ガラクトースは乳製品,果物,および野菜に含まれる。 常染色体劣性 常染色体劣性 単一の遺伝子によって規定される遺伝性疾患(メンデル遺伝病)は,最も解析が容易で,最も詳細に解明されている。形質の発現に1コピーの遺伝子(1つのアレル)のみを必要とする場合,その形質は優性とみなされる。形質の発現に2コピーの遺伝子(2つのアレル)を必要とする場合,その形質は劣性とみなされる。例外の1つはX連鎖疾患である。男性では通常,X染色体のほとんどのアレルに対して影響を相殺する対のアレルが存在しないため,X染色体のアレルは形質が劣性で... さらに読む の酵素欠損症は3つの臨床症候群を引き起こす。
遺伝性代謝疾患が疑われる患者へのアプローチ 遺伝性代謝疾患が疑われる患者へのアプローチ 遺伝性代謝疾患(先天性代謝異常症)は大半がまれであるため,診断するには強く疑う必要がある。適切な時期に診断を下すことができれば,早期治療が可能となり,急性および慢性の合併症や発達障害,さらには死を回避できる可能性がある。 症状と徴候は非特異的となる傾向があり,それらは遺伝性代謝疾患以外の原因(例,感染)によって生じることの方が多いため,そうしたより可能性の高い原因も検討すべきである。... さらに読む も参照のこと。
ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ欠損症
この欠損症は古典的ガラクトース血症を引き起こす。発生率は出生62,000人当たり1例で,保因者の頻度は125人当たり1例である。乳児は,母乳またはラクトースを含有する人工乳を摂取してから数日ないし数週以内に食欲不振となり,黄疸が出現する。嘔吐,肝腫大,発育不良,嗜眠,下痢,および敗血症(通常は大腸菌[Escherichia coli])が発生するとともに,腎機能障害(例,タンパク尿,アミノ酸尿,ファンコニ症候群)を呈し, 代謝性アシドーシス 代謝性アシドーシス 代謝性アシドーシスは重炭酸イオン(HCO3−)の一次性の減少で,通常は二酸化炭素分圧(Pco2)の代償性の低下を伴う;pHは著明に低下するか,またはわずかに正常範囲を下回る。代謝性アシドーシスは,血清中の未測定陰イオンの有無に基づいて高アニオンギャップまたはアニオンギャップ正常に分類される。原因には,ケトン体および乳酸の蓄積,腎不全,薬物または毒素の摂取(高アニオンギャップ),消化管または腎からのHCO3... さらに読む および浮腫に至る。 溶血性貧血 溶血性貧血の概要 赤血球は正常な寿命(約120日)が尽きると,循環血液から取り除かれる。溶血は,赤血球が未熟な段階で破壊され,それにより赤血球寿命が短くなる(120日未満)ことと定義される。骨髄での赤血球産生が赤血球寿命の短縮を代償できなくなると貧血が生じるが,この状態を非代償性溶血性貧血と呼ぶ。骨髄により代償できている場合,その状態を代償性溶血性貧血と呼... さらに読む を起こすこともある。
無治療の場合,患児は青年になっても低身長にとどまり,認知機能,発語機能,歩行機能,およびバランス機能に障害が現れ,さらに白内障,骨軟化症(高カルシウム尿症が原因),および早発卵巣不全がみられることも多い。Duarte型の患者では表現型がはるかに軽症である。
ガラクトキナーゼ欠損症
浸透圧により水晶体線維に損傷を与えるガラクチトールの産生により白内障を発症し,まれに特発性頭蓋内圧亢進症(偽脳腫瘍)を来す。発生率は出生40,000人当たり1例である。
ウリジン二リン酸ガラクトース4-エピメラーゼ欠損症
良性および重症の表現型が存在する。良性型の発生率は,日本において出生23,000人当たり1例であるが,より重症型の発生率についてはデータが得られていない。良性型は酵素欠損が赤血球および白血球に限られ,臨床的な異常を生じない。重症型は古典的ガラクトース血症と鑑別不能な症候群を引き起こすが,ときに難聴を伴うことがある。
診断
ガラクトース値
酵素分析
ガラクトース血症の診断は臨床的に示唆され,尿中のガラクトースの高値およびグルコース以外の還元性物質(例,ガラクトース,ガラクトース1-リン酸)の検出によって裏付けられ,DNA解析または赤血球,肝組織,もしくはその両方の酵素分析によって確定される。米国の大半の州では,ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ欠損症の 新生児スクリーニング 新生児に対するスクリーニング検査 感染予防のため,全ての職員は手洗いが不可欠である。 母親とパートナーの両者が出産に向けて積極的に関わることが育児への順応に有用である。 分娩後直ちに新生児の呼吸状態,心拍数,皮膚の色,筋緊張,刺激反射を評価すべきである;これらは全て生後1分および5分時に取られるアプガースコアの重要な要素である(... さらに読む をルーチンに行うよう義務づけられている。(遺伝性代謝疾患が疑われる場合の検査 初回検査 遺伝性代謝疾患(先天性代謝異常症)は大半がまれであるため,診断するには強く疑う必要がある。適切な時期に診断を下すことができれば,早期治療が可能となり,急性および慢性の合併症や発達障害,さらには死を回避できる可能性がある。 症状と徴候は非特異的となる傾向があり,それらは遺伝性代謝疾患以外の原因(例,感染)によって生じることの方が多いため,そうしたより可能性の高い原因も検討すべきである。... さらに読む も参照のこと。)
治療
ガラクトース制限食
ガラクトース血症の治療法は食事中のガラクトース源全ての除去であるが,その中でも最も重要なガラクトース源であるラクトースは,母乳のほか,ミルクベースの乳児用人工乳など,あらゆる乳製品に含まれており,甘味料として多くの食品に使用されている。ラクトースを含まない食事によって急性毒性を予防でき,一部の臨床像(例,白内障)が回復するが,神経認知障害は予防できないことがある。多くの患者がカルシウムおよびビタミンの補充を必要とする。エピメラーゼ欠損症の患者では,様々な代謝過程へのウリジン-5′-二リン酸-ガラクトース(UDP-ガラクトース)の供給を確保するために一定量のガラクトース摂取が不可欠である。