(間質性肺疾患の概要 間質性肺疾患の概要 間質性肺疾患は,肺胞中隔の肥厚,線維芽細胞の増殖,コラーゲン沈着,および(疾患が進行した場合は)肺線維化を特徴とする,多様な疾患の集合である。間質性肺疾患は様々な基準によって分類しうる(例,急性か慢性か,肉芽腫性か非肉芽腫性か,原因がわかっているか不明か,肺原発性か全身性疾患に続発するものか,喫煙歴があるかないか)。... さらに読む および ランゲルハンス細胞組織球症 ランゲルハンス細胞組織球症 ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)は,臓器へ局所性またはびまん性で浸潤した樹状単核球の増殖性疾患である。ほとんどの症例は,小児にみられる。症状として,肺浸潤,骨病変,発疹のほか,肝臓,造血,内分泌の機能障害がみられる場合がある。診断は生検に基づく。予後不良の予測因子として,年齢2歳未満と播種があり,特に造血系,肝臓,脾臓,またはこれら複数の部位への播種が重要である。治療法としては,支持療法に加え,化学療法または病変の範囲により適応とな... さらに読む も参照のこと。)
肺ランゲルハンス細胞組織球症は,CD1a陽性の単クローン性ランゲルハンス細胞(組織球の一種)が,リンパ球,形質細胞,好中球,および好酸球を伴って細気管支および肺胞間質に浸潤する疾患である。PLCHは ランゲルハンス細胞組織球症 ランゲルハンス細胞組織球症 ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)は,臓器へ局所性またはびまん性で浸潤した樹状単核球の増殖性疾患である。ほとんどの症例は,小児にみられる。症状として,肺浸潤,骨病変,発疹のほか,肝臓,造血,内分泌の機能障害がみられる場合がある。診断は生検に基づく。予後不良の予測因子として,年齢2歳未満と播種があり,特に造血系,肝臓,脾臓,またはこれら複数の部位への播種が重要である。治療法としては,支持療法に加え,化学療法または病変の範囲により適応とな... さらに読む の1つの発現形態であり,これは臓器を単独に(最も顕著なのは肺,皮膚,骨,下垂体,およびリンパ節)または同時に侵しうる疾患である。PLCHは ≥ 85%で単独に起こる。
PLCHの病因は不明であるが,喫煙する20~40歳の白人に専ら発生する。発生率は男性と女性で同じである。女性では発症がより遅いが,性別による発症年齢の違いは喫煙行動の違いを反映している可能性がある。病態生理学的には,タバコの煙に反応して肺胞マクロファージからサイトカインおよび増殖因子が分泌され,それに反応してランゲルハンス細胞の動員および増殖が起こっている可能性がある。
症状と徴候
肺ランゲルハンス細胞組織球症の典型的な症状および徴候は,呼吸困難,乾性咳嗽,疲労,発熱,体重減少,および胸膜性胸痛である。患者の10~25%が突発性に 自然気胸 気胸 気胸は胸腔内に空気が存在することであり,部分的または完全な肺虚脱を引き起こす。気胸は,自然に起こることもあれば,外傷または医療行為が原因で起こることもある。診断は,臨床基準および胸部X線に基づく。ほとんどの気胸は経カテーテル的吸引または胸腔ドレナージを必要とする。 原発性自然気胸は,肺の基礎疾患がなく,典型的には,背が高く痩身の10代および20代の若年男性に発生する。原発性自然気胸は,喫煙によって生じた,または患者が遺伝的にもつ,胸膜下... さらに読む を発症する。
約15%の患者は無症状で,別の理由で撮影された胸部X線で偶然に疾患が発見される。
骨嚢胞による骨痛(18%),発疹(13%),および 中枢性尿崩症 中枢性尿崩症 尿崩症は,視床下部-下垂体疾患によるバソプレシン(抗利尿ホルモン[ADH])の欠乏(中枢性尿崩症)または腎臓のバソプレシンに対する抵抗性(腎性尿崩症)に起因する。多尿および多飲が発生する。水制限試験で尿が最大限に濃縮されないことによって診断がつく;バソプレシン値および外因性バソプレシンに対する反応が,中枢性尿崩症と腎性尿崩症との鑑別に役立つ。治療はデスモプレシンによる。非ホルモン療法としては,利尿薬(主にサイアザイド系)の使用や,クロル... さらに読む による多尿(5%)は,肺外病変で最も頻度の高い所見であり,患者の最大15%に生じるが,PLCHの主症状として現れることはまれである。PLCHの徴候はほとんどない;身体診察の結果は通常正常である。
診断
高分解能CT(HRCT)
肺機能検査
ときに気管支鏡検査および生検
肺ランゲルハンス細胞組織球症は,病歴および胸部X線に基づいて疑われ,HRCTならびに気管支鏡検査と合わせて実施する生検および気管支肺胞洗浄によって確定される。
胸部X線上では,古典的には中肺野および上肺野に左右対称性の結節陰影がみられ,嚢胞性変化を伴い,肺容量は正常または増加している。肺底部はしばしば正常である。見かけ上は 慢性閉塞性肺疾患 慢性閉塞性肺疾患(COPD) 慢性閉塞性肺疾患(COPD)は,毒素の吸入(しばしばタバコ煙)に対する炎症反応によって引き起こされる気流制限である。比較的まれな原因として,非喫煙者におけるα1-アンチトリプシン欠乏症および様々な職業曝露がある。症状は数年かけて発現する湿性咳嗽および呼吸困難であり,一般的な徴候には呼吸音の減少,呼気相の延長,および喘鳴などがある。重症例で... さらに読む (COPD)または リンパ脈管筋腫症 リンパ脈管筋腫症 リンパ脈管筋腫症(LAM)は,肺,肺血管,リンパ管,および胸膜に及ぶ平滑筋細胞の緩徐な増殖である。まれな疾患で,専ら若年女性に起こる。症状は,呼吸困難,咳嗽,胸痛,および喀血である;自然気胸がよくみられる。症状および胸部X線所見に基づいて本症を疑い,高分解能CTで診断を確定する。予後は不明であるが,この疾患は緩徐に進行し,しばしば何年間もかけて患者に呼吸不全や死をもたらす。治療はシロリムスまたは肺移植による。... さらに読む に類似することがある。
中葉および上葉における嚢胞(しばしば奇妙な形)および/または間質の肥厚を伴う結節のHRCT上での確認が,PLCHの診断に有用であると考えられている。
肺機能検査所見は,正常,拘束性,閉塞性,または混合性であり,疾患経過中のどの時点で検査を行うかによって異なる。最も一般的には,肺拡散能(DLCO)が減少し,また運動能力が低下する。
画像検査および肺機能検査で診断がつかない場合,気管支鏡検査および生検が適応となる。気管支肺胞洗浄液中のCD1a細胞が > 5%であれば,この疾患が強く示唆される。生検では,ランゲルハンス細胞の増殖がみられ,ときに細胞性および線維性結節の中心に好酸球の集積を伴い(好酸球性肉芽腫という古い用語の起源),これが星状構造を示すことがある。免疫組織化学染色では,CD1a,S-100タンパク質およびHLA-DR抗原に対して陽性である。
予後
症状が非常に軽い肺ランゲルハンス細胞組織球症では症状の自然消退が起こることがある;5年生存率は約75%,生存期間の中央値は12年である。ただし,疾患が緩徐に進行する症例もあり,その場合の臨床マーカーには以下のものがある:
喫煙の継続
非常に若いまたは非常に高齢
多臓器病変
持続する全身症状
胸部X線で多数の嚢胞
DLCO低値
1秒量(FEV1)/努力肺活量(FVC)の比が低い(< 66%)
残気量(RV)/全肺気量(TLC)の比が高い(> 33%)
コルチコステロイドの長期使用の必要性
治療
禁煙
おそらくコルチコステロイドおよび細胞傷害性薬剤または肺移植
肺ランゲルハンス細胞組織球症の主な治療は 禁煙 禁煙 ほとんどの喫煙者は禁煙したいと願い,それを試みているが,成功率は限られている。効果的な介入としては,禁煙カウンセリングとバレニクリン,ブプロピオン,ニコチン代替製品などの薬剤投与がある。 米国の喫煙者の約70%は,喫煙をやめることを望んでおり,少なくとも1回は禁煙を試みたことがあると言う。ニコチンの離脱症状は,禁煙の重大な障壁となりうる。 ( タバコおよび ベイピングも参照のこと。)... さらに読む であり,患者の最大3分の1で症状の消失につながる。
有効性は証明されてないが,コルチコステロイドおよび細胞傷害性薬剤の経験的な使用が一般的である。
他の点では健康な患者で呼吸機能不全の加速的な進行がみられれば 肺移植 肺移植および心肺同時移植 肺移植または心肺同時移植は,呼吸機能不全または呼吸不全があり,最適な医療にもかかわらず死亡リスクが残る患者における選択肢の1つである。 最も頻度が高い肺移植の適応は以下のものである: COPD 特発性肺線維症 嚢胞性線維症 さらに読む が選択肢となるが,患者が喫煙を継続または再開すれば,移植した肺で疾患が再発することがある。
要点
肺ランゲルハンス細胞組織球症では,肺胞間質および細気管支におけるランゲルハンス細胞の単クローン性増殖がみられる。
20~40歳の喫煙者で,胸部X線上で上肺野および中肺野に,嚢胞性変化を伴う,両側性左右対称性の結節陰影を認める場合は,PLCHを疑う。
診断は高分解能CT,または結果が不確実な場合は肺生検により確定する。
禁煙を推奨する。
コルチコステロイドおよび細胞傷害性薬剤,また禁煙がなされた場合は肺移植も考慮する。