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小児の発達

執筆者:Evan G. Graber, DO, Nemours/Alfred I. duPont Hospital for Children
レビュー/改訂 2021年 4月
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小児の体と知能と情緒は、1~13歳の間に飛躍的に発達します。よちよち歩きから走ったり飛んだりできるようになり、集団スポーツを楽しむようになります。1歳では、ほとんどの小児がなんとか理解できる程度の言葉をいくつか話せるだけですが、10歳までに、ほとんどの小児が本の感想文を書くことができ、コンピュータが使えるようになります。しかし、知的、情緒的、行動的発達の度合いは、乳児や小児によってかなり個人差があります。発達は次のような要因の影響をある程度受けます。

  • 遺伝:歩き出したり話し出すのが遅いといったある種の傾向が家系内に遺伝する場合があります。

  • 栄養:適切な栄養補給が発達には欠かせません。

  • 環境:例えば、十分な刺激がないと発達が遅れますが、適切な刺激は発達を促します。

  • 小児の身体的な問題:例えば、難聴があると言語発達が遅れることがあります。

学習障害と発達障害も参照のこと。)

通常、小児の成長は途切れることはありませんが、発語などある特定の機能の発達については一時的な停滞がみられることもあります。医師は、歩行などの特定の技能をほとんどの小児が行える年齢について確立された目安を用い、他の小児と比べた発達の程度を明らかにします。技能はそれぞれ、発達の速さが違います。例えば、歩行の開始は遅かったものの、早くから文を話す小児もいます。

知能の発達

知能とは、人の理解力、思考力、推理力のことです。知能の発達には、乳幼児期に適切な養育を受ける必要があります。例えば、早期から小児に読み聞かせをする、知能に刺激を与えるような経験をさせる、温かい養育が促される関係を築く、などといったことが、いずれも小児の知能の成長と発達に大きく影響します。

2歳になると、ほとんどの小児がおおまかに時間の概念を理解しています。2~3歳児の多くは、過去に起こったすべての出来事は「昨日」のことで、これから起こるであろうすべてのことは「明日」のことだと思っています。4歳までに、ほとんどの小児が時間に対してより複雑な理解をするようになります。1日が朝と昼と夜に分かれることを認識しています。季節の変化を識別することもできます。

1歳半から5歳の間に、小児の語彙は50語前後から数千語にまで急速に広がります。ものや出来事の名を挙げるようになり、それらについてさかんに質問するようになります。2歳までに2つの単語をつなげて簡単な熟語が使えるようになり、3歳までに短い文章をつくるようになります。発音も著しく発達して、2歳までに他者が聞いても半分程度は理解できる話し方になり、4歳までに完全に理解してもらえる話し方になります。4歳の小児は簡単な話をすることも、成人や他の小児と会話することもできます。

1歳半になる前でも、読んでもらった話を聞き取って理解できます。5歳までに、アルファベットを暗唱できるようになり、書いてある簡単な単語を認識できるようになります。このような能力はすべて、簡単な単語や熟語、文章の読み方を習得するための基礎になります。本に触れる機会や生来の能力によりますが、大半の小児が6~7歳までに本を読むようになります。

7歳までに、小児の知的能力はより複雑化します。この頃までに、出来事や状況について、同時に複数の側面からとらえることが徐々にできるようになります。例えば、学齢期の小児は丈が高く細い容器と丈が低く幅がある容器に入る水の量が等しいことを理解できます。また、薬はにがいけれども、それを飲めば具合がよくなることや、母親は自分に対して怒ったりするけれども、同時に愛してくれているということが理解できます。他の人の考え方を徐々に理解できるようになり、交代しながら遊んだり、交互に話をしたりすることが欠かせないことを学びます。さらに、学齢期の小児は遊びについて皆で決めたルールを守ることもできます。この年齢の小児は観察力を発揮して、複数の視点から判断することも次第にできるようになります。

情緒と行動の発達

小児の情緒と行動は、その小児の発達段階と性格に基づいています。どの小児にも固有の気質や気分があります。陽気で順応性に富み、眠る、目覚める、食べるといった日常的な行動を問題なく身につける小児もいます。このような小児は、新しい状況にうまく対応できる傾向があります。また、順応性があまりなく、日頃の生活行動にかなりむらのある小児もいます。このような小児は、新しい状況にうまく対応できない傾向があります。さらに、これらの中間にいる小児もいます。

乳児

泣くことは、乳児にとってコミュニケーションの1つです。乳児は、空腹や不快感、苦痛を感じているときなどに泣き、理由がはっきりしないこともあります。乳児が最もよく泣くのは生後6週間頃で、一般的には1日に3時間ほど泣きますが、通常生後3カ月までには1日1時間までに減ります。乳児が泣いている場合、一般的には親は食べものを与えたり、おむつを替えたり、痛みや不快感の原因を探したりします。それでもだめな場合は、乳児を抱いたり、乳児を連れて散歩をしたりすると泣きやむことがあります。ときには何をしても泣きやまないこともあります。空腹が苦痛の原因であれば喜んで食べるだろうといって、泣いている乳児に食べものを無理に食べさせてはいけません。

生後8カ月頃の乳児は普通、親と離されることへの不安を強くもつようになります。親と別々に眠ることや、託児所などに預けることが難しい場合があり、かんしゃくを起こして困らせることもあります。このような行動が、何カ月も続くことがあります。このようなときに、より年長の小児の多くにおいて、特別な毛布やぬいぐるみが、親がそばにいないときに一緒にいてくれる代用品としての役割を果たします。

小児

2~3歳の小児は、何が起こるかを知りたいというだけの理由から、自分の能力の限界を試したり、やってはいけないと言われていたことをやり始めます。この年齢では、両親から「ダメ」と言われる頻度が高いほど、自立しようと小児がもがいていることを表しています。小児のかんしゃくは親にとっても小児自身にとっても疲れるものですが、小児が感情を言葉でうまく表せない間は、かんしゃくが欲求不満を表すのに役立つため、これは正常なことです。小児が疲れすぎたり過度の欲求不満に陥ったりすることを避け、小児の行動パターンを把握して、かんしゃくを起こしやすい状況を作らないように気をつけることで、かんしゃくの回数を減らすことができます。 まれですが、医師の診察を受ける必要があるかんしゃくもあります。幼い小児の中には、自分の衝動を抑えることが際だって難しく、身の回りの安全や秩序をある程度保つためにかなり厳しい制限をかける必要がある小児もいます。

小児は一般的に、1歳半から2歳までジェンダーアイデンティティを確立し始めます。就学前の年齢になると、男児と女児が典型的にはどのように振る舞うかという性別役割の概念にも気づくようになります。この年齢では性器に興味をいだくようになると予想され、これは小児がジェンダーと身体像を結び付けて考えるようになり始めた兆しです。

2~3歳の小児は、他の小児とより相互に関わって遊ぶようになります。おもちゃに対する執着がまだ強いことがあるものの、おもちゃを共有して、順番で遊ぶということもできるようになります。「ぼくのだ!」というおもちゃに対する所有権の主張は、自己意識を確立するのに役立ちます。この年齢の小児は自立しようと必死ですが、安全と手助けのために親が近くにいる必要がまだあります。例えば、好奇心にかられて親から離れて歩いていくことがありますが、怖くなると親の後ろに隠れるといった具合です。

3~5歳の小児の多くは、空想の遊びや空想の友達をつくることに興味をもち始めます。空想の遊びをすることで安全にいろいろな役割を演じることができ、無理のないやり方で激しい感情を表すことができます。また、空想の遊びは社会性を育てるのにも役立ちます。自分の欲求不満を発散し、自尊心が保たれるような方法で、親や他の小児との間の争いを解決することを学びます。また、この時期に「クローゼットの中のお化け」のような典型的に小児期にみられる恐怖心が現れます。このような恐怖心は正常なものです。

7~12歳の小児は、数多くの問題を通じて学習します。そのような問題には、自己概念(その基盤は教室での能力によって築かれる)、仲間との関係(他者と交流し、うまく社会に適合する能力により決まる)、家族との関係(その小児が両親や兄弟姉妹からどの程度認められているかにある程度左右される)などがあります。多くの小児が友人グループを重視するように思われますが、依然として援助や助言に関しては第一に親を頼りにしています。兄弟姉妹は小児のお手本となったり、何をすべきで何をすべきでないかに関して有益な手助けをしたり、批評家としての役割を果たします。この期間は小児が非常に活発に活動する時期でもあり、様々な活動に参加したり、新しいことを始めたがります。この年齢の小児は学習意欲が高く、安全や健全的な生活習慣、リスクが高い行動の回避についての助言によく応じます。

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