吐き気とは、嘔吐をしそうになる不快な感覚のことです。めまい、腹部の漠然とした不快感、食欲不振を感じることもあります。
嘔吐とは、胃の強い収縮によって、胃の内容物が食道に押し上げられて口から出ることです。(乳児と小児の嘔吐 乳児と小児の嘔吐 嘔吐は、食べたものを自分の意思に反して吐き出してしまうことで、不快感を伴います。乳児では、嘔吐と溢乳(いつにゅう)を区別する必要があります。乳児では授乳中や授乳直後(典型的にはげっぷをさせるとき)に少量の溢乳がしばしばみられます。溢乳は授乳が速すぎたり、空気を飲み込んだり、授乳量が多すぎたりすることが原因で起こりますが、明らかな原因がなくても起こることがあります。嘔吐は通常、何らかの病気が原因で起こります。育児経験がある親は通常、溢乳と... さらに読む も参照のこと。)嘔吐すると胃が空になり、少なくとも一時的には吐き気がかなり治まることがよくあります。嘔吐は極めて不快で、激しいことがあります。激しい嘔吐では、胃の内容物を1メートル以上飛ばすこともあります(噴出性嘔吐)。嘔吐は逆流とは異なり、 逆流 逆流と反芻 逆流とは、吐き気がなく、腹部の筋肉も強く収縮させていないのに、食道や胃から食べものを吐き戻すことです。反芻(はんすう)とは、明らかな身体的原因がない逆流のことです。 正常であれば、胃と食道の間にある輪状の筋肉(括約筋)が逆流の防止を助けています。胃から酸が湧き上がってくることにより、酸っぱい味や苦い味がする物質の逆流が起こることがあります。食道の狭窄部や 閉塞部から、あるいは... さらに読む とは、腹部の強い収縮や吐き気がない状態で、胃の内容物を吐き戻すことです。例えば、 アカラシア アカラシア アカラシアとは、食道のリズミカルな収縮(ぜん動)がみられないか弱くなり、下部食道括約筋が正常に弛緩(しかん)しなくなり、下部食道括約筋の静止圧が上昇する病気です。 この病気の原因は通常は不明ですが、ウイルスにさらされた後に発生することがあります。 アカラシアの主な症状は、嚥下困難、液体や食べものの吐き戻し、胸痛、体重減少です。 診断は内圧検査と食道造影検査の結果に基づいて下されます。... さらに読む や ツェンカー憩室 ツェンカー憩室(咽頭憩室) 食道憩室(けいしつ)とは、食道の一部が異常な袋状ないしポケット状になったものです。まれに、嚥下困難や 逆流(吐き気や腹筋の強い収縮がない状態で食べものを吐き戻すこと)を引き起こします。 原因は憩室の種類によって異なります。 症状としては、食べものの吐き戻しや嚥下困難などがあります。 診断は食道造影検査のほか、しばしば上部消化管内視鏡検査の結果に基づいて下されます。 必要な場合の治療としては、手術などを行います。 さらに読む の場合、吐き気を伴わずに未消化の食べものが逆流することがあります。
嘔吐物の性状は通常、最後に食べた食品を反映しています。嘔吐物に食べもののかたまりが混じっていることもあります。血を吐いた場合(吐血 消化管出血 消化管からの出血は、口から肛門までのどの部分でも起こる可能性があります。出血は肉眼で容易に見える場合(顕性の出血)もあれば、量が少なすぎて見えない場合(潜血)もあります。潜血は、 特別な化学物質を用いて便のサンプルを検査することでしか検出できません。 吐血は、嘔吐物の中に目に見える量の血液が含まれている場合で、上部消化管(通常は食道、胃、... さらに読む )、通常は嘔吐物が赤色ですが、血液が部分的に消化されていると、嘔吐物がコーヒーかすのように見えます。胆汁が混じっている嘔吐物は苦味があり、黄緑色をしています。
合併症
嘔吐では、不快感に加えて、以下の合併症を伴うことがあります。
嘔吐物の吸入(誤嚥[ごえん])
食道の裂傷(マロリー-ワイス症候群 食道裂傷(マロリー-ワイス症候群) 食道裂傷(マロリー-ワイス症候群)は、食道壁の穿孔(せんこう)には至らない裂傷のことです。 激しい嘔吐によって裂傷が起きることがあります。 症状は嘔吐物中に血液がみられることなどです。 診断は上部消化管内視鏡検査の結果に基づいて下されます。 必要な場合は、出血を止める処置が治療に含まれます。 さらに読む 、 ブールハーフェ症候群 食道破裂 食道破裂は、食道壁を貫いた裂傷のことです。 破裂は手術や激しい嘔吐のほか、飲み込んだ食べものの大きなかたまりが食道にとどまることによって起こりますが、自然に破裂が起こることもあります。 症状としては、胸痛、腹痛、発熱、低血圧などがあります。 食道破裂は死に至る可能性があります。 診断はX線検査の結果に基づいて下されます。 さらに読む )
脱水と電解質異常
低栄養と体重減少
意識を失った場合やもうろうとした場合は、嘔吐物を肺に吸い込んでしまうことがあります。嘔吐物に含まれている酸により、肺が強く刺激されます。
嘔吐すると食道内の圧力が大幅に上昇しますが、重度の嘔吐では食道粘膜が裂けることがあります(食道裂傷 食道裂傷(マロリー-ワイス症候群) 食道裂傷(マロリー-ワイス症候群)は、食道壁の穿孔(せんこう)には至らない裂傷のことです。 激しい嘔吐によって裂傷が起きることがあります。 症状は嘔吐物中に血液がみられることなどです。 診断は上部消化管内視鏡検査の結果に基づいて下されます。 必要な場合は、出血を止める処置が治療に含まれます。 さらに読む を参照)。裂傷が小さい場合は、痛みがあり、ときに出血しますが、裂傷が大きいと死に至ることもあります。
嘔吐物で水分とミネラル(電解質)が失われるため、激しい嘔吐では、 脱水 脱水 脱水は体内の水分が不足している状態です。 嘔吐、下痢、大量発汗、熱傷(やけど)、腎不全、利尿薬の使用により、脱水になる場合があります。 脱水が進むとのどの渇きを感じ、発汗や排尿も少なくなります。 脱水がひどくなると、錯乱やめまいを感じるようになります。 水を飲むか、場合によっては水分を静脈内投与して、失われた水分と血液中に溶けているナトリウムやカリウムなどの無機塩(電解質)を補給する治療が行われます。 さらに読む と 電解質異常 電解質の概要 人の体内の水分量は体重の2分の1をはるかに上回ります。体内の水分は様々な空間(体液コンパートメントと呼ばれています)に制限されて存在していると考えられています。主に次の3つのコンパートメントがあります。 細胞内の体液 細胞の周囲の体液 血液 体が正常に機能するには、これらの各領域で体液量が偏らないようにする必要があります。 さらに読む が起こることがあります。これらの合併症には特に新生児や乳児がかかりやすくなっています。
吐き気と嘔吐の原因
脳の嘔吐中枢が活発になると吐き気や嘔吐が起こります。典型的な原因は、消化管もしくは脳の病気または摂取した物質が関与しています。
一般的な原因
吐き気と嘔吐の最も一般的な原因は以下のものです。
胃腸炎(消化管の感染症)
薬
毒性物質
吐き気と嘔吐は、一般的に消化管の何らかの機能障害に伴って発生しますが、特に多いのは 胃腸炎 胃腸炎 に伴う場合です。あまり一般的でない消化管の病気として 腸の閉塞 腸閉塞 腸閉塞とは、腸管内で食べもの、水分、消化分泌液、ガスの通過が完全に止められているか、深刻な通過障害が起きている状態のことです。 成人で最も一般的な原因は、以前に受けた腹部の手術による瘢痕(はんこん)組織、ヘルニア、腫瘍です。 痛み、腹部膨満、食欲不振がよくみられます。 診断は、身体診察とX線検査の結果に基づいて下されます。 閉塞を取り除くための手術がしばしば必要になります。 さらに読む があり、飲食物が閉塞によって胃に戻るため、嘔吐が起こります。嘔吐を引き起こす他の多くの腹部疾患は 激しい腹痛 急性腹痛 腹痛はよく起こりますが、多くの場合軽度です。しかし、強い腹痛が急に起きた場合は、ほとんどが重大な問題であることを示しています。このような腹痛は、手術が必要であることを示す唯一の徴候であるかもしれず、速やかに診察を受ける必要があります。高齢者やHIV感染者、免疫抑制薬(コルチコステロイドなど)を使用している人では、同じ病気の若い成人や健康な成人よりも腹痛が弱いことがあり、病状が重篤な場合でも腹痛がよりゆっくり発症することがあります。幼い子... さらに読む の原因にもなります。そのような腹部疾患(例えば、 虫垂炎 虫垂炎 虫垂炎とは、虫垂に感染と炎症が起きた状態です。 しばしば虫垂の内部に閉塞が生じることで虫垂が炎症を起こし、感染症が生じます。 腹痛、吐き気、発熱がよくみられます。 試験開腹または画像検査(CT検査や超音波検査など)が行われます。 治療としては、虫垂を切除する手術と感染症に対する抗菌薬の投与が行われます。 さらに読む や 膵炎 膵炎の概要 膵炎とは膵臓の炎症です。 膵臓は木の葉の形をした臓器で、長さは約13センチメートルあります。周囲を胃の下側と小腸の最初の部分(十二指腸)に囲まれています。 膵臓には主に以下の3つの機能があります。 消化酵素を含む膵液を十二指腸に分泌する 血糖値の調節を助けるインスリンとグルカゴンというホルモンを分泌する さらに読む )では、典型的には嘔吐よりもむしろ痛みのために医療機関を受診することになります。
アルコール、オピオイド鎮痛薬(モルヒネなど)、大麻(マリファナ)、化学療法薬を含めて、多くの薬が吐き気と嘔吐を引き起こす可能性があります。毒性物質(例えば鉛や、一部の食品や植物に含まれるもの)、激しい吐き気と嘔吐を引き起こす可能性があります。
あまり一般的でない原因
吐き気と嘔吐のあまり一般的でない原因としては、以下のものがあります。
脳や中枢神経系の病気
乗り物酔い
代謝の変化や全身の病気(全身性疾患)
精神障害
周期性嘔吐症候群
感染症(髄膜炎 髄膜炎に関する序 髄膜炎とは、髄膜(脳と脊髄を覆う組織層)とくも膜下腔(髄膜と髄膜の間の空間)の炎症です。 髄膜炎は細菌、ウイルス、または真菌、感染症以外の病気、薬剤などによって引き起こされます。 髄膜炎の症状には、発熱、頭痛、項部硬直(あごを胸につけるのが難しくなる症状)などがありますが、乳児では項部硬直がみられない場合もあり、非常に高齢の人や免疫系を抑... さらに読む や 脳炎 脳炎 脳炎とは、ウイルスが脳に直接感染して起こることもあれば、ウイルスやワクチン、その他の物質が炎症を誘発して起こることもあります。炎症が脊髄に波及することもあり、その場合は脳脊髄炎と呼ばれます。 発熱、頭痛、けいれん発作が起こることがあり、眠気、しびれ、錯乱をきたすこともあります。 通常は頭部のMRI検査と腰椎穿刺が行われます。 治療としては、症状を緩和する処置が行われ、ときに抗ウイルス薬が用いられることもあります。... さらに読む など)、 片頭痛 片頭痛 片頭痛は、典型的には中等度から重度の脈打つような痛みやズキズキする痛みす。頭の片側に生じることもあれば、両側に生じることもあります。しばしば身体活動、光、音、匂いなどによって悪化し、吐き気や嘔吐を伴ったり、音、光、匂いに過敏になったりします。 片頭痛は、睡眠不足、天候の変化、空腹、感覚への過度の刺激、ストレス、その他の要因が引き金となって発生します。 身体活動、光、音、または匂いによって悪化することがあります。... さらに読む 、頭蓋骨内部の圧力(頭蓋内圧)が高まる病気など、脳や中枢神経系の特定の病気によって嘔吐中枢が活性化されることもあります。頭蓋内圧が高まる病気には、 脳腫瘍 脳腫瘍の概要 脳腫瘍は脳内で増殖する組織で、がんの場合(悪性)と、がんでない場合(良性)があります。脳内で発生するものと、体の別の部位から脳に転移してきたものとがあります。 症状としては、頭痛、人格の変化(抑うつ、不安、自制がきかなくなるなど)、脱力、異常感覚、平衡感覚の消失、集中力の低下、けいれん発作、協調運動障害などがみられます。 脳腫瘍は画像検査で発見できますが、しばしば確認のために腫瘍の生検が必要になります。... さらに読む 、 脳出血 脳内出血 脳内出血は、脳の中で起こる出血です。 脳内出血は通常、慢性高血圧によって起こります。 多くの場合、最初の症状は重度の頭痛です。 診断は、主に症状と画像検査の結果に基づいて下されます。 治療としては、出血に寄与した可能性のある病態の管理(血圧が非常に高ければ、降圧するなど)のほか、まれに、貯まった血液を手術で除去することがあります。 さらに読む 、重度の 頭部損傷 頭部外傷の概要 脳が関与する頭部外傷は特に懸念されます。 頭部外傷の一般的な原因には、転倒や転落、自動車事故、暴行、スポーツやレクリエーション活動中の事故などがあります。 軽症の頭部外傷では頭痛やめまいが起こることがあります。 重症の頭部外傷では、意識を失ったり、脳機能障害の症状が現れたりすることがあります。... さらに読む などがあります。
内耳の平衡器官(前庭器官)は嘔吐中枢とつながっています。このつながりがあるため、一部の人は船、車、飛行機の揺れや、内耳の特定の病気(内耳炎 化膿性内耳炎 化膿性内耳炎とは、内耳の細菌感染症で、しばしば難聴と平衡感覚の喪失を引き起こします。 内耳は骨迷路という空洞に収まっています。内耳には聴覚器官(蝸牛)と平衡器官が存在します( 内耳の概要も参照)。化膿性内耳炎は通常、重度の中耳の感染症( 急性中耳炎)やある種の 髄膜炎の経過中に細菌が内耳に入った場合に起こるか、または頭蓋骨の側頭骨が骨折した際の合併症として発生します。また、鼓膜に長期間穴があいている(中耳炎が繰り返し起こっている人などで... さらに読む 、 頭位性めまい 良性発作性頭位めまい症 良性発作性頭位めまい症はよくみられる病気で、頭の位置が変化して内耳にある後半規管が刺激されると、それに反応して、短時間の回転性めまい(動いたり回転したりしているような感覚)が生じます。 頭を動かしたときに、自分自身か周囲のものが動いたり回転したりしているかのような感覚が短時間(通常は1分未満)生じます。 吐き気を感じ嘔吐することもあり、眼球の動きが異常になることもあります。 診断は、症状の内容と症状が起こる状況、および身体診察の結果に基... さらに読む など)によって吐き気を催します。
妊娠の初期などの体内の代謝の変化がある場合や、コントロールが非常に困難な 糖尿病 糖尿病 糖尿病は、体がインスリンを十分に生産しないかインスリンに正常に反応しないため、血中の糖分の濃度(血糖値)が異常に高くなる病気です。 排尿が増加し、のどが渇くほか、減量しようとしていなくても体重が減少することがあります。 糖尿病は神経の損傷をもたらし、触覚の問題を引き起こします。... さらに読む または重度の 肝不全 肝不全 肝不全は、肝機能が大幅に低下した状態です。 肝不全は、肝臓に損傷が起きる病気や物質により引き起こされます。 ほとんどの患者は 黄疸(皮膚と眼が黄色くなる)になり、疲れて脱力を覚え、食欲を失います。 他の症状には、腹部への体液の貯留( 腹水)や、皮下出血や出血が起きやすい傾向などがあります。 医師は通常、症状と身体診察、および血液検査の結果に基づいて、肝不全の診断を下すことができます。 さらに読む や 腎不全 腎不全の概要 この章には、 COVID-19および急性腎障害(AKI)に関する新しいセクションが含まれています。 腎不全とは、血液をろ過して老廃物を取り除く腎臓の機能が十分に働かなくなった状態のことです。 腎不全の原因としては、様々なものが考えられます。腎機能が急激に低下する場合( 急性腎障害、急性腎不全とも呼ばれます)もあれば、ゆっくりと低下していく... さらに読む がある場合にも、吐き気と嘔吐が生じることがあります。
慢性悪心嘔吐症候群は機能性疾患です。これはつまり、吐き気や嘔吐が、体の病気や特定の精神障害によって生じたものではなく、脳と消化器系の間で交わされる情報伝達のされ方の問題である可能性があります。この症候群では、厄介な吐き気、嘔吐、またはその両方が、直近の3カ月を含む6カ月以上にわたって週1回以上の頻度で発生し、検査しても原因が特定できません。
心理的な問題によって吐き気や嘔吐が起こることもあります。このような嘔吐は故意による場合があります。例えば、過食症の場合、意図的に嘔吐して体重を減らそうとします。故意ではない場合もあります。例えば、学校へ行くことを恐れる小児がその心理的苦痛に対する反応として嘔吐することがあります。
周期性嘔吐症候群は、様々な間隔で激しい嘔吐の発作(ときには吐き気のみ)を起こすまれな病気です。発作がない期間は異常を感じません。通常は小児期から現れますが、ときには成人期まで続くことがあります。成人期から現れる周期性嘔吐症は、多くが長期にわたるマリファナの使用によるものです。嘔吐は、熱い風呂によって軽減することができ、マリファナの使用をやめると止みます。
吐き気と嘔吐の評価
吐き気や嘔吐があっても、必ずしも直ちに医師による評価が必要なわけではありません。以下では、どのようなときに医師の診察を受ける必要があるかと、診察を受けた場合に何が行われるかについて説明しています。
警戒すべき徴候
特定の症状や特徴に注意が必要です。具体的には以下のものがあります。
頭痛、項部硬直、錯乱、意識レベルの低下
持続性の腹痛
腹部に触れたときの圧痛
腹部膨隆(腫脹)
受診のタイミング
警戒すべき徴候がみられる人は、直ちに医師の診断を受ける必要があり、血を吐いた人や最近頭部にけがをした人も同様です。
吐き気と嘔吐があっても警戒すべき徴候がない人は、嘔吐が24~48時間より長く続く場合または数口分より多くの水分補給に耐えられない場合には、医師の診察を受ける必要があります。嘔吐が数回あっても(下痢の有無は問わない)、少なくともある程度の水分補給に耐えられる場合は、主治医に電話で相談してください。年齢、他の症状、病歴(がんや糖尿病など)に応じて医師は、診察を受けるように勧めたり、自宅で簡単な治療法を試みることを提案したりします。
医師が行うこと
医師はまず、症状と病歴について質問します。次に身体診察を行います。病歴聴取と身体診察で得られた情報から、多くの場合、嘔吐の原因と必要になる検査を推測することができます(吐き気と嘔吐の主な原因と特徴 吐き気と嘔吐の主な原因と特徴 )。
病歴聴取では、妊娠していないか、糖尿病、片頭痛、肝疾患、腎疾患、がん(化学療法や放射線療法を受けた時期も含む)がないかを尋ねます。ある種の物質(アセトアミノフェンや一部のキノコなど)は摂取してから数日経過しないと毒性が生じないことがあるため、最近服用した薬や摂取したものをすべて記録します。
身体診察の際、医師は以下のことを調べます。
重篤な腹部疾患の徴候(腹部膨隆や触診時の重度の圧痛など)
脳疾患を疑わせる意識レベルの低下やその他の神経学的異常
医師は、瘢痕組織の線維帯(癒着)が形成され 腸閉塞 腸閉塞 腸閉塞とは、腸管内で食べもの、水分、消化分泌液、ガスの通過が完全に止められているか、深刻な通過障害が起きている状態のことです。 成人で最も一般的な原因は、以前に受けた腹部の手術による瘢痕(はんこん)組織、ヘルニア、腫瘍です。 痛み、腹部膨満、食欲不振がよくみられます。 診断は、身体診察とX線検査の結果に基づいて下されます。 閉塞を取り除くための手術がしばしば必要になります。 さらに読む を引き起こすことがあるため、腹部の手術歴に注意します。
嘔吐を引き起こす病気(片頭痛など)の病歴がある場合は、単にその病気が再発した可能性もありますが、医師は新たな別の問題の徴候がみられないか徹底的に調べます。
検査
検査が必要かどうかは、病歴聴取と身体診察の結果によって決まりますが、警戒すべき徴候の有無と特定の病気を疑わせる所見の有無が特に重要になります。(吐き気と嘔吐の主な原因と特徴 吐き気と嘔吐の主な原因と特徴 )。
以下の検査を行うことがあります。
妊娠検査
血液と尿の検査
一般的に、妊娠可能年齢の女児と女性は妊娠検査を受ける必要があります。
嘔吐が数回だけあった(下痢の有無は問わない)以外は健康で、他の症状がみられない成人や年長児では、一般に検査を受ける必要はありません。
嘔吐が激しい場合、1日以上続いている場合、または脱水の徴候がみられる場合は、血液(特に電解質濃度とときに肝機の検査)と尿の臨床検査を受ける必要があります。
吐き気と嘔吐の治療
具体的な病気を治療します。重篤な基礎疾患がなく、脱水がみられない場合は、最後の嘔吐から約30分後に少量の清澄液が投与されることがあります。一般的に最初は30ミリリットルまたは60ミリリットル投与されます。真水が適切ですが、薄い澄んだスープや、砂糖を入れた薄い茶が投与されることもあります。スポーツドリンクは、特に利点があるわけでありませんが、害にはなりません。これらの液体に耐えられれば、量を徐々に増やします。量を増やしても耐えられれば、通常の食事を再開することがあります。炭酸飲料とアルコールは避ける必要があります。
脱水がわずかである場合でも、医師は通常、患者が口からの水分補給に耐えられるかぎりは、 経口補水液 治療 脱水は体内の水分が不足している状態です。 嘔吐、下痢、大量発汗、熱傷(やけど)、腎不全、利尿薬の使用により、脱水になる場合があります。 脱水が進むとのどの渇きを感じ、発汗や排尿も少なくなります。 脱水がひどくなると、錯乱やめまいを感じるようになります。 水を飲むか、場合によっては水分を静脈内投与して、失われた水分と血液中に溶けているナトリウムやカリウムなどの無機塩(電解質)を補給する治療が行われます。 さらに読む を勧めます。脱水や電解質異常が著しい場合、嘔吐が止まらない場合、および液体を飲むことに耐えられない場合は、通常は輸液や静脈からの薬の投与(静脈内投与)が必要です。
一部の成人や青年に対して医師は、嘔吐の原因と重症度に応じて、以下のように吐き気を抑える薬(制吐薬)を投与します。
乗り物酔いによる嘔吐に対しては、抗ヒスタミン薬(ジメンヒドリナートなど)、スコポラミンパッチ、またはその両方
軽度から中等度の症状に対しては、プロクロルペラジン、プロメタジンまたはメトクロプラミド
重度の嘔吐(化学療法に起因する嘔吐を含む)に対しては、ドラセトロン(dolasetron)、オンダンセトロン、グラニセトロン、ときにアプレピタント
要点
吐き気と嘔吐に明らかな原因がある場合や診察結果が正常な場合は、症状に対する治療のみが必要です。
脱水や電解質異常が著しい場合、通常は輸液が必要です。
医師は、腹部の重度かつ突然の変化や頭蓋内の病気の徴候がないか調べます。
妊娠可能年齢の女児と女性に対しては妊娠検査が行われます。