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新生児敗血症

(新生児の敗血症)

執筆者:

Brenda L. Tesini

, MD, University of Rochester School of Medicine and Dentistry

レビュー/改訂 2020年 7月
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新生児敗血症は,新生児期に発生する侵襲性感染症であり,通常は細菌性である。徴候は非特異的なものが多数あり,具体的には自発運動の減少,哺乳力低下,無呼吸,徐脈,体温調節障害,呼吸窮迫,嘔吐,下痢,腹部膨隆,jitteriness,痙攣,黄疸などがある。診断は臨床所見と培養結果に基づいて行う。治療は,まずアンピシリンをゲンタマイシンまたはセフォタキシムと併用し,できるだけ速やかに起因菌に応じた薬剤に変更する。

新生児敗血症は,出生1000人当たり0.5~8.0例の頻度で発生する。発生率は以下の集団で最も高い:

病因

新生児敗血症は,早発型(生後3日以内)と遅発型(4日以降)に分けられる。

早発型新生児敗血症

早発型新生児敗血症は通常,分娩時に感染した微生物によって生じる。ほとんどの患児で出生から6時間以内に症状が出現する。

大半の症例B群レンサ球菌 レンサ球菌感染症 レンサ球菌(streptococcus)は,咽頭炎,肺炎,創傷および皮膚感染症,敗血症,心内膜炎など,多くの疾患を引き起こすグラム陽性好気性細菌である。症状は感染臓器により異なる。A群β溶血性レンサ球菌による感染症の続発症としてリウマチ熱と糸球体腎炎がある。ほとんどの菌株はペニシリンに感受性を示すが,最近になってマクロライド耐性株が出現している。 ( 肺炎球菌感染症, リウマチ熱,および... さらに読む レンサ球菌感染症 (GBS)またはグラム陰性腸内細菌(主に 大腸菌 大腸菌(Escherichia coli)感染症 大腸菌(Escherichia coli)はグラム陰性細菌であり,大腸内で最も多い好気性共生細菌である。特定の菌株が下痢を引き起こすほか,無菌部位(例,尿路)に侵入した場合には,全ての菌株が感染症を引き起こしうる。診断は標準の培養法による。下痢の原因同定に毒素検査が役立つことがある。抗菌薬による治療は感受性試験の結果を参考にする。 尿路感染症(UTI;最もよくみられる)... さらに読む )が原因である。満期の妊婦の腟および直腸検体で培養を行うと,GBSの定着率は最高35%となることがある。そうした母親の児では,少なくとも35%で定着が生じる。児における定着の密度が早発型の侵襲性感染症のリスクを規定しており,大量の定着が起きればリスクは40倍高くなる。定着が起きた乳児のうちGBSによる侵襲性感染症に進展する割合は1/100にすぎないが,そのうち50%以上は生後6時間以内に発症する。無莢膜型インフルエンザ菌(nontypeable Haemophilus influenzae)による敗血症が新生児(特に早産児)で同定されている。

その他の症例は,グラム陰性腸内桿菌(例, Klebsiella KlebsiellaEnterobacter,およびSerratia属細菌による感染症 グラム陰性細菌であるKlebsiella, Enterobacter,およびSerratia属細菌は,互いに非常に近縁の腸内常在菌であり,正常宿主で感染症を引き起こすことはまれである。診断は培養による。治療は抗菌薬による。 KlebsiellaEnterobacter,およびSerratia属細菌による感染症は,院内感染として発生することが多く,主とし... さらに読む 属)および特定のグラム陽性菌(Listeria monocytogenes リステリア症 リステリア症とは,Listeria属細菌に起因する菌血症,髄膜炎,脳炎,皮膚炎,眼腺症候群,子宮内および新生児感染症,またはまれに起こる心内膜炎のことである。症状は侵された器官系により異なる。子宮内感染症では胎児死亡に至ることがある。診断は検査室での分離による。治療には,ペニシリン,アンピシリン(しばしばアミノグリコシド系薬剤と併用),トリメトプリム/スルファメトキサゾールなどがある。... さらに読む 腸球菌 腸球菌感染症 腸球菌はグラム陽性通性嫌気性細菌である。Enterococcus faecalisおよびE. faeciumは,併発する菌血症のほか,心内膜炎,尿路感染症,前立腺炎,腹腔内感染症,蜂窩織炎,創傷感染症などの様々な感染症を引き起こす。 腸球菌は腸内常在菌叢の一部である。かつてはD群レンサ球菌に分類されていたが,現... さらに読む [例,Enterococcus faecalisE. faecium], D群レンサ球菌 レンサ球菌感染症 レンサ球菌(streptococcus)は,咽頭炎,肺炎,創傷および皮膚感染症,敗血症,心内膜炎など,多くの疾患を引き起こすグラム陽性好気性細菌である。症状は感染臓器により異なる。A群β溶血性レンサ球菌による感染症の続発症としてリウマチ熱と糸球体腎炎がある。ほとんどの菌株はペニシリンに感受性を示すが,最近になってマクロライド耐性株が出現している。 ( 肺炎球菌感染症, リウマチ熱,および... さらに読む レンサ球菌感染症 [例,Streptococcus bovis], α溶血性レンサ球菌 レンサ球菌感染症 レンサ球菌(streptococcus)は,咽頭炎,肺炎,創傷および皮膚感染症,敗血症,心内膜炎など,多くの疾患を引き起こすグラム陽性好気性細菌である。症状は感染臓器により異なる。A群β溶血性レンサ球菌による感染症の続発症としてリウマチ熱と糸球体腎炎がある。ほとんどの菌株はペニシリンに感受性を示すが,最近になってマクロライド耐性株が出現している。 ( 肺炎球菌感染症, リウマチ熱,および... さらに読む レンサ球菌感染症 ブドウ球菌 ブドウ球菌感染症 ブドウ球菌はグラム陽性好気性細菌である。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は最も病原性が強く,典型的には皮膚感染症を引き起こすほか,ときに肺炎,心内膜炎,骨髄炎を引き起こすこともある。一般的には膿瘍形成につながる。一部の菌株は,胃腸炎,熱傷様皮膚症候群,および毒素性ショック症候群を引き起こす毒素を産生する。診断はグラム染色と培養による。治療には通常,ペニシリナーゼ抵抗性β-ラクタム系薬剤を使用する... さらに読む ブドウ球菌感染症 )によって引き起こされる傾向にある。また, 肺炎球菌 肺炎球菌感染症 肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)(肺炎球菌)は,莢膜を有するα溶血性のグラム陽性好気性双球菌である。肺炎球菌感染は,米国における中耳炎,肺炎,敗血症,髄膜炎,および死亡の主な原因である。診断はグラム染色と培養による。治療法は耐性プロファイルに依存し,β-ラクタム系,マクロライド系,レスピラトリーキノロン系,プレウロムチリン系薬剤のいずれかのほか,ときにバンコマイシンが使用される。... さらに読む インフルエンザ菌b型 Haemophilus属細菌による感染症 グラム陰性細菌であるHaemophilus属細菌は,菌血症,髄膜炎,肺炎,副鼻腔炎,中耳炎,蜂窩織炎,喉頭蓋炎など,数多くの軽度および重篤な感染症を引き起こす。診断は培養および血清型別検査による。治療は抗菌薬による。 多くのHaemophilus属細菌は上気道の常在菌叢の一部であり,疾患を引き起こすことはまれである。病原性株は飛沫の吸入または直接接触を介して上気道に侵入する。免疫のない集団では急速に拡大する。... さらに読む のほか,比較的頻度は低いが 髄膜炎菌 髄膜炎菌感染症 髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)は,髄膜炎と髄膜炎菌血症を引き起こすグラム陰性球菌である。症状は通常重度で,頭痛,悪心,嘔吐,羞明,嗜眠,発疹,多臓器不全,ショック,播種性血管内凝固症候群などがみられる。診断は臨床的に行われ,培養により確定する。治療はペニシリンまたは第3世代セファロスポリン系薬剤による。 髄膜炎菌は,ナイセリア科に属するグラム陰性好気性球菌である。13の血清群があり,そのうちの6群... さらに読む 髄膜炎菌感染症 も分離されている。ときに妊娠中に無症候性の淋菌感染症が生じる結果,まれに 淋菌 淋菌感染症 淋菌感染症は,淋菌(Neisseria gonorrhoeae)と呼ばれる細菌によって引き起こされる。典型的には,尿道,子宮頸部,直腸,咽頭の上皮,または結膜に感染し,刺激感または疼痛および膿性分泌物を生じさせる。皮膚および関節への播種はまれであるが,皮膚のただれ,発熱,および移動性の多関節炎または少関節型の化膿性関節炎を引き起こす。診断は鏡検,培養,または核酸増幅検査による。いくつかの経口または注射用抗菌薬が使用できるが... さらに読む 淋菌感染症 も起因菌となりうる。

遅発型新生児敗血症

遅発型新生児敗血症は通常,環境からの感染によって発生する( Professional.see page 新生児の院内感染症 新生児の院内感染症 新生児感染症には,子宮内や分娩時の母子感染ではなく,新生児室での感染によって発生するものもある。一部の感染症(例,B群レンサ球菌,単純ヘルペスウイルス[HSV])については,原因が母親と病院環境のどちらにあるか明確でないこともある。 院内感染は,早産児や長期入院が必要な疾患をもつ正期産児にとって重要な問題となっている。健康な正期産児の感染率は1%未満である。新生児治療室の新生児については,出生体重が低いほど発生率が高くなる。最も頻度の高... さらに読む )。 ブドウ球菌 ブドウ球菌感染症 ブドウ球菌はグラム陽性好気性細菌である。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は最も病原性が強く,典型的には皮膚感染症を引き起こすほか,ときに肺炎,心内膜炎,骨髄炎を引き起こすこともある。一般的には膿瘍形成につながる。一部の菌株は,胃腸炎,熱傷様皮膚症候群,および毒素性ショック症候群を引き起こす毒素を産生する。診断はグラム染色と培養による。治療には通常,ペニシリナーゼ抵抗性β-ラクタム系薬剤を使用する... さらに読む ブドウ球菌感染症 が遅発型症例の30~60%を占め,血管内留置器具(特に中心静脈カテーテル)が原因となることが最も多い。 大腸菌 大腸菌(Escherichia coli)感染症 大腸菌(Escherichia coli)はグラム陰性細菌であり,大腸内で最も多い好気性共生細菌である。特定の菌株が下痢を引き起こすほか,無菌部位(例,尿路)に侵入した場合には,全ての菌株が感染症を引き起こしうる。診断は標準の培養法による。下痢の原因同定に毒素検査が役立つことがある。抗菌薬による治療は感受性試験の結果を参考にする。 尿路感染症(UTI;最もよくみられる)... さらに読む (E. coli)も遅発型敗血症の重大な原因菌として認識されるようになってきており,超低出生体重児では特に重要である。血液または髄液からの Enterobacter cloacae KlebsiellaEnterobacter,およびSerratia属細菌による感染症 グラム陰性細菌であるKlebsiella, Enterobacter,およびSerratia属細菌は,互いに非常に近縁の腸内常在菌であり,正常宿主で感染症を引き起こすことはまれである。診断は培養による。治療は抗菌薬による。 KlebsiellaEnterobacter,およびSerratia属細菌による感染症は,院内感染として発生することが多く,主とし... さらに読む Cronobacter sakazakii(かつてのEnterobacter sakazakii)の分離は,ミルクの汚染を示唆する。院内感染による緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)肺炎または敗血症のアウトブレイクでは,呼吸機器の汚染が疑われる。

B群レンサ球菌に対する全例スクリーニングと分娩時抗菌薬予防投与により,早発型GBS敗血症の発生率は有意に低下したが,遅発型GBS敗血症の発生率は変化しておらず,これは遅発型敗血症が通常は環境からの感染によって発生するという仮説と一致する。

早発型および遅発型の新生児敗血症

ある種のウイルス感染症(例, 全身型単純ヘルペス 新生児単純ヘルペスウイルス(HSV)感染症 新生児単純ヘルペスウイルス感染症は通常,分娩時の感染によって発生する。典型的な徴候は水疱性の発疹であるが,これに全身型の病態が合併する場合や,後に全身型に進行する場合もある。診断はウイルス培養,ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査,蛍光抗体法,または電子顕微鏡検査による。治療は高用量アシクロビルの静注と支持療法による。 (成人における Professional.See also... さらに読む 新生児単純ヘルペスウイルス(HSV)感染症 エンテロウイルス エンテロウイルス感染症の概要 エンテロウイルスは,ライノウイルス( 感冒を参照)およびヒトパレコウイルスとともに,ピコルナウイルス科(小さな[pico]RNAウイルス)に属する。ヒトパレコウイルス1型および2型は,かつてはエコーウイルス22型および23型と呼ばれていたが,現在ではパレコウイルスに再分類されている。全てのエンテロウイルスは不均一な抗原性を有... さらに読む アデノウイルス アデノウイルス感染症 数多くあるアデノウイルスのいずれかに感染した場合,無症状に経過することもあれば,軽度の 呼吸器感染症,角結膜炎,胃腸炎,膀胱炎,原発性肺炎などの特異的な症候群を来すこともある。診断は臨床的に行う。治療は対症療法である。 アデノウイルスは,3つの主要なカプシド抗原(ヘキソン,ペントン,およびファイバー)によって分類されるDNAウイルスである。ヒトアデノウイルスには,7つの種(A~G)と57の血清型がある。血清型によって異なる病態がみられる... さらに読む RSウイルス RSウイルス(RSV)感染症およびヒトメタニューモウイルス感染症 RSウイルス感染症とヒトメタニューモウイルス感染症は,特に乳児および幼児において,季節性の下気道疾患を引き起こす。無症候性ないし軽症で済むこともあれば,細気管支炎や肺炎を伴った重症となることもある。診断は臨床的に行うのが通常であるが,臨床検査による診断も可能である。治療は支持療法による。 ヒトに感染するウイルスの大半は成人と小児の両方に感染するが,それらについては本マニュアルの別の箇所で考察されている。新生児に特異的な影響を及ぼすウイル... さらに読む )が,早発型または遅発型の敗血症として現れることがある。

病態生理

早発型新生児敗血症

母体側に特定の周産期および産科的因子が存在する場合,早発型新生児敗血症のリスクが高まるが,具体的には以下のものが挙げられる:

特定のウイルス(例, 風疹 先天性風疹 先天性風疹は,妊娠中の母子感染によって発生するウイルス感染症である。徴候は胎児死亡の原因となりうる多発性の先天異常である。診断は血清学的検査およびウイルス培養による。特異的な治療法はない。予防はルーチンのワクチン接種による。 ( 新生児感染症の概要および Professional.See also page 風疹。) 先天性風疹は典型的には母親の初感染の結果として生じる。予防接種プログラムが大きな成功を収めたことにより,現在の米国では先... さらに読む サイトメガロウイルス 先天性および周産期サイトメガロウイルス感染症(CMV) サイトメガロウイルス(CMV)感染症は,出生前または周産期の感染によって発生することがあり,最も頻度の高い先天性ウイルス感染症である。出生時にみられることのある徴候は,子宮内胎児発育不全,未熟性,小頭症,黄疸,点状出血,肝脾腫,脳室周囲石灰化,脈絡網膜炎,肺炎,肝炎,および感音難聴である。乳児期後期に感染した場合の徴候としては,肺炎,肝脾腫,肝炎,血小板減少,敗血症様症候群,異型リンパ球増多などが挙げられる。新生児感染症の診断法としては... さらに読む 先天性および周産期サイトメガロウイルス感染症(CMV) ),原虫(例, Toxoplasma gondii トキソプラズマ症 トキソプラズマ症は,Toxoplasma gondiiによる感染症である。症状はないこともあれば,良性リンパ節腫脹(単核球症様疾患)から,易感染者における生命を脅かす中枢神経系疾患やその他の臓器の障害まで,様々である。AIDS患者およびCD4陽性細胞数が少ない患者では,脳炎が発生する可能性がある。先天性感染症では網脈絡膜炎,痙攣発作,および知的障害が起こる。診断は血清学的検査,病理組織学的検査,またはポリメラーゼ連鎖反応(... さらに読む トキソプラズマ症 ),およびトレポネーマ(例, 梅毒トレポネーマ 先天梅毒 先天梅毒は,梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)を原因菌とし,胎盤を介して胎児に伝播する多臓器感染症である。初期の徴候は,特徴的な皮膚病変,リンパ節腫脹,肝脾腫,発育不良,血液が混入した鼻汁,口周囲の亀裂,髄膜炎,脈絡膜炎,水頭症,痙攣,知的障害,骨軟骨炎,および偽性麻痺(Parrot atrophy of newborn)である。晩期の徴候は,ゴム腫性潰瘍,骨膜病変,麻痺,脊髄癆,視神経萎縮,角膜実質... さらに読む 先天梅毒 [Treponema pallidum])の感染症では,血行性および経胎盤性の母子感染が起こる。いくつかの病原細菌(例, L. monocytogenes リステリア症 リステリア症とは,Listeria属細菌に起因する菌血症,髄膜炎,脳炎,皮膚炎,眼腺症候群,子宮内および新生児感染症,またはまれに起こる心内膜炎のことである。症状は侵された器官系により異なる。子宮内感染症では胎児死亡に至ることがある。診断は検査室での分離による。治療には,ペニシリン,アンピシリン(しばしばアミノグリコシド系薬剤と併用),トリメトプリム/スルファメトキサゾールなどがある。... さらに読む 結核菌 結核 結核は,しばしば初感染から一定期間の潜伏期を経て発症する慢性進行性の抗酸菌感染症である。結核は肺を侵すことが最も多い。症状としては,湿性咳嗽,発熱,体重減少,倦怠感などがある。診断は喀痰の塗抹および培養によることが最も多いが,分子生物学に基づく迅速診断検査の利用も増えてきている。治療では複数の抗菌薬を少なくとも6カ月間投与する。... さらに読む 結核 [Mycobacterium tuberculosis])は経胎盤性に胎児に移行することがあるが,大部分は子宮内での上行性経路を介して,または病原体が定着した産道を胎児が通過する際に感染が生じる。

母体における定着の程度が新生児における侵襲性感染症の発生リスクと直接関連するが,定着密度の低い多くの母親が定着密度の高い(したがってリスクの高い)児を出産する。胎便または胎脂で汚染された羊水は,B群レンサ球菌および大腸菌(E. coli)の増殖を促進する。したがって,前記の逆説的な傾向には,腟円蓋に存在していた少数の微生物が前期破水後に急速に増殖することが寄与している可能性がある。細菌は通常,汚染された羊水を胎児が吸引または嚥下することによって血流中に到達し,菌血症をもたらす。

感染の上行性経路は,新生児感染症における前期破水の高い発生率,付属器炎症の重要性(羊膜炎は中枢部の胎盤炎よりも新生児敗血症によく合併する),産道により近い側の双胎児における感染リスクの増大,ならびに腟円蓋の微生物叢を反映する早発型新生児敗血症の細菌学的特徴などの現象を説明する助けとなる。

遅発型新生児敗血症

遅発型敗血症における最も重要な危険因子は以下のものである:

その他の危険因子としては以下のものがある:

  • 血管内カテーテルの長期使用

  • 合併疾患(ただし,これは侵襲的処置の施行に関するマーカーでしかない可能性もある)

  • 抗菌薬への曝露(耐性株の選択につながる)

  • 長期入院

  • 器具や静脈内または経腸投与する溶液の汚染

グラム陽性菌(例,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌,黄色ブドウ球菌[Staphylococcus aureus])は,環境または患児自身の皮膚よりもち込まれることがある。グラム陰性腸内細菌は通常,患児自身の常在微生物叢に由来するが,それは先行する抗菌薬治療により変化していたり,病院スタッフの手(主要な伝播経路)や汚染器具から伝播された耐性菌が生息していたりする。したがって,これらの細菌への曝露を増やす状況(例,混雑,看護師不足,一貫しない手洗い)は院内感染の発生率を高める。

カンジダ敗血症の危険因子としては,中心静脈カテーテルの長期(10日以上)使用,高カロリー輸液,過去に用いた抗菌薬の使用(特に第3世代セファロスポリン系薬剤),腹腔内の病態などが挙げられる。

最初の感染巣は尿路,副鼻腔,中耳,肺,または消化管である可能性があるが,後に髄膜,腎,骨,関節,腹膜,皮膚に播種することがある。

症状と徴候

新生児敗血症の初期徴候は非特異的で微妙であることが多く,微生物(ウイルスを含む)間で明らかな差はみられない。特によくみられる初期徴候としては以下のものがある:

  • 自発運動の減少

  • 哺乳力低下

  • 食欲不振

  • 無呼吸

  • 徐脈

  • 体温調節障害(低体温症または高体温症)

発熱は新生児の10~15%にしかみられないが,持続する場合は(例,1時間以上),一般に感染を意味する。その他の症候としては,呼吸窮迫,神経学的所見(例,痙攣,jitteriness),黄疸(特に生後24時間以内に起こり,RhまたはABO血液型不適合がなく,予想以上に直接ビリルビン濃度が上昇する),嘔吐,下痢,腹部膨隆などがある。

感染臓器に特異的な徴候から,原発巣や転移巣をピンポイントで判断できることがある。

  • 早発型B群レンサ球菌敗血症を発症した新生児の大半(およびL. monocytogenes感染症の新生児の多く)では,呼吸窮迫症候群との鑑別が困難な呼吸窮迫がみられる。

  • 臍周囲の紅斑,分泌物,または出血(出血性素因がない場合)は臍炎を示唆する(感染が起きると臍帯血管の閉鎖が妨げられる)。

  • 昏睡,痙攣,後弓反張,または泉門膨隆は,髄膜炎,脳炎,および脳膿瘍を示唆する。

  • 四肢の自発運動の低下と関節部の腫脹,熱感,紅斑,または圧痛は,骨髄炎および化膿性関節炎を示唆する。

  • 原因不明の腹部膨隆は,腹膜炎または壊死性腸炎(特に血性下痢と便中白血球を伴う場合)を示唆している可能性がある。

  • 皮膚の小水疱,口腔内潰瘍,および肝脾腫(特に播種性血管内凝固症候群[DIC]を伴う場合)は,全身型の単純ヘルペスと示唆している可能性がある。

早発型のB群レンサ球菌(GBS)感染症は劇症型の肺炎として現れることもある。産科合併症(特に未熟性,前期破水,絨毛膜羊膜炎)が発生している場合が多い。新生児のGBS感染症は,50%以上の患児で生後6時間以内に発症し,45%はアプガースコアが5点未満である。髄膜炎が合併することもあるが,多くはない。遅発型GBS感染症(4日目以降12週時まで)では,髄膜炎がしばしば発生する。遅発型GBS感染症は一般に,周産期の危険因子や母体子宮頸部での明らかな定着に関連せず,感染は分娩後に生じると考えられる。

診断

  • 強く疑うこと

  • 血液培養,髄液培養,およびときに尿培養

新生児敗血症の早期診断が重要であり,危険因子(特に低出生体重児の場合)を認識して,新生児が生後数週以内に標準から逸脱した際にはこの病態を強く疑うことが必要である。

敗血症の臨床徴候がみられる新生児には,血算,塗抹標本での白血球分画,血液培養,尿培養(早発型敗血症の評価では不必要),および(臨床的に可能であれば)腰椎穿刺を可及的速やかに行うべきである。呼吸器症状のある新生児には胸部X線が必要である。診断は培養での病原体の分離により確定される。他の検査でも異常を認めることがあるが,必ずしも診断的ではない。乳児には広域の 経験的抗菌薬療法 抗菌薬 新生児敗血症は,新生児期に発生する侵襲性感染症であり,通常は細菌性である。徴候は非特異的なものが多数あり,具体的には自発運動の減少,哺乳力低下,無呼吸,徐脈,体温調節障害,呼吸窮迫,嘔吐,下痢,腹部膨隆,jitteriness,痙攣,黄疸などがある。診断は臨床所見と培養結果に基づいて行う。治療は,まずアンピシリンをゲンタマイシンまたはセフォタキシムと併用し,できるだけ速やかに起因菌に応じた薬剤に変更する。... さらに読む を行うべきである。

血算,白血球分画,塗抹検査

新生児の総白血球数および桿状核球数は,早発型敗血症の予測因子としては優れていない。しかしながら,総多形核白血球数に対する未熟白血球数の比(0.16を超える上昇)は感度が高く,このカットオフ値を超えない場合の陰性適中率は高い。ただし,特異度は低く,正期産の新生児では最高50%でこの比の上昇がみられる。出生から6時間以上が経過すると測定値が異常になる可能性が高くなり,出生直後の測定値よりも臨床的に有用である。

血小板数は,臨床的な敗血症の発症から数時間ないし数日前に低下する場合もあるが,発症後1日程度が経過するまで高値のままとなる場合の方が多い。この低下にはときに,他のDIC所見(例,フィブリン分解産物の増加,フィブリノーゲンの減少,国際標準化比[INR]の延長)が伴う。これらの変化のタイミングを考慮すると,血小板数は典型的な新生児敗血症の評価にはあまり役立たない。

循環血中の細菌数が多いため,バフィーコートにグラム染色液,メチレンブルー,またはアクリジンオレンジを適用することにより,ときに多形核白血球の内部または多形核白血球に付随する微生物を観察できることがある。

血算または腰椎穿刺の結果にかかわらず,敗血症が疑われる新生児(例,重症感のある患児や発熱または低体温症のある患児)には,全例で培養検体(例,血液および髄液[可能な場合])を採取した後,直ちに抗菌薬を開始すべきである。

腰椎穿刺

すでに低酸素血症を来した新生児では,腰椎穿刺の施行中に低酸素症が増悪するリスクがある。しかしながら,敗血症が疑われる新生児では,処置に耐えられるようになり次第,直ちに腰椎穿刺を施行すべきである(新生児細菌性髄膜炎の 診断 診断 も参照)。低酸素症を予防するため,腰椎穿刺の施行前および施行中には酸素投与を行う。生後1日以内に発症するGBS肺炎は, 呼吸窮迫症候群 新生児呼吸窮迫症候群 呼吸窮迫症候群は,新生児の肺における肺サーファクタントの欠乏によって引き起こされ,在胎37週未満で出生した新生児で最もよくみられる。リスクは未熟性の程度に伴い上昇する。症状と徴候としては,呻吟呼吸,呼吸補助筋の使用,鼻翼呼吸などがあり,出産後すぐに出現する。診断は臨床的に行われ,胎児肺成熟度の検査により出生前のリスク評価が可能である。治療は,サーファクタント療法および支持療法による。... さらに読む と混同される可能性があるため,これらの疾患が疑われる新生児では腰椎穿刺がしばしばルーチンに施行される。

血液培養

臍帯血管は,特に数時間経過した後では,臍帯断端が微生物に汚染されている場合が多いため,臍静脈ライン由来の血液培養は信頼できないことがある。したがって,培養に用いる血液検体は,望ましくは末梢部位2カ所での静脈穿刺により採取すべきである。新生児で血液培養検体を採取する前に行うべき至適な皮膚の処置は確立されていないが,採血部位にヨード含有液を塗布して乾燥させる方法がある。あるいは,臍動脈カテーテル留置後すぐに採取した血液であれば,必要に応じて培養に使用してもよい。

血液培養は,好気性菌と嫌気性菌の双方を対象に行うべきである。ただし,血液培養ボトル1本当たりに必要な最低量は1.0mLであり,採取量が2mL未満の場合は,全量を好気性菌培養ボトル1本に入れるべきである。カテーテル関連敗血症が疑われる場合は,末梢からの採血と同時に,カテーテルからも培養検体を採取すべきである。細菌陽性の血液培養検体では,90%以上で培養開始から48時間以内に発育がみられる。毛細管血液培養に関するデータは,この方法を推奨するには不十分である。

Candida属真菌は血液培養の培地中および寒天平板上で発育するが,他の真菌が疑われる場合は,真菌用培地を使用すべきである。Candida属以外については,真菌の血液培養は陽性になるまでに4~5日を要することがあり,明らかな播種性病変でさえ陰性になることがある。培養結果が出るまでは,定着(口腔,便,または皮膚)の証明が役立つことがある。カンジダ血症がみられた新生児には,カンジダ髄膜炎を同定するために腰椎穿刺を施行すべきである。また,網膜のカンジダ病変を同定するために散瞳下で倒像眼底検査を施行する。腎臓の菌腫(mycetoma)を検出するために腎超音波検査を施行する。

尿検査および培養

尿検査は遅発型敗血症の評価にのみ必要である。採尿は,採尿バッグを用いるのでなく,カテーテル導尿または恥骨上膀胱穿刺により行うべきである。培養のみで診断可能であるが,尿沈渣での強拡大視野当たり白血球数5個以上,または遠沈せずにグラム染色した新鮮検体での何らかの微生物の検出は,尿路感染症の推定的な証拠となる。膿尿を欠くことで尿路感染症を除外することはできない。

感染および炎症に対するその他の検査

敗血症では数多くの検査がしばしば異常を示すことから,潜在的な早期マーカーとして評価されている。しかしながら,一般に感度は疾患経過の後期まで低い傾向があり,特異度も十分でない。

急性期反応物質は,炎症が存在する際にIL-1の影響下で肝臓により産生されるタンパク質である。なかでも最も有用なものは,C反応性タンパク(CRP)の定量である。1mg/dL(9.52nmol/L)以上の濃度値(ネフェロメトリーにより測定する)は異常である。敗血症の発生から6~8時間以内に上昇し,1日目にピークを迎える。C反応性タンパク(CRP)測定の感度は,生後6~8時間時点で測定された場合により高くなる。出生の8~24時間後とその24時間後に計2回正常値が得られた場合の陰性適中率は,99.7%である。

診断に関する参考文献

  • 1.Pontrelli G, De Crescenzo F, Buzzetti R, et al: Accuracy of serum procalcitonin for the diagnosis of sepsis in neonates and children with systemic inflammatory syndrome: A meta-analysis.BMC Infect Dis 17(1):302, 2017.doi: 10.1186/s12879-017-2396-7

予後

低出生体重児では,正期産児と比べて致死率が2~4倍高い。早発型敗血症全体での死亡率は3~40%(早発型GBS感染症の死亡率は2~10%)であり,遅発型敗血症全体での死亡率は2~20%(遅発型GBSの死亡率は約2%)である。遅発型敗血症の死亡率は,感染の病因によって大きく変動し,グラム陰性桿菌またはCandida属真菌による感染の死亡率は最高32~36%である。死亡率に加えて,細菌性敗血症またはカンジダ敗血症を発症した超低出生体重児では,神経発達が不良になるリスクが有意に高くなる。

治療

  • 抗菌薬療法

  • 支持療法

敗血症は臨床徴候が非特異的である一方,破滅的な影響を及ぼす可能性があることから,迅速かつ経験的な抗菌薬療法が推奨され( Professional.see page 抗菌薬の選択および使用 抗菌薬の選択および使用 抗菌薬には,細菌または真菌に由来するものと,人工的に合成されるものがある。厳密には,「抗生物質(antibiotics)」は細菌または真菌に由来する抗微生物薬のみを指す用語であるが,しばしば(本マニュアルも含めて)「抗菌薬(antibacterial drug)」の同義語として使用される。 ( 新生児における抗菌薬も参照のこと。) 抗菌薬には以下をはじめとする数多くの作用機序がある:... さらに読む ),後から感受性試験の結果と感染部位に応じて使用薬剤を適宜変更する。一般に,臨床的に感染源が同定されず,乳児の状態が良好に見え,かつ培養が陰性であれば,抗菌薬は48時間後(低出生体重の早産児では最長72時間後)に中止できる。

さらに抗菌薬投与に加えて,呼吸および血行動態の管理を含めた総合的な支持療法を行う。

抗菌薬

早発型敗血症では,初期治療にアンピシリンとアミノグリコシド系薬剤の投与を含めるべきである(新生児における主なアミノグリコシド系抗菌薬の推奨用量 新生児における主なアミノグリコシド系抗菌薬の推奨用量 新生児における主なアミノグリコシド系抗菌薬の推奨用量 の表を参照)。グラム陰性菌による髄膜炎が疑われる場合は,アミノグリコシド系薬剤にセフォタキシムを追加するか,アミノグリコシド系薬剤をセフォタキシムに変更する。抗菌薬は起因菌が同定され次第,適宜,速やかに変更する。

遅発型敗血症では,それまでは健康であり,市中感染による遅発型敗血症と推定されて入院してきた乳児にも,アンピシリン + ゲンタマイシンかアンピシリン + セフォタキシムを投与すべきである。グラム陰性菌による髄膜炎が疑われる場合は,アンピシリン,セフォタキシム,およびアミノグリコシド系薬剤を使用できる。院内感染による遅発型敗血症では,初期治療にバンコマイシン(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌[S. aureus]に有効である; 新生児に対するバンコマイシンの用量 新生児に対するバンコマイシンの用量 新生児に対するバンコマイシンの用量 の表を参照)とアミノグリコシド系薬剤を含めるべきである。新生児室で緑膿菌(P. aeruginosa)が検出される場合は,各施設での感受性に応じて,セフタジジム,セフェピム,またはピペラシリン/タゾバクタムをアミノグリコシド系薬剤に追加またはアミノグリコシド系薬剤に替えて使用してもよい。

先に7~14日間のアミノグリコシド系投与を完了し,再び治療が必要になった新生児には,前回とは別のアミノグリコシド系薬剤か第3世代セファロスポリン系薬剤を考慮すべきである。

コアグラーゼ陰性ブドウ球菌が疑われる場合(例,留置カテーテルが72時間以上使用されている),および血液または正常では無菌のその他の体液から同菌が分離され,かつそれが起因菌と考えられる場合は,遅発型敗血症に対する初期治療にバンコマイシンを含めるべきである。しかしながら,起因菌が ナフシリン(nafcillin)に感受性があれば,バンコマイシンの代わりにセファゾリンまたはナフシリン(nafcillin)を使用すべきである。感染症を治癒させる上では,推定される感染源(通常は血管内カテーテル)の除去が必要になる場合があるが,これは,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌がバイオフィルム(菌のカテーテルへの付着を促進する被膜)で保護されている場合があることによる。

Candida属真菌は血液培養での発育に2~3日を要することがあるため,培養で酵母感染症が確認されるのに先立ち,アムホテリシンBデオキシコール酸による経験的治療を開始し,感染したカテーテルを抜去することが救命につながる場合がある。

その他の治療法

交換輸血が重症の(特に低血圧および代謝性アシドーシスを来した)新生児に用いられている。その有用とされる点は,循環血中の免疫グロブリンの濃度を上昇させ,血液中の内毒素を減少させ,ヘモグロビン濃度を上昇させ(さらに2,3-ジホスホグリセレート濃度の高める),血流を改善することにある。しかしながら,その使用について前向きの対照研究は実施されていない。

新鮮凍結血漿は,低出生体重児に生じる耐熱性および異熱性オプソニンの欠乏を正常化するのに役立つことがあるが,その使用を検討した対照研究のデータはなく,一方で輸血関連のリスクを考慮する必要がある。

遺伝子組換えコロニー刺激因子(顆粒球コロニー刺激因子[G-CSF]および顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子[GM-CSF])は,敗血症と推定される新生児において好中球の数および機能を改善する効果が示されているが,重度の好中球減少を来した新生児では常に有益となるわけではないようで,さらなる研究が必要である。

予防

状態が良好に見える新生児にも,B群レンサ球菌感染症のリスクがある。米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)と米国小児科学会(American Academy of Pediatrics:AAP)は現在,こうした乳児を以下を含むいくつかの因子に応じて管理するよう推奨している(1 予防に関する参考文献 新生児敗血症は,新生児期に発生する侵襲性感染症であり,通常は細菌性である。徴候は非特異的なものが多数あり,具体的には自発運動の減少,哺乳力低下,無呼吸,徐脈,体温調節障害,呼吸窮迫,嘔吐,下痢,腹部膨隆,jitteriness,痙攣,黄疸などがある。診断は臨床所見と培養結果に基づいて行う。治療は,まずアンピシリンをゲンタマイシンまたはセフォタキシムと併用し,できるだけ速やかに起因菌に応じた薬剤に変更する。... さらに読む , 2 予防に関する参考文献 新生児敗血症は,新生児期に発生する侵襲性感染症であり,通常は細菌性である。徴候は非特異的なものが多数あり,具体的には自発運動の減少,哺乳力低下,無呼吸,徐脈,体温調節障害,呼吸窮迫,嘔吐,下痢,腹部膨隆,jitteriness,痙攣,黄疸などがある。診断は臨床所見と培養結果に基づいて行う。治療は,まずアンピシリンをゲンタマイシンまたはセフォタキシムと併用し,できるだけ速やかに起因菌に応じた薬剤に変更する。... さらに読む ):

絨毛膜羊膜炎がなく,B群レンサ球菌の予防の適応もなければ,検査や治療の適応はない。

母親にB群レンサ球菌の予防の適応があり,適切な予防が行われた場合(適切な予防はペニシリン,アンピシリン,またはセファゾリンを静注で4時間以上投与する),乳児を病院内で48時間以上観察すべきであるが,検査と治療は症状が現れた場合にのみ行う。在胎37週以上の選択された症例で,信頼できる介護者がおり,確実にフォローアップができる体制の場合は,24時間後に退院させてもよい。

B群レンサ球菌に対する十分な予防が行われなかった場合,乳児に抗菌薬を投与せず,病院内で48時間観察する。出生まで18時間以上破水していた場合,または在胎期間が37週未満の場合は,出生時および/または出生から6~12時間後に,血液培養と血算および分画に加えて,可能であればC反応性タンパク(CRP)の測定を行うことが推奨される。臨床経過と検査結果を参考にして管理する。

新生児の免疫応答の増強を目的とする静注用免疫グロブリン製剤の投与については,敗血症の予防または治療に役立つとは示されていない。

母親に対するB群レンサ球菌感染予防の適応

全ての妊婦に対し,腟および直腸検体の培養を用いてGBSの定着を検出するスクリーニングを妊娠後期に実施すべきである。

GBSのスクリーニングで陽性と判定された女性には,帝王切開を予定している場合を除き,分娩開始前かつ破水前に予防目的で抗菌薬を子宮内投与すべきである。

GBSのスクリーニングで陰性と判定された女性には,過去にGBS感染症に罹患した乳児を出産したことがある場合,抗菌薬を子宮内投与すべきである。

GBSの状態が不明の女性(例,検査していない,結果が入手できない)には,以下のいずれかに該当する場合,抗菌薬を子宮内投与すべきである:

  • 妊娠期間37週未満

  • 18時間以上の破水

  • 体温38℃以上

  • 場合によっては,以前の妊娠でGBSスクリーニングが陽性であった女性

一般的に使用される抗菌薬としては,ペニシリン,アンピシリン,セファゾリンなどがあり,分娩前に4時間以上にわたり静注で投与すべきである。選択には,地域におけるGBSの抗菌耐性のパターンを考慮に入れるべきである。

予防に関する参考文献

要点

  • 新生児敗血症は,早発型(生後3日以内)と遅発型(4日以降)に分けられる。

  • 早発型敗血症は通常,分娩中に感染した微生物によって引き起こされ,生後6時間以内に症状が出現する。

  • 遅発型敗血症は通常,環境からの感染によって発生し,早期産児で比較的よくみられ,特に長期入院,静脈カテーテルの使用,またはその両方に該当する場合は可能性が高くなる。

  • 初期徴候は非特異的で軽微である場合が多く,発熱は10~15%の患児にしかみられない。

  • 血液および髄液培養を行い,さらに遅発型敗血症では尿培養も行う。

  • 早発型敗血症の治療は,まずアンピシリンをゲンタマイシン(および/またはグラム陰性菌による髄膜炎が疑われる場合はセフォタキシム)と併用し,できるだけ早く起因菌に応じた薬剤に変更する。

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