Msd マニュアル

Please confirm that you are not located inside the Russian Federation

honeypot link

早産児

執筆者:

Arcangela Lattari Balest

, MD, University of Pittsburgh, School of Medicine

レビュー/改訂 2022年 10月
プロフェッショナル版を見る
やさしくわかる病気事典
本ページのリソース

早産児とは、在胎37週未満で生まれた新生児のことです。生まれた時期によっては、早産児の臓器は発達が不十分で、子宮外で機能する準備がまだできていないことがあります。

  • 早産の既往、多胎妊娠、妊娠中の栄養不良、出生前ケアの遅れ、感染症、生殖補助医療(体外受精など)、高血圧などがある場合、早産のリスクが高くなります。

  • 多くの臓器の発達が不十分であるため、早産児では呼吸したり哺乳したりすることが難しく、脳内出血、感染症や他の異常が起こりやすくなります。

  • 予定日より非常に早く生まれた、出生体重も非常に低い早産児では、発達障害などの異常がみられるリスクが極めて高くなります。

  • 一部の早産児は後遺症がある状態で成長しますが、生存児の大半では軽度の問題しかないか、長期的な問題は残りません。

  • 早い時期から出生前ケアを受けることで早産のリスクが低下する可能性があります。

  • 母親に子宮の収縮を鈍らせたり止めたりする薬を投与することで、早産を短期間遅らせることがときに可能です。

  • 非常に早い時期の早産が予想される場合、母親にコルチコステロイドを注射して胎児の肺の発達を促すとともに、脳内での出血(脳室内出血)の予防に役立てます。

在胎期間とは、胎児が子宮の中にいた期間のことです。母親の最終月経開始日と分娩日の間の週数を表します。この期間は多くの場合、例えば妊娠期間に関してさらなる情報が得られる初期の超音波検査の結果など、医師が得るその他の情報に基づいて調整されます。在胎期間が40週間になる日が、出産予定日です。

新生児は在胎期間によって分類され、在胎37週未満で生まれた場合は早産児です。早産児はさらに以下のように分類されます。

  • 超早産児(extremely preterm):在胎28週未満で出生

  • 極早産児(very preterm):在胎28週以上、32週未満で出生

  • 中等度早産児(moderately preterm):在胎32週以上、34週未満で出生

  • 後期早産児(late preterm):在胎34週以上、37週未満で出生

米国では、乳児の約10人に1人が正期産の時期より前に生まれます。未熟性が高いほど、重篤かつ生命を脅かすような合併症のリスクも高くなります。

超早産での出生は、新生児の死亡原因の中で最も多くみられるものです。極早産児として生まれた新生児では、長期的な問題を抱えるリスクが上昇し、特に 発達の遅れ 発達障害の定義 発達障害は神経発達障害と呼ぶ方が適切です。神経発達障害は、特定の技能や一連の情報の獲得、保持、応用を妨げることがある神経学的病態です。神経発達障害によって、注意力、記憶力、知覚、言語、問題解決能力、対人関係に支障が出ることがあります。こうした障害は、軽度で行動介入と教育的介入によって容易に対処できる場合もありますが、重度でそのような介入以... さらに読む 脳性麻痺 脳性麻痺 脳性麻痺とは、運動困難と筋肉のこわばり(けい縮)を特徴とする症候群です。原因は、出生前の脳の発育過程で生じた脳の奇形か、出生前、分娩中、または出生直後に起きた脳損傷です。 脳性麻痺の原因としては、酸素欠乏や感染によって生じる脳の損傷や、脳の奇形などがあります。 症状の程度は様々で、ぎこちなさがかろうじて分かる程度のこともあれば、脚や腕の動... さらに読む 学習障害 学習障害 学習障害がある小児は、注意力、記憶力、論理的思考力が欠けているため、特定の技能や情報を習得したり、記憶したり、幅広く使ったりすることができず、学業成績にも影響が出ます。 学習障害の小児は、色の名前や文字を覚えたり、数を数えたり、読み書きを習得したりすることが遅れる場合があります。 学習障害の小児は、学習の専門家のもとで一連の学力検査や知能検査を受け、医師が確立された基準を適用して診断を下します。... さらに読む がみられます。とはいえ、早産児の大半は長期的な問題を抱えることなく成長します。

早産の原因

早産の原因はしばしば不明です。しかし、早産には多くの危険因子が知られています。青年や高齢の妊婦、社会経済的地位の低い妊婦、公的教育をあまり受けていない妊婦では、早産のリスクが高くなります。

過去の妊娠に由来する危険因子:

妊娠前また妊娠中の危険因子:

しかし、早産児を出産するほとんどの女性は、知られている危険因子がない女性です。

早い時期から出生前ケアを受けることで早産のリスクが低下する可能性があります。

早産児の症状

早産児の体重は通常約2500グラム未満で、500グラムほどの児もいます。症状は様々な臓器が、どの程度未熟であるかによって異なります。

超早産児は、自分の力で臓器を良好に機能させることができるようになるまでの、新生児集中治療室(NICU 新生児集中治療室(NICU) 新生児の問題は、以下の時期に生じることがあります。 胎児として成長している出生前 陣痛および分娩時 出生後 新生児の約9%は、 早産児であること、胎児期から新生児期への移行時に起きる問題、低血糖、呼吸困難、感染症などの異常ゆえに、出生後に特別なケアを必要とします。専門的なケアは、しばしば... さらに読む )への入院期間を長く必要とする傾向にあります。一方、後期早産児では、成熟するのに時間を要する器官系があるとしても少数です。後期早産児は体温と血糖をうまく調整することができ、乳をよく飲み、体重が増えるようになるまで入院することがあります。

すべての早産児において、免疫系も発達が不十分であるため、感染症にかかりやすくなります。

早産児の身体的特徴

早産の合併症

早産児にみられる合併症の多くは、発達が不十分で未熟な臓器や器官系が原因です。合併症のリスクは、未熟性の程度に伴って上昇します。また、感染症、糖尿病、高血圧や妊娠高血圧腎症などの早産の原因があることも、合併症のリスクにある程度影響します。

脳の発達不良

脳が十分に発達する前に出生した場合、いくつかの問題が生じます。具体的な問題としては以下のものがあります。

発達不十分な消化管と肝臓

発達が不十分な消化管と肝臓により以下のようないくつかの異常が生じます。

発達が不十分な免疫系

非常に早く生まれた早産児には、感染症から体を守るのに役立つ血液中のタンパク質である 抗体 抗体 体の防衛線( 免疫系)の一部には 白血球が関わっていて、それらの白血球は血流に乗って体内を移動して組織の中に入り込み、微生物などの異物を見つけ出して攻撃します。( 免疫系の概要も参照のこと。) この防衛線は以下の2つの部分で構成されています。 自然免疫 獲得免疫 獲得免疫(適応または特異免疫)は、生まれたときには備わっておらず、後天的に獲得されるものです。獲得のプロセスは、免疫系が異物に遭遇して、非自己の物質(抗原)であることを認識した... さらに読む 抗体 が少ししかありません。母親の抗体は妊娠の後期に胎盤を移行し、出生時に新生児を感染症から守るのに役立ちます。早産児では母親からの防御抗体が少ないため感染症の発生リスクが高く、特に血液の感染症(新生児の敗血症 新生児の敗血症 敗血症は、血流を通じて広がった感染に対する全身の重篤な反応です。 敗血症にかかった新生児は、一般に元気がない、つまりぼんやりしていて哺乳が不良であり、多くの場合皮膚が灰色になるほか、発熱または低体温がみられることもあります。 診断は症状と血液、尿、または髄液中の 細菌、 ウイルス、または 真菌の存在に基づいて下されます。 治療では抗菌薬が投与されるほか、支持療法として、輸液、赤血球や血漿の輸血、呼吸補助(人工呼吸器を使用する場合がありま... さらに読む )や脳の周囲の組織(髄膜炎 新生児の細菌性髄膜炎 細菌性髄膜炎とは、 細菌によって引き起こされる髄膜(脳と脊髄を覆っている膜)の炎症です。 細菌性髄膜炎の新生児は通常、ぐずったり、嘔吐したりするほか、けいれん発作を起こすこともあります。 診断は腰椎穿刺と血液検査の結果に基づいて下されます。 この感染症は、治療しなければすべての新生児が死亡します。 特定の種類の細菌(B群レンサ球菌)に感染している妊婦には、細菌が新生児に感染するのを予防するため、分娩中に抗菌薬が投与されます。 さらに読む )のリスクが上昇します。治療に際して血管カテーテルや呼吸チューブ(気管内チューブ)などの侵襲的な器具を使用する場合、重篤な細菌感染症の発生リスクがさらに高くなります。

発達が不十分な腎臓

出生前は、胎児が出す老廃物は胎盤を通じて取り除かれ、その後は母体の腎臓によって排出されます。しかし出生後は、この作業は新生児が自分の腎臓で行わなくてはなりません。非常に早く生まれた早産児では腎臓の機能は未熟ですが、腎臓が発達するに従って機能も向上します。腎臓の発達が不十分な新生児は、体内の塩分やその他の電解質のほか、水分の量をうまく調整できない傾向がみられます。腎臓の異常は発育不全および血液中への酸の蓄積(代謝性アシドーシス アシドーシス アシドーシスには、酸の生産過剰による血液中の酸の蓄積または血液中からの重炭酸塩の過剰な喪失が原因で発生する代謝性アシドーシスと、肺機能や呼吸速度が低下し、血液中に二酸化炭素が蓄積して生じる呼吸性アシドーシスとがあります。 血液の酸性度は、酸を含む物質や酸を生産する物質を摂取した場合や、肺から十分な二酸化炭素が排出されない場合に上昇します。 代謝性アシドーシスの人では、吐き気、嘔吐、疲労がよく起こるほか、呼吸が通常より速く、深くなります。... さらに読む )につながる可能性があります。

発達が不十分な肺

早産児では出生前に肺が十分に発達する時間がありません。空気から酸素を取り込み、血液中から二酸化炭素を取り除く肺胞と呼ばれる小さな空気の袋は、妊娠期間の最後の3分の1(第3トリメスター【訳注:日本でいう妊娠後期にほぼ相当】)の始め頃まで形成されません。このような構造の発達のほかにも、肺の組織はサーファクタントと呼ばれる、脂肪でできた物質を生産する必要があります。サーファクタントは肺胞の内側を覆っており、呼吸サイクルを通じて肺胞が膨らんだ状態を保ち、呼吸をしやすくしています。サーファクタントがないと、肺胞は呼吸するたびにしぼんでしまい、呼吸をするのがとても難しくなります。通常、妊娠32週頃までサーファクタントは肺から生産されず、典型的に34~36週頃までは生産量が十分ではありません。

これらの要因は、早い時期に生まれた乳児には 呼吸窮迫症候群 新生児呼吸窮迫症候群 呼吸窮迫症候群は早産児にみられる呼吸疾患で、サーファクタントという肺胞を覆う物質が生産されないか不足しているために、肺胞が拡張した状態を保てないことで起こります。 早産児や妊娠中に母親が糖尿病にかかった新生児は、呼吸窮迫症候群を発症するリスクが高くなります。 呼吸窮迫症候群の新生児には重い呼吸困難がみられ、血液中の酸素が不足しているため皮膚が青っぽくなります。 診断は、呼吸困難の有無、血液中の酸素レベル、および胸部X線検査の結果に基づい... さらに読む (RDS)を含む呼吸の問題のリスクがあることを意味します。呼吸の問題がある新生児は、 人工呼吸器 人工呼吸器 人工呼吸器は、肺への空気の出入りを補助するために用いる機械です。 呼吸不全の患者の一部は、人工呼吸器(肺に出入りする空気の流れを補助する機械)による呼吸の補助を必要とします。人工呼吸器によって命が助かることもあります。 人工呼吸器には、多くの使い方があります。通常は、合成樹脂製のチューブを鼻または口から気管に挿入します。人工呼吸器が数日以上必要な場合は、首の前側を小さく切開して(気管切開)、気管に直接チューブを通すこともあります。人工呼... さらに読む (肺に出入りする空気の流れを補助する機械)による呼吸の補助を必要とすることがあります。予定より早く出生するほど、サーファクタント生産が少ないため、新生児が呼吸窮迫症候群を引き起こすリスクは高まります。

肺の構造をより急速に発達させるための治療はありませんが、十分な栄養があれば、肺は時間とともに発達し続けます。

サーファクタントの量を増やし、呼吸窮迫の可能性と重症度を低下させるために、以下の2つの方法があります。

  • 出生前:ベタメタゾンなどのコルチコステロイドは胎児のサーファクタントの産生を増やします。早産が予期される際(典型的に分娩の24~48時間前)に母親に注射されます。

  • 出生後:新生児の気管にサーファクタントを直接投与する場合があります。

気管支肺異形成症 気管支肺異形成症(BPD) 気管支肺異形成症は、 人工呼吸器(肺に出入りする空気の流れを補助する機械)の長期使用や長期間の酸素投与によって引き起こされる新生児の慢性肺疾患です。 この病気は多くの場合、非常に未熟な状態で生まれた乳児、重い肺の病気がある乳児、長期間の人工呼吸器もしくは酸素投与を必要とした乳児、または肺胞の発達が不十分な乳児に起こります。 呼吸が速くなったり、呼吸が苦しそうになったり、その両方がみられたり、皮膚や唇が青みを帯びたりすることもありますが、... さらに読む (BPD)は慢性の肺疾患で、早産児(特に生まれた時期が非常に早い早産児)に起こることがある病気です。BPDの乳児の多くは、呼吸窮迫症候群を発症し、人工呼吸器による治療を必要としたことがあります。BPDでは肺に瘢痕組織が生じ、乳児は継続的な呼吸の補助が必要になり、人工呼吸器が必要であることもあります。ほとんどの場合、この病気から非常にゆっくりと回復します。

発達が不十分な眼

早産児(特に非常に早い時期に出生している乳児)では、血管が成長を停止したり異常に成長したりする場合があります。多くの早産児は通常より多くの酸素を必要としますが、このことも網膜の血管の異常な成長につながる可能性があります。異常な血管が出血を起こしたり、瘢痕組織が生じて網膜が引きつれたりします。この病気を 未熟児網膜症 未熟児網膜症(ROP) 未熟児網膜症とは、早産児において眼の奥の部分(網膜)にある微小な血管が異常に成長する病気です。 未熟児網膜症は 早産との関連が強く、ほとんどの症例は子宮内での発育が30週間未満で出生した新生児にみられます。 最も重症の場合には、微小な血管の急速で異常な成長によって網膜剥離が起こり、視力障害につながる可能性があります。 未熟児網膜症の新生児は症状がみられないため、眼の専門医(眼科医)が慎重に診察して診断します。... さらに読む といい、出生後に生じます。最も重症の場合には、眼の後部で網膜剥離(もうまくはくり)が起こり、失明します。早産児で、特に在胎31週未満で生まれている場合、典型的には定期的に眼を診察し、血管の異常な成長がないかを調べます。網膜剥離のリスクが高い場合、レーザー療法を行うか、ベバシズマブという薬剤を投与することがあります。

血糖調節が困難

早産児は哺乳に困難を抱える上、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)を正常に保つことも難しいことから、しばしばブドウ糖溶液を静脈から投与したり、授乳を少量ずつ頻繁に行ったりします。定期的に授乳しないと、早産児の血糖値が低下(低血糖 低血糖 低血糖とは、血液中のブドウ糖の値(血糖値)が異常に低くなっている状態です。 低血糖は、糖尿病を管理するために服用する薬によるものが最も多くみられます。低血糖のまれな原因としては、他の種類の薬、深刻な病態や臓器不全、炭水化物に対する反応(感受性の高い人において)、膵臓のインスリン産生腫瘍、一部の肥満外科手術(減量のための手術)などがあります。 血糖値が下がると、空腹、発汗、ふるえ、疲労、脱力感、思考力の低下といった症状が生じますが、重度の... さらに読む )する場合があります。低血糖の新生児の多くは、特に症状が現れません。なかには、筋緊張の低下、乳を十分に飲まない、神経過敏などの症状が現れて元気がなくなる新生児もいます。まれにけいれん発作が起こることもあります。

早産児は、感染症または脳内の出血がある場合や、静脈内にブドウ糖を過量投与された場合に血糖値が高い状態(高血糖)になりやすい傾向があります。しかし、高血糖の症状はめったに現れず、新生児に投与するブドウ糖の量を制限するか、短期間インスリンを使用することによりコントロールすることができます。

心臓の異常

あまり成熟していない早産児によくみられる問題に、 動脈管開存症 動脈管開存症 動脈管開存症では、通常は出生後まもなく閉鎖する肺動脈と大動脈をつなぐ血管(動脈管)が、閉鎖しません。 動脈管開存症は、心臓の先天異常の1つで、胎児の肺動脈と大動脈をつなぐ正常な血管が出生時に閉鎖しない場合に起こります。 多くの場合、症状はなく、診断は聴診器で聴取される心雑音に基づいて疑われます。 早産児は特に動脈管開存症を起こしやすくなります。早産児では、呼吸困難などの症状(特に哺乳時)がみられる可能性が高くなります。... さらに読む 動脈管開存症 があります。動脈管は、心臓から出ている2つの太い動脈である肺動脈と大動脈をつないでいる血管です(正常な胎児の循環 正常な胎児循環 約100人に1人は心臓に異常をもって生まれます。重症の場合もありますが、多くはそうではありません。心臓の異常には心臓壁、弁、心臓に出入りする血管の異常形成などがあります。 心臓の先天異常の症状は年齢に応じて変わります。乳児では、努力性呼吸や速い呼吸、哺乳不良、授乳中の発汗または呼吸数の増加、唇または皮膚の青みがかった変色(チアノーゼ)、異... さらに読む を参照)。正期産児では、生後数時間から数日で、筋肉でできた動脈管の壁によって動脈管が閉じます。しかし早産児の場合、動脈管が開いたままのことがあり、結果として肺に血液が過剰に送られ、心臓に負荷がかかります。ほとんどの早産児では開いている動脈管はいずれ自然に閉じますが、早く閉じるように薬剤を投与することもあります。一部の例では、開いている動脈管を閉じる手術が行われます。

体温調節が困難

体温は脳によって維持されています。早産児は脳が成熟していないため、体温の調節に問題が生じます。早産児は正期産児と比べて、体重当たりの皮膚の表面積が大きいため、体温が急速に失われ、正常な体温をうまく保つことができない傾向にあり、特に寒い部屋にいるときやすきま風があるとき、窓の近くにいて外が寒いときなどに体温調節が難しくなります。早産児は温かく保っておかなければ体温が下がります(低体温症 低体温症 低体温症(危険なほど体温が低下した状態)は、寒冷な環境にさらされることによって発生したり悪化したりするため、 寒冷障害と呼ばれることが多くあります。 非常に寒い環境に身を置いたり、特定の病気があったり、動くことができない状況にある場合、低体温症による害が生じるリスクが高くなります。 最初はふるえが起こりますが、その後、錯乱状態となり、意識を失います。 体温が下がりきってしまう前に、体を温めて濡れた衣類を乾かすことができれば、回復します。... さらに読む )。低体温症の新生児は、良好な体重の増加がみられず、ほかにも複数の合併症がみられる可能性があります。低体温症を予防するために、早産児は保育器またはラジアントウォーマー下で保温します(新生児集中治療室[NICU] 新生児集中治療室(NICU) 新生児の問題は、以下の時期に生じることがあります。 胎児として成長している出生前 陣痛および分娩時 出生後 新生児の約9%は、 早産児であること、胎児期から新生児期への移行時に起きる問題、低血糖、呼吸困難、感染症などの異常ゆえに、出生後に特別なケアを必要とします。専門的なケアは、しばしば... さらに読む を参照)。

早産児の診断

  • 新生児の外観

  • 在胎期間

通常、早産児かどうかは、算出された在胎期間と出生後に認められる身体的特徴に基づいて分かります。医師は通常の新生児の 評価 新生児の身体診察 医師は普通は生後24時間以内に、新生児を総合的に診察します。診察は、まず 体重、 身長、 頭囲などの測定から始めます。新生児の平均出生体重は約3200グラム、平均出生身長は約51センチメートルですが、正常と考えられる範囲には大きな幅があります。それから新生児の皮膚、頭頸部、心臓と肺、腹部と性器を調べ、神経系と反射を評価します。また、身体診察では見つけられない異常を見つけるため、通常、スクリーニング検査を行います(... さらに読む 新生児の身体診察 および スクリーニング 新生児スクリーニング検査 出生時に分からない重篤な病気の多くは、様々なスクリーニング検査により発見できます。新生児の健全な発達を妨げるような多くの病気を早期に診断し、迅速に治療を行うことで、症状を軽くしたり、予防したりすることができます。どこでも必ず行われる検査もあれば、特定の州だけが義務づけている検査もあります。スクリーニング検査の結果が陽性の場合、他の検査もしばしば追加されます。 典型的なスクリーニング検査には以下のものがあります。... さらに読む の一環として、新生児を診察し、必要な血液検査、臨床検査、聴覚検査、眼の検査、および画像検査を行います。これらのスクリーニング検査は、新生児の成長に合わせて、また退院前に頻繁に繰り返す必要がある場合もあります。

早産児の予後(経過の見通し)

ここ数十年で早産児の生存率と全体的な予後は劇的に向上しましたが、発達の遅れ、 脳性麻痺 脳性麻痺 脳性麻痺とは、運動困難と筋肉のこわばり(けい縮)を特徴とする症候群です。原因は、出生前の脳の発育過程で生じた脳の奇形か、出生前、分娩中、または出生直後に起きた脳損傷です。 脳性麻痺の原因としては、酸素欠乏や感染によって生じる脳の損傷や、脳の奇形などがあります。 症状の程度は様々で、ぎこちなさがかろうじて分かる程度のこともあれば、脚や腕の動... さらに読む 、聴覚障害や視覚障害、 注意欠如・多動症 注意欠如・多動症(ADHD) 注意欠如・多動症(注意欠陥/多動性障害とも呼ばれます)(ADHD)は、注意力が乏しいか注意の持続時間が短い状態、年齢不相応の過剰な活動性や衝動性のため機能や発達が妨げられている状態、あるいはこれら両方に該当する状態です。 ADHDは脳の病気で、生まれたときからみられる場合もあれば、出生直後に発症する場合もあります。 主に注意を持続したり、集中したり、課題をやり遂げたりすることが困難な場合もあれば、過剰に活動的で衝動的な場合もあり、その両... さらに読む (ADHD)、 学習障害 発達障害の定義 発達障害は神経発達障害と呼ぶ方が適切です。神経発達障害は、特定の技能や一連の情報の獲得、保持、応用を妨げることがある神経学的病態です。神経発達障害によって、注意力、記憶力、知覚、言語、問題解決能力、対人関係に支障が出ることがあります。こうした障害は、軽度で行動介入と教育的介入によって容易に対処できる場合もありますが、重度でそのような介入以... さらに読む などの問題は、依然として早産児では正期産児より多くみられます。予後を決定する最も重要な因子には以下のものがあります。

  • 出生体重

  • 未熟性の程度

  • 早産の24~48時間前に母親にコルチコステロイドが投与されたかどうか

  • 出生後に発生する合併症

早産児の性別も経過が良好になる可能性に影響を及ぼし、未熟性の程度が同じであれば、男児より女児の方が予後は良好です。

在胎23週未満で生まれた場合、生存すること自体がまれです。23~24週で生まれた乳児は生存できる可能性がありますが、一定以上の神経損傷なく生存できることはほとんどありません。在胎27週以降に生まれた乳児は、その大半が神経学的な問題なく生存できます。

早産の予防

定期的な 出生前ケア 妊娠中の医療 子どもをもつことを考えているカップルは、妊娠前に医師や医療従事者に相談して、妊娠が望ましいかについて話し合うことができていれば理想的です。通常、妊娠は非常に安全なものです。しかし、妊娠中に重症化する病気もあります。また、遺伝性疾患をもつ子どもが生まれるリスクが高いカップルもいます。 カップルが妊娠を考え始めたら、女性は 葉酸が含まれた総合ビタミン剤の1日1回の摂取を始めるべきです。妊娠可能年齢の女性に推奨される最低量は400マイクログラ... さらに読む を受けることに加え、危険因子または 妊娠の合併症 妊娠の合併症 を特定し治療すること、そして喫煙を止めることが、早産児が生まれるリスクを抑える最善のアプローチでしょう。ただし、早産児が生まれるリスクを上昇させる条件の多くは、避けられないものです。いずれの場合でも、早産しかけている、または破水したと思う妊婦は、適切な評価と治療を手配するためにすぐに産科医に連絡すべきです。

早産児の治療

  • 合併症の治療

早産児の治療では、発達が不十分な器官に起因する合併症を管理します。具体的な病気はすべて、必要に応じて治療します。例えば、呼吸の問題を補助するための治療(肺疾患に対する人工呼吸器やサーファクタント治療など)、感染症に対する抗菌薬、貧血に対する輸血、眼の病気に対するレーザー手術などを早産児が受ける場合や、心臓の異常のために 心エコー検査 心エコー検査とその他の超音波検査 超音波検査では、周波数の高い超音波を内部の構造に当てて跳ね返ってきた反射波を利用して動画を生成します。この検査ではX線を使いません。心臓の超音波検査(心エコー検査)は、優れた画像が得られることに加えて、以下の理由から、心疾患の診断に最もよく用いられる検査法の1つになっています。 非侵襲的である 害がない 比較的安価である 広く利用できる さらに読む 心エコー検査とその他の超音波検査 のような特別な画像検査が必要になる場合もあります。

両親は、できるだけ多く新生児に面会し、スキンシップをはかることが勧められます。新生児と母親や父親が肌と肌を触れ合わせること(カンガルー・ケアとも呼ばれます― 新生児集中治療室[NICU] 新生児集中治療室(NICU) 新生児の問題は、以下の時期に生じることがあります。 胎児として成長している出生前 陣痛および分娩時 出生後 新生児の約9%は、 早産児であること、胎児期から新生児期への移行時に起きる問題、低血糖、呼吸困難、感染症などの異常ゆえに、出生後に特別なケアを必要とします。専門的なケアは、しばしば... さらに読む を参照)は、可能な場合はつねに新生児にとって有益で、親子の絆を深めます。

極早産児

栄養チューブ 経管栄養 経管栄養は、消化管は正常に機能しているものの、十分に栄養所要量を満たすほど食べられない人に、栄養を与えるために用いられることがあります。例としては、以下の状態の人が挙げられます。 長期間にわたる食欲不振 重度の タンパク-エネルギー低栄養(重度のタンパク質とカロリーの欠乏症) 昏睡または覚醒レベルの大幅な低下 肝不全 さらに読む 経管栄養 を介した胃への栄養補給に耐えられるようになり、最終的には口から栄養摂取ができるようになるまでは、静脈から栄養を摂取します。早産児にとって母親の母乳が最良の栄養源です。また、母乳の使用によって 壊死性腸炎 壊死性腸炎(NEC) 壊死性腸炎は、腸内部の表面が損傷を受ける病気です。この病気は、早産児で生まれたか重篤な病気がある新生児でみられる場合がほとんどです。 腹部が膨れ、便に血液が混じり、新生児は緑色や黄色、さび色をした液体を吐き、非常に具合が悪くなりぐったりします。 壊死性腸炎の確定診断は、腹部X線検査によって行います。 この病気になった新生児の約70~80%は回復します。 治療では、哺乳を止め、胃まで通した吸引チューブで胃の内容物を除去して圧力を下げ、静脈... さらに読む という腸の問題および感染症の発生リスクが低下します。母乳にはカルシウムなどの一部の栄養素が少ないため、極低出生体重児では、強化剤と混合する必要がある場合があります。早産児用に作られたカロリーの高い特別な乳児用人工乳も、必要があれば使用できます。

極早産児は、規則正しい呼吸をつかさどる脳の部分が発達するまで、カフェインなどの呼吸を促進する薬剤を必要とすることがあります。

正常な体温を維持することができるようになるまで、保温のために保育器で過ごす必要があります。

超早産児

超早産児は、極早産児とすべて同じケアを必要とします。極早産児のように、超早産児も自力で呼吸でき、口から栄養を摂取でき、正常な体温を維持でき、体重が増えるようになるまで退院できません。

退院

早産児は通常、医学的な問題が十分にコントロールされ、かつ以下の状況になるまで、病院で管理されます。

  • 特別な補助なしに十分な量の哺乳ができる

  • 体重が着実に増加している

  • ベビーベッドで正常な体温を維持できる

  • 呼吸の停止(未熟児無呼吸発作)がみられなくなった

多くの早産児は、在胎期間で35~37週の時期になり、体重が2~2.5キログラムになると、退院できる状態です。ただし、これには大きな個人差があります。入院期間の長さは、長期的な予後に影響しません。

早産児では、車のチャイルドシートに乗せている間に呼吸が止まったり(無呼吸)、血液中の酸素レベルが低くなったり、心拍数が低くなったりするリスクがあるため、多くの米国の病院では、早産児が退院する前に、早産児をチャイルドシートに乗せた状態で呼吸心拍をモニターする試験を行っています。この試験は、チャイルドシートに乗るときの半分横になった姿勢で、乳児が安定した状態かどうかを判断するためのものです。通常は、両親が準備したチャイルドシートを使用して試験を行います。早産児においては、この試験で異常がなかった場合も含め、予定日になり、チャイルドシートに確実に耐えられるようになるまで、チャイルドシートに乗せて移動する間は運転していない大人が常に監視すべきです。子どもの顔色を観察する必要があるため、車での移動は日中に限るべきです。長時間の移動は45~60分毎に区切り、子どもをチャイルドシートから下ろして姿勢を変えられるようにします。

調査では、多くのチャイルドシートが最適に取り付けられていないことが分かっており、資格をもつチャイルドシート点検者によるチャイルドシートの点検が勧められています。米国で点検を受けられる場所はこちらで探すことができます。点検サービスを提供している病院もありますが、無資格の病院スタッフが提供する正式ではないアドバイスは、資格をもつチャイルドシートの専門家による点検と同等とみなすべきではありません。

米国小児科学会は、チャイルドシートは車での移動のためのみに使用すべきで、乳児用椅子やベッドとして使用すべきではないと勧告しています。多くの医師は親に対し、自宅での最初の数カ月間は、早産児をゆりかごやバウンサーに乗せないようにすることも勧めています。

退院後には、早産児は発達に問題がないか注意深いモニタリングを受け、必要に応じて理学療法、作業療法、および言語療法を受けます。

さらなる情報

以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

  • Safe to Sleep®:乳児向けの安全な睡眠の実践に関する親および養育者向けの情報

  • チャイルドシート点検施設検索サービス(Child car seat inspection station locator):設置されたチャイルドシートの点検を受けられる場所または設置の支援を受けられる場所に関する情報

プロフェッショナル版を見る
プロフェッショナル版を見る
quiz link

医学知識 クイズにチャレンジ

Take a Quiz! 
ANDROID iOS
ANDROID iOS
ANDROID iOS
TOP