結節性紅斑は主として20代から30代の人々に生じるが,あらゆる年齢層で発生する可能性があり,女性の方が頻度が高い。
結節性紅斑の病因
結節性紅斑の病因は不明であるが,しばしば他の疾患を合併することから,免疫反応が疑われる。最も頻度の高い併存疾患は以下の通りである:
他に可能性のある誘因としては以下のものがある:
他の細菌感染症(例, Yersinia ペストおよびその他のエルシニア(Yersinia)感染症 ペストはグラム陰性細菌であるペスト菌(Yersinia pestis)によって引き起こされる。症状は重症肺炎または巨大なリンパ節腫脹であり,高熱を伴い,しばしば敗血症へと進行する。診断は疫学的および臨床的に行い,培養および血清学的検査により確定する。治療はストレプトマイシンまたはゲンタマイシンにより行い,代替薬はフルオロキノロン系薬剤またはドキシサイクリンである。... さらに読む 属, Salmonella サルモネラ( Salmonella)感染症の概要 Salmonella属はS. entericaとS. bongoriの2菌種に分類され,2400を超える血清型が知られている。これらの血清型の一部には名前が付けられている。そのような場合によく用いられる慣用法は,属名と血清型だけが含まれるように学名を短縮するというもので,例えばS. enterica,亜種enterica,血清型Typhiは,Salmonella... さらに読む 属, マイコプラズマ マイコプラズマ マイコプラズマは遍在性の細菌で,細胞壁を欠いているという点で他の原核生物と異なっている。 肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)は肺炎,特に 市中肺炎の一般的な原因菌である。 非淋菌性尿道炎症例の一部は性器マイコプラズマ(Mycoplasma genitalium)またはUreaplasma urealyticumが原因菌であることを示唆したエビデンスが蓄積されている。... さらに読む , クラミジア クラミジア Chlamydia属細菌のうち3つの菌種が,ヒトにおいて性感染症や呼吸器感染症などの疾患を引き起こす。いずれもマクロライド系(例,アジスロマイシン),テトラサイクリン系(例,ドキシサイクリン),およびフルオロキノロン系薬剤に感受性を示す。 クラミジアは非運動性の偏性細胞内寄生細菌である。DNA,RNA,およびリボソームをもち... さらに読む , ハンセン病 ハンセン病 ハンセン病は,末梢神経,皮膚,上気道粘膜に対して特有な指向性を示す抗酸性の桿菌であるらい菌(Mycobacterium leprae)によって通常引き起こされる慢性感染症である。症状は多彩で,感覚消失を伴う多形性の皮膚病変や末梢神経障害などがみられる。診断は臨床的に行い,生検により確定する。治療は典型的にはジアフェニルスルホンと他の抗抗酸菌薬の併用による。治療を開始すれば,他者への感染性は急速に消失する。... さらに読む , 鼠径リンパ肉芽腫 鼠径リンパ肉芽腫(LGV) 鼠径リンパ肉芽腫(LGV)は,Chlamydia trachomatisの3種類の株によって引き起こされる疾患であり,小さな,しばしば症状を伴わない皮膚病変を特徴とし,それに続いて鼠径部または骨盤の所属リンパ節腫脹を生じる。あるいは,肛門性交で感染した場合は,重度の直腸炎を呈することがある。無治療の場合,LGVはリンパの流れを閉塞し,性器組織の慢性的腫脹を引き起こすことがある。診断は臨床徴候によるが,血清学的検査または蛍光... さらに読む , 結核 結核 結核は,しばしば初感染から一定期間の潜伏期を経て発症する慢性進行性の抗酸菌感染症である。結核は肺を侵すことが最も多い。症状としては,湿性咳嗽,発熱,体重減少,倦怠感などがある。診断は喀痰の塗抹および培養によることが最も多いが,分子生物学に基づく迅速診断検査の利用も増えてきている。治療では複数の抗菌薬を少なくとも6カ月間投与する。... さらに読む )
真菌感染症(例, ケルスス禿瘡 禿瘡 頭部白癬は頭皮の皮膚糸状菌感染症である。診断は臨床的な外観に加えて,引き抜いた毛髪または毛髪および鱗屑のKOH直接鏡検による。治療には経口抗真菌薬を使用する。 頭部白癬は,主に小児に発生する 皮膚糸状菌症で,感染力が強く,流行を起こすことがある。米国ではTrichophyton tonsuransが最も頻度の高い原因菌であり,次いでMicrosporum canisとM... さらに読む , コクシジオイデス症 コクシジオイデス症 コクシジオイデス症は,真菌のCoccidioides immitisおよびC. posadasiiが引き起こす肺または血行播種性感染症であり,通常は無症候性または自然に消退する良性の急性呼吸器感染症として生じる。これらの微生物は,ときに播種して他の組織に局所病変を形成する。症状がみられる場合は,下気道感染症か軽度の非特異的な播種性感染症を呈する。診断は臨床的および疫学的特徴から疑い,胸部X線,培養,および血清... さらに読む , ブラストミセス症 ブラストミセス症 ブラストミセス症は,二相性真菌であるBlastomyces dermatitidisの胞子を吸入することで発生する肺感染症であり,ときに真菌が血行性に拡大して肺外感染症を引き起こす。症状は肺炎によるものか,複数臓器(最も頻度が高いのは皮膚)への播種によるものである。診断は臨床所見,胸部X線,またはその両方により行い,検査室での真菌の同定により確定される。治療はイトラコナゾール,フルコナゾール,またはアムホテリシンBによる。... さらに読む , ヒストプラズマ症 ヒストプラズマ症 ヒストプラズマ症は,Histoplasma capsulatumにより引き起こされる肺および播種性感染症であり,しばしば慢性に経過し,無症状の初感染に続いて発症するのが通常である。症状は,肺炎症状または非特異的慢性疾患症状である。診断は,喀痰中もしくは組織中の菌の同定,または特異的な血清および尿中抗原検査による。治療が必要な場合は,アムホテリシンBまたはアゾール系薬剤を使用する。... さらに読む )
ウイルス感染症(例, エプスタイン-バーウイルス 伝染性単核球症 伝染性単核球症は,エプスタイン-バーウイルス(EBV,ヒトヘルペスウイルス4型)により引き起こされ,疲労,発熱,咽頭炎,およびリンパ節腫脹を特徴とする。疲労は数週間から数カ月間続くことがある。気道閉塞,脾破裂,および神経症候群などの重症合併症がときに起こる。診断は臨床的に,またはEBVの血清学的検査により行う。治療は支持療法による。 EBVは5歳未満の50%の小児が感染するヘルペスウイルスである。成人は90%以上がEBVに対して血清反応... さらに読む , B型肝炎 B型肝炎,急性 B型肝炎は,しばしば血液感染するDNAウイルスによって引き起こされる。食欲不振,倦怠感,黄疸など,ウイルス性肝炎の典型症状がみられる。劇症肝炎や死に至ることがある。慢性肝炎は肝硬変および/または肝細胞癌につながる可能性がある。診断は血清学的検査による。治療は支持療法である。ワクチン接種で予防可能であり,曝露後もB型肝炎免疫グロブリンを使用することで発症を予防できるか,臨床症状を軽減することができる。... さらに読む )
薬剤の使用(例,スルホンアミド系薬剤,ヨウ化物,臭化物,経口避妊薬)
造血器腫瘍および固形腫瘍
妊娠
結節性紅斑症例の最大3分の1は特発性である。
類似疾患である硬結性紅斑は,腓腹部の病変として現れ,古典的には結核患者にみられる。
結節性紅斑の症状と徴候
結節性紅斑は 脂肪織炎 脂肪織炎 脂肪織炎は皮下脂肪の炎症であり,複数の原因により生じることがある。診断は臨床的評価および生検による。治療は原因に応じて異なる。 ( 結節性紅斑も参照のこと。) 脂肪織炎は,脂肪組織内で主に炎症が生じる部位によって,小葉性と隔壁性に分類できる。 脂肪織炎には,以下のような複数の原因がある: 感染症 さらに読む の一病型であり,主として前脛骨部に圧痛を伴う紅斑性の結節または局面として現れ,しばしば発熱,倦怠感,および関節痛が先行または併発する。病変は視診よりも触診の方が検出しやすく,数週間かけて挫傷様の局面に進展することがある。
結節性紅斑の診断
臨床的評価
切除生検
結節性紅斑の診断は通常,臨床的な外観により,必要であれば,結節の切除生検で確定診断が可能である。結節性紅斑と診断したら,原因の評価を行うべきである。評価の方法としては,生検,結核の皮膚テスト(PPDまたはアネルギーの検査一式),抗核抗体,血算,胸部X線,抗ストレプトリジンO抗体の経時的測定,咽頭培養などがある。赤血球沈降速度がしばしば亢進する。
結節性紅斑の治療
支持療法
抗炎症薬(まれにコルチコステロイド)
結節性紅斑は,ほぼ常に自然消退する。治療法としては,床上安静,患部の挙上,冷罨法,非ステロイド系抗炎症薬などがある。炎症を軽減するため,ヨウ化カリウムを300~500mg,経口,1日3回で投与することができる。コルチコステロイドの全身投与が効果的であるが,不顕性の感染症を悪化させる可能性があるため,最終手段として用いるべきである。
基礎疾患が同定された場合はその治療を行うべきである。
結節性紅斑の要点
結節性紅斑の原因で最も頻度の高いものは,レンサ球菌感染症(特に小児),サルコイドーシス,および炎症性腸疾患である。
結節性紅斑の診断は主に臨床的な外観によるが,必要であれば,結節の切除生検で確定診断が可能である。
結節性紅斑の治療は支持療法であり,病変が自然に消退するまで必要に応じて非ステロイド系抗炎症薬またはヨウ化カリウムを使用する。