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乾癬

執筆者:

Shinjita Das

, MD, Harvard Medical School

レビュー/改訂 2021年 8月
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やさしくわかる病気事典
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乾癬(かんせん)は、1つまたは複数の盛り上がった赤い斑が生じる、再発を繰り返す慢性の病気で、それらの斑は銀白色の鱗屑(うろこ状のくず)を伴い、正常な皮膚との境界ははっきりしています。

  • 免疫系の問題が関わっている可能性があり、遺伝的に乾癬を生じやすい人もいます。

  • 特徴的な鱗屑または赤い斑が全身のあらゆる部分に様々な大きさで生じますが、特に肘、膝、頭皮によくみられます。

  • この病気の治療は、皮膚に塗る薬剤(外用薬)、紫外線照射(光線療法)、内服または注射で投与する薬剤を組み合わせて行います。

乾癬はよくみられ、世界中の約1~5%の人に生じます。皮膚の色が薄い人はリスクが高いのに対し、黒人ではあまり生じません。乾癬は16~22歳と57~60歳の年齢層で最もよく発症します。しかし、あらゆる年齢層、あらゆる人種の人でみられます。

乾癬の斑は、皮膚細胞の増殖が異常に速いために生じます。細胞の成長が速い理由は不明ですが、免疫系の問題が関わっていると考えられています。乾癬は家系内で多発することが多く、特定の遺伝子が関係しています。

乾癬の症状

乾癬の中でも最もよくみられる尋常性乾癬は、通常は頭皮、肘、膝、背中、殿部にできる1つまたは複数の白銀色の光沢をもつ赤く小さな斑(局面)として始まります。まゆ、わきの下、へそ、肛門周囲の皮膚、殿部と背中の下部の境目の割れ目にも生じます。また乾癬患者の多くでは、爪が変形し、厚くなって、穴が空くこともあります。

最初の斑は数カ月後には消えることもありますが、消えずに残ることもあり、ときにはいくつかが融合して大きな斑を形成することもあります。小さな斑が1~2個できてそれ以上増えないこともあれば、体の広い範囲が斑で覆われることもあります。厚みのある斑ができたり、手のひらや足の裏、性器の皮膚のひだに斑ができた場合は、かゆみや痛みを感じる傾向がありますが、多くの場合は症状がみられません。これらの斑は身体的にはそれほど大きな不快感を伴わないものの、見た目に目立つために恥ずかしく感じることがよくあります。乾癬のために大きな心理的苦痛が生じることもあります。

乾癬は一生を通じて持続しますが、症状はときによって現れたり消えたりします。皮膚が明るい日光にさらされる夏には乾癬の症状が軽くなることがよくあります。人によっては症状が再発するまで何年も間が空くこともあります。

急性増悪

乾癬は明らかな理由もなく、あるいは様々な状況のために、急激に悪化することがあります(急性増悪)。急性増悪は多くの場合、軽いけがや重度の 日焼け 日焼け 日焼けは、強い紫外線を短時間で浴びた(急性曝露)結果として起こります。 紫外線を浴びすぎると、日焼けが生じます。 日焼け(サンバーン)が起こると、皮膚は赤くなって痛み、ときに水疱が現れたり、発熱や悪寒が生じたりすることもあります。 日光を浴びすぎないようにし、日焼け止めを塗ることで、日焼けを予防することができます。 冷水湿布、保湿剤、および非ステロイド系抗炎症薬により、日焼けが治るまで痛みを和らげることができます。 さらに読む 日焼け などの皮膚に刺激を生じさせる病態の結果として発生します。かぜや レンサ球菌咽頭炎 のどの感染症 のどや扁桃の感染症はよくみられ、特に小児に多くみられます。 のどの感染症の原因は通常はウイルスですが、レンサ球菌などの細菌が原因になる場合もあります。 症状としては、ものを飲み込むときの激しい痛み、扁桃の赤みと腫れなどがあります。 診断は、のどの診察結果に基づいて下されます。 治療しないでいると、細菌による扁桃・咽頭炎は扁桃周囲膿瘍になることがあります。 さらに読む のどの感染症 などの感染症にかかった後に急性増悪が生じることもあります。冬季、飲酒後、ストレスの多い状況を経験した後にも急性増悪がよくみられます。抗マラリア薬、リチウム、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、テルビナフィン、インターフェロンアルファ、ベータ遮断薬などの多くの薬剤も乾癬の急性増悪の引き金になる可能性があります。 肥満 肥満 肥満とは、体重が過剰な状態です。 複数の要因が組み合わさって肥満に影響を及ぼします。複数の要因が組み合わさった結果、体に必要な量よりも多くの カロリーを摂取することになります。 そうした要因には、運動不足、食事、遺伝子、生活習慣、民族的背景、社会経済的背景、ある種の化学物質への曝露、特定の病気、特定の薬の使用などがあります。... さらに読む 肥満 の人、 ヒト免疫不全ウイルス ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症とは、ある種の白血球を次第に破壊し、後天性免疫不全症候群(エイズ)を引き起こすことのあるウイルス感染症です。 HIVは、ウイルスやウイルスに感染した細胞を含む体液(血液、精液、腟分泌液)と濃厚に接触することで感染します。 HIVはある種の白血球を破壊し、感染症やがんに対する体の防御機能を低下させます。... さらに読む ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 (HIV)の感染者、喫煙者でも、急性増悪がよく生じます。

まれな種類の乾癬

まれな種類の乾癬には、症状が重いものもあります。

乾癬性紅皮症では、全身の皮膚が赤くなり、鱗屑(うろこ状のくず)が生じます。このタイプの乾癬は重篤な病気です。熱傷のときのように、皮膚がけがや感染症に対する保護バリアの役目を果たせなくなってしまうためです。

膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)もまれなタイプの乾癬です。このタイプの乾癬では、膿の詰まった大小の水疱(膿疱)が体の広い範囲に散発的に生じます。

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)は膿疱性乾癬の一種であり、膿疱が主に手と足に生じます。この病気は手掌および足底の掌蹠膿疱症と呼ばれることがあります。

乾癬の診断

乾癬の治療

  • 外用薬

  • 光線療法

  • 免疫抑制薬

  • その他の薬

乾癬の治療には多くの薬剤が使用できます。多くの場合、症状の重症度と範囲に応じて複数の薬剤を組み合わせて使用します。

外用薬

傷つきやすい皮膚(顔面、鼠径部、皮膚のひだなど)に生じた乾癬の治療にはタクロリムスやピメクロリムスが使われます。タザロテンやアンスラリン(anthralin)も使われます。

非常に厚い斑はサリチル酸を含む軟膏で薄くすることができ、これにより他の薬剤が効きやすくなります。

これらの薬剤の多くは皮膚に対し刺激があり、医師はそれぞれの患者に最も有効な薬剤を見つける必要があります。

光線療法

光線療法(紫外線を照射する治療法)も乾癬を数カ月間消失させるのに役立つことがあります(光線療法:皮膚の病気の治療に対する紫外線の利用 光線療法:皮膚の病気の治療に対する紫外線の利用 光線療法:皮膚の病気の治療に対する紫外線の利用 )。光線療法は多くの場合、様々な外用薬と併用されます(特に広範囲の皮膚が侵されている場合)。この病気には、以前から光線療法をソラレンという紫外線に対する皮膚の感受性を高める薬剤と併用する治療法が用いられてきました。この治療法はPUVA療法(ソラレンと紫外線A波の併用療法)と呼ばれています。

現在では、狭い波長範囲の紫外線B波(ナローバンドUVB[NBUVB])だけを使用する治療法を多くの医師が選択していて、PUVA療法と同等の効果が得られています。しかし、NBUVB療法はソラレンを使用せずに行われるため、日光に対して極度に過敏になるなどの同じ副作用が生じません。

また、個々の皮膚の斑に対する治療を、紫外線を集中させるレーザーにより直接行うこともあります(エキシマレーザー療法と呼ばれます)。

光線療法:皮膚の病気の治療に対する紫外線の利用

日光を浴びることが、ある種の皮膚病に有用です。現在では、この効果をもたらすのは日光の特定の成分、すなわち紫外線です。紫外線には、皮膚細胞が作り出す化学物質の量と種類を変えたり、皮膚の病気に関わるある種の細胞を殺したりするなど、皮膚細胞に対する様々な作用があります。

病気の治療に対する紫外線の利用は光線療法と呼ばれます。 乾癬 乾癬 乾癬(かんせん)は、1つまたは複数の盛り上がった赤い斑が生じる、再発を繰り返す慢性の病気で、それらの斑は銀白色の鱗屑(うろこ状のくず)を伴い、正常な皮膚との境界ははっきりしています。 免疫系の問題が関わっている可能性があり、遺伝的に乾癬を生じやすい人もいます。 特徴的な鱗屑または赤い斑が全身のあらゆる部分に様々な大きさで生じますが、特に肘、膝、頭皮によくみられます。 この病気の治療は、皮膚に塗る薬剤(外用薬)、紫外線照射(光線療法)、内... さらに読む 乾癬 アトピー性皮膚炎 アトピー性皮膚炎(湿疹) アトピー性皮膚炎(一般には湿疹と呼ばれます)とは、皮膚の上層に生じる、かゆみを伴う慢性的な炎症です。花粉症や喘息のある人、また家族にそのような病気の人がいる人にみられることの多い病気です。 アトピー性皮膚炎は非常によくみられるもので、特に高所得国やアレルギーを起こしやすい人で多くみられます。 乳児では、じくじくしてかさぶたを伴う赤い発疹が、顔面、頭皮、手、腕、足、脚にできる傾向があります。... さらに読む アトピー性皮膚炎(湿疹) は光線療法による治療が行われる病気として最も一般的なものです。

自然の太陽光は強さが一定せず、気候によっては1年の大半が治療に適さないこともあり、光線療法はほぼ常に人工の紫外線で行われます。この治療は診療所の外来でもできますが、専門の治療施設で行うこともあります。

紫外線は人間の肉眼では見えない光で、波長によりA波、B波、C波に分類されます。A波は、B波よりも皮膚の奥深くまで届きます。病気の種類や重症度によって、A波とB波のどちらを使用するかを決めます。C波は光線療法では使われません。特定の波長のA波またはB波だけを照射する治療法(ナローバンド療法)もあり、一部の病気を対象に行われています。ナローバンド療法を用いれば、光線療法に伴う日焼け様の副作用を抑える助けになります。

光線療法では、ときにソラレンという薬剤が併用されます。紫外線A波とソラレンを併用する治療法はPUVA療法という名で知られています。ソラレンは紫外線による治療を行う前に服用します。ソラレンを服用すると皮膚が紫外線の作用に敏感となるため、照射時間や光線の強度を減らすことができます。

光線療法の副作用としては、紫外線を長時間浴びて日焼けしたときの症状に似た皮膚の痛みや発赤などがあります。また長期的には皮膚がんのリスクが高まるものの、短期間の治療ではそのリスクはわずかです。ソラレンを服用すると、吐き気と日光に対する極度の過敏症がしばしば生じます。またソラレンは眼の水晶体に移行するため、PUVA療法を受けた後は最低でも12時間はUVカットのサングラスをかける必要があります。

免疫抑制薬

免疫抑制薬は、意図的に免疫機能を弱める(抑制する)薬で、免疫系の働きによって乾癬が悪化しないようにします。これらの薬剤は経口または注射での使用が可能です。免疫抑制薬は、体が感染に抵抗する力を低下させることがあります。

乾癬の重症例の治療にはシクロスポリンを使用することができます。この薬剤は高血圧や腎臓の損傷を引き起こすことがあります。

ミコフェノール酸モフェチルでは、副作用として胃腸障害や骨髄抑制(赤血球、白血球、血小板の生産が減少すること)がよくみられます。リンパ腫などの悪性腫瘍の発症リスクも高めます。

メトトレキサートは体の炎症を抑え、皮膚細胞の成長と増殖を阻害します。重症の乾癬患者や比較的副作用の少ない治療法で効果が得られない患者に使用されます。副作用として、肝傷害や免疫機能の低下が生じることがあります。

その他の薬

重度の乾癬や乾癬性関節炎の治療に上記以外の薬剤が使用されることもあります。

アシトレチン(acitretin)は、膿疱性乾癬の治療に特に効果的ですが、しばしば血液中の脂肪(脂質)の濃度を高め、また一過性の脱毛とともに肝臓や骨の異常を引き起こすことがあります。この薬剤は経口投与します。重度の先天異常の原因になるため、妊娠の可能性のある女性では服用しないようにします。女性は妊娠を試みる場合、アシトレチン(acitretin)を最後に使用してから少なくとも2年間待つ必要があります。

生物学的製剤は生物由来の材料から作られ、免疫系に関与する特定の化学物質を阻害します。具体的には、エタネルセプト、アダリムマブ、インフリキシマブ、セルトリズマブ、ウステキヌマブ、セクキヌマブ、ブロダルマブ、イキセキズマブ、チルドラキズマブ、リサンキズマブ、グセルクマブ、トファシチニブなどがあります。これらの薬は、経口で投与されるトファシチニブを除けば、すべて注射で投与されます。ほかにアプレミラストも選択肢になり、これは経口で投与されます。これらの薬は、重度の乾癬に対して最も大きな効果を示す傾向がありますが、副作用を起こす可能性があります。

さらなる情報

役立つ可能性がある英語の資料を以下に示します。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

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