尿路の画像検査

執筆者:Paul H. Chung, MD, Sidney Kimmel Medical College, Thomas Jefferson University
レビュー/改訂 2022年 5月 | 修正済み 2022年 9月
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    腎疾患または尿路疾患が疑われる場合の評価には、様々な検査が用いられます。(尿路の概要も参照のこと。)

    単純X線検査

    尿路を評価する際、X線検査は通常役に立ちません。ある種の腎結石の検出と腎結石の位置や大きさの確認には、X線検査が役立つことがあります。単純X線検査では撮影されないタイプの腎結石もあります。

    超音波検査

    超音波検査は以下の点で有用な画像検査です。

    • 電離放射線や造影剤の静脈内投与(ときに腎臓の損傷につながります)が不要である

    • 安価に行える

    • リアルタイムで画像が見られるため、状況に応じて撮影を追加することができる。

    超音波検査の一般的な用途は、尿路結石のほか、泌尿生殖器(腎臓、膀胱、陰嚢と精巣、陰茎、尿道など)の腫れや腫瘤(かたまり)の画像を撮影することです。超音波検査では、腎臓や膀胱の閉塞部位を探したり、排尿後に膀胱に尿が残っているかどうか判断したり、前立腺の大きさを調べたりできるほか、前立腺や腎臓から生検のサンプルを採取する際の位置確認として超音波を用いることもできます。ドプラ超音波検査では、音波の反響を解析することで画像が作成されます。ドプラ超音波検査は、血流に関する情報を得ることができ、勃起障害や精巣の病気(精巣捻転精巣上体炎など)の原因を特定するのに役立ちます。

    CT検査

    CT検査では、尿路とその周囲にある構造物を撮影できます。CT血管造影検査は、従来の血管造影検査と比べて体への負担が少なく、多くの尿路疾患の評価に有用です。CT検査では造影剤を静脈から投与することもあります。造影剤を投与してからすぐに撮影を行うと、腎臓についてより詳細な画像が得られ、また10分待ってから撮影を行うと、尿管(腎臓から膀胱へ尿を流している筋肉でできた管)についてより詳細な画像が得られます。

    CT検査の短所は、電離放射線への被曝が無視できないことと、造影剤を使用した場合に腎障害とアレルギー反応が起きるリスクがあることです。

    MRI検査

    MRI検査でも、CT検査と同様、尿路とその周囲にある構造物を撮影できます。MRI検査では、CT検査と異なり、電離放射線への被曝はありません。MRIは血管の画像を撮影するために用いることもできます(MRアンギオグラフィー検査、あるいはMRアンギオグラフィー検査と呼ばれます)。一部の疾患では、CT検査よりMRI検査を用いた方が詳細な情報が得られます。しかし、MRI検査では、尿路結石に関する有用な情報はあまり得られません。

    常磁性造影剤を静脈内投与することで、MRI画像はより鮮明になります。この造影剤は、CT検査で使用される造影剤とは大きく異なります。しかし、腎機能が低下している人では、常磁性造影剤を使用できないことがよくあります。そういった人にこの造影剤を使用すると、まれに腎性全身性線維症といって、皮膚やその他の臓器に影響が生じる重篤かつ不可逆的な副作用が起こることがあるからです。

    排泄性尿路造影検査

    排泄性尿路造影検査(静脈性尿路造影検査や静脈性腎盂造影検査とも呼ばれます)では、造影剤を静脈から投与して腎臓、尿管、膀胱のX線画像を撮影します。今日では行われることはまれで、通常はこの検査の代わりに造影剤を使用したCT検査が行われます。

    逆行性尿路造影検査

    逆行性尿路造影検査では、造影剤を膀胱から尿管または腎臓の集合管まで直接注入します。この処置は一般に、膀胱鏡検査、通常行われるその他の泌尿器科的処置(尿管鏡という器具を尿管に挿入する尿管鏡検査など)、尿管または腎臓へのステント留置などの最中に行われます。この検査では、腎臓内で尿がろ過される部分を含め、尿路全体を調べることができます。

    逆行性尿路造影検査を行うことで、瘢痕(はんこん)、腫瘍、尿路と他の構造との間に形成された異常な通路(瘻孔[ろうこう])を診断することができます。逆行性尿路造影検査は、造影剤を使用できない人(例えば、腎臓の機能が低下している人)でも行えます。

    経皮的順行性尿路造影検査

    経皮的順行性尿路造影検査では、尿を排出するために背中にあけられた穴(腎瘻[じんろう])から造影剤を直接注入します。この検査は、逆行性尿路造影検査が行えない患者(器具を挿入する経路に閉塞がある場合など)や、腫瘍や尿路結石などの病気に対する治療ですでに腎瘻チューブが留置されている人に行われます。

    膀胱造影検査と膀胱尿道造影検査

    膀胱造影検査は、造影剤を膀胱鏡やカテーテルなどを通して尿道から膀胱内に注入してから、膀胱の画像を撮影する検査です。主に、膀胱にあいた穴(けがや手術の後など)を見つけるために行われます。

    膀胱尿道造影検査(ときに逆行性膀胱尿道造影とも呼ばれます)では、造影剤を尿道から膀胱に注入します。この処置は、尿道の異常(瘢痕や、けがによる裂傷など)を特定するために行われます。排尿中と排尿直後に膀胱と尿道のX線画像を撮影する場合は、排尿時膀胱尿道造影検査と呼ばれます。排尿時膀胱尿道造影検査は、膀胱から尿管への尿の逆流を防ぐ弁が正常に機能しているかを評価したり、尿道後部(膀胱に最も近い部分)の狭窄などの異常を見つけたりするのに用いられます。

    逆行性尿路造影検査

    逆行性尿路造影検査では、尿道の末端から造影剤を直接注入しますが、その際には特殊なアタプターを付けた注射器を使用して注入するか、尿道カテーテルを尿道内に数センチメートルだけ入れて、バルーンを少し膨らませて適度にフィットさせてから注入します。造影剤を尿道内に注入して尿道全体に充満させることにより、損傷や狭窄を画像上で見えるようにします。この検査は一般的に、尿道に損傷が起きる可能性のある外傷を負ったことがある人に用いられます。逆行性尿路造影検査を行う目的は、尿道カテーテルを尿道に入れても安全であり、尿道が傷つかないことを確認することにあります。

    PET検査

    新しく使用可能になったPET検査用の検査薬は、体内のほかの部位に広がった(転移した)前立腺がんを検出することができます。この検査薬は、前立腺がんの細胞の表面にあるPMSA(前立腺特異的膜抗原)を標的とするもので、この物質がPET検査の画像に表示されます。

    対照的に、通常のPET検査は前立腺がんの大半の症例であまり役立ちませんが、腎臓がん精巣腫瘍など、他の泌尿生殖器腫瘍の検査には役立つ可能性があります。

    核医学検査(シンチグラフィー)

    腎臓の核医学検査(腎シンチグラフィー)とは、まず放射性化合物を血管内に注射してから、ガンマカメラと呼ばれる専用の装置で微量の放射線を検出する画像検査法です。この検査は主に、腎臓の血流と尿の生産を評価するために行われます。

    血管造影検査

    血管造影検査(CT血管造影検査やMRアンギオグラフィー検査と区別するために「従来の血管造影」と呼ばれることもあります)では、動脈内に造影剤を注射します。この検査は、尿路の病気がある人で、重度の出血や血管同士の異常な吻合(動静脈瘻)などの血管の異常を修復する治療法と組み合わせて用いられます。

    血管造影検査の合併症としては、造影剤を注射した動脈とその周辺臓器の損傷のほか、出血や造影剤に対する反応などがあります。

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