嫌気性細菌の概要

執筆者:Larry M. Bush, MD, FACP, Charles E. Schmidt College of Medicine, Florida Atlantic University;
Maria T. Vazquez-Pertejo, MD, FACP, Wellington Regional Medical Center
レビュー/改訂 2019年 9月
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    細菌は酸素に対する要求性と耐性によって以下のように分類することができる:

    • 通性嫌気性:酸素の存在下と非存在下のどちらでも増殖する

    • 微好気性:低濃度(典型的には2~10%)の酸素を必要とし,多くは高濃度(例,10%)の二酸化炭素を必要とするもので,嫌気的条件下での増殖は極めて不良

    • 偏性嫌気性:好気性代謝ができず,酸素に対する耐性は菌種によって様々

    偏性嫌気性菌は,酸化還元電位が低い部位(例,血流の途絶えた壊死組織)で増殖する。このような細菌にとって,酸素は毒である。偏性嫌気性菌は,酸素に対する耐性によって以下のように分類される:

    • 絶対(strict):0.5%未満の酸素にしか耐えられない

    • 中等度(moderate):2~8%の酸素に耐えられる

    • 耐気性嫌気性菌(aerotolerant anaerobes):大気中の酸素に一定時間耐えられる

    感染症をよく引き起こす偏性嫌気性菌は,大気中の酸素に対して最低でも8時間,しばしば72時間まで耐えることができる。

    偏性嫌気性菌は,粘膜(特に口腔,下部消化管,腟)の常在菌叢を構成する主要な要素であるが,それらの嫌気性菌は正常な粘膜障壁に破綻が生じると疾患を引き起こす。

    グラム陰性嫌気性菌とそれらが引き起こす感染症としては,以下のものが挙げられる:

    • Bacteroides属(最もよくみられる):腹腔内感染症

    • Fusobacterium属:膿瘍,創傷感染症,ならびに肺および頭蓋内感染症

    • Porphyromonas属:誤嚥性肺炎および歯周炎

    • Prevotella属:腹腔内および軟部組織感染症

    グラム陽性嫌気性菌とそれらが引き起こす感染症としては,以下のものが挙げられる:

    嫌気性菌感染症は典型的には化膿性で,膿瘍形成と組織壊死を引き起こすほか,ときに敗血症性血栓性静脈炎,気腫,またはその両方の原因となることもある。多くの嫌気性菌は,組織を破壊する酵素や,既知のもので最も強力な麻痺性毒素を産生する。

    通常,感染部位には複数の種の嫌気性菌が存在し,しばしば好気性菌も混在する(嫌気性菌混合感染症)。

    嫌気性菌感染症の診断上の手がかりとしては以下のものがある:

    • グラム染色または培養で複数菌が同定される

    • 膿または感染組織にガスを認める

    • 膿または感染組織に悪臭を認める

    • 感染組織の壊死を認める

    • 正常な状態で嫌気性細菌叢が存在する粘膜の近傍に感染部位がある

    検査

    嫌気培養に用いる検体は,本来は無菌の部位から穿刺吸引または生検によって採取するべきである。検査室への輸送は迅速に行い,輸送用機器により二酸化炭素,水素,および窒素で構成された酸素を含有しない気体を供給するべきである。拭い液検体は,Cary-Blair輸送培地などの嫌気的に減菌された半固形培地に入れて輸送するのが最善である。

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