横紋筋肉腫は,中枢神経系外の固形の 小児がん 小児がんの概要 全体として,小児がんは比較的まれであり,0~14歳の小児における年間発生例数は13,500例未満,年間死亡例数は約1500例である。それに比べて成人では,年間発生例数は140万例,年間死亡例数は575,000例である。しかし,小児ではがんは外傷に次ぐ2番目の死因である。 小児期のがんには成人に発生するものも多く含まれる。... さらに読む のうち3番目に多い(ウィルムス腫瘍 ウィルムス腫瘍 ウィルムス腫瘍とは,腎芽,間質,上皮の各成分で構成される腎臓の胎児性がんである。遺伝子異常が発生機序に関与するとみられているが,家系内の遺伝は症例のわずか1~2%を占めるに過ぎない。診断は超音波検査,腹部CT,またはMRIにより行われる。治療には外科的切除,化学療法,放射線療法が含まれる。 ウィルムス腫瘍は通常5歳未満の小児にみられるが,ときにより年長の小児にも,まれに成人にも発生する。ウィルムス腫瘍は,15歳未満の... さらに読む , 神経芽腫 神経芽腫 神経芽腫は,副腎から,またはより頻度は低いが後腹膜,胸部,頸部を含む副腎外の交感神経鎖から発生するがんである。診断は生検により確定される。治療には外科的切除,化学療法,放射線療法,造血幹細胞移植併用大量化学療法,シス-レチノイン酸投与,免疫療法などがある。 神経芽腫は, 乳児のがんとして最も多くみられるものである。神経芽腫のほぼ90%が5歳未満の小児に発生する。神経芽腫のほとんどは自然発生的に生じるが,1~2%は遺伝性とみられる。一部の... さらに読む に次ぐ)。とはいえ,小児がん全体に占める割合は3~4%に過ぎない。横紋筋肉腫は軟部肉腫と呼ばれる腫瘍群に属し,この群の中で最も多いものである。
小児における横紋筋肉腫の発生率は,年間100万人中4.3人である。がんの3分の2は7歳未満の小児で診断される。本疾患は黒人よりも白人に多く(黒人女児の発生頻度がより低いことが主な要因),またわずかの差ではあるが女児よりも男児に多くみられる。
組織像
主に2つの組織学的亜型がある:
胎児型:染色体11p15.5のヘテロ接合性の消失を特徴とするもの
胞巣型:PAX3遺伝子をFOXO1(FKHR)遺伝子と融合させる転座t(2;13),およびPAX7遺伝子をFOXO1(FKHR)遺伝子と融合させる転座t(1;13)と関連するもの
部位
横紋筋肉腫は体のほぼ全ての部位に発生しうるが,本疾患には好発部位がいくつか存在する:
頭頸部(約35%),通常は眼窩または上咽頭道:学齢期の小児で最も多くみられる
泌尿生殖器系(約25%),通常は膀胱,前立腺,または腟:通常は乳幼児に発生する
四肢(約20%):青年で最も多くみられる
体幹/その他の部位(約20%)
転移が発生する患児は全体の約15~25%である。転移が最も多い部位は肺であり,骨,骨髄,リンパ節にも生じる可能性がある。
症状と徴候
小児の典型例では,発熱,盗汗,体重減少などの全身症状は現れない。通常,触知可能な硬い腫瘤がみられるか,またはがんの臓器への接触による臓器機能障害を来す。
眼窩および上咽頭のがんでは,流涙,眼痛,眼球突出を来すことがある。上咽頭腔のがんでは,鼻閉,声質の変化,粘液膿性の分泌物を生じる。
泌尿生殖器のがんでは,腹痛,触知可能な腹部腫瘤,排尿困難,血尿がみられる。
四肢のがんでは,密着した硬い腫瘤が上肢または下肢のあらゆる部位に生じる。所属リンパ節への転移がしばしば起こり,肺,骨髄,リンパ節への転移も生じ,通常無症状である。
診断
CTまたはMRI
生検または切除
腫瘤の評価はCTで行うが,頭頸部の病変はしばしばMRIでより明確に描出される。横紋筋肉腫の診断の確定は生検または腫瘤の切除による。
標準的な転移の評価法には,胸部CT,PET-CT,骨シンチグラフィー,両側骨髄穿刺,骨髄生検などがある。
予後
予後は以下に基づく:
がんの位置(例,傍髄膜以外の頭頸部および膀胱/前立腺以外の泌尿生殖器系の方が予後良好)
切除の完全性
転移の存在
年齢(1歳未満または10歳以上の小児の方が予後不良)
組織型(胎児型は胞巣型と比べて予後良好)
これらの予後因子の組合せにより,患児を低リスク,中間リスク,高リスク分類のいずれかに当てはめる。2つの病期分類法に基づく複雑なリスク層別化システムが存在する(米国国立がん研究所[National Cancer Institute]のstage information for rhabdomyosarcomaを参照)。各リスク分類に応じて異なる強度の治療が行われ,さらに全生存率も,低リスク患児の90%以上から高リスク患児の50%未満まで,リスクに応じて異なる。
治療
手術および化学療法
残存する大きな病変または顕微鏡的病変には放射線療法
横紋筋肉腫の治療は,手術,化学療法,およびときに放射線療法から成る。
安全に行える場合には,原発がんの完全切除が推奨される。このがんは化学療法および放射線療法に反応するため,臓器の損傷または機能不全をもたらす可能性がある場合は,積極的切除は勧められない。
いずれのリスク群の小児にも化学療法による治療が行われ,最も頻用される薬剤は,ビンクリスチン,アクチノマイシンD,シクロホスファミド,ドキソルビシン,イホスファミド,およびエトポシドである。ノギテカンおよびイリノテカンは本疾患に有効な新規薬剤である。
放射線療法は,一般に手術後も残存する大きな病変または顕微鏡的残存病変のある症例,ならびに中間リスクおよび高リスク例に用いる。
より詳細な情報
Stage information for rhabdomyosarcoma (National Cancer Institute)