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マクログロブリン血症

(原発性マクログロブリン血症;ワルデンシュトレームマクログロブリン血症)

執筆者:

James R. Berenson

, MD, Institute for Myeloma and Bone Cancer Research

レビュー/改訂 2019年 9月
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マクログロブリン血症は,悪性の形質細胞疾患で,B細胞が過剰な量のIgM型Mタンパク質を産生する。臨床像としては,過粘稠,出血,繰り返す感染症,全身性リンパ節腫脹などがみられる。診断には,骨髄検査およびMタンパク質の証明が必要である。治療法としては,過粘稠に必要な血漿交換のほか,アルキル化薬,コルチコステロイド,ヌクレオシドアナログ,イブルチニブ,またはモノクローナル抗体による全身療法などがある。

まれなB細胞悪性腫瘍であるマクログロブリン血症は,臨床的には 多発性骨髄腫 多発性骨髄腫 多発性骨髄腫は,形質細胞の悪性腫瘍で,単クローン性免疫グロブリンを産生し,隣接する骨組織に浸潤し,それを破壊する。一般的な臨床像としては,骨痛および/または骨折を引き起こす溶骨性骨病変,腎機能不全,高カルシウム血症,貧血,繰り返す感染症などがある。典型的には,Mタンパク質(ときに尿中にみられ,血清中に認められない場合があるが,まれに全く認められない場合もある)および/または軽鎖タンパク尿,および骨髄中の過剰な形質細胞の証明が診断に必要で... さらに読む 多発性骨髄腫 や他の 形質細胞疾患 形質細胞疾患の概要 形質細胞疾患は,以下を特徴とする病因不明の多様な疾患群である: B細胞単一クローンの過剰な増殖 血清,尿,またはその両方に,構造的および電気泳動的に均一な(単クローン性)免疫グロブリンまたはポリペプチドのサブユニットの存在 (免疫グロブリンの構造的特徴および分類については, 抗体を参照のこと。)... さらに読む よりもリンパ腫様疾患に類似する。原因は不明であるが,特定の遺伝子変異に本疾患との関連が指摘されている。女性より男性で多くみられ,年齢の中央値は65歳である。

マクログロブリン血症は,単クローン性免疫グロブリン血症を伴う悪性疾患として骨髄腫の次に2番目に多くみられる。他の疾患でも過剰な量のIgM型Mタンパク質(単クローン性の免疫グロブリンタンパク質で,重鎖と軽鎖の両方で構成される場合と,いずれかのみで構成される場合がある)が蓄積することがあり,マクログロブリン血症に似た臨床像を呈する。B細胞性 非ホジキンリンパ腫 非ホジキンリンパ腫 非ホジキンリンパ腫は,リンパ節,骨髄,脾臓,肝臓,および消化管を含むリンパ細網部位においてリンパ系細胞の単クローン性悪性増殖が生じる不均一な疾患群である。通常は,初発症状として末梢のリンパ節腫脹がみられる。ただし,リンパ節腫脹は認められないが,循環血中に異常なリンパ球が認められる患者もいる。ホジキンリンパ腫と比べ,診断時に播種性である可能性が高い。通常は,リンパ節生検,骨髄生検,またはその両方に基づいて診断を下す。管理の戦略としては,経... さらに読む 非ホジキンリンパ腫 では,約5%の患者の血清中に小量の単クローン性IgM成分がみられる;この状態は,マクログロブリン血症性リンパ腫と呼ばれる。さらに, 慢性リンパ性白血病 慢性リンパ性白血病(CLL) 慢性リンパ性白血病(CLL)は,表現型的に成熟した悪性Bリンパ球が進行性に蓄積していくことを特徴とする。本疾患の原発部位としては,末梢血,骨髄,脾臓,およびリンパ節がある。症状および徴候は,認められない場合もあるが,リンパ節腫脹,脾腫,肝腫大,疲労,発熱,盗汗,意図しない体重減少,早期満腹感などが認められる場合もある。診断は末梢血でのフローサイトメトリーおよび細胞表面マーカー検査による。治療は症状が現れるまで待機し,一般に化学療法と免疫... さらに読む または他のリンパ増殖性疾患の患者にIgM型Mタンパク質の存在が散見される。

マクログロブリン血症の臨床像としては,出血,繰り返す感染症,全身性のリンパ節腫脹,肝脾腫のほか,まれに過粘稠度症候群などもあり,これらは循環血漿中に分子量の大きい単クローン性IgMタンパク質が大量に蓄積することで生じるが,全ての患者にIgM濃度の上昇に関連する問題が生じるわけではない。これらのタンパク質の一部は,自己のIgGに対する抗体(リウマトイド因子)またはI抗原に対する抗体(寒冷凝集素)である。約10%がクリオグロブリンである。5%の患者が アミロイドーシス アミロイドーシス アミロイドーシスは,異常凝集したタンパク質から成る不溶性線維の細胞外蓄積を特徴とする多様な疾患群である。これらのタンパク質は局所に蓄積してほとんど症状を引き起こさない場合もあるが,全身の複数の臓器に蓄積して,重度の多臓器不全をもたらすこともある。アミロイドーシスは原発性の場合と,種々の感染症,炎症,または悪性疾患に続発する場合とがある。 さらに読む アミロイドーシス を発症する。

マクログロブリン血症の症状と徴候

ほとんどの患者は無症状であるが,多くの患者で貧血または過粘稠度症候群の臨床像がみられ,具体的には疲労,筋力低下,皮膚の色素沈着,皮膚出血,粘膜出血,視覚障害,頭痛,末梢神経障害の症状,その他の変化する神経症状などがみられる。血漿量の増加により 心不全 心不全 心不全は心室機能障害により生じる症候群である。左室不全では息切れと疲労が生じ,右室不全では末梢および腹腔への体液貯留が生じる;左右の心室が同時に侵されることもあれば,個別に侵されることもある。最初の診断は臨床所見に基づいて行い,胸部X線,心エコー検査,および血漿ナトリウム利尿ペプチド濃度を裏付けとする。治療法としては,患者教育,利尿薬,ア... さらに読む 心不全 が誘発されることがある。寒冷感受性, レイノー症候群 レイノー症候群 レイノー症候群は,寒冷刺激や精神的ストレスに対する反応として手の一部に生じる血管攣縮で,単一または複数の手指に可逆的な不快感および変色(蒼白,チアノーゼ,紅斑,またはこれらの組合せ)がみられる。ときに,他の先端部位(例,鼻,舌)で発生することもある。この病態には,原発性のものと続発性のものがある。診断は臨床的に行い,検査では原発性と続発性の鑑別に焦点を置く。合併症のない症例の治療法としては,寒冷刺激の回避,バイオフィードバック,禁煙,必... さらに読む レイノー症候群 ,または反復性の細菌感染症がみられることがある。

診察により,リンパ節腫脹,肝脾腫,および紫斑(まれに初発症状となる)が明らかになることがある。鎖状ソーセージに似た網膜静脈の著しいうっ血および限局性の狭小化から,過粘稠度症候群が示唆される。網膜出血,滲出,微細動脈瘤,および乳頭浮腫が晩期に生じる。

パール&ピットフォール

  • 鎖状ソーセージに似た網膜静脈の著しいうっ血および限局性の狭小化から,過粘稠度症候群が示唆される。

マクログロブリン血症の診断

  • 血小板数を含む血算,赤血球指数,および末梢血塗抹標本

  • 血清タンパク質電気泳動後,血清および尿の免疫固定法および免疫グロブリン定量

  • 血漿粘稠度測定

  • 骨髄検査,MYD88CXCR4など特定の遺伝子変異の検査を含む

  • ときにリンパ節生検

マクログロブリン血症は,過粘稠またはその他の典型的な症状を呈する患者で,特に貧血がみられる場合に疑われる。ただし,タンパク質電気泳動でMタンパク質が明らかになり,免疫固定法でIgM型と証明された場合に偶発的に診断されることが多い。臨床検査による評価としては,形質細胞疾患の評価(多発性骨髄腫 多発性骨髄腫 多発性骨髄腫は,形質細胞の悪性腫瘍で,単クローン性免疫グロブリンを産生し,隣接する骨組織に浸潤し,それを破壊する。一般的な臨床像としては,骨痛および/または骨折を引き起こす溶骨性骨病変,腎機能不全,高カルシウム血症,貧血,繰り返す感染症などがある。典型的には,Mタンパク質(ときに尿中にみられ,血清中に認められない場合があるが,まれに全く認められない場合もある)および/または軽鎖タンパク尿,および骨髄中の過剰な形質細胞の証明が診断に必要で... さらに読む 多発性骨髄腫 を参照)に用いられる検査のほか,クリオグロブリン,リウマトイド因子,寒冷凝集素の測定,凝固検査,直接抗グロブリン(クームス)試験などがある。

中等度の正球性正色素性貧血,顕著な連銭形成,および高度の赤血球沈降速度(赤沈)の亢進を認めることがある。白血球減少,相対的リンパ球増多,および血小板減少が散見される。クリオグロブリン,リウマトイド因子,または寒冷凝集素がみられることがある。寒冷凝集素が認められた場合,通常は直接クームス試験が陽性となる。様々な凝固系および血小板機能の異常が生じることがある。クリオグロブリン血症または著しい過粘稠がみられる場合は,ルーチンの血液検査で誤った結果が得られることがある。半数の患者で,正常な免疫グロブリンが減少する。

濃縮尿の免疫固定電気泳動により,単クローン性軽鎖(κ型が多い)が高頻度で明らかになるが,肉眼的ベンスジョーンズタンパク尿はまれである。骨髄検査では,形質細胞,リンパ球,形質細胞様リンパ球,および肥満細胞に様々な増加がみられる。リンパ系細胞にPAS染色陽性物質がみられることがある。リンパ節生検は,骨髄検査が正常な場合に実施するが,びまん性高分化型リンパ腫または形質細胞様リンパ球性リンパ腫として解釈される頻度が高い。血漿の粘稠度を測定して,疑いのある過粘稠を確認するが,その場合は通常4.0を超えている(正常で1.4~1.8mPa.s[ミリパスカル秒])。

マクログロブリン血症の治療

  • 血漿交換(過粘稠が認められる場合またはIgM高値の患者にリツキシマブを投与する前のみ)

  • コルチコステロイド,アルキル化薬,ヌクレオシドアナログ,モノクローナル抗体(特にリツキシマブ)

  • その他の薬剤として,プロテアソーム阻害薬(ボルテゾミブまたはカルフィルゾミブ),免疫調節薬(サリドマイド,ポマリドミド,またはレナリドミド),イブルチニブ,イデラリシブ,またはこれらの併用(特にリツキシマブとイブルチニブ)

多くの場合は,長年にわたって治療を必要としない (1) 治療に関する参考文献 マクログロブリン血症は,悪性の形質細胞疾患で,B細胞が過剰な量のIgM型Mタンパク質を産生する。臨床像としては,過粘稠,出血,繰り返す感染症,全身性リンパ節腫脹などがみられる。診断には,骨髄検査およびMタンパク質の証明が必要である。治療法としては,過粘稠に必要な血漿交換のほか,アルキル化薬,コルチコステロイド,ヌクレオシドアナログ,イブルチニブ,またはモノクローナル抗体による全身療法などがある。... さらに読む 。過粘稠が認められる場合は, 血漿交換 血漿交換 アフェレーシスとは,機器を用いて血液中の血球と水溶性成分を分離する処理のことを指す。アフェレーシスは,供血者に対してしばしば行われ,様々な患者の輸血に用いるべく全血を遠心分離して個々の成分(例,特定の重力に応じて赤血球,血小板,および血漿)を分取する。アフェレーシスは様々な疾患に対する治療目的でも用いられる( 1)。 治療目的のアフェレーシスとしては, 血漿交換や 血球除去などがある。... さらに読む が初期治療であり,神経学的異常とともに,出血が迅速に改善される。多くの場合,血漿交換は繰り返す必要がある。

腫瘍量を減らすには,コルチコステロイドが効果的なことがある。アルキル化薬の経口投与による治療は,緩和目的に適応となる場合があるが,骨髄毒性が生じる可能性がある。ヌクレオシドアナログ(フルダラビンおよび2-クロロデオキシアデノシン)により,新たに診断された患者の大多数で反応が得られるが,骨髄異形成および骨髄性白血病のリスク増加との関連が指摘されている。リツキシマブは,正常造血を抑制せずに腫瘍量を低下させることができる。ただし,最初の数カ月は,IgMの値が高く,血漿交換が必要になることがある。プロテアソーム阻害薬のボルテゾミブまたはカルフィルゾミブに加え,免疫調節薬のサリドマイド,レナリドミド,およびポマリドミドも,この悪性腫瘍に効果的である。ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬のイブルチニブとP13K阻害薬のイデラリシブも,これらの患者で効果的である。イブルチニブとリツキシマブの併用は,初期治療として特に効果的である。

治療に関する参考文献

  • Oza A, Rajkumar SV: Waldenstrom macroglobulinemia: Prognosis and management.Blood Cancer J 5(3):e296, 2015. doi: 10.1038/bcj.2015.28

  • Gertz MA: Waldenstrom macroglobulinemia: 2019 update on diagnosis, risk stratification, and management.Am J Hematol 94:266–276, 2019.doi: 10.1002/ajh.25292

マクログロブリン血症の要点

  • マクログロブリン血症は,悪性の形質細胞疾患で,B細胞が過剰な量のIgM型Mタンパク質を産生する。

  • ほとんどの患者は当初無症状であるが,多くの患者で貧血または過粘稠度症候群(疲労,筋力低下,皮膚出血,粘膜出血,視覚障害,頭痛,末梢神経障害,その他の変化する神経症状)がみられる。

  • 血清タンパク質電気泳動の後に,血清および尿の免疫固定法および免疫グロブリン定量を実施する。

  • 過粘稠は,血漿交換により治療することで,神経学的異常とともに,出血が迅速に改善する。

  • コルチコステロイド,フルダラビン,リツキシマブ,プロテアソーム阻害薬(ボルテゾミブおよびカルフィルゾミブ),免疫調節薬(サリドマイド,レナリドミド,およびポマリドミド),イブルチニブ,イデラリシブ,またはイブルチニブとリツキシマブの併用が役立つことがあり,症状緩和のためにアルキル化薬を使用できる。

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