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栄養サポートの概要

執筆者:

David R. Thomas

, MD, St. Louis University School of Medicine

レビュー/改訂 2020年 7月
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多くの低栄養患者には,除脂肪体重の増加を目的とする栄養サポートが必要である。食欲不振の患者または食事の摂取や吸収に問題のある患者では,経口摂食が難しいことがある。重症(critically ill)の患者でも,しばしば栄養サポートが必要である(1 総論の参考文献 多くの低栄養患者には,除脂肪体重の増加を目的とする栄養サポートが必要である。食欲不振の患者または食事の摂取や吸収に問題のある患者では,経口摂食が難しいことがある。重症(critically ill)の患者でも,しばしば栄養サポートが必要である( 1)。 経口摂取をときに増進させる行動面での対策として以下のものがある:... さらに読む )。

経口摂取をときに増進させる行動面での対策として以下のものがある:

  • 食べるよう患者に勧める

  • 食事を温めるまたは食事に調味料を加える

  • 好みのものやしっかりと味付けしたものを出す

  • 少量食べるよう患者に勧める

  • 食事にあわせて他のケアや活動の予定を立てる

  • 摂食を介助する

行動面での対策で効果がなければ,経口, 経腸チューブ 経腸チューブ栄養 消化管は機能しているものの,経口摂食できないまたはしたがらないため経口で十分な栄養素を摂取できない患者には,経腸チューブ栄養が適応となる。( 栄養サポートの概要も参照のこと。) 静脈栄養と比較して,経腸栄養には以下の長所がある: 消化管の構造と機能がよりよく維持される 安価 おそらく合併症(特に感染症)がより少ない さらに読む ,または 静脈栄養 完全静脈栄養(TPN) 静脈栄養はその定義から,静脈内に投与される。 部分的な静脈栄養は経口摂取を補うものであり,1日の栄養所要量の一部だけを補給する。多くの入院患者がこの方法によりブドウ糖またはアミノ酸輸液の投与を受けている。 完全静脈栄養(TPN)は1日の全栄養所要量を補給する。TPNは病院または在宅で使用できる。TPN液は濃縮されており,末梢静脈の血栓症を... さらに読む による栄養サポートの適応となるが,ときに 臨死患者と重度の認知症患者 臨死患者または重度の認知症患者に対する栄養サポート 臨死患者では 食欲不振または食欲の喪失がよくみられる。 経口摂取量を増加させる可能性のある対策としては以下のものがある: 食事時間を柔軟に設定する 食事に時間をかける 少量ずつ与えるか好みのものやしっかりと味付けしたものを与える さらに読む は対象から除外される。

総論の参考文献

  • 1.McClave SA, Taylor BE, Martindale RG, et al: Guidelines for the provision and assessment of nutrition support therapy in the adult critically ill patient: Society of Critical Care Medicine (SCCM) and American Society for Parenteral and Enteral Nutrition (A.S.P.E.N.).JPEN J Parenter Enteral Nutr 40 (2): 159–211, 2016.doi: 10.1177/0148607115621863.

栄養所要量の予測

介入の計画を可能にするため,栄養所要量を予測する。栄養所要量は,公式または間接熱量測定によって推定できる。間接熱量測定には呼気ガス分析装置(総CO2排出量に基づいてエネルギー消費量を算出する閉鎖式再呼吸システム)を使用する必要があるが,特別な専門技術が必要であり,常に利用できるわけではない。そのため,通常は総エネルギー消費量(TEE)およびタンパク質必要量を推定する。

エネルギー消費量

総エネルギー消費量(TEE)は,患者の体重,活動レベル,および代謝ストレスの程度(代謝要求)によって異なり,座位時間が長くストレスのない人の30~35kcal/kg/日から,重症(critically ill)患者の最大45kcal/kg/日まで幅がある。TEEは以下の合計と等しい:

  • 安静時代謝量(RMR,または安静時エネルギー消費量),正常ではTEEの約70%

  • 食物代謝により失われるエネルギー(TEEの10%)

  • 身体活動時に消費されるエネルギー(TEEの20%)

低栄養により,RMRが最大20%減少することがある。 代謝ストレスを増大させる病態(例,重篤な疾患,感染症,炎症,外傷,手術)によりRMRが増加することがあるが,50%を超える増加はまれである。

Mifflin‐St. Jeorの式は,一般に用いられるHarris‐Benedictの式よりも少ない誤差でRMRをより正確に推定でき,通常は間接熱量測定法による計測値から20%以内に収まる結果が得られる。Mifflin‐St. Jeorの式では,以下のようにRMRを推定する:

equation

TEEはRMRに約10%(座位時間の長い人)~約40%(重症[critically ill]患者)を加算することによって推定できる。

タンパク質必要量

健常者では,タンパク質必要量を0.8g/kg/日で推定する。ただし以下の場合には,必要量が増加する可能性がある(成人の1日当たりの推定タンパク質必要量 成人の1日当たりの推定タンパク質必要量 成人の1日当たりの推定タンパク質必要量 の表を参照):

  • 代謝ストレスのある患者

  • 腎不全で透析を必要とする患者

  • 70歳以上の患者

栄養サポートに対する反応の評価

栄養サポートに対する反応を評価するためのゴールドスタンダードはない。臨床医は,一般的に以下のような除脂肪体重の指標を用いる:

窒素バランス,皮膚抗原反応,筋力測定,および間接熱量測定も栄養サポートに対する反応の評価に用いることができる。

窒素バランスは,タンパク質の需要と供給間のバランスを反映したものであり,摂取した窒素量と失った窒素量との差である。正のバランス(すなわち,摂取した量の方が失った量よりも多い)は,摂取が十分であることを意味する。 正確な測定は実際には不可能であるが,推定値は栄養サポートに対する反応の評価に役立つ:

  • 窒素摂取量はタンパク質摂取量から推定する:窒素(g)はタンパク質(g)/6.25と等しい。

  • 窒素損失量の推定値は,尿からの窒素損失量(正確に採取した24時間蓄尿中の尿素窒素量を測定することによって推定),糞便からの損失量(排便があれば1g/日と推定し,排便がなければ無視できるものとする),および気づかず測定されない他の損失量(3gと推定)を合計した値である。

低栄養の患者への栄養サポートで反応が得られると,遅延型過敏症の尺度である皮膚抗原反応が正常値まで上昇することが多い。しかし,他の因子が皮膚の抗原に対する反応に影響する可能性がある。

筋力は除脂肪体重の増加を間接的に反映する。握力計で,または電気生理学的に(一般的には電極で尺骨神経を刺激する)定量できる。

急性期反応物質の血清タンパク質(特にプレアルブミン[トランスサイレチン],レチノール結合タンパク質,トランスフェリンなどの寿命の短いタンパク質)の濃度が,ときに栄養状態の改善と相関するが,これらの濃度は炎症状態との相関の方が強い。

栄養サポートの要点

  • 行動面での対策により栄養サポートの必要性を回避できることがある。

  • 体重,性別,活動レベル,および代謝ストレスの程度(例,重篤な疾患,外傷,熱傷,最近の手術による)に基づいて,患者のエネルギー必要量を予測する。

  • 正常ではタンパク質必要量は0.8mg/kg/日であるが,年齢が70歳以上の場合や腎不全または代謝ストレスがある患者ではこの量を補正する。

  • 栄養サポートに対する反応を,除脂肪体重の指標および/または他の指標(例,窒素バランス,皮膚抗原反応,筋力測定,急性期反応物質の血清タンパクの濃度)によって評価する。

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