大規模な予防接種の導入により, ポリオ ポリオ ポリオは,ポリオウイルス(エンテロウイルスの一種)によって引き起こされる急性感染症である。臨床像としては,非特異的な軽症疾患(不全型ポリオ),ときに麻痺のない無菌性髄膜炎(非麻痺型ポリオ),より頻度は低いが様々な筋群の弛緩性脱力(麻痺型ポリオ)がある。診断は臨床的に行うが,臨床検査による診断も可能である。治療は支持療法による。 ポリオウイルスには3つの血清型がある。1型は最も麻痺を起こしやすく,流行の原因となることが最も多かった。ヒトが... さらに読む は世界的にほぼ根絶された。ただし,サハラ以南アフリカや南アジアなど予防接種が不完全な地域では,依然として症例の発生がみられる。
ポリオウイルス(エンテロウイルス エンテロウイルス感染症の概要 エンテロウイルスは,ライノウイルス( 感冒を参照)およびヒトパレコウイルスとともに,ピコルナウイルス科(小さな[pico]RNAウイルス)に属する。ヒトパレコウイルス1型および2型は,かつてはエコーウイルス22型および23型と呼ばれていたが,現在ではパレコウイルスに再分類されている。全てのエンテロウイルスは不均一な抗原性を有... さらに読む の一種)には3つの血清型がある。
詳細については,Polio Advisory Committee on Immunization Practices Vaccine RecommendationsおよびCenters for Disease Control and Prevention (CDC): Polio Vaccinationを参照のこと。2022年版の成人向け予防接種スケジュールに加えられた変更の要約が,ここから入手可能である。
(予防接種の概要 予防接種の概要 免疫は以下の形で付与することができる: 抗原を用いる能動免疫(例,ワクチン,トキソイド) 抗体を用いる受動免疫(例,免疫グロブリン,抗毒素) トキソイドは,無害でありながらも抗体産生を刺激できるように修飾が加えられた細菌毒素である。 ワクチンは,病原性を示さないように作製された完全な細菌またはウイルス(生または不活化ワクチン)あるいは細菌... さらに読む も参照のこと。)
ポリオワクチンの製剤
不活化ポリオウイルスワクチン(IPV)は,ホルマリンで不活化したポリオウイルス1型,2型,および3型の混合物を含有する。IPVには,ストレプトマイシン,ネオマイシン,およびポリミキシンBが微量に含まれている場合がある。
経口弱毒生ポリオウイルスワクチン製剤は,およそ240万人に1人の頻度で被接種者にポリオを引き起こす株に変異する可能性があることから,米国ではもはや入手できなくなっている。
IPV,ジフテリア・破傷風・百日咳混合ワクチン(DTaP)や,ときにB型肝炎またはインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)b型(Hib)との混合ワクチンも使用可能である。
ポリオワクチンの適応
IPVは,ルーチンの小児ワクチンの1つである( Professional.see table 0~6歳を対象とする推奨予防接種スケジュール 0~6歳を対象とする推奨予防接種スケジュール )。
米国に居住する成人に対してルーチンにポリオウイルスワクチンの初回接種を行うことは推奨されない。予防接種を全くまたは部分的に受けておらず,かつ野生のポリオウイルスに曝露する可能性がある成人(例,流行地域への旅行者,ポリオウイルスが含まれる可能性のある検体を扱う検査室職員)には,IPVによる予防接種を行うべきである。予防接種を完了しているが,ポリオウイルスへの曝露リスクが高い成人には,IPVの追加接種を行うことができる。ポリオの感染リスクが高いと考えられる国に関する最新情報については,米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)のTravelers' Health: DestinationsおよびTravelers Health: Polioを参照のこと。
ポリオワクチンの禁忌および注意事項
IPVの主な禁忌は以下の通りである:
IPVの主な注意事項は以下の通りである:
中等度または重度の急性発熱性疾患が認められる(その疾患が軽快するまで接種を延期する)
ポリオのリスクが高くない妊婦(ワクチンが妊婦や胎児に害を及ぼすというエビデンスはないが,妊婦にポリオワクチンを接種すべきではない;ただし,妊婦がポリオウイルスに曝露するリスクが高く,直ちに予防が必要な場合は,IPVを接種することができる)
ポリオワクチンの接種
IPVの用量は0.5mLの筋肉内または皮下接種である。
計4回の筋肉内接種を,生後2カ月,4カ月,6~18カ月,および4~6歳時に行う。一般的に,最初の3回の接種には混合ワクチンを,最後の接種には単抗原ワクチンを使用する。4~6歳時にIPVの接種を受けなかった小児には,可及的速やかに追加接種を行うべきである。
DTaP-IPV/Hibを計4回の接種スケジュール(生後2,4,6,15~18カ月)で使用する場合は,4~6歳時にIPVを含有するワクチン(IPVまたはDTaP-IPV)の追加接種を行うべきであり,そのため計5回の接種スケジュールとなるが,4~6歳時の追加接種にはDTaP-IPV/Hibを使用してはならない。至適な追加免疫を得るため,4回目と5回目の間は6カ月以上の間隔を空けるべきである。
ポリオウイルスへの曝露リスクが高いワクチン未接種の成人には,IPVの初回接種が推奨される。1回目と2回目の間で推奨される間隔は1~2カ月であり,3回目の接種は6~12カ月後に行う。2~3カ月以内に免疫の獲得が必要な場合は,計3回の接種をそれぞれ1カ月以上の間隔を空けて行う。1~2カ月以内に免疫の獲得が必要な場合は,計2回の接種を1カ月以上の間隔を空けて行う。1カ月未満での免疫獲得が必要な場合は,1回接種とする。いずれのケースでも,その後も高いリスクがある場合は,推奨される間隔を空けた上で残りの接種を行うべきである。
ポリオワクチンの有害作用
IPVとの関連が報告された有害作用はない。ネオマイシン,ストレプトマイシン,およびポリミキシンBが微量に含まれていることがあるため,これらの薬物のいずれかに感作されている個人は,このワクチンに対してアレルギー反応を示す可能性がある。
より詳細な情報
以下の英語の資料が有用かもしれない。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。
Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP): Polio ACIP Vaccine Recommendations
Centers for Disease Control and Prevention (CDC): Polio Vaccination: Information for Healthcare Professionals