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肺炎球菌ワクチン

執筆者:

Margot L. Savoy

, MD, MPH, Lewis Katz School of Medicine at Temple University

レビュー/改訂 2022年 10月
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肺炎球菌感染症 肺炎球菌感染症 肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)(肺炎球菌)は,莢膜を有するα溶血性のグラム陽性好気性双球菌である。肺炎球菌感染は,米国における中耳炎,肺炎,敗血症,髄膜炎,および死亡の主な原因である。診断はグラム染色と培養による。治療法は耐性プロファイルに依存し,β-ラクタム系,マクロライド系,レスピラトリーキノロン系,プレウロムチリン系薬剤のいずれかのほか,ときにバンコマイシンが使用される。... さらに読む (例, 中耳炎 中耳炎(急性) 急性中耳炎は,中耳の細菌感染症またはウイルス感染症であり,通常は上気道感染に併発する。症状としては耳痛があり,しばしば全身症状(例,発熱,悪心,嘔吐,下痢)を伴い,特に非常に若年の患者でその傾向が強い。診断は耳鏡検査に基づく。治療は鎮痛薬により行い,ときに抗菌薬も用いる。 急性中耳炎はどの年齢層でも生じるが,3カ月から3歳の間で最も多い。この年齢層では,耳管が構造的にも機能的にも未熟であり,耳管の角度が比較的水平で,口蓋帆張筋と耳管軟骨... さらに読む 中耳炎(急性) 肺炎 肺炎の概要 肺炎は,感染によって引き起こされる肺の急性炎症である。初期診断は通常,胸部X線および臨床所見に基づいて行う。 原因,症状,治療,予防策,および予後は,その感染が細菌性,抗酸菌性,ウイルス性,真菌性,寄生虫性のいずれであるか,市中または院内のいずれで発生したか,機械的人工換気による治療を受けている患者に発生したかどうか,ならびに患者が免疫能... さらに読む 敗血症 敗血症および敗血症性ショック 敗血症は,感染症への反応が制御不能に陥ることで生命を脅かす臓器機能障害が生じる臨床症候群である。敗血症性ショックでは,組織灌流が危機的に減少する;肺,腎臓,肝臓をはじめとする急性多臓器不全が起こる場合もある。免疫能が正常な患者における敗血症の一般的な原因は,多様なグラム陽性または陰性菌などによる。易感染性患者では,まれな細菌または真菌が原... さらに読む 髄膜炎 急性細菌性髄膜炎 急性細菌性髄膜炎は,急速に進行する髄膜およびくも膜下腔の細菌感染症である。典型的な所見には,頭痛,発熱,項部硬直などがある。診断は髄液検査による。治療は抗菌薬およびコルチコステロイドにより,これらを可及的速やかに投与する。 ( 髄膜炎の概要および 新生児細菌性髄膜炎も参照のこと。) 最も一般的には,細菌が血流を介してくも膜下腔および髄膜に達する。細菌はまた,感染した近傍の構造物から,あるいは先天性または後天性の頭蓋骨または脊椎の欠損を介... さらに読む )は,90を超える血清型の肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae[肺炎双球菌])のうちの一部によって引き起こされる。感染症を引き起こす血清型の多くに対するワクチンが使用可能になっている。特定の医学的状態(例,慢性疾患,易感染状態,髄液漏,人工内耳)は肺炎球菌感染症のリスクを高める。

詳細については,Pneumococcal Advisory Committee on Immunization Practices Vaccine RecommendationsおよびCenters for Disease Control and Prevention (CDC): Pneumococcal Vaccinationを参照のこと。2022年版の成人向け予防接種スケジュールに加えられた変更の要約が,ここから入手可能である。

肺炎球菌ワクチンの製剤

肺炎球菌ワクチンには2種類ある:結合型ワクチンと多糖体ワクチンである。

13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)は肺炎球菌(S. pneumoniae)の13種類の精製莢膜多糖体(1,3,4,5,6A,6B,7F,9V,14,18C,19A,19F,23F)を含有する。

15価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV15)は肺炎球菌(S. pneumoniae)の15種類の精製莢膜多糖体(1,3,4,5,6A,6B,7F,9V,14,18C,19A,19F,22F,23F,33F)を含有する。

20価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20)は肺炎球菌(S. pneumoniae)の20種類の精製莢膜多糖体(1,3,4,5,6A,6B,7F,8,9V,10A,11A,12F,14,15B,18C,19A,19F,22F,23F,33F)を含有し,それぞれが毒性のないジフテリア毒素の変異体と結合している。

23価の肺炎球菌多糖体ワクチン(PPSV23)は,肺炎球菌(S. pneumoniae)の83種類ある血清型のうち最も病原性の高い23種類(1,2,3,4,5,6B,7F,8,9N,9V,10A,11A,12F,14,15B,17F,18C,19F,19A,20,22F,23F,33F)に由来する抗原を含有する。

旧来のPPSV23とは異なり,PCV13は乳児においても抗体産生を刺激することができる。また,侵襲性肺炎球菌感染症に対してPPSV23より強力な防御能を付与するようである。PPSV23は成人全体で菌血症を56~81%減少させるが,衰弱した高齢者では有効性が低下する。また,肺炎の発生率を低下させる。

肺炎球菌ワクチンの適応

肺炎球菌結合型ワクチンの接種歴がないか接種歴が不明である65歳以上の成人には,以下のいずれかを接種すべきである:

  • PCV20を1回接種,または

  • PCV15を1回接種した後,PPSV23を1回接種

特定の医学的状態または他の危険因子(以下参照 適応 )を有し,肺炎球菌結合型ワクチンの接種歴がないかワクチン接種歴が不明の19~64歳の成人には,以下のいずれかを接種すべきである:

  • PCV20を1回接種,または

  • PCV15を1回接種した後,PPSV23を1回接種

両年齢群とも,PPSV23の接種はPCV15の接種から1年以上経過してから行うべきである。易感染状態にあるか,人工内耳を使用している,または髄液漏がある成人では,PCV15からPPSV23までの接種間隔を最短で8週間にすることを考慮できる。

医学的状態および危険因子としては以下のものがある:

  • アルコール使用障害

  • 慢性の心疾患,肺疾患,または肝疾患

  • 慢性腎不全またはネフローゼ症候群

  • 喫煙

  • 人工内耳

  • 先天性または後天性無脾症

  • 髄液漏

  • 糖尿病

  • 全身性の悪性腫瘍

  • HIV

  • ホジキン病

  • 免疫不全または免疫抑制

  • 白血病,リンパ腫,または多発性骨髄腫

  • 臓器移植

  • 鎌状赤血球症またはその他の異常ヘモグロビン症

18歳までの小児は肺炎球菌ワクチンPCV13の接種を受けるべきである(の表を参照)。

肺炎球菌ワクチンの禁忌および注意事項

PCV13の主な禁忌は以下の通りである:

PCV15の主な禁忌は以下の通りである:

  • PCV15のワクチン成分またはジフテリアトキソイドに対して重度のアレルギー反応(例,アナフィラキシー)を起こしたことがある

PCV20の主な禁忌は以下の通りである:

PPSV23の主な禁忌は以下の通りである:

  • 以前のこのワクチンの接種後に,またはワクチン成分に対して,重度のアレルギー反応を起こしたことがある

両種のワクチンの注意事項としては以下のものがある:

  • 発熱の有無にかかわらず,中等度または重度の急性疾患が認められる(消失するまで接種を延期する)

肺炎球菌ワクチンの接種

各ワクチンの通常用量は以下の通りである:

  • PCV20は0.5mLを筋注

  • PCV13は0.5mLを筋注

  • PCV15は0.5mLを筋注

  • PCSV23は0.5mLを筋注または皮下注

HIV感染者には,症状の有無にかかわらず,診断後可及的速やかにワクチンを接種すべきである。

肺炎球菌感染症のリスクが極めて高い状態(例,機能的または解剖学的無脾症,慢性腎臓病,またはがんやコルチコステロイド使用など,その他の易感染状態)にある19~64歳の成人に対しては,PPSV23の1回目の接種から5年後にPPSV23の2回目の接種を行うべきである。

65歳時には全ての個人がPPSV23による予防接種を受けるべきである。65歳以前に何らかの適応でPPSV23の接種を1~2回受け,かつ前回のPPSV23の接種から5年以上経過している個人には,65歳時またはそれ以降に再度このワクチンを接種すべきである。2回目の接種は1回目の5年後に行う(例,前回の接種が64歳時であった場合は69歳時)。65歳時またはそれ以降にPPSV23を接種する場合は,1回のみの接種とするべきである。

がん化学療法またはその他の免疫抑制療法を考慮している場合は,ワクチン接種と免疫抑制療法との間隔を2週間以上空けるべきである。化学療法または放射線療法を受けている患者には,予防接種を行ってはならない。

肺炎球菌ワクチンの有害作用

有害作用は通常,軽度であり,具体的には発熱,易刺激性,眠気,食欲不振,嘔吐,局所の疼痛および紅斑などがみられる。

より詳細な情報

以下の英語の資料が有用かもしれない。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

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