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統合失調症

執筆者:

Carol Tamminga

, MD, UT Southwestern Medical Dallas

レビュー/改訂 2020年 5月
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本ページのリソース

統合失調症は,精神病(現実との接触の喪失),幻覚(誤った知覚),妄想(誤った確信),まとまりのない発語および行動,感情の平板化(感情の範囲の狭まり),認知障害(推理および問題解決の障害),ならびに職業的および社会的機能障害を特徴とする。原因は不明であるが,遺伝的および環境的要因を示唆する強固なエビデンスがある。通常,症状は青年期または成人期早期に始まる。診断を下すには,6カ月以上持続する症状のエピソードが1回以上は認められなければならない。治療は薬物療法,認知療法,および心理社会的リハビリテーションから成る。早期発見および早期治療が長期的機能の改善につながる。

精神病とは,妄想,幻覚,まとまりのない思考および発語,現実との接触の喪失を示唆する奇異で不適切な行動(緊張病を含む)などの一連の症状を指す。

統合失調症の概要
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発症時の平均年齢は女性では20代前半から半ばであり,男性ではいくらか若年である;男性患者の約40%は20歳未満で最初のエピソードを経験する。小児期の発症はまれであり,青年期早期または晩年での発症(この場合はパラフレニーと呼ばれる)も生じうる。

総論の参考文献

統合失調症の病因

特異的な原因は不明であるが,以下の証左から明らかなように,統合失調症には生物学的な基盤が存在する:

統合失調症は神経発達上の脆弱性を有する人々に高い頻度で生じる病態であり,症状の出現,寛解,および再発は,そうした永続的な脆弱性と環境ストレス因との相互作用の結果であると提案する専門家もいる。

神経発達上の脆弱性

統合失調症が幼児期に生じることはまれであるが,小児期の因子が成人期の発症に影響を及ぼす。該当する因子としては以下のものがある:

  • 遺伝的素因

  • 在胎児,出生時,または分娩後の合併症

  • ウイルス性中枢神経系感染症

  • 小児期の心的外傷およびネグレクト

統合失調症患者の多くには家族歴がないが,発症に対する遺伝的要因の存在が強く示唆されている。第1度近親者に統合失調症患者がいる人々では,本障害の発生リスクが約10~12%であるのに対し,一般集団におけるリスクは1%である。一卵性双生児は約45%の一致率を示す。

神経生物学的検査および神経精神医学的検査の結果により,統合失調症患者では滑動性追跡眼球運動の異常,認知および注意の障害,ならびに感覚ゲーティングの障害が一般集団より多くみられることが示唆されている。これらの所見は統合失調症患者の第1度近親者のほか,実際には他の多くの精神病性障害患者にも認められ,発症脆弱性の遺伝的な要素を反映している可能性がある。精神病性障害を通じてこのような所見が共通して認められることは,従来の診断カテゴリーが精神病間の基礎的な生物学的差異を反映しているわけではないことを示唆している (1) 病因論に関する参考文献 統合失調症は,精神病(現実との接触の喪失),幻覚(誤った知覚),妄想(誤った確信),まとまりのない発語および行動,感情の平板化(感情の範囲の狭まり),認知障害(推理および問題解決の障害),ならびに職業的および社会的機能障害を特徴とする。原因は不明であるが,遺伝的および環境的要因を示唆する強固なエビデンスがある。通常,症状は青年期または成人期早期に始まる。診断を下すには,6カ月以上持続する症状のエピソードが1回以上は認められなければならな... さらに読む

環境ストレス因

環境ストレス因は,発症脆弱性を有する人において精神病症状の出現または再発の引き金となりうる。主に,ストレス因には薬理学的因子(例, 物質使用 物質関連障害群の概要 物質関連障害群には,脳内報酬系を直接活性化する薬物が関与する。報酬系が活性化されると,典型的には快感が生じるが,具体的にどのような快感が誘発されるかは,薬物に応じて広い幅がある。このような薬物は,薬理学的機序の差異(全く別とは言えない)に基づき10のクラスに分類される。該当する薬物クラスとしては以下のものがある:... さらに読む ,特に マリファナ マリファナ(大麻) マリファナは多幸感をもたらすが,一部の使用者では鎮静や不快気分を引き起こすことがある。長期使用により精神依存が生じうるが,身体依存はほとんどないことが臨床的に明らかである。離脱症状は不快であるが,必要なのは支持療法だけである。 マリファナは最も多く使用される違法薬物であり,一時的に用いられることが多いが,社会的または精神的な機能不全を示すというエビデンスはない。マリファナの活性成分はカンナビノイドと呼ばれる;精神活性作用のある主要な植物... さらに読む )または社会的因子(例,失業する,ないしは貧困に陥る,大学入学のために実家を出る,恋愛関係が破局する,軍隊に入隊する)があると考えられる。環境的な出来事によって遺伝子の転写と疾患の発症に影響を及ぼすエピジェネティック変化が惹起される可能性があることを示すエビデンスが新たに得られてきている。

病因論に関する参考文献

統合失調症の症状と徴候

各段階の持続期間とパターンは様々であるが,統合失調症は,いくつかの段階を経て進行する慢性疾患である。統合失調症患者は,医療機関を受診する平均12~24カ月前に,精神病症状を有している傾向があるが,現在では経過のより早期に発見されることが多い。

典型的には,統合失調症の症状は複雑かつ難しい認知および運動機能を果たす能力を損ない,したがって,症状のためにしばしば仕事,社会的関係,およびセルフケアが著しく妨げられる。失業,孤立,対人関係の悪化,および生活の質の低下が,共通する転帰である。

統合失調症の病期

前駆期(prodromal phase)には,当人は何の症状も呈さないか,あるいは社会的能力の障害,軽度の認知的解体または知覚の歪み,喜びを経験する能力の低下(快感消失),他の全般的な対処能力の欠如などを呈する。このような特性は,振り返って初めて認識される軽度の場合もあれば,社会的,学業的,および職業的機能の障害を伴って,より顕著な場合もある。

精神病早期(early psychosis phase)には,症状が活動性になり,しばしば最も悪化する。

中間期(middle phase)において,症状のある期間は断続的な場合もあれば(同定可能な増悪および寛解を伴う),持続的な場合もある;機能障害は悪化する傾向がある。

疾患後期(late illness phase)には,疾患のパターンが確立されることがあるが,かなりのばらつきがみられる;能力障害は安定,悪化することもあれば,軽減することさえある。

統合失調症における症状のカテゴリー

一般に,症状は以下のように分類される:

  • 陽性症状:正常な機能の歪み

  • 陰性症状:正常な機能および感情の減弱または喪失

  • 解体症状:思考障害および奇異な行動

  • 認知症状:情報処理および問題解決の障害

患者は,1つのカテゴリーの症状だけを呈する場合もあれば,全てのカテゴリーの症状を呈する場合もある。

陽性症状は,さらに以下のように分類することができる:

  • 妄想

  • 幻覚

妄想とは,明らかに矛盾する証拠があるにもかかわらず,持続的な誤った確信のことである。妄想にはいくつかの種類がある:

  • 被害妄想:患者は拷問を受けている,尾行されている,だまされている,またはスパイの対象にされていると確信する。

  • 関係妄想:患者は書籍の一節,新聞,歌詞,または他自分の周囲にあるちょっとした言い回しが自分のことを指していると確信する。

  • 思考奪取または思考吹入に関する妄想:他者が自分の心を読み取ることができる,自分の考えが他者に伝わっている,または考えおよび衝動が外的な力によって自分に押し付けられていると確信する。

統合失調症における妄想は,奇異な傾向があり,明らかに信じがたく,通常の人生経験からは生じないものである(例,誰かが傷跡を残さず内臓を切除したと確信する)。

幻覚とは,他者には知覚されない知覚である。幻覚は,幻聴,幻視,幻嗅,幻味,または幻触である場合があるが,幻聴が最も多くみられる。患者には自身の行動に言及する声,互いに会話を交わす声,または批判的で罵倒する声が聞こえることがある。妄想および幻覚は,患者にとって極めていらだたしいことがある。

陰性(欠陥)症状としては以下のものがある:

  • 感情鈍麻:顔の動きが乏しいように見え,アイコンタクトが少なくなり,表現力が喪失する。

  • 発語の乏しさ:ほとんど話すことがなく,質問への回答がそっけなくなり,内面が空虚といった印象を与える。

  • 快感消失:活動における興味の喪失および無目的な活動の増加がみられる。

  • 非社交性:対人関係に対する関心が欠如する。

陰性症状は意欲の欠如ならびに目的および目標意識の低下につながることが多い。

解体症状は,陽性症状の一種と考えることもでき,以下が含まれる:

  • 思考障害

  • 奇異な行動

思考にまとまりがなくなり,とりとめなくかつ目的志向性がない発語で,内容も定まらない。発語は多少まとまりを欠くものから,支離滅裂かつ理解不明なものまで幅がある。奇異な行動としては,子どもじみた愚行,焦燥,および不適切な外見,衛生状態,または素行などがある。緊張病とは,奇異な行動の極端な例の1つであり,硬直した姿勢を維持し,動かそうとすると抵抗する,無目的かつ誘因のない運動活動を行うことなどがある。

認知障害には以下の障害が含まれる:

  • 注意

  • 処理速度

  • 作業記憶または陳述記憶

  • 抽象的思考

  • 問題解決

  • 社会的相互作用の理解

患者の思考に柔軟性がなくなることがあり,問題を解決する能力,他者の視点を理解する能力,および経験から学習する能力が低下することがある。認知障害の重症度は,全体的な能力障害の主要な決定因子である。

統合失調症の亜型

統合失調症を感情鈍麻,意欲欠如,および目的意識の減弱などの陰性症状の有無および重症度に基づいて欠陥型と非欠陥型に分類する専門家もいる。

欠陥型の患者では,他の要因(例,抑うつ,不安,刺激のない環境,薬剤の有害作用)では説明できない,顕著な陰性症状が認められる。

非欠陥型の患者では,妄想,幻覚,および思考障害を呈することがあるが,陰性症状はあまりみられない。

以前は認められていた統合失調症の亜型(妄想型,解体型,緊張型,残遺型,鑑別不能型)は,妥当性または信頼性が証明されておらず,もはや使用されなくなっている。

自殺

統合失調症患者の約5~6%が 自殺 自殺行動 自殺行動には自殺既遂と自殺企図が含まれる。自殺を想像する,自殺について真剣に考える,または自殺を計画することは,自殺念慮と呼ばれる。 (American Psychiatric Association’s Practice Guideline for the Assessment... さらに読む し,約20%で自殺企図がみられる;さらに多くの患者が著しい希死念慮を有する。自殺は,統合失調症患者における若年死の主な原因であり,統合失調症患者の寿命が平均10年短くなる理由の一部となっている。

発症が遅く,かつ病前機能が良好であった患者(回復については最も予後が良好な患者である)は,自殺リスクが最も高い。これらの患者は,悲嘆したり,苦悩したりする能力が保持されているため,自分の障害がもたらす影響を現実的に認識することにより,絶望のうちに行為に及ぶ傾向があるものと考えられる。

暴力

統合失調症は,暴力行動の比較的弱い危険因子である。本当に危険な行動より,暴力を振るうという脅しおよび攻撃的な感情爆発の方が多くみられる。実際,統合失調症患者は,統合失調症ではない患者よりも全体として暴力性が低い。

症状に関する参考文献

統合失調症の診断

  • 臨床診断基準(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition[DSM-5])

  • 病歴,症状,および徴候の組合せ

早期に診断して治療するほど,予後良好となる。

統合失調症に確定的な検査は存在しない。診断は病歴,症状,および徴候の包括的評価に基づく。家族,友人,教師,同僚などの関係者からの情報が,しばしば重要となる。

DSM-5に従うと,統合失調症の診断を下すには以下の条件を両方とも満たす必要がある:

  • 2つ以上の特徴的症状(妄想,幻覚,まとまりのない発語,まとまりのない行動,陰性症状)が6カ月間のうちかなりの割合で存在すること(最初の3つの症状のうち,少なくとも1つが含まれていなければならない)

  • 社会的,職業的,もしくはセルフケアの障害を伴った前駆期または残遺期の徴候が,6カ月間にわたって明らかに存在し,そのうち1カ月間は活動期の症状が含まれている

鑑別診断

臨床検査と神経画像検査を含めた病歴聴取と検査により, 他の医学的障害による精神病 他の医学的疾患による精神病性障害 他の医学的疾患による精神病性障害とは,他の身体疾患によって引き起こされる幻覚または妄想を特徴とする。 精神病とは,妄想,幻覚,まとまりのない思考および発語,現実との接触の喪失を示唆する奇異で不適切な行動(緊張病を含む)などの一連の症状を指す。 この診断名は,精神病症状が医学的疾患の生理学的影響に起因する場合に適用される。例としては,ときに側頭葉てんかんに合併する精神病的な行動または幻嗅,および,ときに頭頂葉病変により引き起こされるcon... さらに読む 物質使用障害 物質使用障害 物質使用障害は 物質関連障害の一種であり,物質の使用に関連する重大な問題を体験しているにもかかわらず,患者がその物質を使用し続ける病的な行動パターンを伴う。脳内神経回路の変化などの生理学的臨床像が認められることもある。 関わる物質は多くの場合, 一般的に物質関連障害を引き起こす10の薬物クラスに含まれるものである。このような物質はいずれも脳内報酬系を直接活性化し,快感をもたらす。活性化が非常に強いために,患者はその物質を強く渇望し,その... さらに読む による精神病を除外することが必要である(精神症状がみられる患者の医学的評価 精神症状がみられる患者の医学的評価 精神面に関する愁訴もしくは懸念を有する患者または行動に異常のある患者には,プライマリケアおよび救急医療センターなどを含めて,様々な臨床現場で遭遇する。この愁訴または懸念は新たに生じたものもあれば,過去の精神的な問題と連続性を有する場合もある。愁訴は,身体疾患に対する患者の対処と関係している場合もあれば,身体疾患が脳に及ぼす直接的な影響による場合もある。評価の方法は,愁訴の表出が,救急来院でなされたものか,予定された来院でなされたものかに... さらに読む )。一部の統合失調症患者では,画像検査で脳の器質的異常が認められるが,それらの異常は診断的な価値を有するほど十分に特異的な所見ではない。

同様の症状を示す他の精神障害として,統合失調症と関連のあるものがいくつかある:

特定のパーソナリティ障害(特に統合失調型)も統合失調症と同様の症状を引き起こすが,通常はより軽度で,精神病症状は伴わない。

診断に関する参考文献

統合失調症の予後

症状が出現してから最初の5年間で,機能面が悪化し,そして社会的および職業的技能が低下することがあり,次第にセルフケアを怠るようになることがある。陰性症状が重症化し,そして認知機能が低下することがある。その後,能力障害は横ばい状態になる傾向がある。疾患の重症度は晩年になって軽快する場合がある(特に女性の場合)ことを示唆するエビデンスもある。重度の陰性症状および認知機能障害を呈する患者では,抗精神病薬を使用していない場合でも,不随意運動が現れることがある。

統合失調症は他の精神障害と併発する可能性がある。重大な 強迫症状 症状と徴候 強迫症(OCD)は,反復的かつ持続的で,患者自身の意思に反し,かつ侵入的に生じる思考,衝動,もしくはイメージ(これらを強迫観念と称する),および/または強迫観念が引き起こす不安を軽減ないし避けるために患者が行わざるを得ないと感じる反復的な行動もしくは精神的行為(これらを強迫行為と称する)を特徴とする。診断は病歴に基づく。治療は精神療法(具... さらに読む を合併する場合には,特に予後不良であり, 境界性パーソナリティ障害 境界性パーソナリティ障害(BPD) 境界性パーソナリティ障害は,対人関係の不安定性および過敏性,自己像の不安定性,極度の気分変動,ならびに衝動性の広汎なパターンを特徴とする。診断は臨床基準による。治療は精神療法および薬剤による。 ( パーソナリティ障害の概要も参照のこと。) 境界性パーソナリティ障害患者は孤独に対する耐え難さを有する;見捨てられることを避けるために死に物狂いの努力を払い,他者が救助またはケアをしてくれるよう仕向ける形で... さらに読む の症状を合併する場合は,比較的予後良好である。統合失調症患者の約80%は,生涯のある時点で,1回以上 うつ病 うつ病(単極性障害) 抑うつ障害群は,機能を妨げるほどの重度または持続的な悲しみと興味または喜びの減退を特徴とする。正確な原因は不明であるが,おそらくは遺伝,神経伝達物質の変化,神経内分泌機能の変化,および心理社会的因子が関与する。診断は病歴に基づく。治療は通常,薬物療法,精神療法,またはその両方のほか,ときに電気痙攣療法または高頻度経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)から成る。 うつ病という用語は,しばしばいくつかの抑うつ障害群のいずれかを指して用いられる。一部... さらに読む のエピソードを経験する。

診断後最初の1年間では,処方された向精神薬に対するアドヒアランスおよびレクリエーショナルドラッグ使用の回避が予後と密接に関連する。

全体的に,患者の3分の1では有意かつ持続的な改善がみられ,3分の1ではある程度の改善が得られるが,間欠的な再発および能力障害が残遺し,3分の1では活動能力が強く,かつ永続的に損なわれる。発病前の水準まで機能が完全に回復する患者は,全体の約15%のみである。

予後良好因子としては以下のものがある:

  • 病前機能が良好であること(例,優秀な学生,しっかりした職業歴)

  • 発病が遅いか突然であること

  • 統合失調症以外の気分障害の家族歴があること

  • 認知障害がごく軽微であること

  • 陰性症状がほとんどないこと

  • 精神病未治療期間がより短いこと

予後不良因子としては以下のものがある:

  • 発症年齢が低いこと

  • 病前機能が不良であること

  • 統合失調症の家族歴があること

  • 陰性症状が多くみられること

  • 精神病未治療期間がより長いこと

男性は女性より転帰が不良であり,女性の方が抗精神病薬による治療への反応が良好である。

物質使用は,統合失調症患者の多くにみられる重大な問題である。 マリファナ マリファナ(大麻) マリファナは多幸感をもたらすが,一部の使用者では鎮静や不快気分を引き起こすことがある。長期使用により精神依存が生じうるが,身体依存はほとんどないことが臨床的に明らかである。離脱症状は不快であるが,必要なのは支持療法だけである。 マリファナは最も多く使用される違法薬物であり,一時的に用いられることが多いが,社会的または精神的な機能不全を示すというエビデンスはない。マリファナの活性成分はカンナビノイドと呼ばれる;精神活性作用のある主要な植物... さらに読む および他の幻覚剤の使用は,統合失調症患者にとり極めて破壊的であり,これらの使用については強く禁止し,使用がみられる場合は積極的に治療すべきであることを示すエビデンスが存在する。物質使用の併存は,転帰不良に関する重要な予測因子であり,治療薬のアドヒアランス不良,再発の繰返し,頻回の再入院,機能の低下,および社会的支援の喪失(ホームレスになることなど)につながる可能性がある。

予後に関する参考文献

  • RAISE: Recovery After an Initial Schizophrenia Episode―A Research Project of the National Institute of Mental Health (NIMH)

統合失調症の治療

精神病症状の出現から初回治療までの時間が,初期治療に対する反応の速さおよび治療反応の質と相関する。早期に治療すれば,よりよく反応する。初回エピソード後に抗精神病薬を継続的に使用しなければ,70~80%の患者が12カ月以内に再発する。抗精神病薬を長時間作用型薬剤により継続的に使用することで,1年再発率を約30%以下にまで低減できる。薬物療法は初回エピソードから少なくとも1~2年間継続する。病的な状態がこれより長く続いている場合は,何年にもわたり投与する。

早期発見と多面的な治療が可能になり,統合失調症のような精神病性障害の患者に対するケアは変貌を遂げている。レジリエンストレーニング,個人および家族療法,認知機能障害への対処,援助付き雇用など,調整された専門的ケアは,心理社会的回復につながる重要な要素となる。

統合失調症の治療における全般的な目標は以下の通りである:

  • 精神病症状の重症度を低減すること

  • 心理社会的機能を維持すること

  • 症状の再発とそれに関連する機能の悪化を予防すること

  • レクリエーショナルドラッグの使用を減らすこと

抗精神病薬は,神経伝達物質受容体に対する特異的な親和性と活性に基づいて, 従来型抗精神病薬 従来型抗精神病薬 抗精神病薬は,神経伝達物質受容体に対する特異的な親和性と活性に基づいて,従来型抗精神病薬および第2世代抗精神病薬(SGA)に分類される。SGAは,効力の面で若干優れているという点(ただし,最近のエビデンスは薬物クラスとしてのSGA全体の利点には疑問を投げかけている)と,不随意運動や関連する 有害作用の可能性が低いという点で,ある程度優れている可能性がある。最近の研究結果からは,新規の作用をもつ新しい抗精神病薬,すなわち微量アミンおよびム... さらに読む および 第2世代抗精神病薬 第2世代抗精神病薬 抗精神病薬は,神経伝達物質受容体に対する特異的な親和性と活性に基づいて,従来型抗精神病薬および第2世代抗精神病薬(SGA)に分類される。SGAは,効力の面で若干優れているという点(ただし,最近のエビデンスは薬物クラスとしてのSGA全体の利点には疑問を投げかけている)と,不随意運動や関連する 有害作用の可能性が低いという点で,ある程度優れている可能性がある。最近の研究結果からは,新規の作用をもつ新しい抗精神病薬,すなわち微量アミンおよびム... さらに読む (SGA)に分類される。SGAは,効力の面で若干優れているという点(ただし,最近のエビデンスは薬物クラスとしてのSGA全体の利点には疑問を投げかけている)と,不随意運動や関連する 有害作用 抗精神病薬の有害作用 抗精神病薬は,神経伝達物質受容体に対する特異的な親和性と活性に基づいて,従来型抗精神病薬および第2世代抗精神病薬(SGA)に分類される。SGAは,効力の面で若干優れているという点(ただし,最近のエビデンスは薬物クラスとしてのSGA全体の利点には疑問を投げかけている)と,不随意運動や関連する 有害作用の可能性が低いという点で,ある程度優れている可能性がある。最近の研究結果からは,新規の作用をもつ新しい抗精神病薬,すなわち微量アミンおよびム... さらに読む の可能性が低いという点で,ある程度優れている可能性がある。しかしながら, メタボリックシンドローム メタボリックシンドローム メタボリックシンドロームは,大きなウエスト周囲長(過剰な腹部脂肪による),高血圧,異常な空腹時血漿血糖値またはインスリン抵抗性,および脂質異常症を特徴とする。原因,合併症,診断,および治療は, 肥満の場合と同様である。 先進国では,メタボリックシンドロームは深刻な問題である。非常によくみられ,米国では,50歳以上の人のうち40%を超える割合でみられる可能性がある。小児および青年がメタボリックシンドロームを発症することがあるが,これらの年... さらに読む (内臓脂肪の過剰,インスリン抵抗性,脂質異常症,および高血圧)のリスクは,SGAの方が従来型抗精神病薬よりも高い【訳注:必ずしも全てのSGAで高いわけではない】。両クラスともいくつかの抗精神病薬は QT延長症候群 QT延長症候群とトルサード・ド・ポワンツ型心室頻拍 トルサード・ド・ポワンツは,QT延長を呈する患者でみられる特殊な形態の多形性心室頻拍である。速く不規則なQRS波を特徴とし,心電図の基線を中心にねじれたような形を呈する。この不整脈は自然に治まることもあれば,増悪して心室細動に移行することもある。有意な血行動態障害を引き起こし,しばしば死に至る。診断は心電図検査による。治療はマグネシウムの静注,QT間隔を短縮する処置,および心室細動の可能性が高まっている場合は電気的除細動による。... さらに読む を引き起こす可能性があり,究極的には致死的不整脈のリスクを増大させる;そのような薬剤としては,チオリダジン【訳注:日本では販売中止】,ハロペリドール,オランザピン,リスペリドン,ジプラシドンなどがある。

リハビリテーションと地域支援サービス

社会技能訓練および職業的リハビリテーションプログラムは,多くの患者が働き,買い物をし,自身の身の回りの世話をする,また家事をとりしきり,他者とうまく暮らし,精神医療従事者とともに機能するのに役立つ。

患者を競争のある仕事環境に配置して,仕事への適応を促すために現場のジョブコーチを付ける援助付き雇用は,特に価値があると考えられる。やがてジョブコーチは,問題解決のまたは雇用者とのコミュニケーションためのバックアップとしてのみの役割を果たすようになる。

支援サービスにより,多くの統合失調症患者が地域に居住できるようになる。大半の患者は独立して生活できるが,一部の患者では,薬剤アドヒアランスを確実にするためにスタッフを配置した監督下の共同住宅が必要になる。プログラムでは,異なる居住環境において段階的な水準の監督が提供されており,24時間のサポートから定期的な家庭訪問まで様々である。こうしたプログラムは,再発の可能性および入院の必要性を最小限にするための十分なケアを提供すると同時に,患者の自主性を促す助けとなる。積極的な地域治療プログラムは,患者の自宅または他の住居でサービスを提供し,患者数に対するスタッフの比率の高さを基盤にしている;治療チームが必要な治療サービスの全てまたはほぼ全てを直接提供する。

重度の再発時には,入院または代替施設におけるクライシスケアが必要になることがあり,患者に自傷他害行為の恐れがある場合,非自発的入院が必要になることもある。最善のリハビリテーションおよび地域支援サービスをもってしても,ごく一部の患者,特に重度の認知障害がある患者および薬物療法に対する反応が悪い患者では,施設での長期的なケアまたは他の支持的なケアが必要となる。

一部の患者には認知リハビリテーションが役立つ。この治療法は,神経認知機能(例,注意,作業記憶,遂行機能)を改善し,患者が課題を行う方法を学習または再学習するのを支援するようにデザインされている。この治療法により患者の機能を改善できる場合がある。

精神療法

統合失調症における精神療法の目標は,患者が自身の病気を理解して管理することを学び,処方通りに服薬し,ストレスをより効果的に処理できるように,患者,家族,医師の間で協力関係を構築することである。

個人精神療法と薬物療法の併用が一般的なアプローチであるが,経験に基づくガイドラインはほとんどない。患者の基本的な社会サービスのニーズに対処することから始まり,支援および統合失調症の性質に関する教育を提供し,適応的な活動を促し,統合失調症に対する健全で力動的な理解および共感に基づいている精神療法は,最も効果的となる可能性が高い。多くの患者は,機能面で大幅な制約につながる可能性があり,しばしば生涯抱えることになる疾患に適応するために,共感的な心理的支援を必要とする。

個人精神療法に加えて,統合失調症に対する認知行動療法に大きな進展があった。例えば,本治療法は,個人または集団で行われ,妄想性の思考を軽減する方法に焦点を合わせることができる。

家族と生活する患者に関しては,家族への心理教育的介入により再発率を低下させることが可能である。National Alliance on Mental Illnessのような支援および擁護団体が,家族にとってしばしば助けとなる。

一般的治療に関する参考文献

  • Correll CU, Rubio JM, Inczedy-Farkas G, et al: Efficacy of 42 pharmacologic cotreatment strategies added to antipsychotic monotherapy in schizophrenia.JAMA Psychiatry 74 (7):675-684, 2017.doi: 10.1001/jamapsychiatry.2017.0624.

  • Wang SM, Han C, Lee SJ: Investigational dopamine antagonists for the treatment of schizophrenia.Expert Opin Investig Drugs 26(6):687-698, 2017. doi: 10.1080/13543784.2017.1323870.

統合失調症の要点

  • 統合失調症は精神病,幻覚,妄想,まとまりのない発語および行動,感情の平板化,認知障害,ならびに職業的および社会的機能障害を特徴とする。

  • 自殺が若年死の最も頻度の高い原因である。

  • 本当に危険な行動より,暴力を振るうという脅しおよび攻撃性の低い感情爆発の方が多くみられるが,そのような行動は薬物を乱用している妄想性精神病患者の方がより多くみられる場合がある。

  • 早期に抗精神病薬による治療を行うが,主に薬剤は有害作用プロファイル,必要な投与経路,および患者の各薬剤に対する過去の反応に基づいて選択する。

  • 精神療法は,患者が自身の病気を理解して管理し,処方通りに服薬し,ストレスをより効果的に処理する助けとなる。

  • 治療により,患者の3分の1が有意かつ持続的に改善し,3分の1がある程度改善するものの,間欠的な再発および残遺性の能力障害を呈し,3分の1は生活能力が永続的に大きく損なわれる。

統合失調症についてのより詳細な情報

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