(免疫不全疾患の概要 免疫不全疾患の概要 免疫不全疾患では,感染症,自己免疫疾患,リンパ腫,その他のがんなど,様々な合併症がみられたり,そのような合併症が発生しやすくなったりする。原発性免疫不全症は遺伝性であり先天性となる可能性があり,続発性免疫不全症は後天性でありはるかに多くみられる。 免疫不全症の評価には病歴,身体診察,および免疫機能の検査が含まれる。どのような検査を行うかは... さらに読む および 免疫不全疾患が疑われる患者へのアプローチ 免疫不全症が疑われる患者へのアプローチ 免疫不全症は,典型的には反復性感染症として現れる。しかしながら,反復性感染症には免疫不全症以外の原因がある可能性が高い(例,不十分な治療,耐性菌,感染症の素因となる他の疾患)。診断には臨床所見と臨床検査所見の両方が必要である。 ( 免疫不全疾患の概要も参照のこと。) 免疫不全症には以下の種類がある: 原発性:遺伝性で,典型的には乳児期または小児期に現れる 続発性:後天性 さらに読む も参照のこと。)
ディジョージ症候群は, T細胞の異常 細胞性免疫不全 免疫不全疾患では,感染症,自己免疫疾患,リンパ腫,その他のがんなど,様々な合併症がみられたり,そのような合併症が発生しやすくなったりする。原発性免疫不全症は遺伝性であり先天性となる可能性があり,続発性免疫不全症は後天性でありはるかに多くみられる。 免疫不全症の評価には病歴,身体診察,および免疫機能の検査が含まれる。どのような検査を行うかは... さらに読む が関与する 原発性免疫不全症 原発性免疫不全症 免疫不全疾患では,感染症,自己免疫疾患,リンパ腫,その他のがんなど,様々な合併症がみられたり,そのような合併症が発生しやすくなったりする。原発性免疫不全症は遺伝性であり先天性となる可能性があり,続発性免疫不全症は後天性でありはるかに多くみられる。 免疫不全症の評価には病歴,身体診察,および免疫機能の検査が含まれる。どのような検査を行うかは... さらに読む である。22q11のディジョージ染色体領域の遺伝子欠失,染色体10p13の遺伝子変異,および他の未知の遺伝子の変異に起因し,妊娠第8週に咽頭嚢から発生する構造の胚形成異常を引き起こす。ほとんどが散発例である;男児および女児が均等に罹患する。
ディジョージ症候群は以下のように分類される:
部分型:一部のT細胞機能が残存
完全型:全てのT細胞機能が欠如
ディジョージ症候群の症状と徴候
ディジョージ症候群を有する乳児に,耳介低位,正中線口唇口蓋裂,小さく後退した下顎,眼間開離,短い人中,発達遅滞,および 先天性心疾患 心血管系の先天異常の概要 先天性心疾患は,最も頻度の高い先天奇形であり,出生児の1%近くに発生する( 1)。先天異常のうち,先天性心疾患は乳児期死亡の主要な原因である。 乳児期に診断される最も頻度の高い先天性心疾患は,筋性部および膜性部 心室中隔欠損症であり,それに二次孔型 心房中隔欠損症が続き,これらを合わせた有病率は出生10... さらに読む (例,大動脈弓離断症,総動脈幹症,ファロー四徴症,心房または心室中隔欠損症)がみられる。さらに,胸腺および副甲状腺の低形成または無形成もみられ,T細胞欠損症および 副甲状腺機能低下症 副甲状腺機能低下症 低カルシウム血症とは,血漿タンパク質濃度が正常範囲内にある場合に血清総カルシウム濃度が8.8mg/dL(2.20mmol/L)未満であること,または血清イオン化カルシウム濃度が4.7mg/dL(1.17mmol/L)未満となった状態である。原因には,副甲状腺機能低下症,ビタミンD欠乏症,および腎疾患がある。症状としては,錯感覚,テタニーのほか,重度であれば痙攣,脳症,心不全などがある。診断には,血清アルブミン値で補正された血清カルシウム... さらに読む を生じる。
反復性の感染症が生後まもなく始まるが,免疫不全の程度はかなり多様で,T細胞機能が自然に改善することもある。低カルシウム血症性テタニーが生後24~48時間以内に現れる。
予後は,心疾患の重症度によって決まることが多い。
ディジョージ症候群の診断
免疫グロブリン(Ig)値,ワクチン力価,およびリンパ球サブセットの計数による免疫機能の評価
染色体分析
ディジョージ症候群の診断は臨床所見に基づく。
リンパ球数を測定し,白血球減少を検出した場合はB細胞数とT細胞数の測定およびリンパ球サブセットの評価を行う;血液検査を行ってT細胞機能および副甲状腺機能を評価する。Ig値およびワクチン力価を測定する。完全型ディジョージ症候群が疑われる場合,T細胞受容体切除サークル(TREC)検査も行うべきである。
胸部X線の側面像が胸腺陰影の評価に役立つことがある。
蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法により22q11領域の染色体欠失を検出できる;他の異常を調べる標準的な染色体検査も実施できる。
ディジョージ症候群が疑われる場合,心エコー検査を行う。患者がチアノーゼを呈する場合,心臓カテーテル検査が必要になることがある。
ほとんどの症例が散発性であるため,近親者のスクリーニングは不要である。
ディジョージ症候群の治療
部分型ディジョージ症候群:カルシウムおよびビタミンDの補充
完全型ディジョージ症候群:培養胸腺組織または造血幹細胞の移植
部分型ディジョージ症候群では,副甲状腺機能低下症をカルシウムおよびビタミンDの補充で治療する;長期生存への影響はない。
完全型ディジョージ症候群は無治療の場合,致死的であり,治療は培養胸腺組織移植または 造血幹細胞移植 造血幹細胞移植 造血幹細胞(HSC)移植は,造血器悪性腫瘍( 白血病, リンパ腫, 骨髄腫)および他の血液疾患(例,原発性免疫不全症, 再生不良性貧血, 骨髄異形成)で治癒をもたらす可能性がある手技で,急速に発展しつつある。造血幹細胞移植は,ときに化学療法に反応する固形腫瘍(例,一部の胚細胞腫瘍)に用いられることもある。( 移植の概要も参照のこと。) 造血幹細胞移植は,以下の機序によって寛解に導く:... さらに読む となる。最近の胸腺移植のレビューでは,5~6カ月後までにT細胞の再構築がみられるという比較的良好な結果が示されている(1 治療に関する参考文献 ディジョージ症候群は,胸腺および副甲状腺の低形成または形成不全であり,T細胞免疫不全症および副甲状腺機能低下症を引き起こす。ディジョージ症候群を有する乳児には,耳介低位,正中線口唇口蓋裂,小さく後退した下顎,眼間開離,短い人中,発達遅滞,および先天性心疾患がみられる。診断は臨床所見に基づき,免疫機能および副甲状腺機能の評価および染色体分析を含む。治療には支持療法,および重症例では胸腺移植または幹細胞移植を含む。... さらに読む )。
治療に関する参考文献
1.Davies EG, Cheung M, Gilmour K, et al: Thymus transplantation for complete DiGeorge syndrome: European experience.J Allergy Clin Immunol140: 1660–1670.e16, 2017.