体液量過剰

執筆者:James L. Lewis III, MD, Brookwood Baptist Health and Saint Vincent’s Ascension Health, Birmingham
レビュー/改訂 2020年 6月
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体液量の過剰は通常,細胞外液の増加を指す。細胞外液の増加は,典型的には,心不全,腎不全,ネフローゼ症候群,肝硬変でみられる。腎臓でのナトリウム保持は,体内総ナトリウム量の増加につながる。この増加により,様々な程度の体液量過剰が生じる。体液量過剰の患者では(体内総ナトリウム量が増加しているにもかかわらず),血清中ナトリウム濃度は高値,低値,または正常範囲内になる。治療では,利尿薬により過剰な水分を排泄するか,または透析や穿刺などの機械的方法により水分を除去する。

水とナトリウムの平衡および体液量異常の概要も参照のこと。)

体内総ナトリウム量の増加が重要な病態生理学的事象である。浸透圧が上昇し,これが水分貯留を引き起こす代償機構を誘発する。細胞外液に十分な水分が蓄積すると(通常,> 2.5L),浮腫が発生する。

細胞外液過剰の最も頻度の高い原因としては以下のものがある:

体液量過剰の症状と徴候

体液量過剰の症状は主にその基礎疾患の症状であるが,過剰な水分は,重力のかかる軟部組織では視認および触知可能な圧痕性浮腫として,腹部では腹水として,肺では肺の間質液による呼吸困難および断続性ラ音として現れることがある。

体液量過剰の診断

  • 臨床的評価

診断は主に臨床的に行う。主要な特徴としては体重増加や浮腫がある。浮腫の部位および量は,患者が座っているか,寝ているか,立っているかなどを含め,多数の要因によって決まる。

臨床所見は原因によって大きく異なり,本マニュアルの別の箇所で詳細に考察されている。

体液量過剰の患者では(体内総ナトリウム量が増加しているにもかかわらず),血清中ナトリウム濃度は高値,低値,または正常範囲内になる。体液量過剰の患者において,尿中ナトリウム濃度は,急性腎障害とその他の(腎臓以外の)急性の原因とを鑑別するのに役立つことがある。腎不全では尿中ナトリウム濃度が > 20mEq/L(> 20mmol/L)であるのに対し,心不全肝硬変,およびネフローゼ症候群では尿中ナトリウム濃度が < 10mEq/L(< 10mmol/L)である。

体液量過剰の治療

  • 原因の治療

治療は原因の是正を目標とする。心不全,肝硬変,腎不全,およびネフローゼ症候群の治療については,本マニュアルの別の箇所で考察されているが,一般的な治療としては,利尿薬を用いるほか,ときに透析や穿刺などの機械的方法で体液を除去する。

食物性ナトリウムの摂取を制限する。心不全,肝硬変,腎機能不全,およびネフローゼ症候群では利尿薬を投与する。

毎日の体重測定が,細胞外液過剰に対する治療の効果を追跡するための最良の方法である。細胞外液過剰の是正速度は,体液量過剰の程度に応じて(過剰の程度が著しければ速く,過剰の程度が小さければ遅くする),また,患者の他の医学的問題に応じて(低血圧症および腎機能不全であれば遅くする),1日当たり体重0.25~0.5kgに制限すべきである。

外来患者に利尿薬治療を行う場合は,注意深くモニタリングする必要がある。比較的重度の臓器機能障害もしくは多臓器機能障害がある場合,または経口利尿薬による改善があまりみられない場合は,入院治療とモニタリングが必要である。

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