フィラリア感染症の概要

執筆者:Richard D. Pearson, MD, University of Virginia School of Medicine
レビュー/改訂 2020年 9月
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    糸状のフィラリア成虫は,リンパ組織または皮下組織の中に生息する。受精卵をもった雌は活発に運動する子孫(ミクロフィラリア)を産み,ミクロフィラリアは血液中を循環,または組織を移行する。適当な吸血昆虫(蚊またはハエ)に摂取されると,ミクロフィラリアは発育して感染性の幼虫となり,幼虫は昆虫の刺咬により次の宿主の皮膚に接種される。感染部位を除けば,いずれのフィラリアの生活環も類似している。ヒトに感染するフィラリアは数種のみである。以下の主なフィラリア症は,成虫の寄生部位に基づいて分類できる:(寄生虫感染症へのアプローチも参照のこと。)

    皮下フィラリア症としては以下のものがある:

    リンパ系フィラリア症としては以下のものがある:

    • バンクロフト糸状虫(Wuchereria bancrofti),マレー糸状虫(Brugia malayi),およびB. timoriにより引き起こされるリンパ系フィラリア症

    その他の種類のフィラリア症として以下のものがある:

    • マンソネラ症(胸膜,心膜,または腹膜に常在糸状虫[Mansonella perstans],皮下組織にM. ozzardi,真皮にM. streptocercaの成虫が寄生することによる)

    • イヌ糸状虫症(犬の糸状虫であるDirofilaria immitisによる;幼虫が肺,まれに眼,脳または精巣に寄生する;幼虫はヒトの体内で成虫にならない)

    フィラリア感染症(WuchereriaBrugiaOnchocerca,およびMansonella感染症など)に対するスクリーニング用の血清学的検査を提供している専門研究施設もある。こういった検査は感度が高いが,特定のフィラリア感染症を同定したり,活動性の感染と過去の感染を鑑別したりすることはできない。この鑑別は症状のある旅行者ではそれほど重要でないが,鑑別ができない場合,流行地域の人々における本検査の有用性は制限される。

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