炎症を引き起こす多くの感染症や病気が、慢性髄膜炎の原因になる可能性があります。
免疫機能が低下していると、慢性髄膜炎のリスクが高まります。
症状は通常、急性細菌性髄膜炎のもの(頭痛、発熱、項部硬直)に似ていますが、それ以外に錯乱、難聴、複視がみられることもあります。
慢性髄膜炎の診断には、頭部の画像検査(CT検査やMRI検査など)を行った後、腰椎穿刺で髄液を採取し分析します。
原因に対する治療が行われます。
(髄膜炎に関する序 髄膜炎に関する序 髄膜炎とは、髄膜(脳と脊髄を覆う組織層)とくも膜下腔(髄膜と髄膜の間の空間)の炎症です。 髄膜炎は細菌、ウイルス、または真菌、感染症以外の病気、薬剤などによって引き起こされます。 髄膜炎の症状には、発熱、頭痛、項部硬直(あごを胸につけるのが難しくなる症状)などがありますが、乳児では項部硬直がみられない場合もあり、非常に高齢の人や免疫系を抑... さらに読む も参照のこと。)
脳と脊髄は、3層の組織層(髄膜)で覆われています。くも膜下腔は、脳や脊髄を覆う髄膜のうち、中間層と最内層の間にある空間です。この空間は髄液で満たされています。髄液は髄膜の間を流れるほか、脳の内部も満たしており、脳と脊髄のクッションとして機能します。
脳を覆っている組織
頭蓋骨の中で、脳は髄膜という3層の組織におおわれています。 |
亜急性髄膜炎は、急性髄膜炎よりは時間をかけて発生し、慢性髄膜炎よりは短期間で(すなわち、数日から数週間で)発生するものをいいます。原因や症状、診断方法、治療は慢性髄膜炎と同様です。細菌性髄膜炎は急性ではなく亜急性のこともあります。
慢性髄膜炎は、何週間もかけてゆっくり発生し、何カ月あるいは何年も続くことがあります。まれですが、慢性髄膜炎が軽度の症状しか引き起こさず、自然に消失することもあります。
亜急性および慢性髄膜炎の原因
亜急性または慢性髄膜炎は通常、感染症が原因です。亜急性または慢性髄膜炎を引き起こす微生物には多くの種類があります。なかでも特に重要なのが以下の微生物です。
結核 結核 結核は、空気感染する細菌である結核菌(Mycobacterium tuberculosis)によって引き起こされる、感染力の強い慢性感染症です。結核は肺を侵しますが、ほぼすべての臓器に影響が及ぼす可能性があります。 結核に感染するのは、主に活動性結核の患者によって汚染された空気を吸い込んだ場合です。... さらに読む を引き起こす細菌(結核菌[Mycobacterium tuberculosis])
真菌 真菌感染症の概要 真菌は植物でも動物でもなく、その大きさは顕微鏡でようやく見えるものから肉眼で容易に見えるものまで様々です。かつては植物と考えられていましたが、現在では独自の区分(界)に分類されています。一部の真菌は人に感染症を引き起こします。 真菌の胞子は空気中や土壌中に存在することが多いため、真菌感染症は通常は肺や皮膚から始まります。... さらに読む 、例えばクリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、クリプトコッカス・ガッティ(Cryptococcus gattii)、コクシジオイデス・イミティス(Coccidioides immitis)、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、ブラストミセス属(Blastomyces)など
結核の原因菌は、結核性髄膜炎と呼ばれる慢性髄膜炎を引き起こします。結核性髄膜炎は、急速に発生することもあれば、徐々に発生することもあります。髄膜炎は最初の感染時に発生する場合もあれば、不活性状態で体内に潜伏している細菌が後に再活性化して髄膜炎を引き起こす場合もあります。免疫系を抑制する薬(インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、セルトリズマブ、エタネルセプトなどの腫瘍壊死因子阻害薬など)による治療を受けると、細菌が再活性化することがあります。
ライム病の小児患者の最大8%と、一部の成人患者は髄膜炎を発症します。ライム病による髄膜炎には急性のものと慢性のものがあります。通常、急性ウイルス性髄膜炎よりゆっくり始まります。
西半球で最も一般的な慢性髄膜炎の原因は以下のものです。
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染症 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症とは、ある種の白血球を次第に破壊し、後天性免疫不全症候群(エイズ)を引き起こすことのあるウイルス感染症です。 HIVは、ウイルスやウイルスに感染した細胞を含む体液(血液、精液、腟分泌液)と濃厚に接触することで感染します。 HIVはある種の白血球を破壊し、感染症やがんに対する体の防御機能を低下させます。... さらに読む やエイズ、免疫系を抑制する薬などによって 免疫機能が低下 免疫不全疾患の概要 免疫不全疾患では、免疫系が正常に働かないことにより、通常に比べて感染症を頻繁に発症したり、繰り返したり、感染症が重症化したり、長引いたりします。 免疫不全疾患は通常、薬の使用や、がんなどの長期間に及ぶ重篤な病気が原因で発症しますが、遺伝性の場合もあります。 この病気になると感染症を繰り返すだけでなく、普通の人がかからないような感染症が起き... さらに読む している人では、この真菌による髄膜炎が起きやすくなります。クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)による髄膜炎の症状は、最初は軽微でゆっくりと進行し、消えたり現れたりします。
あまり一般的ではありませんが、以下によって慢性髄膜炎が引き起こされることもあります。
トキソプラズマ原虫(Toxoplasmosis gondii)(トキソプラズマ症 トキソプラズマ症 トキソプラズマ症は、単細胞の寄生虫であるトキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)によって引き起こされる感染症です。ネコの糞に含まれるトキソプラズマのシストを知らずに摂取したり、汚染された肉を食べたりすることで感染が起きます。通常は無症状ですが、一部の患者ではリンパ節の腫れ、発熱、漠然とした体調の悪さがみられ、ときにはのどの痛みまたはかすみ目や眼の痛みが現れることもあります。エイズまたは他の病気によって免疫機... さらに読む を引き起こします)などの寄生虫(通常はHIV感染症またはエイズの人にみられる)
慢性髄膜炎はHIV感染者でよくみられます。髄膜炎はHIV感染が原因であることがありますが、HIV感染者では、他の様々な微生物(クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、いくつかの真菌など)も慢性髄膜炎を引き起こす可能性もあります。
また、感染症以外の病気が慢性髄膜炎の原因になることもあります。具体的には以下のものがあります。
全身性エリテマトーデス 全身性エリテマトーデス(SLE) 全身性エリテマトーデスは、関節、腎臓、皮膚、粘膜、血管の壁に起こる慢性かつ 炎症性の自己免疫結合組織疾患です。 関節、神経系、血液、皮膚、腎臓、消化管、肺、その他の組織や臓器に問題が発生します。 診断を下すため、血液検査のほか、ときにその他の検査を行います。 全身性エリテマトーデスの全患者でヒドロキシクロロキンが必要であり、損傷を引き起こし続けている全身性エリテマトーデス(活動性の全身性エリテマトーデス)の患者には、コルチコステロイドな... さらに読む 、 関節リウマチ 関節リウマチ(RA) 関節リウマチは炎症性関節炎の1つで、関節(普通は手足の関節を含む)が炎症を起こし、その結果、関節に腫れと痛みが生じ、しばしば関節が破壊されます。 免疫の働きによって、関節と結合組織に損傷が生じます。 関節(典型的には腕や脚の小さな関節)が痛くなり、起床時やしばらく動かずにいた後に、60分以上持続するこわばりがみられます。 発熱、筋力低下、他の臓器の損傷が起こることもあります。... さらに読む 、 ベーチェット症候群 ベーチェット病 ベーチェット病は、有痛性の口や陰部の潰瘍、皮膚の病変、眼の問題を生じることのある、慢性の血管の炎症(血管炎)です。関節、神経系、消化管も炎症を起こすことがあります。 典型的な例では、口内や、陰部、皮膚に潰瘍やびらんができ、それが消え、再び現れます。 診断は、確立された基準に基づいて下されます。 治療法は侵された部位によって異なりますが、一般的にはコルチコステロイドのほか、その他の免疫抑制薬を使用します。... さらに読む 、 シェーグレン症候群 シェーグレン症候群 シェーグレン症候群はよくみられる 自己免疫性結合組織疾患で、眼や口などの粘膜の異常な乾燥を特徴とします。 白血球が、体液を分泌する腺に侵入して損傷を与えることがあり、ときには他の臓器に損傷が及ぶ場合もあります。 診断を助けるために確立された基準が用いられることがあり、検査により涙と唾液の分泌量を測定するとともに、血液中に異常な抗体が存在しないかを評価できます。 通常は、眼や口などの表面を乾燥させないようにする対策を講じるだけで十分ですが... さらに読む など、炎症を引き起こす特定の病気
白血病 白血病の概要 白血病は、白血球または成熟して白血球になる細胞のがんです。 白血球は骨髄の幹細胞から成長した細胞です。ときには成長がうまくいかずに、染色体の一部の並びが変化してしまうことがあります。こうして異常となった染色体により正常な細胞分裂の制御が失われ、この染色体異常がある細胞が無制限に増殖するようになったり、細胞がアポトーシス(不要になった細胞が... さらに読む 、 リンパ腫 リンパ腫 、 乳がん 乳がん 乳がんは、乳房の細胞が異常をきたし制御不能に分裂することで発生します。通常は、乳汁を作る乳腺(小葉)または乳腺から乳頭(乳首)へ乳汁を運ぶ乳管にがんが発生します。 乳がんは、女性がかかるがんの中で発症数が最も多く、がんによる死亡の中では第2位を占めています。 通常、最初に現れる症状は痛みのないしこりで、自分で気づくことがほとんどです。 乳がんスクリーニングの推奨は様々で、定期的なマンモグラフィー、医師による乳房の診察、乳房自己検診などが... さらに読む 、 肺がん 肺がん 男女ともに、がんによる死亡の中で最も多い原因が肺がんです。症例の約85%は喫煙に関連しています。 よくみられる症状は、持続性のせき、または、性状が変化する慢性的なせきです。 肺がんの大部分は胸部X線検査で発見できますが、診断を確定するためには他の画像検査や生検をさらに行う必要があります。 肺がんの治療には、手術、化学療法、分子標的療法、免疫療法、放射線療法のいずれも用いられます。... さらに読む 、 黒色腫 黒色腫 黒色腫(メラノーマとも呼ばれます)は、色素を作り出す皮膚細胞(メラノサイト)から発生する皮膚がんです。 黒色腫は、正常な皮膚から発生する場合もあれば、すでにあった ほくろから発生する場合があります。 皮膚に様々な色の斑点を伴う平坦または隆起した褐色の不規則な皮疹、あるいは黒または灰色の硬い隆起が現れます。 黒色腫の診断を下すには、生検を行います。 黒色腫を切除します。 さらに読む 、髄膜に広がったその他のがん
数年前には、坐骨神経痛などの治療として腰髄の周りにメチルプレドニゾロン(コルチコステロイドの一種)の注射(硬膜外注射)を受けた人において、少数ながら慢性真菌性髄膜炎が発生しました。いずれの症例でも、処置に使用された薬剤に滅菌処理が施されていませんでした。症状としては、頭痛、錯乱、吐き気、発熱などがあります。項部硬直もよくみられますが、3分の1の患者にはみられません。症状は最長で注射後6カ月が経過してから発生する可能性があります。背中にコルチコステロイドの注射を受けた後、数週間から数カ月以内にこれらの症状が現れた場合は、主治医に電話で相談してください。
ときに、慢性髄膜炎が数カ月さらには数年にわたり続くものの、微生物が特定されず、死に至らない場合もあります。このような髄膜炎は慢性特発性髄膜炎と呼ばれます。抗真菌薬またはコルチコステロイドによる治療は効果がありません。しかし、慢性特発性髄膜炎患者の中には、最終的に治療を受けずに回復する人もいます。
亜急性および慢性髄膜炎の症状
亜急性または慢性髄膜炎の症状は、 急性細菌性髄膜炎 症状 急性細菌性髄膜炎とは、急速に進行する髄膜(脳と脊髄を覆う組織層)とくも膜下腔(髄膜と髄膜の間の空間)の炎症のうち、細菌が原因であるものをいいます。 年長の小児や成人では、あごを胸につけるのが難しくなる症状(項部硬直といいます)が現れ、また通常は発熱や頭痛もみられます。 乳児では、項部硬直がみられないことがあり、体調が悪そうに見えたり、体温が高くまたは低くなったり、哺乳が少なくなったり、眠そうにむずかったりするだけのことがあります。... さらに読む のものに似ていますが、細菌性髄膜炎が数日で発生するのに対し、慢性髄膜炎は数週間(多くの場合)かけてゆっくり発生するという点で異なります。また、発熱もより軽いことがよくあります。慢性髄膜炎の症状は何年も続くことがあります。しばらくよくなって、また悪化する(再燃する)人もいます。
頭痛、錯乱、項部硬直、背部痛がよくみられます。歩行が困難になる場合もあります。筋力低下、チクチクする感覚、しびれ、顔面の麻痺、複視も一般的です。髄膜炎が 脳神経 脳神経の概要 脳神経は12対の神経で構成され、脳から直接出て頭部、頸部、体幹の様々な部位へと伸びています。脳神経には、特殊な感覚(視覚、聴覚、味覚など)を担うものと、顔の筋肉を制御したり腺を調節したりするものがあります。脳神経は、それぞれの位置に応じて、脳の前から後ろに向かって番号と名前が付けられています。... さらに読む (脳から直接頭、首、体幹の様々な部位へ伸びている神経)に波及すると、顔面の麻痺、複視、難聴が発生します。
結核 結核 結核は、空気感染する細菌である結核菌(Mycobacterium tuberculosis)によって引き起こされる、感染力の強い慢性感染症です。結核は肺を侵しますが、ほぼすべての臓器に影響が及ぼす可能性があります。 結核に感染するのは、主に活動性結核の患者によって汚染された空気を吸い込んだ場合です。... さらに読む 菌による髄膜炎は、通常、かなり急速に(数日から数週間で)悪化しますが、これよりもっと速いことも遅いこともあります。結核性髄膜炎は深刻な影響をもたらす可能性があります。頭蓋内の圧力が上昇することがあります。血管は炎症を起こし、ときに脳卒中を招くことがあります。視覚、聴覚、顔面筋、平衡感覚が障害されることがあります。
亜急性および慢性髄膜炎の診断
腰椎穿刺と髄液の分析
慢性髄膜炎のリスクを高める因子、例えば、 免疫系の機能の低下 免疫不全疾患の概要 免疫不全疾患では、免疫系が正常に働かないことにより、通常に比べて感染症を頻繁に発症したり、繰り返したり、感染症が重症化したり、長引いたりします。 免疫不全疾患は通常、薬の使用や、がんなどの長期間に及ぶ重篤な病気が原因で発症しますが、遺伝性の場合もあります。 この病気になると感染症を繰り返すだけでなく、普通の人がかからないような感染症が起き... さらに読む (HIV感染症やエイズによるものなど)、ライム病や特定の真菌感染症がまん延している地域への旅行について、医師から質問されます。医師はまた、原因を示唆する症状について尋ねたりそのような症状を探したりします。
診断を確定するために、 腰椎穿刺 腰椎穿刺 病歴聴取と 神経学的診察によって推定された診断を確定するために、検査が必要になることがあります。 脳波検査は、脳の電気的な活動を波形として計測して、紙に印刷したりコンピュータに記録したりする検査法で、痛みを伴わずに容易に行えます。脳波検査は以下の特定に役立つ可能性があります。 けいれん性疾患 睡眠障害 一部の代謝性疾患や脳の構造的異常 さらに読む を行い、髄液のサンプルを採取して分析します。
髄液の分析
この髄液は検査室に送られ、そこで分析されます。髄膜炎では、髄液中の白血球が正常より増加しています。その結果により、通常は慢性髄膜炎と急性髄膜炎を区別することができます。クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)という真菌など、慢性髄膜炎の原因になる微生物の中には、顕微鏡で確認できるものもありますが、結核菌を含め多くの微生物は見つけることが困難です。
髄液の培養検査も行われます。微生物が髄液中に存在すれば、培養によって増殖するため、特定できるようになります。しかし、培養検査には何週間もかかることがあります。真菌や結核菌、梅毒の原因菌を特定するには、より迅速に結果が分かる特殊な技術を用いることもできます。例えば、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)が放出するタンパク質を検出する検査(抗原検査と呼ばれます)を行うことがあります。
遺伝子のコピーを大量に増幅するPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法を用いると、結核菌に固有のDNAを特定できることがあります。髄液のサンプル中に含まれる結核菌の遺伝物質(DNA)を検出するために、結核性髄膜炎の診断のために世界保健機関(WHO)が推奨するXpert MTB / RIFと呼ばれる全自動検査が用いられることもあります。過去に結核の原因菌にさらされたことを確認するため、髄液のサンプルで他の検査を行うこともあります。胸部X線検査または胸部CT検査により、過去または現在の結核を示す証拠が見つかることがあります。
疑われる病気に応じて、その他の髄液検査が行われることもあります。例えば、がんが疑われる場合は、髄液中にがん細胞がないか確認することがあります。
慢性髄膜炎の原因は特定が困難なこともありますが、その理由の1つに、髄液中の微生物を見つけるのが難しいことが挙げられます。そのため、腰椎穿刺を繰り返し、できるだけ多くの髄液を採取して培養検査を行うことがあります。可能であれば、広範囲に及ぶ遺伝物質を迅速に分析できる検査を使用して、他の検査では特定できない髄液中の微生物を特定します。
その他の検査
原因の特定のために、血液および尿サンプルの培養検査のほか、髄膜やその他の感染組織(MRI検査やCT検査で特定したもの)の生検が必要になることもあります。症状の原因がはっきりしない場合、ときにMRIまたはCT検査を行います。
広範な検査を行っても、原因が特定されないことはしばしばあります。
亜急性および慢性髄膜炎の予後(経過の見通し)
亜急性または慢性髄膜炎患者の予後は、以下の要因に左右されます。
原因が何であるか
多くの場合、患者の免疫系の強さ
梅毒とライム病は治療をすれば通常は治癒します。真菌または寄生虫感染症による髄膜炎はより難治で再発しやすく、HIV感染症患者では特にこの傾向が強くなります。
髄膜炎の原因が白血病、リンパ腫、またはがんである場合、予後はたいてい不良です。このようなケースでは、髄膜炎から死に至る可能性もあります。
亜急性および慢性髄膜炎の治療
原因の治療
医師は原因の治療に重点を置きます。原因に応じて、以下の治療が行われます。
結核 結核 結核は、空気感染する細菌である結核菌(Mycobacterium tuberculosis)によって引き起こされる、感染力の強い慢性感染症です。結核は肺を侵しますが、ほぼすべての臓器に影響が及ぼす可能性があります。 結核に感染するのは、主に活動性結核の患者によって汚染された空気を吸い込んだ場合です。... さらに読む 、 梅毒 梅毒 梅毒は、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)という細菌によって引き起こされる性感染症です。 梅毒の症状は、見かけ上は健康な時期をはさんで、3段階で生じます。 まず患部に痛みのない潰瘍が現れ、第2期では、発疹、発熱、疲労感、頭痛、食欲減退がみられます。 治療しないでいると、第3期には、大動脈、脳、脊髄、その他の臓器が侵されることがあります。 医師は通常、患者に梅毒があることを確認するために2種類の血液検査... さらに読む 、 ライム病 ライム病 ライム病は、ボレリア属(Borrelia)の細菌によって引き起こされ、マダニが媒介する感染症(ダニ媒介性感染症)で、米国でみられるボレリア属細菌は主にライム病ボレリア(Borrelia burgdorferi)、ときにボレリア・マヨニイ(Borrelia mayonii)です。これらのらせん形の細菌はスピロヘータと呼ばれています(図「」を参照)。... さらに読む などの細菌感染症に対して:原因菌に有効な抗菌薬
真菌感染症 真菌感染症の概要 真菌は植物でも動物でもなく、その大きさは顕微鏡でようやく見えるものから肉眼で容易に見えるものまで様々です。かつては植物と考えられていましたが、現在では独自の区分(界)に分類されています。一部の真菌は人に感染症を引き起こします。 真菌の胞子は空気中や土壌中に存在することが多いため、真菌感染症は通常は肺や皮膚から始まります。... さらに読む に対して:通常は抗真菌薬(アムホテリシンB、フルシトシン、フルコナゾール、ボリコナゾールなど)の静脈内投与または内服
感染症以外の病気(サルコイドーシス サルコイドーシス サルコイドーシスとは、体の多くの器官に炎症細胞の異常な集積(肉芽腫[にくげしゅ])がみられる病気です。 サルコイドーシスは、一般に20~40歳で発生し、欧州系の人やアフリカ系アメリカ人に最も多くみられます。 多くの器官が侵される可能性がありますが、肺に最もよくみられます。 典型的な症状はせきや呼吸困難ですが、侵される器官に応じて様々な症状... さらに読む や ベーチェット症候群 ベーチェット病 ベーチェット病は、有痛性の口や陰部の潰瘍、皮膚の病変、眼の問題を生じることのある、慢性の血管の炎症(血管炎)です。関節、神経系、消化管も炎症を起こすことがあります。 典型的な例では、口内や、陰部、皮膚に潰瘍やびらんができ、それが消え、再び現れます。 診断は、確立された基準に基づいて下されます。 治療法は侵された部位によって異なりますが、一般的にはコルチコステロイドのほか、その他の免疫抑制薬を使用します。... さらに読む など)に対して:コルチコステロイドやその他の免疫抑制薬(免疫の働きを抑える薬)。ときにこれらの薬剤を長期間使用する
髄膜への がんの波及 転移 悪性形質転換とは、健康な細胞からがん細胞が発生する複雑なプロセスのことです。このプロセスには以下の段階があります。 イニシエーション プロモーション 転移 ( がんの概要も参照のこと。) さらに読む に対して:頭部への放射線療法や化学療法の組合せなど(がんの種類による)
クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)による慢性髄膜炎は、一般にアムホテリシンBと、フルシトシンまたはフルコナゾールの併用で治療されます。真菌感染症が特に難治であれば、ときに、オンマヤリザーバーを使って、アムホテリシンBを髄液中に直接注射することがあります。オンマヤリザーバーとは、頭皮の下に留置する装置です。リザーバーの中には、大量の薬剤がストックされていて、リザーバーから脳内の空間へのびる細いチューブを介し、数日または数週間かけてゆっくりと薬剤が投与されます。