心臓腫瘍の概要

執筆者:Anupama K. Rao, MD, Rush University Medical Center
レビュー/改訂 2021年 2月
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腫瘍(しゅよう)という用語は、それががんであるか(悪性)、がんではないか(良性)に関係なく、異常に増殖する組織のことを指します。心臓の腫瘍は以下のように分けられます。

  • 原発性(良性または悪性)

  • 転移性(常に悪性)

原発性心臓腫瘍とは、心臓で発生した腫瘍のことです。原発性心臓腫瘍はまれな病気で、その頻度は2000人に1人を下回ります。原発性心臓腫瘍はその大半が良性です。

転移性心臓腫瘍は、体内の別の臓器で発生したがんが心臓に転移してきたものです。ほとんどの心臓腫瘍は転移性の悪性腫瘍(がん)で、その多くは肺から広がってきたものです。

知っていますか?

  • がんではない(良性の)腫瘍であっても、心機能の低下を招いている場合は、悪性腫瘍と同じように死に至る可能性があります。

原発性腫瘍と転移性腫瘍のどちらも、心臓の部屋の内側を覆っている組織(心内膜)、心臓の筋肉(心筋)、心臓の弁、または心臓を包んでいる嚢(心膜)のいずれかに発生します。心内膜や心臓弁に腫瘍ができると、心臓内の血流が妨げられたり、血栓ができて、それが崩れ、他の部位の血管を詰まらせたり(塞栓症)することがあります。心筋の中にできた腫瘍は、心臓の機能に影響を及ぼして心不全を引き起こしたり、心臓の刺激伝導系に影響を及ぼして不整脈を引き起こしたりすることがあります。心膜にできた腫瘍は心臓を圧迫して締めつけることがあり、そうなると心臓に十分な血液が取り込まれなくなり、胸痛や心不全が起こることがあります。

原発性良性心臓腫瘍

成人では、原発性良性心臓腫瘍の約半数が粘液腫です。粘液腫は通常、心臓の左上側にある心腔(左心房)で発生します。この腫瘍は、心臓の壁を覆っている層(内膜)に存在する胚細胞から発生する場合があります。

乳児や小児では、最も多くみられる良性の原発性心臓腫瘍は横紋筋腫です。横紋筋腫は典型的には複数でみられ、通常は心臓の壁の中で増殖し、心筋の細胞を発生起源とします。横紋筋腫は一般的には乳児期または小児期に発生し、結節性硬化症と呼ばれるまれな病気の一部として発生することも多くあります。

乳児や小児で多くみられる別の良性の原発性心臓腫瘍として、線維腫があります。線維腫は典型的には単発で発生し、通常は心筋の中で増殖しますが、心臓の線維性組織の細胞を発生起源とします。

これら以外にも数種類の原発性心臓腫瘍がありますが、どれもまれにしか発生しません。悪性腫瘍もあれば良性腫瘍もあります。

原発性悪性心臓腫瘍

原発性の悪性心臓腫瘍としては以下のものがあります。

  • 肉腫

  • 中皮腫

  • リンパ腫

肉腫は、結合組織(血管、神経、骨、脂肪、筋肉、軟骨)から発生するがんです。肉腫は右心房または左心房に発生して、心臓内の血液の流れを遮断することがあります。右心房にできた腫瘍は肺に転移する可能性があります。

中皮腫は、心膜(心臓を覆っている膜)に発生することがある、まれな種類のがんですが、その多くは胸膜(肺を覆っている膜)に発生します。心膜中皮腫は脊髄や脳に転移する可能性があります。

リンパ腫は、リンパ球として知られる特定の白血球から発生するがんです。リンパ腫は通常、リンパ節、脾臓、骨髄で発生します。心臓で発生するリンパ腫は極めてまれです。通常はエイズ患者にみられ、急速に増殖します。

転移性心臓腫瘍

転移性心臓腫瘍とは、最初に体内の別の部分(通常は肺、乳房、腎臓、血液、または皮膚)で発生した腫瘍が心臓に広がった(転移した)もので、常に悪性です。転移性心臓腫瘍は、原発性心臓腫瘍と比べれば30~40倍多くみられます。心臓への腫瘍の転移は、ともに最も一般的ながんである肺がん乳がんでは約10%の患者でみられ、黒色腫の患者が心臓に転移を有する割合はさらに高くなります。

心臓腫瘍の症状

心臓腫瘍は無症状の場合もありますが、軽い症状を引き起こす場合や、生命を脅かす心機能不全を引き起こす場合もあります。

良性腫瘍であっても、心機能の低下を招いている場合は、悪性腫瘍と同じように死に至る可能性があります。

心臓腫瘍の重要な症状としては以下のものがあります。

  • 心不全(脚のむくみ、息切れ、疲労感を引き起こす)

  • 不整脈(動悸、脱力、失神の原因になる)

  • 低血圧(めまいや失神を招く)

ほかにも次のような症状があります。

  • 発熱

  • 疲労(嗜眠)

  • 関節痛

  • 皮膚の小さな赤い斑点(点状出血)

心臓弁やその近くに腫瘍(粘液腫や線維腫など)ができると、その弁を血液が正常に通過できなくなるため、約半数の人で心雑音(心臓の中で発生する血液の乱流によって生じる音)が聞かれるようになります。心臓腫瘍が弁をふさいだり、心臓を圧迫したり、心臓の筋肉の壁に影響を及ぼしたりすると、心不全になって、息切れや脚のむくみが起きることがあります。心臓の電気系統に影響が及べば、不整脈が起きて、動悸や失神がみられることがあります。腫瘍が弁をふさいだり、心膜の腫瘍が心臓を圧迫したりすることで心臓の中の血流が減少した場合には、低血圧になって、めまいや失神が起きることがあります。

心臓腫瘍(特に粘液腫、ときに線維弾性腫)は、変性して崩れて小さな欠片になり、それらが血流に乗って移動して別の部位の動脈に詰まることがあります(この現象を塞栓といいます)。塞栓が細い動脈に詰まると血流が遮断されます。さらに、粘液腫などの腫瘍の表面上に形成された血液のかたまり(血栓)が剥がれて、動脈を閉塞させる可能性もあります(塞栓)。塞栓による症状は、血栓が到達した場所、つまり閉塞した動脈がどの組織や臓器に血液を供給しているかによって異なります。例えば、塞栓によって脳の動脈が詰まると、脳卒中が起こります。

心臓腫瘍の診断

  • 心エコー検査、CT検査やMRI検査による画像検査

原発性心臓腫瘍は比較的まれな病気で、また他の多くの病気と症状が似ていることから、診断が困難です。心雑音、不整脈(動悸、脱力、失神を引き起こす)、説明のつかない心不全(息切れ、脚のむくみ、疲労感を引き起こす)の症状、原因不明の発熱(粘液腫による可能性がある)のある人では、原発性心臓腫瘍が疑われることがあります。ほかの部位にがんがある人で心臓の機能障害の症状がみられた場合には、転移性心臓腫瘍が疑われます。より多いのは、呼吸困難など別の症状に対する検査を受ける過程で心臓腫瘍と診断されるケースです。

腫瘍が疑われる場合は、心エコー検査を行って診断を確定します。この検査では、超音波を放出する装置(プローブ)を胸にあてて、心臓の構造を画像化します。別の角度から見た心臓の画像が必要な場合は、プローブをのどから食道に入れ、心臓の真後ろから撮影を行います。この検査は経食道心エコー検査と呼ばれています。

CT検査MRI検査では、より詳しい情報が得られ、しばしば良性腫瘍と悪性腫瘍を鑑別することが可能です。

ほかの大半の部位に腫瘍が発生した場合と異なり、心臓の生検(組織のサンプルを採取して顕微鏡で調べる検査)を行うことはめったにありません。心臓生検は腫瘍のある場所によっては危険となる可能性がある一方、通常は画像検査の結果から心臓腫瘍が良性か悪性かを区別することができるためです。

心臓腫瘍の治療

  • 良性心臓腫瘍の外科的切除

  • 悪性心臓腫瘍にはときに化学療法または放射線療法

良性心臓腫瘍

単独で発生した小さな原発性良性心臓腫瘍は、手術で切除することができ、通常は完治します。大きな原発性良性心臓腫瘍によって心臓を通過する血流が著しく減少している場合は、腫瘍のうち心臓の壁内に広がっていない部分を切除することで、心機能が改善することがあります。しかし、心臓の壁の大部分が腫瘍に侵されている場合は、手術を行うことができません。

横紋筋腫は、この病気の新生児のほとんどで治療なしで自然に消失するため、通常は治療の必要がありません。

乳児や小児の場合、左右の心室を隔てる壁(中隔)に広がっていない線維腫は、うまく切除することができます。腫瘍がこの壁に及んでいる場合は、通常は心臓の電気刺激伝導系にも広がっているため、手術で切除することはできません。このような腫瘍がみられる小児は、通常は幼いうちに不整脈のために死亡します。線維腫が大きく、血流を遮断するか周辺組織まで広がっている場合は、心臓移植が必要になります。

小児と成人のどちらの場合も、心臓移植が行われることは非常にまれで、移植は一般的には良性腫瘍の場合にのみ検討されます。

悪性心臓腫瘍

原発性悪性心臓腫瘍は手術で切除することができず、通常は死に至ります。病気の進行を遅らせるために、ときに化学療法または放射線療法が行われます。転移性の腫瘍に対する治療法は、どの臓器からがんが転移してきたかに応じて異なり、化学療法が行われることがあります。

心膜腫瘍

心膜内の良性腫瘍は手術で切除することができますが、悪性腫瘍は他の部位にすでに転移しているのが通常であるため、切除されません。腫瘍から分泌される液体によって心臓の機能が妨げられている場合は、心膜と心臓の間の空間(心膜腔)に針を使って細い合成樹脂製のチューブを挿入し、中の液体を排出させます。ときには、腫瘍の増殖を遅らせる薬や、液体が再び貯まらないようにする薬を心膜腔に注入することもあります。

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