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小児および青年におけるチック症およびトゥレット症候群

(Tourette症候群)

執筆者:

M. Cristina Victorio

, MD, Akron Children's Hospital

レビュー/改訂 2019年 10月
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チックとは,反復性かつ突発的で非律動的かつ急速な筋肉の運動で,音または発声を含む。トゥレット症候群は,運動チックと音声チックの両方が1年以上みられる場合に診断される。診断は臨床的に行う。チックは,それが小児の活動や自己イメージに支障を来している場合にのみ治療の対象となるが,治療法としては,チックのための包括的行動的介入(Comprehensive Behavioral Intervention for Tics:CBIT)やクロニジンまたは抗精神病薬の投与などがある。

チックの重症度は様々で,小児の約20%でみられるが,その多くは評価も診断されていない。トゥレット症候群はその最重症型であり,小児1000人当たり3~8人に発生する。男女比は3:1である。

チックは18歳未満(典型的には4~6歳)で始まり,重症度は10~12歳頃にピークを迎え,青年期に低下する。最終的には,ほとんどのチックが自然に消失する。しかしながら,小児の約1%ではチックが成人期までもち越される。

病因は不明であるが,チック症には家族集積の傾向がみられる。一部の家系では,不完全浸透の優性遺伝のパターンが認められる。

併存症

併存症がよくみられる。

チックがみられる小児は,以下の疾患を合併していることがある:

これらの疾患は,しばしばチック以上に小児の発達と健康の妨げとなる。ADHDは最も頻度の高い併存症であり,ADHDの小児が刺激薬による治療を受けると,ときにチックが最初に出現するが,このような小児はおそらく基礎にチックの傾向があると考えられる。

青年(および成人)では以下がみられることがある:

分類

チック症は,Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders第5版(DSM-5)により次の3カテゴリーに分類される:

  • 暫定的チック症:単発または多発の運動チックおよび/または音声チックがみられるが1年未満のもの。

  • 持続性チック症(慢性チック症):単発または多発の運動チックまたは音声チックのどちらか(両方ではない)が1年以上みられるもの。

  • トゥレット症候群(Gilles de la Tourette症候群):運動チックと音声チックの両方が1年以上みられるもの。

これら3つのカテゴリーは典型的には,暫定的チック症から始まり,ときに持続性チック症またはトゥレット症候群へと進行する1つの連続体を形成する。いずれの場合も発症年齢が18歳未満でなければならず,障害は物質(例,コカイン)の生理学的作用や他の疾患(例,ハンチントン病,ウイルス感染後脳炎)に起因するものであってはならない。

症状と徴候

ある特定の時点では一連の同じチックが現れるが,その型,強度,頻度は一定期間で変動する傾向がある。1時間で複数回発生することもあり,その後は治まるか,まれに3カ月以上持続する。一般的に,チックは睡眠中には起こらない。

チックには以下の種類がある:

  • 運動または音声

  • 単純性または複雑性

チックの型 チックの型 チックの型 の表を参照のこと。)

単純性チックは,非常に短い運動または発声であるが,典型的には社会的な意味を伴わない。

複雑性チックは,より長期間続き,複数の単純性チックが組み合わさって生じることがある。複雑性チックは社会的な意味がある(すなわち,認識可能な動作や言葉である)ように見えるため,意図的な行為と思える。しかしながら,患者の中には短時間(数秒から数分)チックを自発的に抑制できる者や,チックが出る前兆の衝動に気づく者もいるものの,チックは隨意的なものではなく,問題行動を反映するものではない。

ストレスや疲労はチックを悪化させる可能性があるが,チックはテレビを観ている最中など体がリラックスしているときに最も著明になることが多い。患者が作業(例,学校活動,工作活動)に取り組んでいる間は,チックは減弱することがある。チックが運動協調の妨げになることはまれである。軽度のチックが問題となることはまれであるが,重度のチック(特に汚言症[まれである])は身体的かつ/または社会的に支障を来す。

ときにチックは爆発的に発症し,1日以内に出現して定常化することがある。ときに,爆発的なチックや関連する強迫衝動性がある小児はレンサ球菌に感染している場合があるが,この現象はときに PANDAS レンサ球菌感染症の遅発性合併症 レンサ球菌感染症の遅発性合併症 (pediatric autoimmune neuropsychiatric disorder associated with group A streptococci)と呼ばれる。多くの研究者は,PANDASがチック症のスペクトラムと異なるとは信じていない。

診断

  • 臨床的評価

診断は臨床的に行う。トゥレット症候群を一過性チックと鑑別するためには,医師が時間をかけて観察しなければならないことがある。トゥレット症候群は,運動チックと音声チックの両方が1年以上みられる場合に診断される。

治療

  • チックのための包括的行動的介入(Comprehensive Behavioral Intervention for Tics:CBIT)

  • ときにクロニジンまたは抗精神病薬

  • 併存症の治療

(米国小児科学会[American Academy of Pediatrics]による,トゥレット症候群および慢性チック症患者におけるチックの治療に関するレビューサマリーも参照のこと。)

チックが小児の活動または自己イメージを有意に障害している場合に限り,チックを抑制する治療が推奨されるが,治療によって本疾患の自然経過が変化することはない。しばしば,医師が小児とその家族によるチックの自然経過の理解を助ける場合や,学校関係者がクラスメートによる本疾患の理解を助けられる場合には,治療を回避することができる。

CBITと呼ばれる一種の認知行動療法は,比較的年長の小児の一部において,チックの頻度および重症度をコントロールないし減らすのに役立つ可能性がある。これには,習慣逆転法(チックに代わる新しい習慣を獲得する)やチックに関する教育,リラクゼーション法などの認知行動療法が含まれる。

ときに,チックが自然な増悪と軽快を繰り返すことで,特定の治療に反応したように見える場合がある。

薬物

一部の患者では経口クロニジン0.05~0.1mg,1日1回~1日4回が効果的である。有害作用の疲労によって日中の用量が制限されることがある;低血圧はまれである。

経口抗精神病薬が必要になることもあり,例えば以下のように使用される:

  • リスペリドン0.25~1.5mg,1日2回

  • ハロペリドール0.5~2mg,1日2回または1日3回

  • ピモジド1~2mg,1日2回

  • オランザピン2.5~5mg,1日1回

フルフェナジンもチックの抑制に効果的である。

いずれの薬剤も,チックを許容範囲内に抑えるのに必要な最小限の用量で使用し,チックの軽快とともに用量を漸減する。不快気分,パーキンソニズム,アカシジア,遅発性ジスキネジアなどの有害作用はまれであるが,抗精神病薬の使用を制限する要因となる場合がある;日中の用量を少なくし,就寝時に多めにすることで,有害作用を軽減できることがある。

併存症の治療

併存症の治療が重要である。

ときに低用量の刺激薬によって,チックを増悪させることなく,ADHDを治療できる場合があるが,代替治療(例,アトモキセチン)の方が望ましい場合もある。

強迫性または衝動性が煩わしい場合は,選択的セロトニン再取り込み阻害薬が有用な可能性がある。

チックがあり学校生活で苦労している小児には,学習障害の評価を行い,必要に応じて支援すべきである。

要点

  • チックとは,反復性かつ突発的で急速かつ非律動的な筋肉の運動または発声で,18歳未満の小児に発生するものである。

  • チックはよくみられる現象であるが,チックの最も重度の臨床像である汚言はまれである。

  • 単純性チックは非常に短い運動または発声(例,頭部の唐突な動き,うなり声)であるが,典型的には社会的な意味を伴わない。

  • 複雑性チックは社会的な意味がある(すなわち,認識可能な動作や言葉である)ように見えるため,意図的な行為と思えるが,実際はそうではない。

  • チックのための包括的行動的介入(Comprehensive Behavioral Intervention for Tics:CBIT)のほか,ときにクロニジンまたは抗精神病薬の使用により,重度のチックや煩わしいチックが減弱する可能性があり,そのようなチックは成長とともに減弱する傾向があるものの,少数は成人期にもち越される。

  • 併存症(例,注意欠如・多動症,強迫症)がよくみられ,これらも診断して治療する必要がある。

より詳細な情報

  • American Academy of Neurology's review summary of the treatment of tics in people with Tourette syndrome and chronic tic disorders

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