がんを治癒させるには,患者の生涯にわたりがん再発の原因となりうるがん細胞を全て根絶する必要がある。主要な治療法として以下のものがある:
がんに対する全身療法としては以下のものがある:
ホルモン療法(前立腺癌,乳癌,子宮内膜癌などの特定のがんを対象とする)
モノクローナル抗体,インターフェロン,生物学的反応修飾物質,腫瘍ワクチン,細胞療法などの 免疫療法 がんの免疫療法 いくつかの免疫学的介入により,受動免疫および能動免疫の両方で腫瘍細胞を標的とすることができる。( 免疫療法薬も参照のこと。) 細胞性免疫を利用する受動免疫療法は,特異的なエフェクター細胞を患者の体内に直接注入する治療法であり,体内での誘導は起きない。 リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞は,患者の内因性T細胞から作製されるもので,患者か... さらに読む (多くの種類のがんを対象とする)
レチノイド(急性前骨髄球性白血病 急性骨髄性白血病(AML) 急性骨髄性白血病(AML)では,異常に分化して長い寿命をもつ骨髄前駆細胞の白血化とその無秩序な増殖により,循環血液中の幼若な血球数が増加し,悪性細胞で正常な骨髄が置換される。症状としては,易疲労感,蒼白,紫斑ができやすい状態,出血しやすい状態,発熱,感染などがある;髄外白血病細胞浸潤による症状は,約5%の患者のみにみられる(皮膚症状として... さらに読む を対象とする)やイソクエン酸デヒドロゲナーゼ-2(IDH2)阻害薬(急性骨髄性白血病 急性骨髄性白血病(AML) 急性骨髄性白血病(AML)では,異常に分化して長い寿命をもつ骨髄前駆細胞の白血化とその無秩序な増殖により,循環血液中の幼若な血球数が増加し,悪性細胞で正常な骨髄が置換される。症状としては,易疲労感,蒼白,紫斑ができやすい状態,出血しやすい状態,発熱,感染などがある;髄外白血病細胞浸潤による症状は,約5%の患者のみにみられる(皮膚症状として... さらに読む を対象とする)などの分化誘導薬
ゲノミクス,細胞生物学,および分子生物学の新たな知見を活用して開発された分子標的薬(例, 慢性骨髄性白血病 慢性骨髄性白血病(CML) 慢性骨髄性白血病(CML)は,多能性造血幹細胞が悪性化してクローン性の骨髄増殖を起こすことで発生し,成熟および幼若顆粒球の著しい過剰産生をもたらす。初期段階では無症状であるが,潜行性に進行し,非特異的な「慢性期」(倦怠感,食欲不振,体重減少)があり,最終的には,脾腫,蒼白,紫斑ができやすいおよび出血しやすい状態,発熱,リンパ節腫脹,皮膚の... さらに読む に対するイマチニブ)
多くの場合,複数の治療法を併用することにより,患者および腫瘍の特徴のほか,患者の希望にも沿った,個々の患者に適した治療プログラムが策定される。これらの治療法は,主治療と同時に,あるいは主治療の開始前または終了後に併用することができる。主治療の後に行うアジュバント療法と主治療の前に行うネオアジュバント療法は,がんの再発予防と生存期間の延長を目的として行われる。
治療は全体として,状況に応じて放射線腫瘍医,外科医,および腫瘍内科医の間で調整されるべきである。治療法の選択肢は絶えず進歩しており,数多くの比較臨床試験が続けられている。利用可能かつ適切な場合は,臨床試験への参加を考慮し,患者と話し合うべきである。
治療方針の決定では,期待できる便益に対して有害作用の可能性を比較検討すべきであり,その決定には率直なコミュニケーションに加えて,集学的がん医療チームの関与が必要になる場合もある。終末期をどのように過ごすかという患者の希望(事前指示書 事前指示書 事前指示書は,ある人が能力を喪失した場合に,医療に関する決断に対しその人のコントロールを及ばせる法律文書である。能力の喪失が起きる以前に希望を表明するため,それらは事前指示書と呼ばれる。このような文書では通常,終末期ケアに関する決定が含まれている。このような終末期の決定について患者と共感的かつ効果的にコミュニケーションを取るには特別な技術... さらに読む を参照)は,たとえ微妙な時期に死について話し合うことが困難であるとしても,がん治療過程の早期に確認しておくべきである。
がん治療に対する反応
治療に対する反応を記載する目的で様々な用語が使用されている(がん治療に対する反応の定義 がん治療に対する反応の定義 の表を参照)。無病または無増悪生存期間は,治癒の指標としてしばしば用いられるが,がん種により異なる。例えば,肺癌,結腸癌,膀胱癌,大細胞型リンパ腫,および精巣腫瘍では,通常は無病生存期間が5年に達すれば治癒したとみなされる。一方,乳癌や前立腺癌では,5年を大きく過ぎてからも再発の可能性があり,そのような事象は腫瘍の休眠(dormancy)を示唆している(今や大きな研究分野となっている);これらのがんでは,10年間の無病状態の方がより正確な治癒の指標となる。
特定のがんについて,様々な治療法を単独または併用で用いた場合の生存率を一覧表に示した(各種のがんにおける5年生存率 各種のがんにおける5年生存率の中央値 の表を参照)。