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腎奇形

執筆者:

Ronald Rabinowitz

, MD, University of Rochester Medical Center;


Jimena Cubillos

, MD, University of Rochester School of Medicine and Dentistry

レビュー/改訂 2020年 9月
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常染色体劣性多発性嚢胞腎

常染色体劣性多発性嚢胞腎の発生率は,およそ出生10,000~20,000人当たり1例で,染色体6p21に位置するPKHD1遺伝子の変異によって生じる。一方, 常染色体優性多発性嚢胞腎 常染色体優性多発性嚢胞腎 (ADPKD) 多発性嚢胞腎(PKD)は腎嚢胞を形成する遺伝性疾患で,両腎の段階的な腫大をもたらし,ときには腎不全に進行する。ほぼ全種類が家族性の遺伝子変異に起因する。症状と徴候は,側腹部痛,腹痛,血尿,高血圧などである。診断はCTまたは超音波検査による。治療は,腎不全に至る前は対症療法,腎不全発生後は透析または移植である。 ( 嚢胞性腎疾患の概要も参照のこと。) 多発性嚢胞腎(PKD)の遺伝形式は以下の通りである:... さらに読む 常染色体優性多発性嚢胞腎 (ADPKD) の方がはるかに頻度が高く,出生約500~1000人当たり1例に発生する。常染色体優性多発性嚢胞腎の症状は通常,成人期までみられない。まれに,進行の速い病型では乳児期から症状が現れる。偶然または家族歴から嚢胞が発見された小児では,比較的早期に診断される場合もある。

常染色体劣性多発性嚢胞腎では以下の部位が侵される:

  • 腎臓

  • 肝臓

通常,腎臓の著明な肥大とともに内部に小嚢胞が発生し,小児期に腎不全を来すことが多い。

肝臓は腫大するとともに門脈周囲の線維化,胆管増生,散在性の嚢胞形成を呈するが,肝実質の残存部は正常である。線維化のため5~10歳までに門脈圧亢進症を来すが,肝機能は正常か,障害があっても軽度である。

重症度および進行は多様である。重症のものは出生前,出生直後,または小児期早期から腎関連症状で発症するが,比較的軽症の患者では小児期後期または青年期に肝関連症状で発症する。

発症した新生児には腹部膨隆がみられ,腎臓は巨大化して硬く,表面平滑で左右対称である。重症の新生児では,腎機能障害および羊水過少が出生前に与える作用により肺低形成を来すことが多い。

常染色体劣性多発性嚢胞腎の診断は難しく,特に家族歴がない場合は,さらに困難となる。超音波検査により腎臓または肝臓の嚢胞が示される可能性があるが,確定診断には生検が必要となりうる。通常は,妊娠後期の超音波検査により推定的な出生前診断が可能となる。出生後の超音波検査で確定されない場合は,MRIまたはCTが診断に有用である。臨床基準を満たさない場合は,必要であればPKHD1に対する分子生物学的検査を行うことができる。

多くの新生児は肺機能不全により生後数日から数週で死亡する。生存した場合も,大半の患者が進行性腎不全を発症し,しばしば腎代替療法が必要となる。腎移植単独および腎移植と肝移植の併用の経験は限られている。移植を行う場合には, 脾機能亢進症 脾機能亢進症 脾機能亢進症は,脾腫によって引き起こされる血球減少症である。 ( 脾臓の概要も参照のこと。) 脾機能亢進症は,ほぼあらゆる原因による 脾腫から発生しうる二次的過程である( 脾腫の一般的な原因の表を参照)。脾腫が生じると,赤血球に加えて,しばしば白血球および血小板に対する脾臓での機械的な補足および破壊が亢進する。これらの血球系が循環血中で減少すると,代償性の骨髄過形成が起こる。... さらに読む によって生じる白血球減少(全身性感染のリスクを高める)の問題を取り除くため,脾機能亢進症のコントロールが必要である。門脈圧亢進は門脈大静脈または脾腎静脈吻合術により治療できることがあるが,これにより合併症の発生率は低下するものの,死亡率を低下させることはできない。

重複奇形

集合管系の数的過剰が片側性または両側性に発生し,腎盂尿管(副腎盂,重複尿管または三重複腎盂尿管),腎杯,尿管口が障害されることがある。重複腎は,単一の腎単位に複数の集合管系が存在する場合である。この奇形は融合腎とは異なる病態であり,融合腎は,それぞれ個別の集合管系を維持した2つの腎実質単位が融合したものである。一部の重複奇形は尿管異所開口を合併し,さらに 尿管瘤 尿管瘤 尿管奇形は高率で 腎奇形を伴うが,単独で発生することもある。合併症としては以下のものがある: 閉塞, 膀胱尿管逆流,感染症,および結石形成(尿停滞による) 尿失禁(尿管が膀胱を迂回して尿道,会陰部,または腟に連絡することによる) 尿管奇形の診断は,ルーチンの出生前超音波検査の異常(例,水腎症)や,ときに身体診察での異常(例,異所性外尿道口の所見または触知可能な腫瘤)から示唆されることがある。腎盂腎炎または反復する... さらに読む および/または 膀胱尿管逆流症 膀胱尿管逆流症(VUR) 膀胱尿管逆流症とは,尿が膀胱から尿管へ,ときに重症度によっては集合管まで逆流する病態である。逆流は尿路感染症の素因となり,しばしば再発を繰り返す。評価としては,排尿前後の腎臓,尿管,および膀胱の超音波検査とその後にX線透視下で排尿時膀胱尿道造影(VCUG)を施行する方法などがある。治療法は原因および重症度に依存する。 膀胱尿管逆流症(VUR)の原因として最も頻度が高いのは,尿管膀胱移行部の先天的な発育異常である。膀胱壁内尿管のトンネル構... さらに読む (VUR)を伴う場合もある。

管理方針は,排出が独立している各区域の解剖学的形態および機能に依存する。閉塞またはVURを是正するために手術が必要になることがある。

融合奇形

融合奇形では,両側の腎臓が連結するものの,尿管は膀胱の各側面に流入する。このような奇形は,腎盂尿管移行部閉塞, 膀胱尿管逆流症 膀胱尿管逆流症(VUR) 膀胱尿管逆流症とは,尿が膀胱から尿管へ,ときに重症度によっては集合管まで逆流する病態である。逆流は尿路感染症の素因となり,しばしば再発を繰り返す。評価としては,排尿前後の腎臓,尿管,および膀胱の超音波検査とその後にX線透視下で排尿時膀胱尿道造影(VCUG)を施行する方法などがある。治療法は原因および重症度に依存する。 膀胱尿管逆流症(VUR)の原因として最も頻度が高いのは,尿管膀胱移行部の先天的な発育異常である。膀胱壁内尿管のトンネル構... さらに読む 先天性嚢胞性異形成腎 先天性嚢胞性異形成腎 先天性嚢胞性異形成腎は,後腎の形成異常または先天性閉塞性尿路疾患を含む先天奇形の幅広いカテゴリーである。 ( 嚢胞性腎疾患の概要も参照のこと。) 先天性嚢胞性異形成腎では,片側または両側の腎臓が侵される。嚢胞性異形成腎は孤立性先天異常の場合も,奇形症候群の一部(他の臨床的特徴と関連― 嚢胞性腎疾患の分類の表を参照)の場合もある。関連する尿路異常には,腎盂尿管移行部および尿管膀胱移行部の閉塞,... さらに読む ,および前腹部外傷による損傷のリスクを増大させる。

馬蹄腎は最も頻度の高い融合奇形であり,脊柱両側の各腎実質が対応する極(通常は下側)で連結した場合に発生する(腎実質または線維組織の狭部が正中部で連結している)。尿管はこの狭部の上を前方に走行しており,一般に排出機能は正常である。閉塞がある場合,通常は尿管の腎盂深部への陥入に続発するものである。閉塞は腎盂形成術により軽減することができ,これは狭部を切除することなく施行できる。

馬蹄腎の概要
動画

交差性融合腎は2番目に多い融合奇形である。腎実質(両方の腎臓に相当する)は脊柱の片側に存在する。一方の尿管は正中線を越え,融合腎とは対側の膀胱側面に流入する。腎盂尿管移行部閉塞がある場合は,腎盂形成術が第1選択の治療法となる。

融合骨盤腎(pancake kidney)は非常に頻度の低い融合奇形である。単一の骨盤腎に2組の集合管系および尿管が存在する。閉塞がある場合は,再建術が必要となる。

回転異常

回転異常は,通常は臨床的意義をほとんどもたない。超音波検査によりしばしば水腎症が示される。閉塞の可能性が考慮される場合は,核磁気共鳴尿路造影または腎シンチグラフィーによりさらなる評価を行うこともある。

多嚢胞性異形成腎(MCDK)

この病態では,非交通性の嚢胞ならびにそれに介在する充実性組織(線維,原始細管,軟骨病変から成る)で構成される無機能の腎単位がみられる。通常は尿管閉鎖もみられる。対側腎は通常は正常であるが,最大10%の患者で 膀胱尿管逆流 膀胱尿管逆流症(VUR) 膀胱尿管逆流症とは,尿が膀胱から尿管へ,ときに重症度によっては集合管まで逆流する病態である。逆流は尿路感染症の素因となり,しばしば再発を繰り返す。評価としては,排尿前後の腎臓,尿管,および膀胱の超音波検査とその後にX線透視下で排尿時膀胱尿道造影(VCUG)を施行する方法などがある。治療法は原因および重症度に依存する。 膀胱尿管逆流症(VUR)の原因として最も頻度が高いのは,尿管膀胱移行部の先天的な発育異常である。膀胱壁内尿管のトンネル構... さらに読む または腎盂尿管移行部閉塞がみられる。しばしば,腎臓が進行性に退縮し,最終的には超音波画像上で描出されなくなる。腫瘍,感染,高血圧の発生はまれである。

大半の専門家は退縮をモニタリングするための経過観察を推奨している。充実組織や進行性の腫大のほか,まれであるが高血圧や疼痛を伴う嚢腫破裂がみられる場合は,腎摘出術を考慮してもよい。

腎無発生

羊水過少,肺低形成,ならびに四肢および顔面奇形で構成される症候群(古典的Potter症候群)の一部として発生する両側性腎無発生は,数分から数時間で致死的となる。胎児死亡がよくみられる。

片側性腎無発生は腎奇形の約5%を占める。多くの症例は,多嚢胞性異形成腎の子宮内での完全退縮により発生したものである。通常は同側の膀胱三角部および尿管口の欠損を伴う尿管無発生を合併する。しかしながら,同側の副腎は侵されない。単腎の代償性肥大により腎機能は正常に維持されるため,治療は必要ない。腎臓は発生学的には精管および子宮と起源を共有するため,男児には精管無発生,女児には子宮奇形がみられる可能性がある。

腎異形成

腎異形成(組織学的に診断される)では,腎血管系,尿細管,集合管,または排出器官が異常な発達を示す。腎異形成の診断は生検による。

異形成が分節性の場合は,腎異形成の治療は不要であることが多い。異形成が広範囲に及ぶ場合は,腎機能障害のため腎代替療法を含めた腎臓に対する治療が必要になることがある。

変位腎

閉塞および重度の逆流は,適応がある場合(高血圧,感染症の反復,または腎臓の発育遅滞を来す場合)は外科的に是正してもよい。

腎低形成

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