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水頭症

執筆者:

Stephen J. Falchek

, MD, Nemours/Alfred I. duPont Hospital for Children

レビュー/改訂 2018年 12月
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水頭症とは,過剰な量の髄液が集積した状態であり,脳室拡大および/または頭蓋内圧亢進が生じる。症状と徴候には,頭部拡大,泉門膨隆,易刺激性,嗜眠,嘔吐,痙攣などがある。診断は,閉鎖前の泉門がある新生児および幼若乳児では超音波検査により,月齢の高い乳児および小児ではCTまたはMRIによる。治療は重症度と症状の進行度に応じて,経過観察から外科的介入までに及ぶ。

水頭症は,新生児における頭囲拡大の原因として最も頻度の高い病態である。泉門閉鎖後に発生する水頭症は,頭囲拡大や泉門膨隆を引き起こさないが,頭蓋内圧を大幅かつ急激に上昇させる可能性がある。

病因

水頭症は以下によって起こりうる:

  • 髄液流の閉塞(閉塞性水頭症)

  • 髄液の再吸収障害(交通性水頭症)

先天性の場合もあれば,分娩中または出生後の事象に起因した後天性の場合もある。

これまでのところ,先天性水頭症に関連する遺伝子で知られているのは4つのみである。LICAM1AP1S2X連鎖性 X連鎖劣性 単一の遺伝子によって規定される遺伝性疾患(メンデル遺伝病)は,最も解析が容易で,最も詳細に解明されている。形質の発現に1コピーの遺伝子(1つのアレル)のみを必要とする場合,その形質は優性とみなされる。形質の発現に2コピーの遺伝子(2つのアレル)を必要とする場合,その形質は劣性とみなされる。例外の1つはX連鎖疾患である。男性では通常,X染色体のほとんどのアレルに対して影響を相殺する対のアレルが存在しないため,X染色体のアレルは形質が劣性で... さらに読む CCDC88CMPDZ常染色体劣性 常染色体劣性 単一の遺伝子によって規定される遺伝性疾患(メンデル遺伝病)は,最も解析が容易で,最も詳細に解明されている。形質の発現に1コピーの遺伝子(1つのアレル)のみを必要とする場合,その形質は優性とみなされる。形質の発現に2コピーの遺伝子(2つのアレル)を必要とする場合,その形質は劣性とみなされる。例外の1つはX連鎖疾患である。男性では通常,X染色体のほとんどのアレルに対して影響を相殺する対のアレルが存在しないため,X染色体のアレルは形質が劣性で... さらに読む である(1 病因論に関する参考文献 水頭症とは,過剰な量の髄液が集積した状態であり,脳室拡大および/または頭蓋内圧亢進が生じる。症状と徴候には,頭部拡大,泉門膨隆,易刺激性,嗜眠,嘔吐,痙攣などがある。診断は,閉鎖前の泉門がある新生児および幼若乳児では超音波検査により,月齢の高い乳児および小児ではCTまたはMRIによる。治療は重症度と症状の進行度に応じて,経過観察から外科的介入までに及ぶ。 水頭症では,頭蓋腔内の過剰な髄液に起因する内圧上昇により,頭蓋骨が異常に拡大するこ... さらに読む 病因論に関する参考文献 )。

閉塞が最も起こりやすい部位はシルビウス水道であるが,ときに第4脳室の流出路(ルシュカ孔およびマジャンディ孔)にも生じる。閉塞性水頭症の原因で最も頻度の高いのは以下のものである:

  • 中脳水道狭窄症

  • ダンディー-ウォーカー奇形

  • キアリII型奇形

中脳水道狭窄症は,第3脳室から第4脳室への髄液の流出路が狭小化する病態である。原発性の場合と,腫瘍,出血,または感染による中脳水道の瘢痕形成または狭小化に続いて生じる続発症の場合がある。原発性の中脳水道狭窄症としては,真の狭窄が生じる(中脳水道が機能不良の細い水路に分岐する)場合と,中脳水道に中隔が形成される場合がある。原発性の中脳水道狭窄症は遺伝性の場合があり,多くの遺伝性疾患が存在するが,その一部は X連鎖性 X連鎖劣性 単一の遺伝子によって規定される遺伝性疾患(メンデル遺伝病)は,最も解析が容易で,最も詳細に解明されている。形質の発現に1コピーの遺伝子(1つのアレル)のみを必要とする場合,その形質は優性とみなされる。形質の発現に2コピーの遺伝子(2つのアレル)を必要とする場合,その形質は劣性とみなされる。例外の1つはX連鎖疾患である。男性では通常,X染色体のほとんどのアレルに対して影響を相殺する対のアレルが存在しないため,X染色体のアレルは形質が劣性で... さらに読む である(そのため無症状の母親から男児に遺伝する)。

ダンディー-ウォーカー奇形は,胎児期における第4脳室の進行性の嚢胞状拡大から成り,小脳虫部の完全または部分的な無発生および水頭症を引き起こす。胎児におけるマジャンディ孔の形成障害に関連している可能性が高い。脳梁無発生や異所形成など,中枢神経系の合併奇形がよくみられる。ダンディー-ウォーカー奇形は,先天性水頭症症例の5~10%を占める。

キアリII型奇形(かつてのアーノルド-キアリ奇形)では, 二分脊椎 二分脊椎 二分脊椎とは,脊柱の閉鎖に欠陥が生じた状態のことである。原因は不明であるが,妊娠中の葉酸低値によりリスクが増大する。無症状の患児もいるが,病変より下位に重度の神経機能障害を呈する患児もいる。開放性二分脊椎は,超音波検査による出生前診断が可能であり,母体血清中または羊水中α-フェトプロテイン濃度の高値からも示唆される。典型例では,出生後に背部に病変を見ることができる。通常,治療法は手術である。... さらに読む および 脊髄空洞症 脊髄または脳幹空洞症 空洞症は,脊髄内(脊髄空洞症)または脳幹内(延髄空洞症)に液体で満たされた空洞が生じた状態である。素因としては,頭蓋頸椎移行部異常,脊髄外傷の既往,脊髄腫瘍などがある。症状としては,手および腕の弛緩性筋力低下や背部および頸部にケープ様に分布する温痛覚障害などがあり,軽い触覚と位置覚および振動覚は侵されない。診断はMRIによる。治療法としては,原因の是正と外科的手技による空洞のドレナージ,または髄液還流の開放などがある。... さらに読む 脊髄または脳幹空洞症 とともに水頭症が発生する。キアリI型奇形では小脳扁桃が,キアリII型奇形では小脳虫部が著しく伸長し,それが大後頭孔から突出し,さらに上丘および下丘のくちばし様変形(beaking)と上位頸髄の肥厚を伴う。

くも膜下腔における吸収障害は,通常は髄膜の炎症によって引き起こされるが,それはくも膜下腔の感染または出血に続発するもので,分娩の合併症(特に早産児で多い)である くも膜下出血 くも膜下出血 分娩時の力により,ときに新生児に身体的損傷が引き起こされる。難しい回転術, 吸引分娩, 中位鉗子分娩または高位鉗子分娩に代わり 帝王切開を用いることが増えているため,困難な分娩または外傷を引き起こしうる分娩に起因する新生児の損傷発生率は低下している。 新生児が 在胎期間に対して大きい場合( 母体糖尿病に関連する場合がある)や, 骨盤位や他の異常胎位である場合(特に初産婦において)などに,外傷のリスクが上昇する。... さらに読む くも膜下出血 または 脳室内出血 脳室内出血および/または脳実質内出血 分娩時の力により,ときに新生児に身体的損傷が引き起こされる。難しい回転術, 吸引分娩, 中位鉗子分娩または高位鉗子分娩に代わり 帝王切開を用いることが増えているため,困難な分娩または外傷を引き起こしうる分娩に起因する新生児の損傷発生率は低下している。 新生児が 在胎期間に対して大きい場合( 母体糖尿病に関連する場合がある)や, 骨盤位や他の異常胎位である場合(特に初産婦において)などに,外傷のリスクが上昇する。... さらに読む 脳室内出血および/または脳実質内出血 に起因する。

病因論に関する参考文献

症状と徴候

神経学的所見は頭蓋内圧亢進の有無に依存するが,乳児期にみられる症状としては,易刺激性,かん高い泣き声,嘔吐,嗜眠,斜視,泉門膨隆などがある。言葉が話せる年長の小児は,頭痛,視力低下,またはその両方を訴える。乳頭浮腫は頭蓋内圧亢進の後期の徴候であるため,当初認められない場合に水頭症を除外することはできない。

慢性水頭症による結果として,女児の早発思春期,学習障害(例,注意,情報処理,および記憶の障害),視力障害,遂行機能障害(例,問題解決のための概念形成,抽象化,一般化,推理,情報の整理・計画における支障)などが生じる。

診断

  • 出生前超音波検査

  • 新生児:頭部超音波検査

  • 月齢の高い乳児および小児:CTまたはMRI

水頭症の診断は,しばしばルーチンの出生前超音波検査で下される。

出生後には,ルーチンの診察で頭囲の拡大が判明した場合に疑われ,泉門膨隆または頭蓋縫合離開がみられる場合もある。頭蓋内占拠性病変(例,硬膜下血腫,孔脳症性嚢胞,腫瘍)によっても同様の所見を呈することがある。大頭症は基礎にある脳の異常(例,アレキサンダー病,カナバン病)が原因となっている場合もあるが,正常な脳に過剰量の髄液が蓄積することを特徴とする良性の病態(ときに遺伝性)である場合もある。水頭症が疑われる小児には,CT,MRI,または超音波画像法(大泉門が閉鎖する前の場合)による頭部画像検査を行う必要がある。

解剖学的診断がついてからも,水頭症の進行をモニタリングするために頭部CTまたは超音波検査を施行する。痙攣発作が発生する場合は,脳波検査が役に立つ。

治療

  • ときに経過観察または反復腰椎穿刺

  • 重症例では,脳室シャント術

水頭症の治療法は病因,重症度,および水頭症が進行性(脳室の大きさが脳の大きさと比べて経時的に増大する)か否かに依存する。進行性ではない軽症例は,定期的な画像検査および頭囲測定による経過観察としてもよい。乳児では頭蓋内圧を一時的に低下させるため,脳室穿刺または反復腰椎穿刺(交通性水頭症の場合)を行うこともある。

進行性水頭症には通常,脳室シャント術が必要となる。典型的なシャントとしては,右側脳室と腹腔または(まれに)右房を圧力逃し弁付きの一方向性の合成樹脂製チューブで連結する。泉門が閉鎖した乳児期以降の小児に初めてシャントを設置する際には,急激な髄液の排出により脳が頭蓋骨から離れるように縮むことで硬膜下出血が引き起こされる可能性がある。泉門が開いている間は,脳の大きさの減少に合わせて頭蓋骨の周径も減少する;そのため,泉門が閉鎖する前にシャントを設置できるように,早期にシャント設置について決定しておくことを推奨する医師もいる。

第3脳室開窓術では,第3脳室とくも膜下腔の間に内視鏡的に開口部を設けて,そこから髄液を排出させる。この手技には,しばしば脈絡叢焼灼術が併用され,米国では施行頻度が増加している。一貫した神経外科的ケアを受けることが難しい先進国以外の国々で特に有用である。特定の症例(例,原発性の中脳水道狭窄症による水頭症)では,第3脳室開窓術のみで十分な一次治療となる。

帽状腱膜下腔への脳室シャントは,永続的なシャントを必要としない患者に対する一時的処置として乳児を対象に用いられる。

成長とともにシャントが不要になる例もあるが,出血および外傷のリスクがあるため,シャントの抜去はまれである。先天性水頭症の治療を目的とする胎児手術は,まだ成功に至っていない。

シャント合併症

脳室シャントの術式の選択は脳神経外科医の経験に依存するが,合併症発生率の点では脳室腹腔シャント術の方が脳室心房シャント術よりも優れている。シャント合併症としては以下のものがある:

  • 感染症

  • 機能不全

いずれのシャントでも感染リスクは存在する。臨床像としては,慢性発熱,嗜眠,易刺激性,頭痛,これらの合併,頭蓋内圧亢進症の症候などがあり,ときにシャントチューブ上の発赤が明らかになる。シャントに感染する微生物(皮膚常在菌叢を含める場合もある)に効果的な抗菌薬を投与するとともに,典型例ではシャントの抜去および交換が必要である。

機械的閉塞(典型的には脳室端での遮断)またはチューブ破損のために,シャント機能が障害されることがある。いずれの場合も頭蓋内圧が上昇し,急激に起きた場合は医学的な緊急状態となりうる。頭痛,嘔吐,嗜眠,易刺激性,内斜視,または上方注視麻痺で発症する。痙攣発作が起きることもある。閉塞が緩徐に生じた場合は,易刺激性,学業不振,嗜眠といったように現れる症候が軽微なものになるため,うつ病と誤診されることがある。シャント機能を評価するため,シャント造影(シャントチューブのX線撮影)および神経画像検査を施行する。多くのシャントシステムに付属するバルブを圧迫できるかどうかは,シャントが機能することの徴候として信頼できるものではない。

シャント設置後は,頭囲および発達の評価を行い,定期的に画像検査を施行する。

要点

  • 水頭症は通常,正常な髄液流の閉塞によって発生するが,髄液の吸収障害によっても起こりうる。

  • 頭蓋縫合の癒合前に発生した場合には,泉門膨隆を伴って頭部が拡大することがある。

  • 神経症状は主に頭蓋内圧が上昇した場合に発生し,乳児では易刺激性,かん高い泣き声,嘔吐,嗜眠,および斜視などがみられる。

  • 出生前および新生児では超音波検査により診断し,より年長の小児ではMRIまたはCTを用いる。

  • 病因ならびに症状の重症度および進行度に応じて,経過観察もしくは反復腰椎穿刺または脳室シャント術により治療する。

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