先天異常あるいは先天奇形とは、出生前の段階で生じた身体的な異常のことです。「先天」とは、「生まれたときから存在する」という意味です。(顔面、骨、関節、および筋肉の先天異常に関する序 顔面、骨、関節、および筋肉の先天異常に関する序 先天異常あるいは先天奇形とは、出生前の段階で生じた身体的な異常のことです。「先天」とは、「生まれたときから存在する」という意味です。 顔面および四肢の先天異常はかなり多くみられます。体の特定の部分、例えば口( 口唇裂または 口蓋裂[こうがいれつ])や足( 内反足)だけが侵されることがあります。多くの異常を伴う遺伝性症候群の一部である場合も... さらに読む も参照のこと。)
四肢の形成に異常がみられることがあります。例えば、遺伝的異常のため、手や前腕の骨が欠損していたり(染色体異常 染色体異常症と遺伝子疾患の概要 染色体は、細胞の中にあって複数の遺伝子が記録されている構造体です。 遺伝子とは、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパク質の設計情報が記録された領域で、物質としては DNA(デオキシリボ核酸)で構成されています(遺伝学についての考察は 遺伝子と染色体)。 人間の正常な細胞は、精子と卵子を除いて、いずれも23対、計46本の染色体をもっていま... さらに読む を参照)、ときには手や足の一部または全部が欠損している場合があります。四肢の正常な発達が子宮内で中断することもあります。羊膜索症候群では、羊膜腔(子宮内で発育中の胎児の周囲を満たす羊水が入っている袋)から出た細い組織の束によって腕や脚が締めつけられ、その発育に異常が起こります。
四肢の異常は 先天性感染症 新生児の感染症の概要 感染症はどの年齢の人にも発生しますが、新生児、特に 早産児は免疫系が未発達で感染症になりやすいため、特に大きな懸念事項となります。特定の防御 抗体が胎盤(胎児に栄養を供給する器官)を介して母親から胎児に移行するとはいえ、胎児の血液中の抗体のレベルは感染症を阻止できるほど高くないためです。... さらに読む や 催奇形物質 妊娠中の曝露 危険因子には妊娠前から存在するものがあり、そのような危険因子としては以下のものがあります。 特定の 身体的な特徴(年齢や体重など) 帝王切開が必要となったなど、 過去の妊娠時の問題 妊娠前から存在する特定の病気 胎児に害のある物質への 曝露 さらに読む (母親が妊娠中に接触し先天異常を引き起こす有害物質)によって引き起こされることもあります。1950年代後期から1960年代初期にかけて一部の妊婦がつわりのために服用したサリドマイドという薬剤は、四肢に様々な異常を引き起こしました。たいていは短くて変形した未発達の腕や脚が生じ、機能が限られていました。
腕と脚の異常は水平方向にも(例えば、腕が正常より短い場合)、あるいは垂直方向にも(例えば、腕の親指側が肘から親指にかけて異常だが、小指側は正常である場合)起こります。
腕や脚に先天異常が1つある小児には、別の異常もみられる傾向があります。
四肢の欠損または形成不全の診断
出生前には、超音波検査
出生後には、X線検査
ときに遺伝子検査
出生前に、これらの異常を 超音波検査 超音波検査 出生前診断は、遺伝性または自然発生的な特定の遺伝性疾患などの特定の異常がないかどうか、出生前に胎児を調べる検査です。 妊婦の血液に含まれる特定の物質の測定に加え、超音波検査を行うことで、胎児の遺伝子異常のリスクを推定できます。 こうした検査は、妊娠中の定期健診の一環として行われることがあります。 検査の結果、リスクが高いことが示唆された場合は、胎児の遺伝物質を分析するために羊水穿刺や絨毛採取などの検査を行うことがあります。... さらに読む で診断できることがあります。
出生後には、どの骨に異常があるかを調べるために、一般的にはX線検査を行い、場合によっては他の画像検査を行います。
四肢の先天異常に遺伝子の異常が関与している可能性があるため、患児は遺伝専門医の診察を受けるべきです。遺伝専門医とは、遺伝学(遺伝子と、特定の性質や形質が親から子にどのように受け継がれるかについての科学)を専門とする医師です。乳児の血液サンプルの遺伝子検査を行い、染色体や遺伝子の異常がないか調べることがあります。この検査は、特定の遺伝性疾患が原因なのかどうかを判断し、他の原因を否定するために役立ちます。
四肢の欠損または形成不全の治療
義肢
小児はしばしば奇形の四肢や義肢を使うことにうまく適応します。
多くの場合、義手や義足(義肢 義肢の概要 義肢は体の(通常は切断されたために)失われた部分の代わりとなる人工の四肢(腕や脚)です。 腕や脚の切断の主な原因は以下のものです。 血管疾患(特に 糖尿病や 末梢動脈疾患に起因するもの) がん けが(例えば、自動車事故、仕事上の事故、軍での戦闘) さらに読む )を装着して、奇形の四肢を使いやすくしたり、ほとんどまたは完全に欠損している四肢の代わりにすることができます(たいていは、小児が自力で座れる場合に行います)。義肢を早期に装着してそれが発達の過程で体と身体像に不可欠な一部となった場合に、小児は最もうまく義肢を使いこなします。乳児期の義肢はできるだけ単純で耐久性の高いものにするべきです。例えば、乳児に筋電義手ではなくフックを装着することができます。
腕や脚の先天異常をもって生まれた小児のほとんどは、普通の生活を送ります。
遺伝子の異常が特定された場合、患者がいる家族には遺伝カウンセリングが有益なことがあります。