞もトルコ鞍部に発生することがある。

腺腫はホルモン分泌性のものもあれば,ホルモンを分泌しないものもある。分泌性腺腫は下垂体ホルモンを産生し,分泌性腺腫の多くは10mm未満である(微小腺腫)。分泌性腺腫は組織染色特性(例,酸性,塩基性,嫌色素性[非染色性])により分類できる。産生されるホルモンはしばしばこれらの特徴と相関し,例えば,好酸性腺腫は成長ホルモンを,好塩基性腺腫は副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)をそれぞれ過剰産生する。過剰産生されることが最も多いホルモンはプロラクチンである。

腫瘍が増殖して下垂体外まで進展すると,視交叉を含む視神経路を圧迫する可能性がある。腫瘍はまた,下垂体または視床下部組織を圧迫または破壊し,ホルモンの産生または分泌を障害することがある。

下垂体腫瘍の症状と徴候

下垂体腺腫が増大することで,たとえ頭蓋内圧が亢進していない場合でも頭痛が起こりうる。腫瘍が視神経路を圧迫すると,両耳側半盲,一側性視神経萎縮,対側半盲など,視覚系の症候が生じることがある(上位視路―病変部位と対応する視野欠損の図を参照)。

多くの患者がホルモンの欠乏または過剰により内分泌障害を来す:

ときに,下垂体前葉の組織を全体にわたり圧迫する下垂体腫瘍によって複数の下垂体ホルモンの産生が減少し,汎下垂体機能低下症を来すこともある。

まれに,下垂体腫瘍への出血が下垂体卒中を引き起こし,突発の頭痛,眼筋麻痺,および視力障害が生じる。

下垂体腫瘍の診断

  • スライス厚1mmのMRI

原因不明の頭痛,特徴的な視覚異常,または内分泌障害のみられる患者では,下垂体腫瘍が疑われる。スライス厚1mmで神経画像検査を行う。通常はMRIの方がCTよりはるかに感度が高く,特に微小腺腫でその傾向が強い。

下垂体腫瘍の治療

  • 可能であれば外科的切除

  • 内分泌障害に対して薬物治療

内分泌障害を治療する。

ACTH,成長ホルモン,または甲状腺刺激ホルモンを産生する下垂体腫瘍は,通常は経蝶形骨洞到達法を用いて外科的に切除される。特に手術が困難な腫瘍または多病巣性腫瘍に対して,ときに放射線療法を要する。

プロラクチンを産生する腺腫は,ドパミン作動薬(例,ブロモクリプチン,ペルゴリド,カベルゴリン)により治療するが,これにより血中濃度が低下し,しばしば腫瘍が縮小する。手術および放射線療法は通常不要である。

下垂体腫瘍の要点

  • 下垂体腫瘍の大半は腺腫であり,分泌性のこともあれば,非分泌性のこともある。

  • 分泌性腺腫は,尿崩症,乳汁漏出症,クッシング症候群,または巨人症もしくは先端巨大症を引き起こしうる。

  • 下垂体腫瘍は視神経路を圧迫し,両耳側半盲,一側性視神経萎縮,または対側半盲を引き起こしたり,下垂体組織を圧迫して下垂体ホルモンの欠乏を引き起こしたりすることがある。

  • 腫瘍を切除し,内分泌障害を治療する;プロラクチンを産生する腺腫に対する治療は,ドパミン作動薬のみで十分である可能性がある。

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