症状は血栓ができた場所に関係します。
診断は症状と血液検査に基づいて行います。
溶血性尿毒症症候群の治療では、重要な身体機能の補助と場合により血液透析を行うことがあり、一部の患者ではエクリズマブという薬が有益になる場合もあります。
(血小板の病気の概要 血小板の病気の概要 血小板は、骨髄でつくられる細胞断片で、血液中を循環し 血液の凝固を助けます。主に肝臓で生産されるトロンボポエチンが骨髄を刺激することで大きな細胞(巨核球)が作られ、この巨核球の中にある物質(細胞質)から血小板が作られます。血液凝固で使用されなかった血小板は、血液中を7~10日間循環した後に破壊されます。約3分の1は常に脾臓に蓄えられていま... さらに読む と 血小板減少症の概要 血小板減少症の概要 血小板減少症とは、血液中の血小板の数が少なくなった状態で、出血のリスクが高まります。 血小板減少症は、骨髄で作られる血小板が少なすぎる場合や血小板が破壊されすぎたり、腫大した脾臓に蓄積されすぎたりした場合に発生します。 皮下出血やあざがみられます。 血液検査を行って、診断を確定するとともに、その原因を特定します。 ときには治療(血小板輸血、プレドニゾン[日本ではプレドニゾロン]、血小板の生産を増やす薬、または脾臓摘出)が必要になることが... さらに読む も参照のこと。)
溶血性尿毒症症候群はまれな病気で、多くの小さな血のかたまり(血栓)が突然全身にできます。溶血性の意味は、赤血球が分解されること、尿毒症の意味は、腎障害によって尿素(老廃物)が残り、血液中に蓄積されることです。溶血性尿毒症症候群は、 血栓性血小板減少性紫斑病 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP) 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は、全身に小さな血栓ができて、脳、心臓、腎臓などの重要臓器への血液の流れを妨げる重篤な病気です。 症状は血栓ができた場所に関係します。 診断は症状と血液検査に基づいて行います。 血栓性血小板減少性紫斑病の治療は、血漿交換、コルチコステロイド、リツキシマブのほか、まれにカプラシズマブ(caplacizumab)によって行います。 ( 血小板の病気の概要と... さらに読む (TTP)と関連がありますが、溶血性尿毒症症候群は小児に多く発生し、腎不全を引き起こすことが多いのに対し、TTPは成人でより多くみられます。
溶血性尿毒症症候群でできる小さな血栓は、全身の毛細血管を詰まらせますが、特に脳、心臓、腎臓の血管を詰まらせます。血管が詰まると組織が損傷を受けるとともに、赤血球が分裂を起こし、部分的に詰まった血管を通り抜けます。血栓の形成は、異常に大量の血小板が消費されることも意味するため、血液中の血小板数が急激に減少することになります(血小板減少症)。
血小板は、骨髄でつくられて血液中を循環している細胞で、 血液凝固 血栓について 止血とは、傷ついた血管からの出血を止めようとする体の働きです。止血の過程では、血液の凝固が起こります。 凝固の働きが弱すぎると、軽いけがでも、大量の出血が起きるようになります。 凝固の働きが強すぎると、出血が起きていない血管がふさがれてしまうことがあります。 そのため、人の体には、血液の凝固を抑制し、必要なくなった血のかたまりを溶かすため... さらに読む を助けます。血小板が過度に少なくなった状態を 血小板減少症 血小板減少症の概要 血小板減少症とは、血液中の血小板の数が少なくなった状態で、出血のリスクが高まります。 血小板減少症は、骨髄で作られる血小板が少なすぎる場合や血小板が破壊されすぎたり、腫大した脾臓に蓄積されすぎたりした場合に発生します。 皮下出血やあざがみられます。 血液検査を行って、診断を確定するとともに、その原因を特定します。 ときには治療(血小板輸血、プレドニゾン[日本ではプレドニゾロン]、血小板の生産を増やす薬、または脾臓摘出)が必要になることが... さらに読む といいます。
溶血性尿毒症症候群は、細菌の 大腸菌O157:H7 大腸菌(E. coli )O157:H7感染症 大腸菌(Escherichia coli[E. coli])は グラム陰性細菌の一種で、健康な人の腸に存在しますが、特定の菌株は消化管、尿路、または他の部位で感染症を引き起こすことがあります。 大腸菌(E. coli)による感染症で最も頻度が高いのは尿路感染症ですが、汚染された食品(加熱調理が不十分な牛ひき肉など)を食べたり、感染した動物に触れたり、汚染された水を飲み込んだりすることで腸管感染症... さらに読む やその他の毒素生産性細菌に汚染された食物を摂取したことに起因する腸管感染症の後に通常みられます。
溶血性尿毒症症候群の症状
溶血性尿毒症症候群(HUS)では、症状が突然現れます。
溶血性尿毒症症候群の症状は、その他のほとんどの血小板減少症とかなり異なります。
溶血性尿毒症症候群の小児では、通常最初に嘔吐や下痢がみられます。下痢に血が混じることがよくあります。溶血性尿毒症症候群による合併症の主な症状は、腎臓に形成された血栓に関係があり、通常は重度で、多くの場合 透析 透析 透析とは、体内の老廃物や過剰な水分を機械的に取り除く処置のことで、腎臓が十分な機能を果たさなくなったときに必要になります。 透析が必要になる理由はいくつかありますが、最も多いのは、腎臓が血液から老廃物を十分にろ過できなくなること(腎不全)です。腎臓の機能は急速に低下することもあれば(... さらに読む を必要とする 腎不全 腎不全の概要 この章には、 COVID-19および急性腎障害(AKI)に関する新しいセクションが含まれています。 腎不全とは、血液をろ過して老廃物を取り除く腎臓の機能が十分に働かなくなった状態のことです。 腎不全の原因としては、様々なものが考えられます。腎機能が急激に低下する場合( 急性腎障害、急性腎不全とも呼ばれます)もあれば、ゆっくりと低下していく... さらに読む に進行する損傷を引き起こします。溶血性尿毒症症候群で、脳の症状はほとんどみられません。
溶血性尿毒症症候群の診断
血小板数と血液凝固を測定する血液検査
腎機能を調べる血液と尿の検査
血小板数の減少や出血を引き起こす他の病気を否定するための検査
体調不良の続いている小児、または頻度は下がりますが特定の薬の投与を受けている人に、血小板数が少ないことが確認されたときに、溶血性尿毒症症候群が疑われます。
溶血性尿毒症症候群の診断に特化した血液検査はありませんが、症状と併せて診断に役立つ血液検査がいくつか行われます。そのような血液検査には、多くの場合、血算、赤血球が破壊されていることを証明する検査(血液サンプルの顕微鏡検査[血液塗抹検査]など)、腎臓がどの程度機能しているか調べる検査が含まれます。
溶血性尿毒症症候群の治療
通常は腎臓透析
ときにエクリズマブまたはラブリズマブという薬
溶血性尿毒症症候群の小児患者の約半数が一時的に 腎臓透析 透析 透析とは、体内の老廃物や過剰な水分を機械的に取り除く処置のことで、腎臓が十分な機能を果たさなくなったときに必要になります。 透析が必要になる理由はいくつかありますが、最も多いのは、腎臓が血液から老廃物を十分にろ過できなくなること(腎不全)です。腎臓の機能は急速に低下することもあれば(... さらに読む を必要とし、透析装置によって血液から老廃物を除去します。ほとんどの場合、腎臓の機能が回復しますが、一部の小児では腎臓障害が恒久的になります。エクリズマブおよびラブリズマブは、免疫系の一部である 補体 補体系 体の防衛線(免疫系)の一部には 白血球が関わっていて、それらの白血球は血流に乗って体内を移動して組織の中に入り込み、微生物などの異物を見つけ出して攻撃します。( 免疫系の概要も参照のこと。) この防衛線は以下の2つの部分で構成されています。 自然免疫 獲得免疫 自然免疫は、生まれつき備わっていて、異物との遭遇を介した学習が必要ないことから、このように呼ばれています。そのため、体外から侵入してきた異物に対してすぐに反応します。しかし、この... さらに読む を抑制する薬です。腎損傷の発生率を低下させ、一部の患者では、腎機能を速やかに回復させます。エクリズマブまたはラブリズマブの投与を受けている人は、 髄膜炎菌性髄膜炎 髄膜炎菌感染症 髄膜炎菌感染症は、髄膜炎菌( Neisseria meningitidis)という 細菌によって引き起こされる病気で、髄膜炎と敗血症が含まれます。 鼻やのどからの分泌物に直接触れることで感染が拡大します。 全身にけん怠感を覚えるほか、感染部位に応じて他の症状もみられ、しばしば重篤になります。... さらに読む のリスクが正常な人より高いため、髄膜炎菌感染症を予防するために 髄膜炎菌ワクチン 予防 髄膜炎菌感染症は、髄膜炎菌( Neisseria meningitidis)という 細菌によって引き起こされる病気で、髄膜炎と敗血症が含まれます。 鼻やのどからの分泌物に直接触れることで感染が拡大します。 全身にけん怠感を覚えるほか、感染部位に応じて他の症状もみられ、しばしば重篤になります。... さらに読む の接種を受けるべきです。