家族性周期性四肢麻痺

執筆者:Michael Rubin, MDCM, New York Presbyterian Hospital-Cornell Medical Center
レビュー/改訂 2022年 1月
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家族性周期性四肢麻痺は、まれな遺伝性疾患で、筋力低下と麻痺が突然生じる発作を引き起こします。4つの病型があり、細胞におけるナトリウムやカリウムなどの電解質の出入りに異常が生じます。

  • 筋肉が刺激に対して正常に反応しませんが、その際、通常は血液中のカリウム濃度が低すぎるか高すぎるかのいずれかです。

  • 筋力低下は断続的で、主に腕や脚に現れ、多くの場合、運動のしすぎまたは炭水化物の摂取が多すぎるか少なすぎることによって発生します。

  • 診断は、症状、カリウムの血中濃度の測定結果、運動負荷試験の結果に基づいて下されます。

  • 発作を引き起こす誘因となるものを避け、特定の薬を服用することで、効果的に発作を予防することができます。

家族性周期性四肢麻痺の発作は、血液に含まれるカリウムの量に応じて起こります。カリウムは電解質の1つで、細胞、神経、筋肉が正常に機能するのに必要です(体内でのカリウムの役割の概要を参照)。家族性周期性四肢麻痺の発作中は、筋肉が正常な神経信号に反応せず、電子機器による人為的な刺激にさえも反応しません。

家族性周期性四肢麻痺は常染色体優性遺伝疾患であり、片方の親がこの病気に罹患しているだけでこの形質が子孫に引き継がれます。

この病気の詳細な病型は家系によって異なります。4つの病型があります。

  • 低カリウム血性型

  • 高カリウム血性型

  • 甲状腺中毒性型

  • アンデルセン-タウィル症候群

低カリウム血性型では、血液中のカリウム濃度が低いこと(低カリウム血症)で麻痺が生じます。

高カリウム血性型では、血液中のカリウム濃度が高いこと(高カリウム血症)で麻痺が生じます。

甲状腺中毒性型では、血液中のカリウム濃度が低いことで麻痺が生じ、患者には(甲状腺機能亢進症)の徴候もみられます。

アンデルセン-タウィル症候群では、カリウム濃度が高い場合も低い場合も正常な場合もあります。

家族性周期性四肢麻痺の症状

筋力低下の発作中、患者の意識は完全にはっきりしたままです。眼や顔の筋肉には異常が生じません。筋力低下は、特定の筋肉のみに生じることも、四肢のすべてに生じることもあります。

低カリウム血性型では、最初の発作は一般に16歳までにみられ、20代になることもありますが、30歳までには必ずみられます。発作は最大で24時間続きます。激しい運動を行った翌日に目を覚ますと筋力低下の発作が起きていることがよくあります。筋力低下は、軽度で特定の筋肉群のみに生じることもあれば、四肢のすべてに生じることもあります。しかし、炭水化物を豊富に含む食事をした場合や(数時間後の場合もあれば、その翌日の場合もある)、精神的または身体的ストレス、飲酒、冷気にさらされることでも、発作が起こることがあります。炭水化物を食べたり激しい運動をしたりすると、細胞内に糖が運ばれます。この糖とともにカリウムが運ばれる結果、血液中と尿中のカリウム濃度が低下します。

高カリウム血性型では、多くの場合、10歳までに発作が現れます。発作は15分から1時間続きます。低カリウム血性型より筋力低下が軽い傾向があります。絶食、運動直後の休息、または食後の運動が発作の引き金になることがあります。筋強直(筋肉が収縮した後に緩める能力に遅れがあるために筋肉が非常に硬くなること)がよくみられます。まぶたの筋強直しか症状がみられないことがあります。

甲状腺中毒性型では、筋力低下の発作は数時間から数日間続き、通常は低カリウム血性型と同様に、運動、ストレス、または炭水化物を豊富に含む食事が発作の引き金になります。患者には不安、振戦(ふるえ)、動悸、暑さへの耐性低下など、甲状腺機能亢進症の症状がみられます。

アンデルセン-タウィル症候群では、筋力低下の発作は通常20歳までに現れ始め、運動後の休息が発作の引き金になります。発作は数日間続くことがあり、毎月起こることもあります。この病型の患者では、脊柱の異常な弯曲(脊柱側弯症)、手足の指の癒着(合指症)、手足の指の位置異常(斜指症)、小さなあご(小顎症)、耳介低位など、他の病気もみられることがあります。心臓の異常が、不整脈や突然死のリスク増加の原因になることがあります。

家族性周期性四肢麻痺の診断

  • 発作の説明

  • 発作中の血液中のカリウム濃度

  • 運動負荷試験

  • 遺伝子検査

家族性周期性四肢麻痺の診断を下すのに最良の手がかりになるのは、典型的な発作についての患者の説明です。可能であれば、発作中に血液を採取して、カリウムの濃度を測定します。血液中のカリウム濃度が異常であれば、通常は追加検査を行って、その異常値が他の原因によるものではないことを確認します。

過去には、負荷試験の結果に基づいて診断が下されていました。負荷試験では、血液中のカリウム濃度を上昇または低下させる薬を静脈から投与して、発作が起きるかどうかを確かめます。しかし、負荷試験は呼吸筋の麻痺や不整脈などの重篤な副作用を引き起こすことがあります。そのため、負荷試験はより安全な運動負荷試験に取って代わられました。運動負荷試験では、1つの筋肉を2~5分間激しく運動させ、筋力が低下するかどうかを確かめます。医師は運動の前後に筋肉の電気的活動を記録して、筋肉が侵されていないか確認します。

予防と治療

  • 病型によって異なる

低カリウム血性型の患者では、糖を含まない溶液に塩化カリウムを加えたものを、発作中に飲ませたり静脈に注射したりすることがあります。通常は、1時間以内に症状がかなり改善されます。低カリウム血性型の患者は、炭水化物や塩分を豊富に含む食事や安静後の飲酒を避け、激しい運動も控えるべきです。アセタゾラミドという血液中の酸性度(pH)を変化させる薬が、発作の予防に役立つことがあります。

高カリウム血性型の患者では、軽い運動を行い炭水化物を豊富に含む食事をとることで発作を阻止することができます。発作が長引く場合は、サイアザイド系利尿薬や吸入用のサルブタモールなどの薬がカリウム濃度を下げるのに役立ちます。 発作が重度の場合は、カルシウムまたはインスリン、ブドウ糖を静脈から投与されることがあります。患者は、炭水化物を豊富に含みカリウムが少ない食事を頻繁にとり、絶食、食後の激しい運動、冷気にさらされることを避けることで発作を予防できます。

甲状腺中毒性型の患者には、塩化カリウムを投与し(低カリウム血性型の場合と同様)、重い発作中の血液中のカリウム濃度を医師が注意深くモニタリングします。発作を予防するために、甲状腺の機能を正常に保つ薬やベータ遮断薬(プロプラノロールなど)が投与されます。

アンデルセン-タウィル症候群の患者では、運動や活動のレベルを厳密にコントロールするといった生活習慣の変化と、アセタゾラミドの使用によって、発作が予防できることがあります。心臓の症状を抑えるために、ペースメーカー植込み型除細動器が必要になることがあります。

さらなる情報

役立つ可能性がある英語の資料を以下に示します。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

  1. 米国筋ジストロフィー協会(Muscular Dystrophy Association):周期性四肢麻痺とともに生きる人向けの研究、治療、技術、支援に関する情報

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