脳や脊髄の先天異常は、胎児発育の早期または後期に発生します。
典型的な症状としては、知的障害、麻痺、失禁、体の一部の感覚消失などがあります。
診断はCT検査およびMRI検査の結果に基づいて下されます。
妊娠前と妊娠中に葉酸を摂取することで、特定の種類の異常が起きるリスクを減らすことができます。
手術で修復できる異常もありますが、脳や脊髄の損傷は通常永続的です。
脳と脊髄に生じる可能性がある多数の先天異常のうち、 神経管閉鎖不全 神経管閉鎖不全と二分脊椎 神経管閉鎖不全は脳、脊椎、脊髄に生じる先天異常の一種です。 神経管閉鎖不全により、神経損傷、学習障害、麻痺、死亡が起こることがあります。 血液検査、羊水検査、または超音波検査の結果に基づいて出生前から診断できます。 出生後、医師は身体診察を行い、追加の画像検査を行う場合もあります。... さらに読む として知られる異常は妊娠1週目のうちに起こります。 水頭症 水頭症 水頭症とは、脳内の正常な空間(脳室)や、脳を覆う組織の内側の層および中間の層の間(くも膜下腔)に液体が過剰にたまった状態です。過剰に貯まった液体によって、通常は頭囲の拡大と発達異常が生じます。 脳内の正常な空間(脳室)にある液体が排出されないと水頭症が起こります。 この液体の蓄積には、先天異常、脳内出血、脳腫瘍などの多くの原因があります。... さらに読む や 小頭症 小頭症 小頭症とは、頭が異常に小さい状態のことです。たいていの場合、脳が小さく不完全に発達したことが原因で頭が小さくなります。 小頭症は遺伝子異常や、感染症、脳の異常など、様々な病態によって引き起こされます。 重度の小頭症がある新生児には、通常は脳損傷の症状がみられます。 診断は、出生前であれば超音波検査によって、出生後であれば頭囲の測定によって... さらに読む など、その他の異常は妊娠の後期に発生します。
脳や脊髄の先天異常には、これまで知られていなかった多くの遺伝的要因を含め、多くの原因があります。
脳と脊髄の先天異常の症状
脳と脊髄に先天異常がある小児の多くでは、頭部や背中にも目に見える異常があります。脳障害や脊髄障害の症状が現れるのは、先天異常が脳や脊髄の組織に影響を与える場合です。脳が損傷を受けると死に至る場合や、 知的障害 知的能力障害 知的能力障害(一般に知的障害とも呼ばれます)とは、出生時や乳児期の初期から知能の働きが明らかに標準を下回り、正常な日常生活動作を行う能力が限られている状態です。 知的能力障害は、遺伝的な場合もあれば、脳の発達に影響を与える病気の結果として起こる場合もあります。 知的能力障害がある小児のほとんどでは、就学前まで目立った症状が現れません。... さらに読む 、 けいれん 小児のけいれん発作 けいれん発作とは、脳の電気的活動が周期的に乱れることで、一時的にいくらかの脳機能障害が起きる現象です。 年長の乳児や幼児にけいれん発作が起きた場合には、全身または体の一部がふるえるなどの典型的な症状が多くの場合みられますが、新生児の場合は、舌を鳴らす、口をもぐもぐさせる、周期的に体がだらんとなるなどの変化しかみられない場合があります。... さらに読む 、麻痺などの軽症または重症の障害を引き起こす場合があります。脊髄が損傷を受けると麻痺、 失禁 小児における尿失禁 尿失禁の定義は、トイレトレーニングが終了した後に、意図しない排尿が1カ月に2回以上の頻度で起こることとされています。尿失禁は以下の状況で起こります。 日中(日中の尿失禁または昼間遺尿症) 夜間(夜間の尿失禁、遺尿症、または夜尿症) 両方(日中と夜間両方の尿失禁) トイレトレーニングの期間や、小児が尿禁制(排尿をコントロールできること)を獲... さらに読む 、異常のある部分より下の神経がつかさどる部位の感覚消失などが起こります(脊髄の損傷領域とその影響 脊髄の損傷領域とその影響 )。
脳と脊髄の先天異常の診断
出生前:羊水穿刺、出生前超音波検査または胎児MRI検査
出生後:CTまたはMRI検査
出生前では、 羊水穿刺 羊水穿刺 出生前診断は、遺伝性または自然発生的な特定の遺伝性疾患などの特定の異常がないかどうか、出生前に胎児を調べる検査です。 妊婦の血液に含まれる特定の物質の測定に加え、超音波検査を行うことで、胎児の遺伝子異常のリスクを推定できます。 こうした検査は、妊娠中の定期健診の一環として行われることがあります。... さらに読む (胎児の周囲にある液体のサンプルを採取する)や 出生前超音波検査 超音波検査 出生前診断は、遺伝性または自然発生的な特定の遺伝性疾患などの特定の異常がないかどうか、出生前に胎児を調べる検査です。 妊婦の血液に含まれる特定の物質の測定に加え、超音波検査を行うことで、胎児の遺伝子異常のリスクを推定できます。 こうした検査は、妊娠中の定期健診の一環として行われることがあります。... さらに読む 、胎児MRIと呼ばれる新しい検査を行うことで、妊娠中に多くの先天異常を特定することが可能になります。異常が特定された場合、次の妊娠時にも子どもに同じような異常がみられるリスクが高いことから、両親に対して心理的な支援や遺伝カウンセリングを行う必要があります。
出生後に、 CT検査 CT検査 CT検査(以前はCAT検査とよばれていました)では、X線源とX線検出器が患者の周りを回転します。最近の装置では、X線検出器は4~64列あるいはそれ以上配置されていて、それらが体を通過したX線を記録します。検出器によって記録されたデータは、患者の全周の様々な角度からX線により計測されたものであり、直接見ることはできませんが、検出器からコンピ... さらに読む と MRI検査 MRI検査 MRI検査は、強い磁場と非常に周波数の高い電磁波を用いて極めて詳細な画像を描き出す検査です。X線を使用しないため、通常はとても安全です。( 画像検査の概要も参照のこと。) 患者が横になった可動式の台が装置の中を移動し、筒状の撮影装置の中に収まります。装置の内部は狭くなっていて、強い磁場が発生します。通常、体内の組織に含まれる陽子(原子の一... さらに読む を行うことで、脳と脊髄の内部構造の画像から異常を発見できます。
脳と脊髄の先天異常の予防
葉酸
妊娠前と妊娠中に 葉酸 葉酸欠乏症 葉酸欠乏症はよくみられます。体は少量の葉酸しか蓄えていないため、葉酸が少ない食事を続けていると、数カ月以内に葉酸欠乏症になります。 生の葉野菜や柑橘類を十分に摂取しないと、葉酸欠乏症になることがあります。 貧血が生じて、疲労、蒼白、易怒性、息切れ、めまいが現れることがあります。... さらに読む (ビタミンB群の1つ)を摂取することで、一部の神経管閉鎖不全のリスクを減らすことができます。このため妊娠可能年齢の女性には、妊娠を希望している場合葉酸の摂取が勧められます。
脳と脊髄の先天異常の治療
手術
肉眼で見える開口部や腫れを起こすような異常は外科的に修復できます。先天異常による脳や脊髄の損傷は通常は治癒しませんが、手術によりさらなる合併症を予防して機能を改善させることができます。迅速に手術を行うことで、ほぼ正常に発育する小児もいます。
さらなる情報
二分脊椎症協会(Spina Bifida Association)
マーチ・オブ・ダイムズ(March of Dimes)