(爪の病気の概要 爪の病気の概要 変形と異栄養症、 けが、感染症、 陥入爪など、爪に生じる病気はたくさんあります。感染症は爪のあらゆる部分に生じ、爪の外観を変えることもあれば、変えないこともあります。爪の感染症は、ほとんどが真菌感染症( 爪真菌症)ですが、細菌やウイルスによる感染症もあります。 爪は、爪甲(ケラチンというタンパク質でできた硬い部分)と周囲の構造から構成され... さらに読む も参照のこと。)
約10%の人が爪真菌症にかかっており、手指の爪よりも足の指の爪に多くみられます。高齢者(特に男性)、足の血行が悪い人(末梢動脈疾患[ フットケア フットケア 末梢閉塞性動脈疾患とは、脚(まれに腕)の動脈がふさがったり狭くなったりする病気で、通常の原因は動脈硬化で、血流量が低下します。 症状は、閉塞した動脈やその重症度により異なります。 診断を下すために、影響が現れている領域への血流を測定します。 薬剤、血管形成術、手術により、閉塞を緩和して症状の軽減を図ります。 末梢閉塞性動脈疾患は、年齢とともに増加する 動脈硬化(血管の壁にプラークなどが蓄積する病態)が原因で生じることが多いため、高齢者に... さらに読む ])、糖尿病患者(糖尿病でみられる足の問題 糖尿病でみられる足の問題 糖尿病では、体の様々な部位、特に血管、神経、眼、腎臓に重篤で長期に及ぶ多くの合併症がみられます。 ( 糖尿病も参照のこと。) 糖尿病には、以下の2つの種類があります。 1型糖尿病:体の免疫系が膵臓のインスリン産生細胞を攻撃し、90%を超える細胞が破壊されて回復不能になる 2型糖尿病:体がインスリンの効果に抵抗性を示す さらに読む )、免疫機能が低下している人(病気や薬剤による)、 みずむし みずむし(足白癬) みずむし(足白癬)は、足の皮膚に生じる皮膚糸状菌(真菌)感染症です。 足白癬の症状としては、足に鱗屑(りんせつ)が蓄積し、ときに発赤とかゆみがみられます。 診断は足の診察の結果に基づいて下されます。 治療では、抗真菌薬を患部に直接塗ったり、場合によっては内服したりし、また足を乾燥した状態に保つ対策を取ります。 足の指の間 さらに読む や 爪異栄養症 爪の変形、異栄養症、変色 変形と異栄養症という用語は、しばしば同じ意味で使われ、医師も同じ意味で使うことがありますが、その意味は少し異なります。 変形:爪の形状の変化 異栄養症:爪の質感か色またはその両方の変化 医師は変形よりも異栄養症という用語をよく使う傾向があります。( 爪の病気の概要も参照のこと。) 爪異栄養症の約50%は真菌感染症により起こります(... さらに読む の人によくみられます。
爪真菌症はしばしば再発し、長期にわたる治療後に再発することもあります。
爪真菌症の原因
ほとんどの場合は 皮膚糸状菌 皮膚糸状菌症(白癬、たむし)の概要 皮膚糸状菌症は、数種類の真菌によって引き起こされる皮膚および爪の真菌感染症で、感染部位によって分類されています。皮膚糸状菌による感染症は、たむしや白癬と呼ばれることもあります。 皮膚糸状菌症の症状は、発疹、鱗屑(りんせつ)、かゆみなどです。 診断では通常、患部を診察するとともに、皮膚または爪のサンプルを顕微鏡で観察するほか、ときに培養検査を行います。 抗真菌薬を患部に直接塗ったり、内服したりすることで、通常は治癒します。... さらに読む が原因です。皮膚糸状菌は糸状菌(真菌の一種)です。真菌への感染は、感染者の体や真菌が生息する表面(風呂場の床など)に触れることで起こります。
爪真菌症の症状
感染した爪は異常な外観を呈しますが、爪の痛みやかゆみはありません。軽症の場合は、爪に白や黄色に変色した斑が現れます。爪の表面の下にチョークのような白い鱗屑が徐々に広がります。重症の場合は、爪が厚くなり、変形、変色を起こします。爪が爪床から剥がれることもあります(爪の腫瘍 爪の腫瘍 良性および悪性の腫瘍が爪に影響を及ぼして、爪の質感や色の変化( 異栄養症)を引き起こすことがあります。それらの多くは、爪ではなく爪周囲の組織に発生する腫瘍です。 良性腫瘍としては、粘液様嚢胞(液体で満たされた袋状の良性病変)、 化膿性肉芽腫、グロムス腫瘍などがあります。 悪性腫瘍としては、 ボーエン病(早期の皮膚がん)、 有棘細胞がん、 悪性黒色腫などがあります。がんが疑われる場合は、生検を行い、腫瘍をできるだけ早期に完全に切除すること... さらに読む )。通常は、感染した爪の破片が爪の先端の下にたまります。
爪真菌症の診断
医師の診察
爪の破片や切った爪の検査
爪真菌症の診断は通常、爪の外観に基づいて下されます。爪真菌症の診断を確定するために、爪の破片のサンプルを顕微鏡で調べ、ときには培養検査を行ってどんな真菌による感染かを判断したり、爪の一部を切ってPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査を行ったりしなければならないこともあります。PCR検査では、真菌の遺伝子のコピーを大量に増やすことで、真菌の種類をはるかに特定しやすくします。
爪真菌症の治療
抗真菌薬の服用
ときに抗真菌薬の外用
このような真菌感染症を治癒させるのは困難ですが、通常は合併症を引き起こさないため、症状が特に重度または不快になった場合や、合併症のリスクが高い場合にのみ治療が推奨されます。例えば、糖尿病や末梢血管疾患に加えて、爪真菌症を発症した人では、足と脚の皮膚と軟部組織に重篤化することのある感染症(蜂窩織炎 蜂窩織炎 蜂窩織炎(ほうかしきえん)は、皮膚とそのすぐ下の組織に生じる、広がりやすい細菌感染症です。 この感染症の最も一般的な原因はレンサ球菌またはブドウ球菌です。 患部の皮膚に発赤、痛み、圧痛がみられるほか、しばしば皮膚を触ると熱く感じたり、一部の人では発熱や悪寒が生じたり、より重篤な症状が現れたりすることもあります。 医師の診察や、ときに臨床検査の結果に基づいて診断されます。 この感染症の治療には抗菌薬が必要です。 さらに読む )が発生するリスクが高くなります。
抗真菌薬の服用
治療するのが望ましい場合は、通常はテルビナフィン、フルコナゾール、イトラコナゾールなどの内服薬(経口薬)の処方が必要になります。このような抗真菌薬は長期間、典型的には数カ月以上服用します。しかし、その後でも、新しい健康な爪が12~18カ月かけて生え変わるまでは、爪の見た目が正常になりません。すでに変形や変色が生じている爪が改善することはありませんが、新たに成長する爪は正常に見えます。
外用療法
シクロピロクスは、マニキュア型製剤に混合される抗真菌薬ですが、経口薬と併用しない場合はあまり有効ではありません。エフィナコナゾールとタバボロール(tavaborole)は、爪に直接塗る(外用する)ことができる新しい抗真菌薬です。経口薬ほどの有効性はありませんが、経口薬と併用する場合は、感染症の治癒の可能性を高めます。また、経口薬を服用できない患者でも使用することができます。
フットケア
再発の可能性を減らすために、爪は常に短く切り、入浴後は足(足の指の間を含む)を乾燥した状態に保ち、吸収性のよい靴下を履くようにし、また抗真菌薬の足用パウダーまたはクリームを使用するべきです。古い靴には真菌の胞子が多数入っている場合があるため、できれば履かないようにします。