尿検査と尿培養検査

執筆者:Paul H. Chung, MD, Sidney Kimmel Medical College, Thomas Jefferson University
レビュー/改訂 2022年 5月 | 修正済み 2022年 12月
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    尿検査は、検尿とも呼ばれ、腎疾患や尿路疾患の評価で必要になる場合があり、糖尿病や肝障害などの全身疾患を評価するのにも役立ちます。通常、尿のサンプルは中間尿採取法など、雑菌が混入しない方法(無菌法)で採取されます。例えば、汚染のないきれいな尿サンプルを採取する方法として、カテーテルを尿道から膀胱まで挿入する方法もあります。

    尿培養は、採取した尿のサンプルに含まれる細菌を検査室で増殖させる検査で、尿路感染症を診断する際に行われます。尿培養は通常の尿検査には含まれません。尿サンプルの採取には、中間尿採取法(コラム「汚染のない尿サンプルの採取」を参照)か滅菌カテーテルを尿道から膀胱内に一時的に挿入する方法を用いる必要があります。

    汚染のない尿サンプルの採取

    1. 男性であれば陰茎の先端、女性であれば尿道の開口部を、消毒剤を含ませた小さなガーゼでふいて清潔にします。割礼を受けていない男性は、亀頭を洗浄するために包皮をめくる必要があります。

    2. 出はじめの数滴は採取せずにトイレに流すことで、尿道内の不純物を尿で洗い流します。

    3. 続いて排尿を再開し、尿のサンプルを滅菌済みのカップに採取します。通常は尿の流れが終わる前に採尿を終えます(中間尿)。

    尿検査には以下が含まれます。

    • 化学的な検査では、尿中の様々な物質を検出し、濃度を測定します。

    • しばしば尿を顕微鏡で調べます。

    化学的な検査では、タンパク質、グルコース(ブドウ糖)、ケトン、血液、その他の物質を探します。これらの検査では、尿中の物質と反応すると直ちに変色する化学物質を浸み込ませた合成樹脂製のスティック(試験紙)を使用します。検査結果が正しいことを確認するため、検査室でより精密な手法を用いて尿のサンプルを分析することもあります。

    顕微鏡による尿サンプルの観察では、赤血球と白血球、結晶、尿円柱(尿中に含まれる細胞やタンパク質が腎臓の細い管[尿細管]の内部で固まった後に尿中に押し流された結果みられる、尿細管の内腔を型どった小さな円柱形のかたまり)の有無が調べられることがあります。

    尿中にタンパク質が大量にある場合(タンパク尿)、通常は試験紙で検出できます。タンパク尿といっても、その原因に応じて、常に尿中にタンパク質が検出される場合もあれば、断続的にしか検出されない場合もあります。タンパク尿は、健康な人であってもマラソンなどの激しい運動後にみられることがありますが、通常は腎疾患の徴候です。尿中の少量のタンパク質は、糖尿病による腎障害の初期徴候である場合があります。このような少量のタンパク質は、試験紙で検出できないことがあります。その場合、12~24時間にわたって採取した尿を検査室で分析する必要があります。

    尿中の糖(グルコース)は、試験紙で正確に検出できます。尿中に糖が現れる最も一般的な原因は糖尿病ですが、糖が検出されないからといって、糖尿病の可能性を否定したり、糖尿病が良好にコントロールされていると判断したりすることはできません。また、糖がみられるからといって、必ずしも糖尿病などの問題があるとも限りません。

    尿中のケトン体(ケトン尿症)は多くの場合、試験紙で検出できます。ケトン体は体内で脂肪が分解されるときに発生します。飢餓状態やコントロール不良の糖尿病、ときには大量の飲酒時にも、尿中にケトン体が出現します。

    尿中の血液(血尿)は、試験紙で検出でき、顕微鏡での観察(鏡検)やその他の検査によって確認されます。ときには尿中に混入した血液が肉眼で見えることもあり、その場合、尿の色は赤や茶色になります。

    尿中の亜硝酸塩も試験紙で検出できます。亜硝酸塩の濃度が高いことは、尿路感染症を意味します。

    尿中の白血球エステラーゼ(一部の白血球中に存在する酵素)は試験紙で検出できます。白血球エステラーゼは炎症の徴候であり、そのほとんどは尿路感染症によるものです。

    尿の酸性度(pH)は試験紙で測定できます。尿の酸性度は、一部の食べもの、体内の化学物質のバランスの乱れ、代謝性疾患などによって変化することがあります。ときに、酸性度の変化によって腎結石が生じやすくなることがあります。

    尿の濃さ(浸透圧とも呼ばれ、おおまかには尿比重によって表されます)は、脱水状態かどうかや水分の摂取量など、種々の要因によって大きく変わってきます。尿の濃さは、ときに腎臓の機能低下を診断する上でも重要になる場合があります。最終的に腎不全に至る病気の初期段階では、まず腎臓が尿を濃縮する能力が低下します。尿の濃さを測定する特殊な検査では、12~14時間にわたって水分の摂取が禁止されます。また、バソプレシン(抗利尿ホルモンとも呼ばれます)を注射する検査法もあります。その後、尿の濃さが測定されます。正常な状態であれば、いずれの検査でも尿の濃さは非常に高くなるはずですが、一部の腎疾患(腎性尿崩症など)では、たとえ他の腎機能が正常であっても、尿が濃縮されません。

    尿中の沈渣(ちんさ)を顕微鏡で調べることによって、想定される腎臓や尿路の病気について情報を得ることができます。正常な尿には、尿路の内側の表面から剥がれ落ちた細胞などの破片が少量含まれています。これに対して腎臓や尿路の病気がある場合には、通常よりも多くの細胞が尿中に剥がれ落ちるため、その尿を遠心分離機(遠心力を利用して液体中の成分を分離する機器)にかけるか静かに置いておくと、これらの物質が沈殿して沈渣が形成されます。

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