高IgE症候群がある乳児では、皮膚、関節、肺、その他の臓器に膿瘍(袋のような構造の中に膿がたまったもの)ができます。
診断は血液検査により確定されます。
治療では、感染症を予防または治療するための抗菌薬、発疹を緩和するためのクリームや薬、免疫系を調節する薬を投与します。
(免疫不全疾患の概要 免疫不全疾患の概要 免疫不全疾患では、免疫系が正常に働かないことにより、通常に比べて感染症を頻繁に発症したり、繰り返したり、感染症が重症化したり、長引いたりします。 免疫不全疾患は通常、薬の使用や、がんなどの長期間に及ぶ重篤な病気が原因で発症しますが、遺伝性の場合もあります。 この病気になると感染症を繰り返すだけでなく、普通の人がかからないような感染症が起き... さらに読む も参照のこと。)
IgEは5種類ある 抗体 抗体 体の防衛線( 免疫系)の一部には 白血球が関わっていて、それらの白血球は血流に乗って体内を移動して組織の中に入り込み、微生物などの異物を見つけ出して攻撃します。( 免疫系の概要も参照のこと。) この防衛線は以下の2つの部分で構成されています。 自然免疫 獲得免疫 獲得免疫(適応または特異免疫)は、生まれたときには備わっておらず、後天的に獲得されるものです。獲得のプロセスは、免疫系が異物に遭遇して、非自己の物質(抗原)であることを認識した... さらに読む の1つで、感染から体を守るのに役立っています。高IgE症候群ではIgEの量が多くなりますが、これがこの免疫不全症の原因ではありません。免疫系の他の部分に異常がみられます。IgEの量が多くなる理由は不明です。
高IgE症候群は 原発性免疫不全症 原発性免疫不全症 免疫不全疾患では、免疫系が正常に働かないことにより、通常に比べて感染症を頻繁に発症したり、繰り返したり、感染症が重症化したり、長引いたりします。 免疫不全疾患は通常、薬の使用や、がんなどの長期間に及ぶ重篤な病気が原因で発症しますが、遺伝性の場合もあります。 この病気になると感染症を繰り返すだけでなく、普通の人がかからないような感染症が起き... さらに読む の一種です。次の2通りの形式のいずれかで遺伝します。
常染色体優性遺伝疾患 優性遺伝疾患 遺伝子とは、DNA(デオキシリボ核酸)のうち、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパク質の設計情報が記録された領域のことです。 染色体は非常に長いDNA鎖からできており、そこには多く(数百~数千)の 遺伝子があります。特定の細胞(例えば、精子と卵子)を除き、人間の正常な細胞には23対の染色体があります。22対の常染色体と1対の性染色体があり、合わせて46本の染色体があります。通常、それぞれの対を構成する染色体は、片方を母親から、もう片方... さらに読む (性別が関係する伴性遺伝ではない)として:すなわち、両親の一方からこの病気の遺伝子を1つ受け継ぐだけで遺伝します。
高IgE症候群がどのように遺伝するかは、どの遺伝子に異常があるかによって異なります。どちらの型も類似の症状を引き起こします。
高IgE症候群の症状
通常、高IgE症候群の症状は乳児期に現れます。ほとんどの乳児では、皮膚、関節、肺、その他の臓器に膿瘍(膿がたまった空洞)ができます。膿瘍の原因菌はたいてい ブドウ球菌 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)感染症 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は多くの一般的なブドウ球菌の中で最も危険とされています。この グラム陽性の球状細菌(球菌)(図「 細菌の形状」を参照)は、しばしば皮膚感染症を引き起こしますが、肺炎、心臓弁の感染症、骨の感染症を引き起こすこともあります。 これらの細菌は、感染者と直接接触したり、汚染された物を使用したり、くしゃみやせきによって飛び散った飛沫を吸引することで感染します。... さらに読む で、頻繁に再発します。
呼吸器感染症を起こすことがあり、これには 肺炎 易感染状態にある人の肺炎 肺炎は肺の感染症です。免疫機能が低下している人または免疫系に異常がある人(例えば、後天性免疫不全症候群[エイズ]、がん、臓器移植、特定の薬剤の使用による)では、しばしば、健康な人とは異なる原因微生物によって肺炎が引き起こされます。 免疫機能が低下していると、健康な人にはほとんど病気を引き起こすことのない微生物が原因で肺炎が発生することがあります。 その症状は多様ですが、息切れ、せき、発熱などがあります。... さらに読む も含まれ、肺炎が治った後に大きな嚢胞(内部が液体で満たされた袋)が残ることもあります。
かゆみを伴う発疹も現れ、
骨は弱くなるために何度も骨折します。特徴的な顔つきになることもあります。また、乳歯の生え変わりが遅れます。
寿命は肺感染症の重症度により異なります。
高IgE症候群の診断
IgE値を測定するための血液検査
ときに遺伝子検査
乳児におできや肺炎が頻繁に発生する場合に高IgE症候群が疑われます。血液検査でIgEの量が多いことが分かれば診断を確定できます。
遺伝子に異常がないか調べるために遺伝子検査を行うことがあります。
高IgE症候群の治療
抗菌薬
ブドウ球菌感染症を予防するために、通常はトリメトプリム/スルファメトキサゾールの抗菌薬を継続的に使用します。
保湿クリーム、抗ヒスタミン薬のほか、感染症の可能性が高い場合は抗菌薬で、発疹を治療します。
呼吸器感染症は抗菌薬で治療します。
インターフェロンガンマなど、免疫系を調節する特定の薬がときに有用です。
さらなる情報
以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
免疫不全財団:高IgE症候群(Immune Deficiency Foundation: Hyper-IgE syndrome):高IgE症候群の診断、治療、患者へのアドバイスなどの情報を含む一般的な情報