コンピュータ断層撮影

執筆者:Mehmet Kocak, MD, Rush University Medical Center
レビュー/改訂 2019年 5月
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CTでは,ドーナツ型の装置に内蔵されたX線発生源およびX線検出器が,装置を通過する可動式の台に横たわる患者の周囲を回転する。検出器が多いほど迅速に撮影でき解像度の高い画像が得られ,このことは心臓および腹部臓器の撮影には特に重要であるため,通常4~64列またはそれより多くの検出器をもつマルチスライスのスキャナが用いられる。

検出器からのデータは本質的に,患者の全周の複数の角度から撮影された一連のX線画像を表す。画像は直接見るのではなくコンピュータに転送され,コンピュータによってあらゆる望ましい断面における身体のスライスとなる2次元画像(断層図)に素早く再構成される。データを用いて詳細な3次元画像を構成することもできる。

一部のCTでは,台が徐々に動き,1枚(スライス)撮影される毎に停止する。台が撮影中絶えず動き続けるCTもある;患者の体は直線的に移動し,検出器は円状に動くため,一連の画像は患者の周りをらせんを描いて撮影されたように見える―このためヘリカル(スパイラル)CTという用語が付けられている。

断層X線撮影と同じ原理が核医学検査にも適用でき,この場合照射された放射線に対するセンサーが患者の周囲を周り,コンピュータの技術によりセンサーのデータが断層画像に変換される;例えば単一光子放出型CT(SPECT)および陽電子放出断層撮影(PET)などがある。

CTの使用

CTはX線に比べ,様々な軟部組織の密度を区別するのに優れている。CTでははるかに多くの情報が得られるため,ほとんどの頭蓋内,頭頸部,脊柱,胸腔内,および腹腔内の構造の画像検査において,従来のX線より好まれる。病変の3次元画像は,外科医が手術計画を立てるのに役立つ。

CTは,尿路結石の発見および位置の同定に関して最も正確な検査である。

CTは静注造影剤を使用する撮影と単純撮影が可能である。

単純CTは以下の目的で使用される:

  • 脳の急性出血,尿路結石,および肺結節の発見

  • 骨折およびその他の骨異常の描出

静注造影剤は以下の目的で使用される:

  • 軟部組織の腫瘍,感染症,炎症,および外傷のより明瞭な画像を得る

  • 肺塞栓症,大動脈瘤,または大動脈解離が疑われる際などに,血管系を評価する

腹部の画像検査のため,経口またはときに経直腸投与用の造影剤が用いられる;ときに下部消化管を拡張させて見やすくするためにガスが用いられる。消化管での造影剤は,消化管を周囲の構造と区別するのに役立つ。標準的な経口造影剤はバリウム系であるが,腸穿孔が疑われる場合は低浸透圧性のヨード造影剤を用いるべきである。

CTのバリエーション

CTコロノグラフィー(virtual colonoscopy)およびCT小腸造影

CTコロノグラフィーでは,経口造影剤が投与され,柔軟な径の小さいゴム製カテーテルを介して直腸にエアが送られる;その後大腸全体の薄層CTが行われる。CTコロノグラフィーでは,大腸の高分解能の3次元画像が得られ,これは光学的な大腸内視鏡検査の細部および外観をよく再現している。この手技では,5mmの小さな大腸ポリープおよび大腸粘膜病変を描出できる。従来の大腸内視鏡検査の代替法である。CTコロノグラフィーは従来の大腸内視鏡検査に比べ不快感が少なく,意識下鎮静も不要である。従来の下部消化管造影に比べより明瞭かつ詳細な画像が得られ,軟部組織腫瘤を偶発的に描出することもある。CTコロノグラフィーでは大腸全体が可視化される;対照的に,従来の大腸内視鏡検査では患者約10人に1人で右結腸が完全に評価できない。

CTコロノグラフィーの主な短所には以下のものがある:

  • 検査時にポリープを生検できない

  • 放射線曝露

CT小腸造影は似ているが,これは胃および小腸全体の画像を得るものである。大量の低密度経口造影剤(例,0.1%硫酸バリウムを1300~2100mL)を投与し,小腸全体を拡張させる;等張(neutral)または低密度の造影剤を用いると,より放射線不透過性の高い造影剤によって不鮮明になる可能性がある腸管粘膜の詳細の描出に役立つ。

そのため,CT小腸造影の独特の長所は以下にある:

CT小腸造影ではしばしば静注造影剤を使用する。腹部および骨盤の全体の薄層高分解能CT画像が得られる。この画像が複数の解剖学的断面で再構成され,3次元再構成画像が作られる。

CT小腸造影は,以下のような炎症性腸疾患以外の疾患の発見および評価にも用いることができる:

  • 小腸を閉塞する病変

  • 腫瘍

  • 膿瘍

  • 瘻孔

  • 出血源

CTによる静脈性腎盂造影(CT IVP)またはCT尿路造影

腎,尿管,および膀胱の詳細な画像を得るため,静注造影剤が注射される。静注造影剤は腎臓内で濃縮され,集尿系,尿管,膀胱へ排出される。複数のCT画像が得られ,造影剤の不透過性が最大になる時間帯で尿路の高分解能画像が生成される。

従来の排泄性尿路造影は,ほとんどの施設でCT尿路造影に取って代わられている。

CT血管造影

静注造影剤を急速ボーラス注入した後,造影剤により動脈および静脈が不透過性になるに従って薄層画像が素早く撮影される。高度なコンピュータグラフィックス技術を用いて,周囲の軟部組織の画像が除去され,従来の血管造影に類似した非常に詳細な血管の画像が得られる。

CT血管造影は,従来の血管造影の,より安全でより侵襲性の低い代替法である。

CTの短所

CTは全体で,患者への診断目的の放射線曝露のほとんどを占める。複数回の撮影が行われると,合計の線量が比較的高くなり,患者が潜在的なリスクに曝される可能性がある(医療放射線のリスクを参照)。再発性尿路結石がある患者または重度外傷を負った患者で,複数回のCTを行う可能性が最も高い。1回の腹部CTの実効線量は胸部X線500回分に等しいため,放射線曝露のリスクと検査の便益の比較を常に考慮する必要がある。

現在の診療では,CTではできる限り低い線量を用いることが要求される。最新のCTスキャナおよび改訂された画像検査のプロトコルでは,CTからの放射線曝露が劇的に減少している。American College of Radiologyは,CTからの線量を制限する効果的なプログラム,すなわち成人用のImage Wiselyおよび小児用のImage Gentlyを開始した。また,より新しい研究的な手法により,特定のCTおよび特定の適応でさらに大幅に低い線量の使用が評価されている;一部の例では,その線量はX線で照射する放射線と同等となる可能性がある。

一部のCTでは一定のリスクがある静注造影剤を用いる(放射線造影剤および造影剤反応を参照)。しかしながら,経口および経直腸投与用の造影剤にも以下などのリスクがある:

  • 経口または経直腸投与されたバリウムが消化管内腔の外に漏出すると,腹腔に重度の炎症を引き起こす可能性がある。腸穿孔のリスクがある場合は,経口ヨード造影剤が用いられる。

  • 経口ヨード造影剤の誤嚥が,重度の化学性肺炎を引き起こす可能性がある。

  • 腸管内に残ったバリウムが硬化し濃縮され,腸閉塞を引き起こす可能性がある。

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