有効陣痛は通常,子宮口が4cm以上開大すると発来する。正常では,頸管開大と児頭の骨盤内への下降は,最低でも1cm/時間の速度で進行し,経産婦においてはより速く進行する。
病因
遷延分娩は,胎児骨盤不均衡(胎児が母体の骨盤を通過できない)により生じる場合があるが,これらは,母体の骨盤が異常に小さい,または胎児が異常に大きい,もしくは胎位が異常である場合(胎児が原因の難産 胎児が原因の難産 胎児が原因の難産は,胎児の大きさまたは胎位の異常が原因で起きる難産である。診断は,診察,超音波検査または陣痛促進に対する反応による。治療は,手技による胎位の変換, 鉗子・吸引分娩または 帝王切開による。 胎児が原因の難産は胎児が以下の場合に起こることがある: 骨産道に対して大きすぎる(胎児骨盤不均衡) 胎位が異常である場合(例,骨盤位) 治療は,胎児が原因の難産の理由によって異なる。 さらに読む )に生じうる。
遷延分娩の他の原因として,子宮収縮が弱すぎたり間隔が長すぎたりする(微弱陣痛)場合,またはときに,強すぎたり間隔が短すぎたりする(過強陣痛)場合がある。
診断
治療
オキシトシン
分娩第2期が遷延した場合,ときに鉗子・吸引分娩
胎児骨盤不均衡または難治性の微弱陣痛に対しては帝王切開
分娩第1期または第2期の進行が非常に緩徐であり,胎児の体重が5000g未満(糖尿病の女性では4500g未満)ならば,オキシトシンの投与(微弱陣痛に対する治療)により分娩が促進されることがある。正常な進行が回復すれば,分娩はその後進行しうる。そうでなければ,胎児骨盤不均衡または難治性微弱陣痛が存在する可能性があり, 帝王切開 帝王切開 帝王切開は,子宮を切開する外科手術による分娩である。 米国では最大30%の分娩が帝王切開による。帝王切開率は変動する。帝王切開率は最近上昇しており,これは一部には帝王切開後の経腟分娩(VBAC)を試みる女性での子宮破裂のリスク上昇についての懸念による。 帝王切開における合併症発生率および死亡率は低いが,依然として経腟分娩のそれよりは数倍高い;したがって帝王切開は妊婦または胎児にとって経腟分娩より安全な場合にのみ施行すべきである。... さらに読む が必要となりうる。
分娩第2期が遷延した場合,胎児の大きさ,胎位,station(母体の両坐骨棘より2cm下[+2]またはそれより下)および母体の骨盤評価を行った結果, 鉗子分娩または吸引分娩 鉗子・吸引分娩 鉗子・吸引分娩では,分娩第2期に分娩を補助および促進するために,鉗子または吸引器を児頭に対して使用する。 鉗子分娩および吸引分娩の適応は,本質的に同じである: 分娩第2期(子宮口の全開大から胎児娩出まで)の遷延 胎児機能不全の疑いがある(例,異常な心拍数パターン) 母体の有益性のために第2期を短縮する必要がある―例,母体の心機能障害(例,左右短絡)または神経疾患(例,脊髄外傷),いきみが禁忌であるまたは効果的ないきみを妨げる母体の疲労 さらに読む が適切となる場合がある。
以下の場合に,分娩第2期遷延とみなされる:
初産婦:区域麻酔使用で4時間,区域麻酔非使用で3時間進行がみられない
過強陣痛は治療が困難であるが,体位変換,短時間作用型子宮収縮薬(例,テルブタリン0.25mg,静注,単回),使用されている場合はオキシトシンの中止,および鎮痛薬が役立つことがある。
治療に関する参考文献
1.Spong CY, Berghella V, Wenstrom KD, et al: Preventing the first cesarean delivery: Summary of a Joint Eunice Kennedy Shriver National Institute of Child Health and Human Development, Society for Maternal-Fetal Medicine, and American College of Obstetricians and Gynecologists Workshop.Obstet Gynecol 120 (5):1181–1193, 2012.doi: http://10.1097/AOG.0b013e3182704880.
要点
遷延分娩は胎児骨盤不均衡から生じる場合や,子宮収縮が弱すぎたり間隔が長すぎたりすること,またはときに強すぎたり間隔が短すぎたりすることから生じる場合がある。
胎児と骨盤の大きさおよび胎位を評価するとともに,子宮の触診や子宮内圧カテーテルを使用することにより収縮を評価する。
分娩第1期または第2期の進行が非常に緩徐であり,胎児の体重が経腟分娩可能と判断されれば,オキシトシンにより陣痛を促進する;処置が奏効しなければ,原因は胎児骨盤不均衡または難治性微弱陣痛である可能性があり,場合により帝王切開が必要である。
分娩第2期が遷延した場合,胎児の大きさ,胎位,station,および母体の骨盤評価を行った結果,適切であれば鉗子分娩または吸引分娩を考慮する。
過強陣痛の場合,体位変換,短時間作用型子宮収縮薬,使用されている場合はオキシトシンの中止,および鎮痛薬を考慮する。