涼しい気候でも労作により痙攣が誘発されることがあるが,このような痙攣は高温関連ではなく,おそらく体力不足を反映するものである。一方熱痙攣は,体力のある人が汗を多量にかき,喪失した水分を補充するが塩分を補充せず,それにより 低ナトリウム血症 低ナトリウム血症 低ナトリウム血症とは,血清ナトリウム濃度が136mEq/L(136mmol/L)未満に低下することであり,溶質に対する水分の過剰が原因である。一般的な原因としては,利尿薬の使用,下痢,心不全,肝疾患,腎疾患,抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)などがある。特に急性低ナトリウム血症では,臨床症状は主として神経学的なものであり(浸透圧によって水分が脳細胞内に移動し,浮腫を引き起こすことが原因),頭痛,錯乱,および昏迷などがみられる;... さらに読む を起こしている場合に生じることがある。熱痙攣は以下の人に多くみられる:
肉体労働者(例,機関室要員,製鋼所工員,屋根職人,鉱山労働者)
軍隊の訓練生
アスリート
痙攣は突然に,通常は四肢の筋肉に起こる。痙攣は,運動中または運動後に始まることがある。重度の疼痛および手足の攣縮によって,手足が使えなくなることがある。体温は正常で,他に目立った所見はない。痙攣は通常数分から数時間持続する。診断は病歴および臨床的評価による。
(熱中症の概要 熱中症の概要 熱中症(heat illness)には, 筋痙攣(muscle cramps)および 熱疲労(heat exhaustion)から 熱射病(heatstroke)(生命を脅かす緊急事態)まで,様々な重症度のいくつかの疾患が含まれる。熱中症は予防可能であるが,米国では毎年数千人が発症し,死に至る場合もあり,若年アスリートの死因の第2位となっ... さらに読む も参照のこと。)
治療
熱痙攣は,患部の筋肉をしっかりと受動的に伸展させること(例,こむらがえりに対する足関節の背屈)により即座に緩和することがある。患者は,涼しい環境で休息すべきである。水分および電解質を経口で補給する(塩10g[小さじすり切り2杯]を含む水1~2L,または十分な量の市販のスポーツドリンク)か,またはより迅速に緩和する場合もしくは経口補給が不可能な場合には,経静脈的に(生理食塩水1~2L)補給すべきである。十分な身体調整,順化,および適切な塩分バランスの管理が熱痙攣を予防するのに役立つ。