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アデノウイルス感染症

執筆者:

Brenda L. Tesini

, MD, University of Rochester School of Medicine and Dentistry

レビュー/改訂 2021年 9月
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アデノウイルスは,3つの主要なカプシド抗原(ヘキソン,ペントン,およびファイバー)によって分類されるDNAウイルスである。ヒトアデノウイルスには,7つの種(A~G)と57の血清型がある。血清型によって異なる病態がみられる。

アデノウイルスの感染は,一般的に感染者の分泌物(感染者の指に付着した分泌物など)への接触または汚染物(例,タオル,器具)への接触によって起こる。空気または水を介して感染が起きることもある(例,湖や十分に塩素消毒が行われていないプールで泳いだとき)。無症状の状態で呼吸器や消化管からのウイルス排出が数カ月続くことがあり,ときに数年にわたって排出が続くこともある。

アデノウイルス感染症の症状と徴候

免疫能が正常な宿主では,ほとんどのアデノウイルス感染症が無症状となる。軽度の疾患を引き起こすアデノウイルスの大半が様々な組織に対して親和性をもつことから,感染により症状が起きる場合には,幅広い臨床像を呈する可能性がある。

症状を伴う感染の大半は小児に発生し,発熱に加えて,咽頭炎,中耳炎,咳嗽,頸部リンパ節腫脹を伴う滲出性扁桃炎(A群 レンサ球菌咽頭炎 レンサ球菌咽頭炎 レンサ球菌(streptococcus)は,咽頭炎,肺炎,創傷および皮膚感染症,敗血症,心内膜炎など,多くの疾患を引き起こすグラム陽性好気性細菌である。症状は感染臓器により異なる。A群β溶血性レンサ球菌による感染症の続発症としてリウマチ熱と糸球体腎炎がある。ほとんどの菌株はペニシリンに感受性を示すが,最近になってマクロライド耐性株が出現している。 ( 肺炎球菌感染症, リウマチ熱,および... さらに読む レンサ球菌咽頭炎 との鑑別が困難になることがある)などの上気道症状を引き起こす。アデノウイルス3型および7型は,結膜炎,咽頭炎,および発熱から成る特有の症候群(咽頭結膜熱)を引き起こす。

乳児でみられるまれなアデノウイルス症候群として,重度の 細気管支炎 細気管支炎 細気管支炎は,生後24カ月未満の乳児が罹患する下気道の急性ウイルス感染症で,呼吸窮迫,呼気性喘鳴(wheezing),および/または断続性ラ音を特徴とする。診断は病歴(既知の流行期間中の発症など)により疑われ,主要な原因,つまりRSウイルスは迅速測定で同定可能である。治療は酸素および水分の補給による支持療法である。一般的に予後は非常に良好であるが,中には無呼吸または呼吸不全を起こす患児もいる。... さらに読む 肺炎 肺炎の概要 肺炎は,感染によって引き起こされる肺の急性炎症である。初期診断は通常,胸部X線および臨床所見に基づいて行う。 原因,症状,治療,予防策,および予後は,その感染が細菌性,抗酸菌性,ウイルス性,真菌性,寄生虫性のいずれであるか,市中または院内のいずれで発生したか,機械的人工換気による治療を受けている患者に発生したかどうか,ならびに患者が免疫能... さらに読む などがある。若年成人の閉鎖集団(例,軍の新兵)において,呼吸器疾患のアウトブレイクが発生することがあり,具体的な症状としては,発熱と下気道症状などのほか,通常は気管気管支炎を呈するが,ときに肺炎を来すこともある。

特定のアデノウイルス(特に7型,14型,55型)による重症呼吸器疾患の症例クラスターが健康な成人において発生している。

アデノウイルス感染症は,易感染状態の成人において重症呼吸器感染症とその他の臨床疾患を引き起こすという認識が高まっている。

流行性角結膜炎 病因 病因 はときに重症化し,散発的に発生することもあれば,流行が起こることもある。結膜炎はしばしば両側性である。耳前リンパ節腫脹が生じることもある。結膜浮腫,疼痛,およびフルオレセイン染色で確認できる点状角膜病変を認めることがある。全身性の症候は軽度であるか,みられない。流行性角結膜炎は通常3~4週間以内に軽快するが,角膜病変ははるかに長く続くことがある。

呼吸器系以外のアデノウイルス症候群としては,出血性膀胱炎,乳児の下痢,髄膜脳炎などがある。

ほとんどの患者が完治する。たとえ重症化した原発性のアデノウイルス肺炎でも,主に乳児,軍隊の新兵,易感染性患者でまれにみられる劇症例を除き,死に至ることはない。

アデノウイルス感染症の診断

  • 臨床的評価

  • 重症例では,呼吸器分泌物および血液のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査

臨床検査によりアデノウイルス感染症と診断されても,管理方針が変化することはほとんどない。急性期には,ウイルスが呼吸器および眼の分泌物から分離され,しばしば便や尿からも分離される。血清抗体価の4倍の上昇は,最近のアデノウイルス感染を意味する。

PCR検査は,呼吸器分泌物や血液に含まれるアデノウイルスDNAを検出することができ,重症例で診断が必要とされる場合に有用である。

アデノウイルス感染症の治療

  • 対症療法

アデノウイルス感染症の治療は対症療法と支持療法である。効果が証明されている抗ウイルス薬はないものの,易感染性患者にはリバビリンとシドホビル(cidofovir)が使用されており,様々な結果が報告されている。

アデノウイルス感染症の予防

腸溶性カプセルで経口接種されるアデノウイルス4型および7型の生ワクチンにより,これら2つの型による疾患の大半を予防することができる。このワクチンは数年にわたり入手不能となっていたが,2011年に再導入された。しかしながら,使用できるのは軍人のみである。17~50歳の患者に投与されるが,妊娠中または授乳中の女性に投与してはならない。

伝播を最小限に抑えるため,医療従事者は感染者の診察後に手袋を替えて手洗いをし,器具を十分に滅菌し,同じ眼科器具を複数の患者に使用しないようにすべきである。アデノウイルスは一般的な消毒剤の多くに耐性を示し,そのため,米国Environmental Protection Agency(EPA:環境保護庁)が推奨するノロウイルスに効果的な抗微生物製品(antimicrobial products effective against norovirus)をはじめ,2000~5000ppmの塩素を含有する漂白剤が推奨されている。米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)は,流行性角結膜炎の予防のための眼科器具の消毒について具体的な推奨を示している。

要点

  • アデノウイルスは,感染者からの分泌物への接触または汚染された物体への接触を介して伝播する。

  • ほとんどの感染は軽症であり,臨床像(例,発熱,上気道および下気道症状,咽頭炎,結膜炎)は血清型によって大きく異なる。

  • 重症例は主に乳児と易感染性患者でみられるが,ときに健康な成人に発生することもある。

  • 治療は対症療法である。

  • 経口ワクチンにより下気道感染症の発生を減らすことができるが,利用できるのは軍人に限られる。

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