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レンサ球菌感染症

執筆者:

Larry M. Bush

, MD, FACP, Charles E. Schmidt College of Medicine, Florida Atlantic University;


Maria T. Vazquez-Pertejo

, MD, FACP, Wellington Regional Medical Center

レビュー/改訂 2021年 3月
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レンサ球菌(streptococcus)は,咽頭炎,肺炎,創傷および皮膚感染症,敗血症,心内膜炎など,多くの疾患を引き起こすグラム陽性好気性細菌である。症状は感染臓器により異なる。A群β溶血性レンサ球菌による感染症の続発症としてリウマチ熱と糸球体腎炎がある。ほとんどの菌株はペニシリンに感受性を示すが,最近になってマクロライド耐性株が出現している。

肺炎球菌感染症 肺炎球菌感染症 肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)(肺炎球菌)は,莢膜を有するα溶血性のグラム陽性好気性双球菌である。肺炎球菌感染は,米国における中耳炎,肺炎,敗血症,髄膜炎,および死亡の主な原因である。診断はグラム染色と培養による。治療法は耐性プロファイルに依存し,β-ラクタム系,マクロライド系,レスピラトリーキノロン系,プレウロムチリン系薬剤のいずれかのほか,ときにバンコマイシンが使用される。... さらに読む リウマチ熱 リウマチ熱 リウマチ熱は,A群レンサ球菌咽頭感染症の合併症として発生する急性の非化膿性炎症であり,関節炎,心炎,皮下結節,輪状紅斑,舞踏運動などを引き起こす。診断は,病歴,診察,および臨床検査から得た情報に対する,改変Jones診断基準の適用に基づく。治療には,アスピリンまたはその他の非ステロイド系抗炎症薬の投与,重症心炎発生時のコルチコステロイド投与,残存するレンサ球菌の根絶と再感染防止のための抗菌薬投与が含まれる。... さらに読む リウマチ熱 ,および 扁桃咽頭炎 扁桃咽頭炎 扁桃咽頭炎とは,咽頭,口蓋扁桃,またはその両方の急性感染症である。症状としては,咽頭痛,嚥下困難,頸部リンパ節腫脹,発熱などある。診断は臨床的に行い,培養または迅速抗原検査により補完する。治療は症状に基づいて行い,A群β溶血性レンサ球菌の症例では抗菌薬を投与する。 扁桃は全身の免疫監視に携わっている。さらに,扁桃の局所の防御には抗原処理を行う扁平上皮の被膜(BおよびT細胞応答が関与する)などがある。... さらに読む 扁桃咽頭炎 も参照のこと。)

レンサ球菌の分類

まず,ヒツジ血液寒天培地で培養したときの外観から,3種類のレンサ球菌を鑑別する:

  • β溶血性レンサ球菌は各コロニーの周囲に透明な溶血帯を生じる。

  • α溶血性レンサ球菌(一般に緑色レンサ球菌[viridans streptococci]と呼ばれる)は不完全な溶血により生じる緑色の変色帯に囲まれる。

  • γ溶血性レンサ球菌は溶血性を示さない。

次に細胞壁内の糖に基づく分類法により,レンサ球菌をLancefieldによる20の分類(A群~H群およびK群~V群)に分ける(Lancefield分類 ランスフィールド分類 ランスフィールド分類 *の表を参照)。緑色レンサ球菌は分類困難な独立したグループを構成する。Lancefield分類では当初, 腸球菌 腸球菌感染症 腸球菌はグラム陽性通性嫌気性細菌である。Enterococcus faecalisおよびE. faeciumは,併発する菌血症のほか,心内膜炎,尿路感染症,前立腺炎,腹腔内感染症,蜂窩織炎,創傷感染症などの様々な感染症を引き起こす。 腸球菌は腸内常在菌叢の一部である。かつてはD群レンサ球菌に分類されていたが,現... さらに読む はD群レンサ球菌と分類されていたが,現在,腸球菌はランスフィールド分類のD群抗原を発現するものの,別個の属に分類されている。肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae 肺炎球菌感染症 肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)(肺炎球菌)は,莢膜を有するα溶血性のグラム陽性好気性双球菌である。肺炎球菌感染は,米国における中耳炎,肺炎,敗血症,髄膜炎,および死亡の主な原因である。診断はグラム染色と培養による。治療法は耐性プロファイルに依存し,β-ラクタム系,マクロライド系,レスピラトリーキノロン系,プレウロムチリン系薬剤のいずれかのほか,ときにバンコマイシンが使用される。... さらに読む )などのレンサ球菌はα溶血性,すなわち緑色レンサ球菌の一種であり,Lancefield抗原を発現しない。Lancefield分類のK~V群は,病原性の低いレンサ球菌属であり,易感染者に感染症を引き起こすことがある。

病原因子

多くのレンサ球菌は,ストレプトリジン,デオキシリボヌクレアーゼ,ヒアルロニダーゼなど,組織破壊や感染拡大に寄与する病原因子を産生する。いくつかの菌株は,特定のT細胞を活性化する外毒素を放出し,それにより腫瘍壊死因子α(TNF-α),インターロイキン,その他の免疫調節物質などのサイトカインの放出を誘発する。これらのサイトカインは,補体系,凝固系,および線溶系を活性化することで,ショックや臓器不全を引き起こし,死に至ることもある。

レンサ球菌による疾患

レンサ球菌のうち最も重要な病原体は化膿レンサ球菌(S. pyogenes)で,これはβ溶血性でLancefield分類A群に属することから,A群β溶血性レンサ球菌(GABHS)と呼ばれる。

GABHSに起因する急性疾患で最も頻度が高いのは,以下のものである:

GABHSは侵された組織を通じて,あるいはリンパ管に沿って(リンパ管炎を引き起こす)所属リンパ節へ波及する(リンパ節炎を引き起こす)。GABHSはさらに, 扁桃周囲膿瘍 扁桃周囲膿瘍および蜂窩織炎 扁桃周囲膿瘍および蜂窩織炎は,青年および若年成人で最も頻度が高い急性咽頭感染症である。症状は重度の咽頭痛,開口障害,「熱いポテトが口に入っているような」声("hot potato" voice),および口蓋垂の偏位である。診断には穿刺吸引を必要とする。治療には,広域抗菌薬,膿があれば排膿,水分補給,鎮痛薬,およびときに緊急の扁桃摘出術などを用いる。 膿瘍(扁桃周囲膿瘍)および蜂窩織炎は,扁桃および咽頭の細菌感染が軟部組織に拡大していく,... さらに読む 扁桃周囲膿瘍および蜂窩織炎 中耳炎 中耳炎(急性) 急性中耳炎は,中耳の細菌感染症またはウイルス感染症であり,通常は上気道感染に併発する。症状としては耳痛があり,しばしば全身症状(例,発熱,悪心,嘔吐,下痢)を伴い,特に非常に若年の患者でその傾向が強い。診断は耳鏡検査に基づく。治療は鎮痛薬により行い,ときに抗菌薬も用いる。 急性中耳炎はどの年齢層でも生じるが,3カ月から3歳の間で最も多い。この年齢層では,耳管が構造的にも機能的にも未熟であり,耳管の角度が比較的水平で,口蓋帆張筋と耳管軟骨... さらに読む 中耳炎(急性) 副鼻腔炎 副鼻腔炎 副鼻腔炎はウイルス,細菌,もしくは真菌性感染症またはアレルギー反応による副鼻腔の炎症である。症状としては,鼻閉,膿性鼻汁,顔面痛または顔面の圧迫感などのほか,ときに倦怠感,頭痛,発熱もみられる。急性ウイルス性鼻炎を想定した治療には,蒸気吸入および血管収縮薬の局所薬または全身投与などがある。細菌感染が疑われる場合の治療は,アモキシシリン/クラブラン酸またはドキシサイクリンなどの抗菌薬を,急性副鼻腔炎には5~7日間,慢性副鼻腔炎には最長6週... さらに読む 副鼻腔炎 菌血症 菌血症 菌血症とは,血流中に細菌が存在する状態のことである。特定の組織感染を契機として,泌尿生殖器または静脈内にカテーテルを留置しているとき,あるいは歯科,消化管,泌尿生殖器,創傷などに対する処置を施行した後に,自然に発生する可能性がある。菌血症は心内膜炎などの転移性感染症を引き起こすことがある(特に心臓弁膜異常の患者で)。一過性の菌血症は無症状のことが多いが,発熱の原因となりうる。その他の症状の出現は通常,敗血症や敗血症性ショックなどのより重... さらに読む などの限局性化膿性合併症を引き起こすこともある。化膿の程度は感染の重症度および組織の感受性に依存する。

その他の重篤なGABHS感染症としては,敗血症,産褥敗血症,心内膜炎,肺炎,膿胸などがある。

他の菌種のレンサ球菌による疾患は頻度が低く,通常は軟部組織感染症か心内膜炎である(Lancefield分類 ランスフィールド分類 ランスフィールド分類 *の表を参照)。GABHS以外による感染症の中には,専ら特定の集団でみられものがある(例,新生児および分娩後の女性におけるB群レンサ球菌)。

レンサ球菌咽頭炎

レンサ球菌咽頭炎は通常GABHSが原因である。約20%の患者では,初診時に咽頭痛,発熱,咽頭の強い発赤(beefy red),および膿を含む扁桃滲出物がみられる。それ以外の患者ではあまり著明な症状がみられず,診察所見はウイルス性咽頭炎のそれに類似する。頸部および下顎リンパ節が腫大し,圧痛を呈することがある。レンサ球菌咽頭炎は 扁桃周囲膿瘍 扁桃周囲膿瘍および蜂窩織炎 扁桃周囲膿瘍および蜂窩織炎は,青年および若年成人で最も頻度が高い急性咽頭感染症である。症状は重度の咽頭痛,開口障害,「熱いポテトが口に入っているような」声("hot potato" voice),および口蓋垂の偏位である。診断には穿刺吸引を必要とする。治療には,広域抗菌薬,膿があれば排膿,水分補給,鎮痛薬,およびときに緊急の扁桃摘出術などを用いる。 膿瘍(扁桃周囲膿瘍)および蜂窩織炎は,扁桃および咽頭の細菌感染が軟部組織に拡大していく,... さらに読む 扁桃周囲膿瘍および蜂窩織炎 を引き起こすことがある。咳嗽,喉頭炎,鼻づまりなどの症状は,レンサ球菌による咽頭感染症の特徴ではなく,別の原因(通常はウイルス性またはアレルギー性)を示唆する。

無症候性保菌者の頻度は20%にも上るようである。

猩紅熱

猩紅熱は今日ではまれとなっているが,依然としてアウトブレイクの発生がみられる。個人間で濃厚な接触のある環境下(例,学校,託児所)では伝染性が高まる。

猩紅熱は主に小児期の疾患であり,通常はレンサ球菌咽頭感染症に続発するが,まれに他の部位(例,皮膚)のレンサ球菌感染症に続発することもある。猩紅熱は発赤毒素を産生するA群レンサ球菌株によって引き起こされ,圧迫により退色するびまん性で淡紅色の皮膚紅潮が生じる。

この発疹は腹部または側胸部に皮膚のひだにおける暗赤色の線として(Pastia線),あるいは口囲蒼白として最もよくみられる。発疹は特徴的な多数の小さな(1~2mm)丘疹状の隆起で構成され,皮膚が紙やすりのような質感になる。解熱後には,発赤があった皮膚の上層がしばしば落屑する。発疹は通常2~5日間持続する。

また,苺舌(炎症を起こした舌乳頭が明赤色の被膜から突出した状態)もみられるため, 毒素性ショック症候群 毒素性ショック症候群(TSS) 毒素性ショック症候群は,ブドウ球菌またはレンサ球菌の外毒素によって引き起こされる。臨床像としては,高熱,低血圧,びまん性の紅斑,多臓器不全などがみられ,重度かつ治療抵抗性のショックへと急速に進行することがある。診断は臨床所見と起因菌の分離による。治療法としては,抗菌薬,集中的な支持療法,免疫グロブリン静注療法などがある。 毒素性ショック症候群(TSS)は外毒素産生球菌により引き起こされる。ファージグループ1型黄色ブドウ球菌(Sta... さらに読む 毒素性ショック症候群(TSS) および 川崎病 川崎病 川崎病は 血管炎の1つであり,乳児および1~8歳の小児に発生しやすく,ときに冠動脈を侵す。遷延する発熱,発疹,結膜炎,粘膜炎症,リンパ節腫脹を特徴とする。冠動脈瘤が発生し,破裂する,あるいは心筋梗塞を引き起こす可能性がある。診断は臨床基準により行われ,本疾患と診断されれば,心エコー検査が行われる。治療はアスピリンと免疫グロブリン静注療法である。冠動脈血栓には,線溶療法または経皮的インターベンションが必要となることがある。... さらに読む 川崎病 で認められるものとの鑑別が必要になる。

その他の症状はレンサ球菌咽頭炎の症状と類似し,猩紅熱の経過および管理は他のA群感染症と同じである。

レンサ球菌による皮膚感染症

皮膚感染症としては以下のものがある:

膿痂疹は,痂皮または水疱が生じる表在性の皮膚感染症である。

レンサ球菌による蜂窩織炎の臨床像

壊死性筋膜炎

壊死性筋膜炎は静注薬物乱用者で有病率が高い。

以前はレンサ球菌性壊疽として知られ,現在では俗に「人喰いバクテリア」と呼ばれている同じ症候群は,複数菌の感染症でもあり,好気性および嫌気性(ウェルシュ菌[Clostridium perfringens]を含む)の菌叢が関与する。発生源が腸管の場合は複数菌感染の可能性が高い(例,腸管手術,腸穿孔,憩室炎,または虫垂炎の後)。

壊死性筋膜炎の症状は発熱および身体所見と不釣り合いな激しい限局性疼痛で始まり,疼痛は時間とともに強くなり,しばしば最初の(ときに唯一の)症状となる。びまん性または局所性に紅斑が生じることがある。微小血管の血栓症により虚血性壊死が生じ,病変の急速な拡大につながり,極めて強い重篤感を呈する。約20~40%の患者で近接する筋への浸潤がみられる。ショックおよび腎機能障害がよくみられる。死亡率が高く,治療を行った場合も同様である。

レンサ球菌による毒素性ショック症候群

レンサ球菌感染症の遅発性合併症

特定のGABHS株が遅発性合併症を引き起こす機序は不明であるが,宿主組織に対する抗レンサ球菌抗体の交差反応が関与する可能性がある。

GABHSによる咽頭炎(レンサ球菌咽頭炎)を治療する最も重要な理由の1つはリウマチ熱の予防である。

溶連菌感染後 急性糸球体腎炎 急速進行性糸球体腎炎(RPGN) 急速進行性糸球体腎炎は,顕微鏡的な糸球体半月体形成を伴い,数週間から数カ月以内に腎不全に進行する,急性腎炎症候群である。診断は病歴,尿検査,血清学的検査,腎生検に基づく。治療は,コルチコステロイドの単剤またはシクロホスファミドまたはリツキシマブとの併用,ときに血漿交換による。 ( 腎炎症候群の概要も参照のこと。) 急速進行性糸球体腎炎(RPGN)は 腎炎症候群の一種であり,病理診断により診断し,広範な糸球体半月体形成を伴い(すなわち,採... さらに読む 急速進行性糸球体腎炎(RPGN) は,腎炎を惹起するGABHSの限られた菌株(例,Mタンパク質の血清型が12型および49型のもの)による咽頭炎または皮膚感染症に続発する急性腎炎症候群である。これらの菌株のいずれかが咽喉または皮膚に感染すると,約10~15%の患者が急性糸球体腎炎を発症する。小児で最も多くみられ,感染から1~3週間後に発生する。小児ではほぼ全ての患者が,また成人でも大半の患者が,永続的な腎障害を残すことなく回復する。GABHS感染症に対する抗菌薬治療は,糸球体腎炎の発生に対する有効性は低い。

PANDAS症候群(pediatric autoimmune neuropsychiatric disorder associated with group A streptococci)は,GABHSの感染によって悪化すると考えられている,小児の強迫症ないしチック症の一種である。

レンサ球菌感染症の診断

  • 培養

  • ときに迅速抗原検査または抗体価測定

レンサ球菌は羊血液寒天平板を用いた培養で迅速に同定できる。

咽頭拭い液から直接GABHSを検出できる迅速抗原検出検査(すなわち,ポイントオブケア検査)が利用可能である。多くの検査では酵素免疫測定法が用いられるが,より最近になり,光学的免疫測定法を用いる検査が利用可能となった。これらの迅速検査法は特異度が高いが(> 95%),感度にはかなりの幅がある(55%から新しい光学的免疫測定法の80~90%まで)。このため,結果が陽性であれば診断が確定するが,結果が陰性であれば,少なくとも小児では,培養にて確定する必要がある。成人ではレンサ球菌咽頭炎の頻度が低く,成人はレンサ球菌後合併症を発症する可能性が低いので,迅速検査によるスクリーニングで陰性であれば,大抵の医師はマクロライド系薬剤の使用を検討しているのでない限り,培養によって診断を確定することはない;マクロライド系薬剤を使用する場合は,薬剤への耐性を同定するため培養と感受性試験が必要になる。

回復期に血清中の抗レンサ球菌抗体を証明することが,感染症を間接的に示す唯一の方法である。抗体はGABHS感染の開始から数週間後に初めて産生され,高い抗体価が単回示されてもそれに先行する長期間の感染を反映している可能性がより高いため,抗レンサ球菌抗体検査は急性GABHS感染症の診断に有用ではない。溶連菌感染症後の続発症(リウマチ熱や糸球体腎炎など)の診断には抗体が最も有用である。

抗ストレプトリジンO(ASO)抗体および抗デオキシリボヌクレアーゼB(抗DNase B)抗体の抗体価は,GABHSの感染から約1週間後に上昇し始め,感染から約1~2カ月後にピークに達する。どちらの抗体価も,合併症のない感染の後でさえ,数カ月間は高いままである。急性期とその2~4週間後の回復期に抗体価を測定する;陽性結果は抗体価が2倍以上上昇した場合と定義される。正常上限を超える抗体価が単回示された場合は,先行するレンサ球菌感染症または地域におけるレンサ球菌の高い流行性が示唆される。ASO抗体価は感染例の75~80%でしか上昇しない。診断困難な症例では,正確を期するため,他の検査(抗ヒアルロニダーゼ,抗ニコチンアミドアデニンジヌクレオチダーゼ,抗ストレプトキナーゼ抗体)のうちいずれか1つも施行してよい。

症候性のレンサ球菌咽頭炎に対して最初の5日以内に投与されたペニシリンは,ASO反応の出現を遅延させたり,程度を低下させたりすることがある。

通常,レンサ球菌による膿皮症の患者では有意なASO反応はみられないが,他の抗原には反応することがある(すなわち,抗デオキシリボヌクレアーゼ,抗ヒアルロニダーゼ)。

レンサ球菌感染症の治療

  • 通常はペニシリン

咽頭炎

(Infectious Diseases Society of AmericaのPractice Guidelines for the Diagnosis and Management of Group A Streptococcal PharyngitisおよびAmerican Heart AssociationのガイドラインPreventing Rheumatic Feverも参照のこと。)

通常,猩紅熱を含むGABHS咽頭感染症は自然に軽快する。抗菌薬は幼児(特に猩紅熱の場合)における経過を短縮するが,青年や成人の症状に対する効果は中程度にすぎない。しかしながら,抗菌薬は限局性の化膿性合併症(例,扁桃周囲膿瘍),中耳炎,およびリウマチ熱の予防に役立つ。

ペニシリンがGABHS咽頭感染症に対する第1選択薬である。GABHSの分離株で臨床上ペニシリンに耐性を示したものはない。しかし,一部のレンサ球菌株はin vitroでペニシリンに耐性を示すようである(すなわち,ペニシリンの殺菌作用が有意に低下する)が,そのような菌株の臨床的な意義は不明である。

ベンジルペニシリンベンザチンの単回筋肉内注射(体重27kg未満の小柄な小児には60万単位,27kg以上の小児,青年,および成人には120万単位)で通常は十分である。

必須である10日間のレジメンを遵守するという点で患者を信頼できる場合には,経口薬を使用してもよい。選択肢としては以下のものがある:

  • ペニシリンV 500mg(27kg未満の小児では250mg),経口,12時間毎

  • アモキシシリン50mg/kg(最大1g),1日1回,10日間(ペニシリンVに代わる効果的な薬剤)

狭域スペクトルの経口セファロスポリン系薬剤(例,セファレキシン,セファドロキシル)も効果的であり,ペニシリンに対するアナフィラキシー反応がなければ使用できる。マクロライド系薬剤は青年および成人における咽頭炎の一般的な原因である壊死桿菌(Fusobacterium necrophorum)に対して無効であるが,アジスロマイシンを5日間の治療コースで使用できる。臨床検査による確定まで治療が1~2日間遅延しても,罹病期間の延長や合併症発生率の上昇につながることはない。

ペニシリンおよびβ-ラクタム系が禁忌の場合,以下の選択肢がある:

  • クリンダマイシン600mg(小児には6.7mg/kg),経口,8時間毎

  • エリスロマイシンまたはクラリスロマイシン250mg(小児には7.5mg/kg),経口,12時間毎,10日

  • アジスロマイシン500mg(小児には15mg/kg),1日1回,5日間

マクロライド系薬剤に対するGABHSの耐性が検出されたため,一部の専門家は,マクロライドを使用する予定で地域にマクロライド耐性菌が認められる場合にはin vitroで感受性を確認するよう推奨している。慢性扁桃炎が再発した小児患者にはクリンダマイシン6.7mg/kg,経口,8時間毎が望ましく,その理由として以下が考えられる:

  • クリンダマイシンは,扁桃陰窩に同時感染してベンジルペニシリンを不活化するペニシリナーゼ産生ブドウ球菌や嫌気性菌に対して高い活性を示す。

  • 他の薬剤よりも迅速に外毒素の産生を止められると考えられる。

アモキシシリン/クラブラン酸も効果的である。

トリメトプリム/スルファメトキサゾール(TMP/SMX),一部のフルオロキノロン系薬剤,およびテトラサイクリン系薬剤は,GABHS感染症の治療では信頼できない。

咽頭痛,頭痛,および発熱は,鎮痛薬または解熱薬で治療できる。小児へのアスピリンの使用は避けるべきである。床上安静や隔離は必要である。症候性のレンサ球菌感染症または溶連菌感染後合併症の既往を有する濃厚接触者は,レンサ球菌検査を受けるべきである。

皮膚感染症

蜂窩織炎は,細菌の分離が困難であることから,しばしば培養なしで治療される。したがって,レンサ球菌とブドウ球菌の両方に効果的なレジメンを使用する;例えば以下のいずれかを用いる:

壊死性筋膜炎の患者は集中治療室で治療すべきである。広範な(ときに反復的な)外科的デブリドマンが必要である。推奨される初期の抗菌薬レジメンは,β-ラクタム系薬剤(培養により起因菌が確定するまでは,しばしば広域スペクトルの薬剤)にクリンダマイシンを加えたものである。レンサ球菌は依然としてβ-ラクタム系抗菌薬に感性であるが,レンサ球菌の増殖が迅速ではないこと,およびペニシリンの作用標的であるペニシリン結合タンパク質を欠いている場合があることから,感染菌量が多い場合にはペニシリンは必ずしも効果的ではないことが動物試験により示されている。

その他のレンサ球菌感染症

B,C,およびG群による感染症の治療で選択すべき薬剤は以下のものである:

  • ペニシリン

  • アンピシリン

  • バンコマイシン

セファロスポリン系またはマクロライド系薬剤は通常効果的であるが,特に重症例,易感染性患者,または衰弱した患者,および感染部位に異物がある患者においては,感受性試験の結果に基づいて治療すべきである。抗菌薬療法の補助として創傷の外科的ドレナージおよびデブリドマンを行うことが救命につながる場合がある。

S. gallolyticus(以前はS. bovis)は抗菌薬に比較的感性である。バンコマイシン耐性のS. gallolyticus分離株が報告されているが,ペニシリンおよびアミノグリコシド系薬剤に対する感受性は維持されている。

ほとんどの緑色レンサ球菌は,ベンジルペニシリンとその他のβ-ラクタム系薬剤に感性である。耐性が広がりつつあり,それらの菌株に対する治療はin vitroの感受性試験結果に基づいて決定すべきである。

レンサ球菌感染症の要点

  • レンサ球菌のうち最も重要な病原体は化膿レンサ球菌(S. pyogenes)であり,A群β溶血性レンサ球菌(GABHS)と呼ばれている。

  • GABHSに起因する急性疾患で最も頻度が高いものは,咽頭炎と皮膚感染症の2つである。

  • リウマチ熱や溶連菌感染後糸球体腎炎など,遅発性の非化膿性合併症が生じることがある。

  • 迅速抗原検査(すなわち,ポイントオブケア検査)は,非常に特異度が高いが,感度はそれほど高くないため,陰性であれば(少なくとも小児では)培養により確認する。

  • 咽頭炎にはペニシリンまたはセファロスポリン系薬剤が望ましく,マクロライド耐性が増加しているため,このクラスの薬剤を使用する場合は感受性試験が推奨される。

レンサ球菌感染症についてのより詳細な情報

以下の英語の資料が有用であろう。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

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