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腐食性物質の摂取

執筆者:

Gerald F. O’Malley

, DO, Grand Strand Regional Medical Center;


Rika O’Malley

, MD, Grand Strand Medical Center

レビュー/改訂 2020年 4月
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腐食性物質(強酸および強アルカリ)は,摂取すると,上部消化管組織の熱傷を起こし,ときに食道穿孔または胃穿孔を来す。症状としては,流涎,嚥下困難,口痛,胸痛,胃痛などがあり,後に狭窄が起きる場合もある。診断的内視鏡検査が必要になることがある。治療は支持療法による。胃内容物の除去および活性炭は禁忌である。穿孔は外科的に治療する。

世界全体で,腐食性物質の摂取は80%が幼児に起きており,これらは通常は偶発的な少量の摂取であり,害を生じないことが多い。成人の場合,腐食性物質の摂取はしばしば,自殺を意図した故意の大量摂取であり,生命を脅かす。一般的な腐食性物質には,固形および液状の配水管や便器の洗浄剤などがある。業務用製品は通常,家庭用製品より高濃度であるため,より有害な傾向がある。

病態生理

酸は凝固壊死を引き起こすが,痂皮が形成され,さらなる損傷が制限される。酸は食道より胃に影響を及ぼす傾向がある。アルカリは急速な融解壊死を引き起こすが,痂皮は形成されず,アルカリが中和ないし希釈されるまで損傷が続いていく。アルカリは胃より食道に影響を及ぼす傾向があるが,大量に摂取した場合には両臓器に重度の影響を及ぼす。

固形製品は,破片が残り組織に付着して熱傷を起こすことで,さらなる摂取を妨げ,限局した損傷を引き起こす傾向にある。液状の製剤は付着しないため,大量の摂取が容易であり,損傷が広範囲に及ぶことがある。液体は誤嚥される場合もあり,上気道の損傷を来す。

症状と徴候

腐食性物質の摂取の初期症状としては,流涎や嚥下困難などがある。重症例では,直ちに口,喉,胸,または腹部に疼痛,嘔吐,およびときに出血が発生する。気道の熱傷は,咳嗽,頻呼吸,吸気性喘鳴(stridor)を引き起こす。

腫大し発赤した組織が口腔内に明らかな場合もあるが,腐食性液体は,さらに奥の消化管の重篤な損傷にもかかわらず口腔内には全く熱傷を引き起こさない場合がある。

食道穿孔の結果,重度の胸痛,頻脈,発熱,頻呼吸,およびショックを伴う,縦隔炎が生じることがある。胃穿孔の結果,腹膜炎が生じることがある。食道穿孔または胃穿孔は,数時間以内,数週間後,またはその間いつでも起こる可能性がある。

たとえ初期症状が軽度で治療が十分であっても,食道狭窄が数週間かけて生じることがある。

診断

  • 内視鏡検査

食道および胃に熱傷があるかどうかは口腔内の熱傷の有無からは確実には示されないため,症状または病歴から摂取が微量でないことが示唆される場合は,食道および胃の熱傷の存在および重症度を確認するために注意深い内視鏡検査が適応となる。内視鏡検査は直ちに行う必要はなく,内視鏡検査を考慮する前に患者の状態を安定化させるべきである。

治療

  • 胃内容物除去の回避

  • ときに経口補液による希釈

腐食性物質の摂取の治療は支持療法による。(注:嘔吐または洗浄による胃内容物の除去は,上部消化管が腐食性物質に再曝露する可能性があるため禁忌である。腐食性の酸に対しアルカリ性物質でpHを補正して中和する試み[またその逆]は,重度の発熱反応を引き起こすので禁忌である。活性炭は,熱傷を受けた組織に浸潤し,内視鏡検査の妨げになる場合があるため禁忌であり,また経鼻胃管の挿入は,すでに損傷のある粘膜をさらに傷つける可能性があるため禁忌である。)

パール&ピットフォール

  • 上部消化管が腐食性物質に再曝露する可能性があるため,嘔吐または洗浄による胃内容物の除去を行ってはならない。

  • 腐食性の酸をアルカリ性物質で中和する試み(またその逆)は行ってはならない。

牛乳または水による希釈は,液体の腐食性物質を摂取した後最初の数分間のみ有用であるが,固体の腐食性物質を摂取した後では,後からの希釈も有用な可能性がある。悪心,流涎,吸気性喘鳴,または腹部膨隆がみられる場合は,希釈は避けるべきである。

要点

  • 腐食性物質または業務用の濃度の腐食性製品が大量に摂取された場合は,重度の影響を疑う。

  • アルカリは,液化(融解)を引き起こすことにより,十分に希釈されるまで障害を引き起こす可能性がある。

  • 胃内容物の除去または活性炭の投与,および酸またはアルカリの中和を行ってはならない。

  • 口腔内に熱傷がなくても食道および胃の熱傷(および内視鏡検査)を考慮する。

  • 穿孔は抗菌薬および手術で治療する。

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