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新生児高ビリルビン血症

(新生児の黄疸)

執筆者:

Kevin C. Dysart

, MD, Nemours/Alfred I. duPont Hospital for Children

レビュー/改訂 2021年 3月
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黄疸とは,高ビリルビン血症(血清ビリルビン濃度の上昇)が原因で皮膚および眼球が黄色く変色することである。黄疸を発生させる血清ビリルビン値は,皮膚の色調および体の部位によって異なるが,通常,2~3mg/dL(34~51μmol/L)で強膜に,約4~5mg/dL(68~86μmol/L)で顔面に黄疸が認められるようになる。ビリルビン値が上昇するにつれ,外見上,頭から足の方へ黄疸が進行し,約15mg/dL(257μmol/L)で臍に,約20mg/dL(342μmol/L)で足に認められるようになる。新生児全例の半数強に,生後1週間以内に黄疸が認められる。出生直後の高ビリルビン血症はほぼ全例が抱合されていないビリルビンによるもので,これは古い測定法に基づき間接ビリルビンと呼ばれている;抱合されたビリルビンは直接ビリルビンと呼ばれる。新生児期の胆汁うっ滞およびビリルビン排泄障害の詳細については, 新生児の胆汁うっ滞 新生児胆汁うっ滞 胆汁うっ滞はビリルビンの排泄不全であり,抱合型 高ビリルビン血症および黄疸を引き起こす。原因は多数あり,臨床検査,肝胆道シンチグラフィー,ときに肝生検および手術によって同定される。治療は原因により異なる。 胆汁うっ滞は正期産児の2500人に1人で発症する。直接ビリルビン値が1mg/dL(17... さらに読む を参照のこと。

高ビリルビン血症の影響

高ビリルビン血症は,その原因および上昇の程度によって無害なこともあれば有害なこともある。黄疸の原因の中には,ビリルビン値にかかわらず本質的に危険なものがある。しかし,病因が何であれ,ビリルビン値が非常に高くなれば,高ビリルビン血症は問題となる。問題となる閾値は以下の条件によって異なる:

  • 年齢

  • 未熟性の程度

  • 健康状態

正期産児では一般に,18mg/dL(308μmol/L)以上が懸念すべき閾値と考えられている; 新生児の高ビリルビン血症リスク 新生児の高ビリルビン血症リスク 新生児の高ビリルビン血症リスク の図を参照のこと(1 総論の参考文献 黄疸とは,高ビリルビン血症(血清ビリルビン濃度の上昇)が原因で皮膚および眼球が黄色く変色することである。黄疸を発生させる血清ビリルビン値は,皮膚の色調および体の部位によって異なるが,通常,2~3mg/dL(34~51μmol/L)で強膜に,約4~5mg/dL(68~86μmol/L)で顔面に黄疸が認められるようになる。ビリルビン値が上昇す... さらに読む )。しかしながら, 早産児 早産児 在胎37週未満で出生した児は早産児とみなされる。 未熟性は出生時点での 在胎期間により定義される。かつては,体重2.5kg未満の新生児であればいずれも未熟児と呼ばれていた。早産児は小さい傾向にあるが,多くの体重2.5kg未満の乳児は成熟している場合や 過期産児および過熟児である場合,および... さらに読む 在胎不当過小児(SGA児) 在胎不当過小児(SGA児) 体重が在胎期間に対して10パーセンタイル未満の乳児は,在胎不当過小(small for gestational age)に分類される。合併症には,周産期仮死,胎便吸引,赤血球増多症,および低血糖がある。 在胎期間は,大まかには,最後の正常な月経がみられた日から分娩日までの週数として定義されている。より正確には,在胎期間は受胎日の14日前か... さらに読む ,および/または病的状態(例, 敗血症 新生児敗血症 新生児敗血症は,新生児期に発生する侵襲性感染症であり,通常は細菌性である。徴候は非特異的なものが多数あり,具体的には自発運動の減少,哺乳力低下,無呼吸,徐脈,体温調節障害,呼吸窮迫,嘔吐,下痢,腹部膨隆,jitteriness,痙攣,黄疸などがある。診断は臨床所見と培養結果に基づいて行う。治療は,まずアンピシリンをゲンタマイシンまたはセフ... さらに読む 低体温 新生児の低体温症 低体温症は,世界保健機関(World Health Organization)によって深部体温が36.5℃(97.7°F)未満のものと定義されている。早産児では,低体温症は罹病率および死亡率を上昇させる。低体温症は,単に環境性の場合もあれば,併発疾患(例,敗血症)の存在を示す場合もある。分娩室または手術室の適切な環境温度を維持することが,... さらに読む ,または低酸素症)にある新生児では,よりリスクが高く,ビリルビン値がより低くても介入が行われることがある。そのような新生児では,高ビリルビン血症の程度に伴ってリスクも上昇するとはいえ,ビリルビンの濃度はいかなる値でも安全とはみなせない;出生後日齢および臨床上の因子に基づいて治療を施す。現在,在胎期間に基づいて 光線療法 光線療法 黄疸とは,高ビリルビン血症(血清ビリルビン濃度の上昇)が原因で皮膚および眼球が黄色く変色することである。黄疸を発生させる血清ビリルビン値は,皮膚の色調および体の部位によって異なるが,通常,2~3mg/dL(34~51μmol/L)で強膜に,約4~5mg/dL(68~86μmol/L)で顔面に黄疸が認められるようになる。ビリルビン値が上昇す... さらに読む を始めるか否かを決定するための管理閾値が提案されている。

神経毒性は,新生児高ビリルビン血症による重大な病態である。急性脳症の後に 脳性麻痺 脳性麻痺症候群 脳性麻痺は,出生前の発育異常または周産期もしくは出生後の中枢神経系損傷に起因する,随意運動または姿勢制御の障害を特徴とする非進行性の症候群である。症状は2歳までに出現する。診断は臨床的に行う。治療法としては,理学療法,作業療法,装具,薬物療法またはボツリヌス毒素の注入,整形外科手術,バクロフェンの髄腔内投与,特定の症例における脊髄後根切断... さらに読む や感覚運動障害などの様々な神経学的異常を伴うことがあるが,認知機能は通常温存される。 核黄疸 核黄疸 核黄疸とは,大脳基底核および脳幹核への非抱合型ビリルビンの沈着による脳の損傷のことである。 正常では,血清アルブミンと結合しているビリルビンは血管内腔に保たれる。しかしながら,血清ビリルビン濃度が著しく上昇している場合( 高ビリルビン血症),血清アルブミン濃度が著しく低い場合(例,... さらに読む は,神経毒性の最重症形態である。現在核黄疸はまれであるものの,なお発生がみられ,ほぼ必ず予防できる。核黄疸とは,大脳基底核および脳幹核への非抱合型ビリルビンの沈着による脳の損傷のことであり,急性または慢性の高ビリルビン血症によって起こる。正常では,血清アルブミンと結合しているビリルビンは血管内腔に保たれる。しかし,ビリルビンは血液脳関門を通過できるため,特定の状況では核黄疸を起こしうる:

  • 血清ビリルビン濃度が著しく上昇している場合

  • 血清アルブミン濃度が著しく低い場合(例,早産児)

  • ビリルビンが競合結合する物質によってアルブミンから遊離した場合

競合結合する物質として,薬剤(例,スルフイソキサゾール,セフトリアキソン,アスピリン),ならびに遊離脂肪酸および水素イオン(例,絶食状態,敗血症,またはアシドーシスの新生児)が挙げられる。

新生児の高ビリルビン血症リスク

リスクは血清総ビリルビン値に基づく。(Adapted from Bhutani VK, Johnson L, Sivieri EM: Predictive ability of a predischarge hour-specific serum bilirubin for subsequent significant hyperbilirubinemia in healthy term and near-term newborns. Pediatrics 103(1):6–14, 1999.doi: 10.1542/peds.103.1.6)

新生児の高ビリルビン血症リスク

総論の参考文献

  • 1.Maisels MJ, Bhutani VK, Bogen D, et al: Hyperbilirubinemia in the newborn infant ≥ 35 weeks gestation: An update with clarifications.Pediatrics 124(4):1193–1198, 2009.doi: 10.1542/peds.2009-0329

病態生理

ビリルビンの大半は,ヘモグロビンが非抱合型ビリルビン(および他の物質)へ分解されることから生じる。非抱合型ビリルビンは血中でアルブミンと結合し肝臓へ運ばれ,そこで肝細胞に取り込まれ,UDPグルクロン酸転移酵素(UGT)によってグルクロン酸と抱合され水溶性となる。抱合型ビリルビンは胆汁中に排泄され十二指腸へ送られる。成人では,抱合型ビリルビンは腸内細菌によってウロビリンに還元され排泄される。しかしながら,新生児では消化管内の細菌が少ないため,ウロビリンに還元され排泄されるビリルビンも少ない。新生児は,β-グルクロニダーゼという,ビリルビンを脱抱合する酵素も有する。非抱合型となったビリルビンは,血流中に再吸収されて,再利用される。このプロセスは,ビリルビンの腸肝循環と呼ばれている(ビリルビン代謝 新生児のビリルビン代謝 子宮内での生活から子宮外での生活への移行には,生理および機能に多種多様な変化を伴う。また Professional.see chapter 周産期における問題を参照のこと。 ( 肝臓の構造および機能と 新生児高ビリルビン血症も参照のこと。) 老化または損傷した胎児赤血球は網内系細胞によって循環血中から除去され,ヘムがビリルビンに変換される... さらに読む も参照)。

高ビリルビン血症の機序

病因

分類

高ビリルビン血症の原因を分類し考察する方法はいくつかある。一過性黄疸は健康な新生児で一般的であるため(黄疸が常に疾患を意味する成人とは異なる),高ビリルビン血症は生理的なものと病的なものに分類できる。また,高ビリルビン血症が非抱合型,抱合型,またはその両方かによっても分類できる。機序によっても分類可能である( Professional.see table 新生児高ビリルビン血症の原因 新生児高ビリルビン血症の原因 新生児高ビリルビン血症の原因 )。

原因

ほとんどの場合は非抱合型高ビリルビン血症である。新生児黄疸の最も一般的な原因としては以下のものがある:

  • 生理的な高ビリルビン血症

  • 生理的黄疸(breastfeeding jaundice)

  • 母乳性黄疸(breast milk jaundice)

  • 溶血性疾患による病的な高ビリルビン血症

肝機能障害(例,胆汁うっ滞を起こす静脈栄養によるもの,新生児敗血症,新生児肝炎)は,抱合型高ビリルビン血症または混合型の高ビリルビン血症を引き起こす可能性がある。

生理的な高ビリルビン血症は,ほぼ全ての新生児に起こる。新生児の赤血球は寿命が比較的短いためにビリルビンの産生が増加すること,ウリジン二リン酸グルクロン酸転移酵素(UGT)の欠乏に起因する抱合不全によりクリアランスが低下すること,および腸内の細菌レベルが低いことと抱合型ビリルビンの加水分解の増加とが組み合わさって,腸肝循環を亢進させる。ビリルビン値は生後3~4日(アジア人種では7日)で18mg/dL(308μmol/L)まで上昇することがあり,その後下降する。

生理的黄疸(breastfeeding jaundice)は生後1週以内の母乳栄養児の6分の1に発生する。母乳栄養では,母乳摂取量が低下している新生児や脱水またはカロリー摂取不足に陥っている新生児の一部において,ビリルビンの腸肝循環が亢進する。また,腸肝循環の増加は,ビリルビンを再度吸収されない代謝物に変換する腸内細菌の減少からも生じる。

母乳性黄疸(breast milk jaundice)は,生理的黄疸とは異なるものである。生後5~7日に発生し生後約2週にピークがみられる。母乳中のβ-グルクロニダーゼ濃度の上昇によって起こると考えられ,これによりビリルビン脱抱合および再吸収の増加が起こる。

正期産児の病的な高ビリルビン血症は以下の場合に診断される:

  • 黄疸が生後24時間以内に発生する場合,生後1週以降に発生する場合,または2週間以上持続する場合

  • 血清総ビリルビンが1日5mg/dL(86μmol/L)以上上昇する場合

  • 血清総ビリルビンが18mg/dL(308μmol/L)以上の場合

  • 重篤な疾患の症状または徴候を示す場合

最も一般的な病因は以下の通りである:

評価

病歴

現病歴の聴取では,発症年齢および黄疸の持続期間に注意すべきである。重要な関連症状として,嗜眠および哺乳不良(核黄疸の可能性を示唆)などがあり,昏迷,筋緊張低下,または痙攣へと進行し,最終的には筋緊張亢進に至る場合がある。哺乳パターンから,授乳ができていない可能性や授乳不足の可能性が示唆されることがある。したがって,病歴聴取には,何をどのくらいの量,どのくらいの回数哺乳しているか,尿量および排便量(授乳ができていないか,または授乳不足の可能性),どのくらい上手に乳房または哺乳瓶の乳首をくわえているか,母親が母乳による乳房の充満を感じているか,授乳中に児が嚥下しているか,授乳後満足そうに見えるかなどを含めるべきである。

システムレビュー(review of systems)では,呼吸窮迫,発熱,および易刺激性または嗜眠(敗血症);筋緊張低下および哺乳不良(甲状腺機能低下症,代謝性疾患);嘔吐の反復エピソード(腸閉塞)など,原因を示唆する症状がないか検討すべきである。

既往歴の聴取では,母体感染症(トキソプラズマ症,他の病原体,風疹,サイトメガロウイルス,および単純ヘルペス[TORCH]感染症),早期高ビリルビン血症を起こしうる疾患(母体糖尿病),母体Rh因子および血液型(母児間血液型不適合),遷延分娩または難産の既往(血腫または鉗子による外傷)に焦点を置くべきである。

家族歴の聴取では,グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損症またはその他の赤血球酵素の欠損症,サラセミア,および球状赤血球症などの黄疸を起こしうる既知の遺伝性疾患,黄疸がみられた同胞の有無に注意すべきである。

薬歴の聴取では,黄疸を強める可能性がある薬剤(例,セフトリアキソン,スルホンアミド系[これらの薬剤は黄疸を強めるわけでないが,アルブミンからビリルビンを遊離させ,遊離ビリルビンの割合を増やすため,ビリルビン値が比較的低くても害をもたらす恐れがある],および抗マラリア薬)に注意すべきである。

身体診察

全体的臨床所見およびバイタルサインを評価する。

皮膚を視診して黄疸の程度を確認する。皮膚を愛護的に圧迫すると黄疸の存在を明らかにするのに役立つ。

身体診察では,原因疾患の徴候に焦点を置くべきである。

全体的な外見を視診して,多血(胎児母体間輸血),巨大児(母体糖尿病),および嗜眠または極度の易刺激性(敗血症または感染症)がないかを確認するほか,巨舌症(甲状腺機能低下症)および鼻根部扁平または両側内眼角贅皮(ダウン症候群)などの形態異常の特徴がないか確認する。

頭頸部診察では,頭血腫に一致する頭皮の皮下出血および腫脹に注意する。肺を診察して,断続性ラ音(ラ音),類鼾音,および呼吸音減弱(肺炎)がないか確認する。腹部を診察して,膨隆,腫瘤(肝脾腫),または疼痛(腸閉塞)がないか確認する。神経学的診察では,筋緊張低下または筋力低下の徴候に焦点を置くべきである(代謝性疾患,甲状腺機能低下症,敗血症)。

警戒すべき事項(Red Flag)

以下の所見は特に注意が必要である:

  • 生後24時間以内の黄疸

  • 血清総ビリルビン値が18mg/dL(308μmol/L)以上

  • 血清総ビリルビン値の0.2mg/dL/時(3.4μmol/L/時)以上または5mg/dL/日(86μmol/L/日)以上の上昇

  • 血清総ビリルビン値が5mg/dL(86 μmol/L)以下で抱合型ビリルビン濃度が1mg/dL(17μmol/L)以上,または抱合型ビリルビンが血清総ビリルビン値の20%以上(新生児胆汁うっ滞を示唆)

  • 生後2週以降の黄疸

  • 嗜眠,易刺激性,呼吸窮迫

所見の解釈

評価は生理的黄疸と病的黄疸との鑑別に焦点を置くべきである。 病歴,身体所見,および発生時期 新生児黄疸の身体所見 新生児黄疸の身体所見 が診断の参考になる可能性があるが,典型的には血清総ビリルビン値および血清中の抱合型ビリルビン値を測定する。

発生時期

生後24~48時間以内に発生する,または2週間以上持続する黄疸は,病的である可能性が最も高い。生後2~3日以降まで顕性とならない黄疸は,生理的黄疸または母乳性黄疸により一致する。例外は,代謝因子(例,クリグラー-ナジャー症候群,甲状腺機能低下症,薬剤)によるビリルビンの分泌不足であり,顕性となるのに2~3日かかる場合がある。そのような場合,ビリルビン値は典型例では生後1週間以内にピークとなり,5mg/dL/日(86μmol/L/日)未満の速度で蓄積し,長期間顕性となる。現在ほとんどの新生児は48時間以内に退院するか新生児室を出るため,高ビリルビン血症の多くは退院後にしか発見されない。

検査

高ビリルビン血症の診断は,新生児の皮膚色により疑い,血清ビリルビンの測定により確定する。経皮的およびデジタル写真撮影ベースの技術など,乳児のビリルビンを測定する非侵襲的な技術の利用が増えてきており,この測定値は血清ビリルビン測定値と良好な相関を示す。高ビリルビン血症のリスクは年齢特異的な血清総ビリルビン値に基づいている。

早期産児で10mg/dL(171μmol/L)以上,または正期産児で18mg/dL(308μmol/L)以上のビリルビン濃度で,ヘマトクリット,血液塗抹標本,網状赤血球数,直接クームス試験,血清総ビリルビンおよび直接血清ビリルビン濃度,児と母親の血液型およびRh型の検査を含む追加的な診断検査が必要となる。

この他にも,病歴および身体診察によっては,敗血症を検出するための血液,尿,髄液培養,溶血のまれな原因を検出するための赤血球関連の酵素レベルの測定などの検査が適応となることがある。このような検査は,最初のビリルビン値が25mg/dL(428μmol/L)以上のいずれの新生児にも適応となる。

治療

高ビリルビン血症の治療は基礎疾患に対して行う。さらに,高ビリルビン血症自体の治療も必要な場合がある。

生理的黄疸は通常臨床的には問題にならず,1週間以内に消失する。頻回の人工乳栄養は,消化管運動と排便頻度を増やし,そのためビリルビンの腸肝循環が最小限になることで,高ビリルビン血症の発生率および重症度を低減できる。人工乳の種類はビリルビン排泄を増やすことに関しては重要ではないと思われる。

授乳頻度を増やすことによって,生理的黄疸を防ぐまたは減らすことが可能な場合がある。早期の生理的黄疸がみられる正期産児で,ビリルビン値が上昇し続け18mg/dL(308μmol/L)以上となった場合は,母乳から人工乳への一時的変更が適切と考えられる;さらに高値の場合は光線療法が適応となる場合がある。母乳栄養の中止は1~2日でよいことが多く,母親には患児のビリルビン値が低下し始めればすぐに授乳を再開できるよう,母乳を定期的に搾乳し続けるよう奨励する。母親にはまた,高ビリルビン血症は何ら害を起こさず,安全に母乳栄養を再開できるようになるということを理解させておく必要がある。水分またはブドウ糖の補充は,母親の乳汁産生を妨げる恐れがあることから勧められない。

高ビリルビン血症の根治療法では以下の処置を行う:

  • 光線療法

  • 交換輸血

光線療法

光線療法は依然として標準治療であり,蛍光白色光を用いることが最も多い。(集中的な光線療法には青色光,すなわち波長425~475 nmの光が最も効果的である。)光線療法は,光を使用して非抱合型ビリルビンを光異性化し水への溶解度を高め,グルクロン酸抱合なしでも迅速に肝臓および腎臓から排泄できるようにするものである。これは,新生児高ビリルビン血症の根治的な治療および核黄疸の予防となる。(妊娠35週以上の新生児における重度の新生児高ビリルビン血症予防目的での光線療法の使用については,American Academy of Pediatricsのテクニカルレポート(technical report)も参照のこと。)

在胎35週以降に生まれた新生児における光線療法の適応は,非抱合型ビリルビンが12mg/dL(205.2μmol/L)以上の場合の選択肢であり,また非抱合型ビリルビンが25~48時間で15mg/dL(257μmol/L),49~72時間で18mg/dL(308μmol/L),72時間以上で20mg/dL(342μmol/L)以上の場合である( Professional.see figure 新生児の高ビリルビン血症リスク 新生児の高ビリルビン血症リスク 新生児の高ビリルビン血症リスク )。光線療法は抱合型高ビリルビン血症には適応とならない。

早産児は神経毒性のリスクがより高いため,在胎35週未満で生まれた新生児では,治療域値が低くなる。早産であればあるほど,閾値は低くなる( Professional.see table 在胎35週未満の新生児に対して提案されている光線療法または交換輸血開始の閾値* 在胎35週未満の新生児に対して提案されている光線療法または交換輸血開始の閾値* 在胎35週未満の新生児に対して提案されている光線療法または交換輸血開始の閾値* )。

在胎35週未満の新生児に対して提案されている光線療法または交換輸血開始の閾値*

在胎期間(週)

光線療法

(血清総ビリルビン,mg/dL[μmol/L])

交換輸血

(血清総ビリルビン,mg/dL[μmol/L])

< 28

5~6[86~103]

11~14[188~239]

28~ < 30

6~8[103~137]

12~14[205~239]

30~ < 32

8~10[137~171]

13~16[222~274]

32~ < 34

10~12[171~205]

15~18[257~308]

34~ < 35

12~14[205~239]

17~19[291~325]

*Consensus-based recommendations adapted from Maisels MJ, Watchko JF, Bhutani VK, Stevenson DK: An approach to the management of hyperbilirubinemia in the preterm infant less than 35 weeks of gestation. J Perinatol 32:660–664, 2012. doi: 10.1038/jp.2012.71

光線療法実施中は,たとえ血清ビリルビン値は高値のままであっても外見上は黄疸が消失したように見える場合があるため,皮膚によって黄疸の重症度評価をすることはできない。採取用試験管内のビリルビンは急速に光酸化されるため,ビリルビン測定に使用する血液は強い光が当たらないよう遮光する。

交換輸血

交換輸血は循環からビリルビンを速やかに除去でき,免疫介在性の溶血により最も多く発生する重度の高ビリルビン血症に適応となる。部分的に溶血し抗体で覆われた赤血球および循環中免疫グロブリンを除去するため,臍静脈カテーテル(または利用できるその他の経路)を介して少量の血液の採血および補充を行う。患児の血液は,循環血中の抗体に結合する赤血球膜抗原をもたないドナーの赤血球(抗体で覆われていない赤血球)と交換する。つまり,新生児がAB抗原に感作されていればO型血液を使用し,新生児がRh抗原に感作されていればRh陰性の血液を使用するということである。成人ドナーの赤血球は,胎児の細胞に比べて多くのABO抗原部位をもつため,同じ型同士の輸血は溶血を助長する。核黄疸の原因となるのは非抱合型高ビリルビン血症のみであり,抱合型ビリルビンが上昇したとしても,交換輸血が必要かどうかの決定には総ビリルビン値ではなく非抱合型ビリルビン値を使用する。

正期産児への適応としては,血清ビリルビンが24~48時間で20mg/dL(342μmol/L)以上の場合または48時間を超えて25mg/dL(428μmol/L)以上の場合,光線療法の結果として開始4~6時間以内で1~2mg/dL(17~34μmol/L)の減少に止まった場合,またはビリルビン値にかかわらず核黄疸の最初の臨床徴候がみられた場合などがある。最初の検査時から血清ビリルビン値が25mg/dL(428μmol/L)を超えている新生児には,高強度の光線療法によりビリルビン値が減少しなかった場合に備え,交換輸血の準備を整えておく必要がある。

在胎35週未満の新生児での閾値が提唱されている(在胎35週未満の新生児に対して提案されている光線療法または交換輸血開始の閾値* 在胎35週未満の新生児に対して提案されている光線療法または交換輸血開始の閾値* 在胎35週未満の新生児に対して提案されている光線療法または交換輸血開始の閾値* の表を参照)。以前は,患者の体重だけに基づいた基準が使われていたこともあったが,現在は上に記載した具体的なガイドラインが使用されている。

濃厚赤血球160mL/kg(児の全血量の2倍)を2~4時間かけて交換することが最も多いが,80mL/kgを1~2時間かけて連続2回交換する方法もある。交換輸血では,一定量の血液を採取後直ちに輸血する。一回の交換量は乳児の大きさによって異なるが,平均的な正期産の乳児では典型的には20mL付近である。予定総量が交換できるまでこの処置を繰り返す。重症(critically ill)例または早産児の場合,血液量の大幅な変動を避けるため,1回量として5~10mLを用いる。高ビリルビン血症では1~2時間以内に輸血前の約60%のレベルまでビリルビン値がリバウンドしうることが知られているため,ビリルビンを50%近く減少させることを目標とする。また核黄疸のリスクが増大するような状態(例,絶食状態,敗血症,アシドーシス)にある場合は,その目標レベルをさらに1~2mg/dL(17~34µmol/L)下げるのも通例となっている。ビリルビン値が高いままであれば,交換輸血を繰り返す必要もありうる。なお,交換輸血にはリスクおよび合併症があり,光線療法が成功を収めたことで,この処置が施行される頻度は減少してきている。

要点

  • 新生児黄疸は,ビリルビン産生の増大,ビリルビンクリアランスの減少,または腸肝循環の亢進によって生じる。

  • 黄疸の中には,新生児では正常なものもある。

  • リスクは新生児の生後日齢,血清総ビリルビン値,未熟性,および健康状態により異なる。

  • 治療は,ビリルビン高値の原因および程度によって変わる;早産であればあるほど,閾値は低くなる。

  • 根治的治療法には光線療法および交換輸血などがある。

より詳細な情報

以下の英語の資料が有用であろう。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

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