感覚の評価

執筆者:George Newman, MD, PhD, Albert Einstein Medical Center
レビュー/改訂 2020年 5月
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    鋭利な物体を触知する能力に対する最良のスクリーニング検査は,安全ピンなどの鋭利な物体で顔面,体幹,および四肢を軽くつつくことにより行い,患者に左右で同様に感じるか,感覚は鈍いか鋭いかを質問する。鋭利な物体は,血液感染(例,HIV感染症,肝炎)を避けるために使用後は破棄する。

    皮質感覚機能の評価では,患者に手掌に握らせた身近な物(例,コイン,鍵)を同定させ(立体認知),手掌に書かれた数字を識別させる(皮膚書字覚)ほか,指先を安全ピンで刺激し,刺激が1点にのみ加わったか,隣接した2点に同時に加わったかを識別させる(2点識別感覚)。

    皮質感覚機能の障害を示す別の指標として感覚消去現象(extinction)があり,これは身体の両側を同時に刺激したときに,一側の刺激を同定できないことである(片側だけを刺激したときはその刺激を同定できる)。例えば,感覚消去現象がある患者は,身体の片側を別々に検査されたときはそれぞれの刺激を感じとることができるにもかかわらず,両側を同時に検査されると,片側のみ刺激を感じないと報告する。

    温度覚は,通常は冷たい音叉を用いて検査する。

    関節位置覚は,患者の手指の末節骨,次いで足趾を数度上下に動かして検査する。患者が閉眼したままでこれらのわずかな動きを識別できなければ,次に近位の関節での検査(例,足趾の運動が知覚されない場合は足関節)に移る前に,より大きな角度で上下させる。

    偽アテトーゼは,重度の位置覚低下によって生じる,四肢を蛇のようにねじる不随意運動のことであり,大脳基底核を含めた運動路は保たれている。四肢の位置を脳が認識できずに四肢が勝手に動いてしまうため,患者は四肢の動きを制御するのに視覚を用いなければならない。典型例では,患者は閉眼時に四肢の位置を認識することができない。

    閉眼した状態で足をそろえて直立できない場合(ロンベルク試験)は,下肢の位置覚異常が示唆される。小脳疾患がある場合は,患者に両足を開いたまま立たせ,倒れないで直立できる範囲でできるだけ両足を近づけた後,初めて閉眼させる。まれに,重度の両側性前庭機能障害(例,アミノグリコシド系薬剤の毒性)によって陽性になることがある。

    振動覚の検査では,検者は自分の指を患者の遠位指節間関節の下に置き,128Hzの音叉を軽く叩いて関節の上にあてがう。検者は患者の関節を介して振動を感じるため,正常であれば患者は検者とほぼ同時に振動が終わるのを認識するはずである。

    軽い触覚は綿球を使って検査する。

    感覚が障害されていれば,その解剖学的パターンから病変の局在が示唆される( see figure 皮膚分節 figure numonly 皮神経の分布:上肢,および figure numonly 皮神経の分布:下肢):

    • 手袋靴下型の分布:遠位部の末梢神経

    • 単一の皮膚分節または単一の神経枝の支配領域:単一の神経(多発性単神経炎)または神経根(神経根障害

    • 1肢における斑状の感覚,運動,および反射障害:腕神経叢または骨盤神経叢

    • 特定の皮膚分節以下にみられる感覚低下:脊髄

    • サドル領域の感覚消失:馬尾

    • 顔面と体部で交代性の分布:脳幹

    • 片側感覚消失:脳

    • 正中線上で分かれる片側感覚消失:視床または機能性(精神障害)

    病変の局在は,筋力低下と反射の変化が類似のパターンに従っているかどうかを判断することで確定される。

    神経学的診察に関する序論も参照のこと。)

    皮膚分節

    皮神経の分布:上肢

    (Redrawn from Anatomy,ed. 5, edited by R O’Rahilly. Philadelphia, WB Saunders Company, 1986; used with permission.)

    皮神経の分布:下肢

    (Redrawn from Anatomy,ed. 5, edited by R O’Rahilly. Philadelphia, WB Saunders Company, 1986; used with permission.)

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