上咽頭癌

執筆者:Bradley A. Schiff, MD, Montefiore Medical Center, The University Hospital of Albert Einstein College of Medicine
レビュー/改訂 2021年 1月
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扁平上皮癌は上咽頭で最も一般的な悪性腫瘍である。症状は後期に発生し,具体的には片側性の血性鼻漏,鼻閉,難聴,耳痛,顔面腫脹,顔面のしびれなどがある。診断は視診および生検に基づき,範囲を評価するためのCT,MRI,またはPETも行う。治療は放射線,化学療法,およびまれに手術による。

頭頸部腫瘍の概要も参照のこと。)

上咽頭癌は,青年を含むあらゆる年齢層で生じ,南シナ海地域で頻度が高い。米国および西欧ではまれであるが,アジアでは頻度が高く,米国の中国系移民,特に中国南部系および東南アジア系の間では最も頻度の高いがんの1つである。数世代をかけて,中国系米国人における有病率は,非中国系米国人における有病率まで少しずつ低下しており,病因における環境要素が示唆される。食事による亜硝酸塩および塩漬けの魚への曝露もリスクを増加させると考えられている。エプスタイン-バーウイルスが有意な危険因子であり,遺伝的素因がある。

その他の上咽頭悪性腫瘍としては,腺様嚢胞癌,粘表皮癌,悪性混合腫瘍,腺癌,リンパ腫,線維肉腫,骨肉腫,軟骨肉腫,黒色腫などがある。

症状と徴候

上咽頭癌では,触知可能な頸部リンパ節転移がしばしばみられる。もう1つの主症状は難聴であり,これは通常,鼻閉または耳管閉塞による滲出性中耳炎によって生じる。その他の症状としては,耳痛,膿性血性鼻漏,明らかな鼻出血,脳神経麻痺,頸部リンパ節腫脹などがある。脳神経麻痺はほとんどの場合,第6,第4,および第3脳神経を侵すが,これはこれらが破裂孔(本腫瘍の最も一般的な頭蓋内への進展経路)に近接する海綿静脈洞に位置するためである。上咽頭のリンパ管は正中線を越えて連絡しているため,両側性の転移が一般的である。

診断

  • 上咽頭の内視鏡検査および生検

  • 病期分類のための画像検査

上咽頭癌が疑われる患者では,鼻咽頭鏡または上咽頭内視鏡を用いて診察し病変を生検する必要がある。針生検は容認され,しばしば推奨されるが,頸部リンパ節の開放生検は最初の処置として施行すべきではない( see page 頸部腫瘤)。

頭部のガドリニウム造影MRI(脂肪抑制併用)を施行し,上咽頭および頭蓋底に注目する;約25%の患者で頭蓋底が侵されている。MRIで認められにくい頭蓋底の骨変化を正確に評価するために,CTも必要である。病変の範囲および頸部リンパ管を評価するため,一般的にPETも施行される。(上咽頭癌の病期分類の表を参照のこと。)

表&コラム

予後

早期上咽頭癌患者(上咽頭癌の病期分類の表を参照)の予後は典型的には良好であるが(5年生存率60~75%),IV期患者の予後は不良である(5年生存率40%未満)。

治療

  • 化学療法と放射線療法の併用

  • ときに手術

病変の部位および範囲のために,しばしば上咽頭癌は外科的切除に適さない。一般的には,化学療法および放射線療法で治療し,しばしば続けてアジュバント化学療法を行う。

再発腫瘍に対してはさらに1コースの放射線(一般的には密封小線源治療[小線源留置]による)で治療可能である;頭蓋底の放射線壊死がリスクである。高度に選択された症例における放射線の代替治療は頭蓋底切除である。通常は上顎の一部を除去して腫瘍に到達し,切除が行われるが,選択された症例では内視鏡下に切除可能である(ただし,内視鏡下切除についてはまだほとんどデータが存在しない)。(National Cancer Instituteによる要約,Nasopharyngeal Cancer Treatmentも参照のこと。)

要点

  • 上咽頭癌では触知可能な頸部リンパ節腫脹が最も一般的な主症状であり,その他の症状としては,鼻出血を伴う鼻閉,唾液中の血液,難聴などがある。

  • 上咽頭癌の診断は,経鼻内視鏡検査および針生検により行い,病期診断にはCT,MRI,およびPETを用いる。

  • 上咽頭癌は化学療法と放射線療法の併用のほか,ときに手術で治療する。

より詳細な情報

以下の英語の資料が有用であろう。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. National Cancer Institute’s Summary: Nasopharyngeal Cancer Treatment

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