新生児肺炎

執筆者:Brenda L. Tesini, MD, University of Rochester School of Medicine and Dentistry
レビュー/改訂 2020年 7月
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新生児肺炎は新生児の肺感染症である。その発症は,出生後数時間以内で全身性敗血症の部分症として,または出生後7日以降で肺に限局してみられる。徴候は呼吸窮迫やショックおよび死亡への進行のみのこともある。診断は敗血症に関する臨床所見および臨床検査結果の評価による。治療は広域抗菌薬で開始し,可及的速やかに起因菌に特異的な薬剤に変更する。

(成人における肺炎の概要および新生児感染症の概要も参照のこと。)

肺炎は,原発性敗血症後に生じる侵襲性細菌感染症で最も頻度の高いものである。早発型の肺炎は,出生時または出生後数時間以内に最初に出現する全身性敗血症の部分症である( see page 新生児敗血症)。遅発型の肺炎は通常,生後7日以降に発生し,新生児集中治療室において肺疾患のために長期の気管挿管を必要とする乳児で最もよくみられる(人工呼吸器関連肺炎と呼ばれる)。

病因

感染は母親の生殖路または新生児室において生じる。具体的には,グラム陽性球菌(例,A群およびB群レンサ球菌,メチシリン感受性およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌[Staphylococcus aureus])とグラム陰性桿菌(例,大腸菌[Escherichia coli],Klebsiella属,Proteus属)がある。広域抗菌薬の投与を受けたことのある乳児では,Pseudomonas属Citrobacter属,Bacillus属,Serratia属など,上記以外の多くの病原菌が認められることがある。一部の症例ではウイルスまたは真菌も原因となる。

症状と徴候

遅発型の院内肺炎は,原因不明の呼吸状態悪化と呼吸器分泌物の増加および質的変化(例,褐色で粘稠度が高い)を伴って発症する。体温調節障害および好中球減少を伴った急性発症もある。

診断

  • 胸部X線

評価として,胸部X線,パルスオキシメトリー,血液培養,気管吸引液のグラム染色と培養などがある。

胸部X線では,持続する新しい浸潤影を認めるはずであるが,重度の気管支肺異形成症がある場合は気づかれにくいこともある。

気管吸引液のグラム染色において有意な数の多形核白血球と気管吸引液の培養で発育したものと一致する微生物が単独で認められた場合には,その微生物が肺炎の原因である可能性が高くなる。新生児の細菌性肺炎は播種を来す可能性があるため,腰椎穿刺を含めた敗血症の精査も行うべきである。ただし,院内肺炎は血液培養では2~5%の症例でしか陽性とならない。

治療

  • 通常はバンコマイシンおよび広域β-ラクタム系薬剤

早発型での抗菌薬療法は新生児敗血症に対するものと同様である。遅発型の院内肺炎の大半では,バンコマイシン(新生児に対するバンコマイシンの用量の表を参照)および広域β-ラクタム系(メロペネム,ピペラシリン/タゾバクタム,セフェピムなど― see table 新生児に対する主な注射用抗菌薬の推奨用量)が第1選択の初期治療となる。このレジメンは,緑膿菌(P. aeruginosa)などの典型的な院内感染菌による肺炎だけでなく,敗血症の治療にもなる。経験的に抗菌薬を選択する場合は,地域の感染症および耐性菌のパターンを常に指標にすべきである。感受性試験の結果が出たら,より特異的な抗菌薬に変更する。全体的な治療は新生児敗血症に対するものと同じである。

クラミジア肺炎

分娩中にクラミジアへの曝露が生じると,新生児が生後2~18週にクラミジア肺炎を発症することがある。患児は頻呼吸を呈するが,通常は重篤な状態には至らず,同じ原因菌が引き起こす結膜炎の病歴を伴うこともある。好酸球増多を認めることがあり,X線では過膨張像を伴う両側性の間質浸潤像を認める。

治療

  • エリスロマイシンまたはアジスロマイシン

典型的にはエリスロマイシン12.5mg/kg,経口,6時間毎,14日間またはアジスロマイシン20mg/kg,経口/静注,1日1回,3日間の投与により肺炎は消失する。ただし,ときに2コース目の投与が必要になることもある( see table 新生児における主な経口抗菌薬の推奨用量*)。新生児へのエリスロマイシン系薬剤の使用は肥厚性幽門狭窄症(HPS)の原因となる可能性があるため,エリスロマイシンまたはアジスロマイシンを投与する新生児には全例でHPSの症候についてモニタリングを行うべきであり,親には予想されるリスクについてカウンセリングを行うべきである。

母親のクラミジア感染症を放置すると骨盤内炎症性疾患や不妊症などの合併症を来す可能性があるため,Chlamydia trachomatis感染に続発した肺炎と診断した場合は,速やかに母親とそのパートナーの評価を行うべきである。

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