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尿道炎

執筆者:

Talha H. Imam

, MD, University of Riverside School of Medicine

レビュー/改訂 2022年 12月
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やさしくわかる病気事典

尿道炎は、尿が膀胱から体外に排出されるまでに通過する管である尿道の感染症です。

  • 尿道炎の最も一般的な原因は細菌(性行為によって感染するものも含む)です。

  • 症状としては、排尿時の痛み、頻尿、尿意切迫などが挙げられ、ときに分泌物もみられます。

  • 通常、感染の治療には抗菌薬を投与します。

尿道炎の原因

性感染症 性感染症(STI)の概要 性感染症(性病)とは、例外はあるものの、一般的には性的接触によって人から人に感染する病気のことです。 性感染症を引き起こす病原体の種類としては、細菌、ウイルス、原虫などがあります。 キスや濃厚な体の接触を介して広がる感染症もあります。 感染が体の他の部分に広がり、ときには深刻な結果に至る場合もあります。... さらに読む 性感染症(STI)の概要 は尿道炎でよくみられる原因です。 淋菌感染症 淋菌感染症 淋菌感染症(淋病)は、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)という細菌によって引き起こされる性感染症で、尿道、子宮頸部、直腸、のどの粘膜や、眼の前部を覆う膜(結膜と角膜)を侵します。 通常は性的接触により感染します。 通常は、陰茎や腟から分泌物が生じたり、頻尿になったり、急に尿意を催したりします。 まれに、淋菌が関節、皮膚、心臓に感染することもあります。... さらに読む 淋菌感染症 の原因菌である淋菌(Neisseria gonorrhoeae)など、性行為によって感染する微生物が、感染したパートナーとの性交によって尿道に感染することがあります。クラミジアや単純ヘルペスウイルスも性行為で感染することが多く、尿道炎の原因になりえます(クラミジア感染症とその他の感染症 クラミジア感染症とその他の非淋菌感染症 クラミジアによる感染症としては、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)という細菌によって引き起こされる尿道、子宮頸部、直腸の性感染症などがあります。この種の細菌は、白眼の部分を覆う膜(結膜)やのどにも感染することがあります。ウレアプラズマ属(Ureaplasma)やマイコプラズマ属(Mycoplasma)などの他の細菌が尿道の感染症を引き起こすこともあります。... さらに読む クラミジア感染症とその他の非淋菌感染症 を参照)。男性の尿道炎の多くは淋菌によるものです。この細菌は女性の尿道に感染することもありますが、腟、子宮頸部、子宮体部、卵巣および卵管への感染の方が比較的多くみられます。顕微鏡でしか見ることのできない微小な寄生虫である トリコモナス トリコモナス症 トリコモナス症は、腟トリコモナス(Trichomonas vaginalis)という原虫によって引き起こされる腟または尿道の性感染症で、腟が過敏になったり分泌物が出たりするほか、ときに排尿に問題がみられます。 女性では、泡状で黄緑色の生臭いおりものが生じ、陰部が過敏になり痛みが生じることがあります。 男性では症状が出にくいのですが、少数ながらも陰茎から泡状の分泌物が出て、排尿時に軽度の痛みや不快感が生じることがあります。... さらに読む も、男性に尿道炎を起こします。また、尿道炎以外の尿路感染症を引き起こすことの多い細菌(大腸菌 大腸菌(Escherichia coli)感染症 大腸菌(Escherichia coliE. coli])は グラム陰性細菌の一種で、健康な人の腸に存在しますが、特定の菌株は消化管、尿路、または他の部位で感染症を引き起こすことがあります。 大腸菌(E. coli)による感染症で最も頻度が高いのは尿路感染症ですが、汚染された食品(加熱調理が不十分な牛ひき肉など)を食べたり、感染した動物に触れたり、汚染された水を飲み込んだりすることで腸管感染症... さらに読む など)によって尿道炎が引き起こされることもあります。

尿道炎の症状

通常は男女とも、排尿時の痛み、頻尿、尿意切迫などの症状がみられます。症状がまったく出ない場合もあります。男性患者で 淋菌感染症 淋菌感染症 淋菌感染症(淋病)は、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)という細菌によって引き起こされる性感染症で、尿道、子宮頸部、直腸、のどの粘膜や、眼の前部を覆う膜(結膜と角膜)を侵します。 通常は性的接触により感染します。 通常は、陰茎や腟から分泌物が生じたり、頻尿になったり、急に尿意を催したりします。 まれに、淋菌が関節、皮膚、心臓に感染することもあります。... さらに読む 淋菌感染症 または クラミジア クラミジア感染症とその他の非淋菌感染症 クラミジアによる感染症としては、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)という細菌によって引き起こされる尿道、子宮頸部、直腸の性感染症などがあります。この種の細菌は、白眼の部分を覆う膜(結膜)やのどにも感染することがあります。ウレアプラズマ属(Ureaplasma)やマイコプラズマ属(Mycoplasma)などの他の細菌が尿道の感染症を引き起こすこともあります。... さらに読む クラミジア感染症とその他の非淋菌感染症 が原因の場合には、通常は尿道からの分泌物の排出がみられます。その分泌物は、原因が淋菌の場合は黄緑色でネバネバしたものであることが多く、淋菌以外の場合は透明で薄いものであることがあります。女性の場合は、分泌物がみられることは多くありません。

尿道炎の合併症

尿道の感染症を放置したり治療が不十分だったりすると、 尿道が狭くなることがあります(狭窄) 尿道狭窄 尿道狭窄とは、瘢痕によって尿道が狭くなった状態です。 尿道狭窄は以下の場合があります。 出生時からみられる 感染症やけがの後に発生する 尿道狭窄の原因で最も多いのは過去の外傷です。性感染症などの過去の感染は、今では原因になることはまれです。原因が分からないケースもよくあります。 さらに読む 。尿道に狭窄が起きると、膀胱や腎臓に感染の発生するリスクが高まります。 淋菌感染症 淋菌感染症 淋菌感染症(淋病)は、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)という細菌によって引き起こされる性感染症で、尿道、子宮頸部、直腸、のどの粘膜や、眼の前部を覆う膜(結膜と角膜)を侵します。 通常は性的接触により感染します。 通常は、陰茎や腟から分泌物が生じたり、頻尿になったり、急に尿意を催したりします。 まれに、淋菌が関節、皮膚、心臓に感染することもあります。... さらに読む 淋菌感染症 (淋病)を治療せずに放置すると、まれに尿道の周囲に膿がたまることがあります(膿瘍)。膿瘍が発生すると尿道の壁の一部が袋状に膨らみ(尿道憩室)、この部分にも感染が起こってきます。膿瘍が破れて皮膚、腟、直腸などに向けて穴があくと、この異常な通路(尿道瘻[にょうどうろう])を通って尿が流れ出るようになります。

尿道炎の診断

  • 尿検査

  • ときに尿道スワブ

  • ときに尿培養検査

医師は通常、症状と診察の結果に基づいて尿道炎を診断できます。分泌物がみられる場合には、柔らかい綿棒を尿道の下端に挿入し、少量の分泌物を採取します。この綿棒を検査室で分析することで原因菌の種類が特定されます。

尿道炎の予防と治療

  • 一般的な原因には抗菌薬、単純ヘルペスウイルスに対しては抗ウイルス薬

  • 性感染症に対しては、パートナーの治療

治療法は感染の原因によって異なります。しかし、尿道炎の原因菌が特定されるまでには数日間を要します。そのため通常は、最も一般的な原因菌を対象とする抗菌薬で治療を開始します。性的に活動的な男性患者に対する治療では、通常、淋菌感染症に対するセフトリアキソンの注射に加え、クラミジアに対するアジスロマイシンの経口投与またはドキシサイクリンの経口投与を行います。検査結果から淋菌とクラミジアの可能性が否定されている場合、男性患者ではトリコモナス症などの他の疾患がないか検査する必要があります。女性患者の場合は、 膀胱炎 膀胱の感染症 膀胱炎とは、膀胱に生じた感染症です。 通常、膀胱炎の原因は細菌です。 症状としては、頻尿と排尿時の痛みや灼熱感が最もよくみられます。 診断は、しばしば症状に基づいて下されますが、通常は尿サンプルの検査も行われます。 感染自体と、しばしば症状に対する治療として、薬剤の使用が必要になります。 さらに読む 膀胱の感染症 の場合と同じように治療されます。単純ヘルペスウイルスの感染症には、アシクロビルなどの抗ウイルス薬の使用が必要になることがあります。原因として性感染症が疑われる場合は、患者のセックスパートナーも治療のため評価する必要があります。尿道炎と診断された男性は、 HIV ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症とは、ある種の白血球を次第に破壊し、後天性免疫不全症候群(エイズ)を引き起こすことのあるウイルス感染症です。 HIVは、ウイルスやウイルスに感染した細胞を含む体液(血液、精液、腟分泌液)と濃厚に接触することで感染します。 HIVはある種の白血球を破壊し、感染症やがんに対する体の防御機能を低下させます。... さらに読む ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 および 梅毒 梅毒 梅毒は、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)という細菌によって引き起こされる性感染症です。 梅毒の症状は、見かけ上は健康な時期をはさんで、3段階で生じます。 まず患部に痛みのない潰瘍が現れ、第2期では、発疹、発熱、疲労感、頭痛、食欲減退がみられます。 治療しないでいると、第3期には、大動脈、脳、脊髄、その他の臓器が侵されることがあります。 医師は通常、患者に梅毒があることを確認するために2種類の血液検査... さらに読む 梅毒 についても検査を受けるべきです。

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