インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)b型(Hib)ワクチンは,ヘモフィルス感染症の予防に役立つが,その他の菌株のインフルエンザ菌(H. influenza)による感染症には役立たない。インフルエンザ菌(H. influenzae)は,菌血症,髄膜炎,肺炎,副鼻腔炎,中耳炎,喉頭蓋炎など,数多くの小児感染症を引き起こす。
詳細については,Hib Advisory Committee on Immunization Practices Vaccine RecommendationsおよびCenters for Disease Control and Prevention (CDC): Hib Vaccinationを参照のこと。2022年版の成人向け予防接種スケジュールに加えられた変更の要約が,ここから入手可能である。
(予防接種の概要も参照のこと。)
Hibワクチンの製剤
Hibワクチンはインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)b型(Hib)の莢膜を精製して調製される。Hibワクチンの多糖体としては,いずれもポリリボシルリビトールリン酸(PRP)が使用されるが,4種類のHib結合型ワクチンでは,それぞれ以下の4種類の担体タンパク質が使用されている:
ジフテリアトキソイド(PRP-D)
髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)外膜タンパク質(PRP-OMP)
破傷風トキソイド(PRP-T)
ジフテリア毒素変異体CRM197(HbOC)
PRP-DワクチンとHbOCワクチンは,米国では入手できなくなっている。
Hib結合型ワクチンを含有する混合ワクチンには,DTaP-IPV/Hib(混合ワクチンは生後6週間から5歳未満の小児に適応となる)などがある。
Hibワクチンの適応
Hibワクチンは,ルーチンの小児予防接種の1つである( see table 0~6歳を対象とする推奨予防接種スケジュール)。
このワクチンは以下の状況でも推奨される:
Hibワクチンの禁忌および注意事項
Hibワクチンの主な禁忌は以下の通りである:
以前の接種後に,またはワクチン成分に対して,重度のアレルギー反応(例,アナフィラキシー)を起こしたことがある
Hibワクチンの主な注意事項は以下の通りである:
発熱の有無にかかわらず,中等度または重度の疾患が認められる(その疾患が消失するまで接種を延期する)
Hibワクチンの用量および用法
Hibワクチンの用量は0.5mLの筋肉内接種である。小児期の初回接種としては,製剤に応じて生後2カ月,4カ月,6カ月時の計3回または生後2カ月および4カ月時の計2回接種する。どちらの場合にも,生後12~15カ月時点での1回の追加接種が推奨される。
無脾症であるか待機的脾臓摘出の予定がある年長の小児,青年,および成人に免疫がない場合は,1回接種する。一部の専門家は,待機的脾臓摘出術の施行前には,接種歴にかかわらず,1回接種するべきと示唆している。可能であれば,待機的脾臓摘出術の14日以上前に接種する。
造血幹細胞移植を施行した場合は,その6~12カ月後に3回の接種を実施し,接種間隔は4週間以上とする。
Hibワクチンの有害作用
有害作用はまれである。具体的には,注射部位の疼痛,発赤,および腫脹,ならびに小児における発熱,啼泣,易刺激性などがある。
より詳細な情報
以下の英語の資料が有用かもしれない。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。
Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP): Hib ACIP Vaccine Recommendations
Centers for Disease Control and Prevention (CDC): Hib Vaccination: Information for Healthcare Professionals